超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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VSオルフェウス ~10と1~

『おっと、ここで選手交代があるようです。イナズマジャパンは飛鷹、壁山、風丸に代わって、土方、木暮、綱海を投入するようですね。そして、何人かの選手に指示を伝えているようです』

『イナズマジャパン側の守備陣はかなり消耗していましたからね。後半が始まってからやられてばかりなので、この交代が何か反撃のきっかけになると良さそうですが……』

 

 ボールが外に出たタイミングでの交代。消耗が激しい3人を交代し、代わりに出たヤツらが声をかけ、十六夜、不動、吹雪の3人がベンチの方へ走ってくる。

 

「この面子……ああ、そういうこと」

 

 不動は呼ばれたメンバーに心当たりがあるようで、何かを察する。

 

「現状、ヒデナカタ参戦の影響で、攻撃面も守備面も苦しい展開になっている。だが……」

 

 そう言って今交代したメンバーの方を見る。ベンチで座るのがやっと……久遠監督も本来ならここで交代したくはなかったはず。だが、この消耗具合では、いずれ交代せざるを得ない状況になっていただろう。

 

「ここまでよくやってくれたよ。こいつらが居なければ後何失点していたことか……」

「……十六夜、お前に指示を出す」

「何ですか?」

 

 試合中に久遠監督が具体的な指示を出すとは……しかも、相手は十六夜だ。中々、珍しいこともあるものだな。そう思っていると……

 

「好きに暴れろ。以上だ」

「…………はい?」

「文句は受け付けない。不動、前に言った話は覚えているな?頼んだぞ」

「へーへー」

「吹雪、センターバックに土方と木暮。サイドバックにお前と綱海を置く。お前の消耗も激しいが、代える余力が無い。だから、その足はここぞというときまで温存しておけ」

「分かりました。……ところで、十六夜くんのポジションは?」

「一応、ボランチに置くが本人に任せる」

「……いや、監督?具体的な指示とか……しかも、ポジションすらオレにって……」

「行ってこい」

「じゃ、戻ろっか」

「そうだな」

「……え?…………え?」

 

 困惑する十六夜を連れて吹雪と不動が戻っていく。……何だろう、十六夜に対して何一つ具体的な指示がされなかったが……

 オルフェウスのスローインで試合再開。ボールはナカタが持ち、そこから別の選手へ渡る。相変わらず凄いパス回しだが……

 

「好きに……か。中々、とんでもない指示を出すな、久遠」

「……今の十六夜は考えすぎです。ヒデナカタの参戦で守備も攻撃も上手く行っていない状況。どちらも早く打開しなくてはならないという思考に陥って、焦りが見られた」

「だから暗に伝えたと。ひとまず、守備は最悪お前抜きでも何とかやってみるから、好きにやれ……十六夜にそんな指示出して大丈夫なのか?」

「正直賭けですね。……ですが、そんなこと言っていられない状況です。オルフェウスとイナズマジャパンの戦力差が余りにも大きすぎる。使える武器は全て使う……それがたとえ、破滅のリスクがある武器だったとしてもです。そのリスクを冒してでもやらなければ、このまま差をつけられて負けてしまうでしょうから」

「それは……確かにな。いくらこの試合の勝敗が決勝リーグ進出には影響しないとは言え、出し惜しみをして負けることがあってはやりきれないだろう」

「もちろん、この采配がどう出るかについては、不確定な要素が多すぎて読み切れない。ただ、最悪の事態にならないよう保険はかけてありますので」

「それが不動と吹雪……ってわけか」

「えぇ。不動には試合前に布石を打ってありますし、吹雪は暴走した彼と直接話をして他の選手よりは彼の内面に触れている。……イナズマジャパンの選手の中で彼ら以上の適任は居ないでしょう」

 

 なるほど、そういう意図があるのか。十六夜を自由にさせる……下手をすると、ファイアードラゴン戦での暴走……アレの再来になる可能性がある。いや、もしかしたらそれ以上に何かが起こる可能性さえある。その最悪が起きないようにするため、起きても対処するための保険があの2人というわけか。

 一方のフィールドでは、十六夜が何かを考えながらナカタを警戒して張り付いている。ただ、何というか、そこまで集中できているようには見えなかった。

 

「キミがそこに居て大丈夫かい?」

 

 ナカタが十六夜にそう問いかける。フィールドを見るとフィディオがボールを持っており、その左右に6番(アンジェロ)11番(ラファエレ)……これはまさか……!

 

「あの3人技を使うつもりですか!?」

「ど、どうしましょう!?3人がかりで止められなかったのに、2人がベンチに下がっちゃって……」

「十六夜くん……動く気がない?」

 

 何が放たれるか分かった瞬間、私たちには止めるビジョンが浮かばなかった。それほどまでに強力な必殺技だとたった一撃で分からされた。それにシュートブロックに多大な貢献をしてくれた壁山も飛鷹も下げられてすぐ……十六夜が何もしないのなら止められないんじゃ……

 

「問題ない」

 

 と、慌てる私たちをよそに久遠監督は落ち着いた調子で言う。

 

「問題ねぇだろ」

 

 と、ナカタの前にいる十六夜も同じ事を口にする。そんな中、突如現れた山がどんどん高くなっていき……

 

「木暮準備しろ!円堂行けるな!」

「お、おう!」

「任せろ!」

「それならいい!土方!綱海!お前らも構えろよ!」

「任せとけ!」

「おっしゃ!やるぞお前ら!」

 

 不動が4人に声をかける。見ると木暮がペナルティーエリア内まで下がっている。一方で、伸びきった山の頂上では神秘的な光がボールに集まっていき、ゴールとの間には12枚の魔法陣が現れた。

 

「今だ!」

「行くぞ木暮!正義の鉄拳G5!」

 

 その瞬間、円堂が正義の鉄拳を放つ。いくらなんでもタイミングが早すぎる……そう思ったとき、その拳から何か――木暮が勢いよく射出された。

 

「旋風陣改!」

 

 正義の鉄拳により飛ばされる木暮はそのまま回転。まるで弾丸のように突き進み……

 

 パリンッ!パリンッ!

 

 次々と魔法陣を破壊していく。

 

『マウント・オリュンポス!』

 

 そんな中必殺技が放たれる。

 

「12枚中3枚ってとこか……その必殺技は魔法陣を通過するごとに光が強くなっていたからなぁ。だいぶ弱く見えるぜ?」

 

 木暮は空中でシュートと激突。弾き飛ばされてしまうも彼が壊した魔法陣は9枚。つまり、本来12枚通過するところを3枚しか通過できなかった。そのおかげで最初に見たものよりもかなり弱く見える。

 

「スーパーしこふみV2!」

 

 地上では佐久間と虎丸が木暮を受け止める。一方のシュートには土方が必殺技でシュートブロックを試み……

 

「おりゃぁっ!」

 

 綱海が身体を張って止めようとする。その2人を破った先に……

 

「いかりのてっついV3」

 

 体勢を立て直した円堂が必殺技を発動する。土方と綱海の役目はシュートブロック……シュートの威力を落とすことより、円堂が体勢を立て直す時間を稼ぐことだったか。

 

「へへっ……ナイスだ皆!」

「凄っ……えっ!?これを止めちゃったの!?」

「クッ……まさか魔法陣を壊しに来るとはな……」

「フドウの策だね。……凄いね、イナズマジャパンは。皆で力を合わせた結果だ」

 

 なるほど。あの技は強力な必殺技ではあるが、その分シュートを放たれるまでのモーションや、過程が長い。だからこそ、完全な状態なら厳しくても弱体化してしまえば止められる……と。それに不動のことだから、きっと誰がフィールドに居ても対応できるよう何パターンか考えていたはず……必殺技を分析し、破る策を作ることが出来る。しかも、自分以外の仲間の力だけで止める策を編み出す力は十六夜よりも上だろうな。

 続くイナズマジャパンの攻撃、ボールは宇都宮が持っているが、相手はカテナチオカウンターをしてこない。

 

「バーバリアンの盾!」

 

 そう思っていると相手ディフェンダーの必殺技が発動する。それぞれの手に半分に割れた盾を持ち、それを宇都宮の前で合わせると、その盾が威圧し、怯んだところでボールを奪う。……カテナチオカウンターをしないんじゃない、する必要がないってことだろう。

 

「なるほど。彼らが止めてくれるから、俺に関与して欲しくなかったわけだね。でも、今のキミは何を考えているんだい?」

「…………」

 

 ボールを持ったナカタと対峙する十六夜。だが、その空気はどうにも注意が散漫しているよう。

 

(結局、指示の意味が分からねぇな……好きに暴れろ?それって本当に指示か?……いや、好きにしていいなら好きにするけどさぁ……つぅか、本当に……)

 

「強いな、アンタ」

「それはどうも」

 

 相手を認めるような言葉を口にする。恐らくだが、駆け引きではなく今のアイツが思っている純粋な気持ちが口から出たのだろう。

 

(本当に強い……それは混じりけの無い本音だ。この試合に出場している面子で1番強いのはコイツで、2番目はフィディオ。オレはよくて3番くらい……でも、順位だけじゃ分かりにくい差があって、この最強どもをどうにかしないとこの試合には勝てない。でも、勝てるビジョンが全くというほど見えてこねぇし、どんなに思考を張り巡らせても、何度頭の中でもシミュレートしても勝てる可能性が低い……マジでハードモード過ぎる)

 

 あっさりパスを出される十六夜。意識が別のところを向いていた……?いや、違うな。今のままじゃ勝てないから、ナカタのシュートを優先して防ぎに行っているのか。彼の必殺技はさっき見た感じ、近くにさえ居れば防げる可能性がある。だから、パスは自由に出させても、シュートだけを警戒している。

 

「行くよ、マモル!」

「来い!フィディオ!」

 

 ナカタへのパスは十六夜が防いでいるものの、素早いパス交換で振り回され、フィディオがフリーで持つ。土方と木暮のディフェンスを突破すると、円堂と1対1になる。前半ではあれだけフィディオを警戒していたが、先ほどの攻防もだが、流石の十六夜もナカタと両方同時に押さえられる程余裕はないようで、フィディオのシュートはある程度割り切っている感じがする。

 

「今度は決めるよ!オーディンソード改!」

 

 フィディオの強力なシュートが円堂の守るゴールへと迫る。

 

「皆がここまで繋いでくれているんだ!何度来ても、ここで止めればアイツらが絶対に決めてくれる!だから、必ず止めるんだぁ!」

 

 円堂の思いが拳に乗り……

 

「真イジゲン・ザ・ハンド!」

 

 必殺技を進化させる。今までよりも強くなったその必殺技はシュートを逸らすことに成功させる。

 

『これも防いだぁ!何とキーパー円堂!進化した必殺技でフィディオのシュートを1人で止めてみせたぞ!』

『イナズマジャパンの守護神もこの土壇場で進化を……これはオルフェウス側も得点を決めることは容易ではないでしょうね』

『ここからイナズマジャパンの反撃なるか!?』

 

「よぉし!」

「凄い……1人でこれを止めたのか……!」

「へへっ、どうだ見たか!」

 

 フィディオに笑顔を向ける円堂。

 

(つぅか眩しいな……このバカは。こんな絶望的な状況でも……眩し過ぎて……本当に……)

 

「十六夜!」

 

 円堂から十六夜にボールが渡る。

 

「居るぞ!十六夜!」

「こっちも居ます!十六夜さん!」

 

 豪炎寺と宇都宮が声を出しながら走っている。しかし、十六夜はボールを受け取って動きを止めた。

 

(こいつらも眩しいな……このチームはその光を信じているメンバーが多すぎる。円堂という男が魅せてくれる光を心の底から信じるメンバーが多すぎる。本当に……ああ、コイツらみたいに光を純粋に信じられたらよかったんだろうな)

 

 ディフェンスがやって来ると同時に宇都宮へと大きくパスが出される。タイミングを計るために止まっていたのか?いや、それにしては何か違う空気を感じたが……

 

「行きますよ!豪炎寺さん!」

「ああ!」

『タイガーストームV2!』

 

 ボールを受け取った宇都宮と豪炎寺の連携シュートが放たれる。そのシュートは……

 

「通さねぇよ、ボーラスマッシュ!」

 

 1人の選手(ベント)が割って入り、暴風をシュートにぶつけた。そして……

 

「バーバリアンの盾!」

 

 別の選手が盾を生成してそれを正面から受け止めた。あの技でもシュートブロックが出来るとは……向こうのディフェンダーの必殺技の壁が厚すぎる……!

 

『防いだぁ!宇都宮と豪炎寺の連携必殺技をオルフェウスのDFが2人で止めたぞ!』

『中々辛い展開ですね……イナズマジャパン側はディフェンダーを突破しなければ、たとえシュートを放ってもキーパーに到達する前に止められてしまうのですから……』

『えぇ。しかし、ヒデナカタが入ったことにより、オルフェウス側の守備は一層強固になっています』

 

 少し距離があっても撃てばいいってわけじゃない。撃っても、シュートブロックが間に合ってしまえば防がれる……どうにか、あの壁を超えるしかない。

 

「おい、十六夜。ちょっと耳貸せ」

「ああ?」

 

 そう思っていると、不動が十六夜に対して何かを伝えていた。流石に声までこちらに届いてこないが、何か打開策でもあるのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合は苦しい展開を迎えた。こちらが攻めても相手のディフェンダー陣に阻まれる。鬼道と不動のコンビに対してはカテナチオカウンターを使ってくるものの、壁を超えることが出来ない。何度も挑むも、一向にカテナチオカウンターを破れない。他の選手が何度撃っても相手のディフェンダーを超えられない。

 一方で、向こうの攻撃は殆どシュートまで持って行かれている。ヒデナカタのシュートは殆どないものの、他の選手からのシュート数は増えている。こちらは円堂とディフェンダー陣のシュートブロックが間に合っているから失点はないが、シュートが撃たれる前に止めることが出来ていない。

 そんな苦しい時間を迎え、打開する術が一向に見えない。いつ失点してもおかしくはないのに、得点できる気が微塵もしない。

 

「それにしても、指示を受けてから十六夜くんは守備しかしませんね……いやまぁ、別に問題は無いんですが……」

「うーん……十六夜先輩の攻撃力を活かせないのは厳しいですよね……」

 

 目金と音無が疑問の声を出す。確かに、十六夜の動き……というよりプレーも目立っているものはない。守備に注力……と言うより多分、ヒデナカタにシュートを撃たせないことに専念した守備をしている。だから、マッチアップをしてもボールを奪いに行く素振りを見せないし、攻めに行こうともしないためボールを持たない。しかも、フィディオの動きは目で追っていて、関与できるときはしているが、他の選手のことは丸投げ。好きに暴れろ……と言われていた割には、目立った動きを見せない。

 

「…………」

 

 そのことに対して久遠監督は何も言わない。文句を言わないという約束だからだろうか?それとも……

 

「何かを狙っている……のか?」

 

 ずっと何かを待っている?そう思っていると、シュートを受け止めた円堂から鬼道にボールが渡った。

 

「何度来ても行かせないぞ!カテナチオカウンター!」

 

 しかし、すぐさま閉じ込められてしまう。もはや隠れる必要がないため、不動は鬼道の隣に並んでいる。

 

「だってよ、鬼道クン?そろそろやられるのも飽きたし、破ってやったらどうだ?」

 

 と、不動は余裕があるような空気を醸し出す。何か破れる策でも考えてきたのだろうか?

 

「ふっ……そうだな、行くぞ!」

 

 そう言って鬼道は突っ込んでいき、不動も遅れずについて行く。そして、フィディオと交錯する。

 

「何度来ても同じだな」

 

 鬼道の前に現れたのはデモーニオ。彼が鬼道を止めようとする……

 

「……っ!もう1人居るぞ!」

 

 と、抜かれたフィディオが3人目の存在に気付いて声をあげる。その声と同時にボールは不動に渡った。

 

「なるほど、2人じゃダメなら3人でやればいいと。確かに人数を増やすのは効果的……だが、キミも気付いているんだろう?適当に増やせばいいってわけじゃないことを」

 

 デモーニオが鬼道の、フィディオが現れた3人目――佐久間のマークをする。これにより、カテナチオカウンターの中で3対3の状況が出来る……が、

 

「そうだなぁ。でも、これでいいんだよ」

 

 そう言ってボールを上空に蹴り飛ばす。

 

「……っ!?上!」

 

 オルフェウスの選手の誰かがそう発した。その声で思わず、フィールドに居た選手やベンチのメンバーの目は空へと向く。

 

「居るだろ?」

「ナイスパス。行くぞ」

「ブラージ!シュート警戒!」

「スカイウォーク!」

 

 空から聞こえてきた十六夜の声。十六夜は空高くボールを蹴り上げ、自身も更に空高く上がっていく。

 

「皇帝ペンギン1号!」

 

 そして、天高くから十六夜はオーバーヘッドキックで皇帝ペンギン1号を放つ。赤い5匹のペンギンがボールと共に急降下してくる。

 

「どこ狙っているんだ……?」

 

 しかし、そのままのコースではゴールに到達しない。ゴールの……いや、ペナルティーエリアよりも手前に落ちてしまう。一体、何を狙って……

 

「行くぞ!不動!佐久間!」

「ハッ!こんなチャンス逃しちゃ世話ねぇな!」

「決めるぞ!ここで追い上げる!」

 

 一方の地上では、鬼道、佐久間、不動の3人がゴールに向かって走り始める。そして、鬼道が跳び上がり、不動、佐久間もそれに続き……

 

 ピー!

 

 紫のペンギンが5匹現れ、3人の周りを回っている。そして、その3人の丁度中心に向けてボールは落ちていき……

 

『皇帝ペンギン3号!』

 

 ボールがそこに到達した瞬間、3人の踵落としが加わり、シュートは加速する。完璧なタイミング。赤と紫の計10匹のペンギンはゴールへと向かう。

 

「マルス・ザ・ガード!」

 

 しかし、時間を与えてしまったせいで相手の必殺技は発動している。相手キーパーの背後には巨大な魔神の姿が……

 

「なっ……!?」

 

 正面からは破れない……そう思っていたとき、それは起きた。赤いペンギン5匹が相手の魔神の射程に入った瞬間、ボールを下に叩き落とす仕草をする。赤いペンギンたちは魔神によって挟み込まれ潰されるも、ボールは紫のペンギン5匹が軌道を変え、魔神を避けるようにして相手ゴールへと突き刺した。

 

『ゴール!何と、無敵とも思われたカテナチオカウンターとブラージの必殺技を破ってシュートを決めたぞイナズマジャパン!ようやく1点が入りました!』

『これは大きな1点ですね……この得点を機に試合がイナズマジャパンにとって有利に動くと良いですね』

『このチャンスを掴めるかイナズマジャパン!それともオルフェウスが高い壁を見せつけそれを阻むか!』

 

 4-5……ようやく1点が入る。これで再び1点差に追いつくことが出来た。余りにも遠くに感じたオルフェウスの背が再び見え始める。

 

「真正面からぶつかれば勝ち目はなかっただろう」

「だから、ギリギリで()()を変える。そうすれば、その技は避けられる」

「コロッセオガードはゴール全域をカバーしているが、その技は魔神がカバーできない足下が弱点」

「……そういうことか。アヤトの技は、お前らの技を強化するためじゃない。お前らの技の軌道を途中で変えるために撃ったと……」

「今のオレじゃ、まだソレは破れない」

 

 鬼道たちが相手キーパー(ブラージ)と話すところに、空から降りてくる十六夜。

 

「でも、これは試合だ。だから、正面から破らなくてもゴールはゴールだ」

「ハハッ!流石はアヤト!流石はイナズマジャパンだな!最高だぜお前ら!」

「いつかはソレもオレが単独で真正面から破ってやるよ」

「楽しみにしているぜ?まぁ、俺も負けるつもりはないがな!」

 

 一本取られた……何処か清々しい笑い声が響くフィールド。しかし疑問に思うことがある。

 

「……何であんなにあっさり決まったの?」

 

 その疑問が残る。正確には決められる策があるのなら、どうしてもっと早くやらなかったのか?恐らく、十六夜に不動が何かを伝えていた段階で、この作戦があったのだろう。それならもっと早く出来ただろうに……

 

「1つ目は油断を誘うため。2つ目に十六夜に注意を向かせないため。そして3つ目に分析の時間を稼ぐためだな」

 

 そう思っていると久遠監督が答える。

 

「前提として、彼らは十六夜への警戒が強い。それは彼らも知っている……十六夜綾人という選手は満遍なくステータスが高く必殺技も多彩。それ故、ヤツが取れる選択肢は多く何をするか分からない危険性があるからだ」

 

 言い方はアレだが、今までもそうだろう。アイツは個人で何かを起こせる……こちらからすれば、希望を見せてくれる存在で、相手からすれば危険因子。しかも、オルフェウスのメンバーの殆どは十六夜と過ごした時間がそこそこあるから、他のチームより警戒も強いだろう。警戒しなければならない実力を持っていることを知ってるし、それが正しいことはこの試合中も既に何度も感じているはずだ。

 

「だから、この局面で十六夜を攻撃面で効果的に使うには、十六夜以外に注意を分散させる必要がある。……不動はそれを分かって、十六夜を目立たなくさせた。アイツに守備に専念させ、プレーに関与させないことで、攻撃の存在感をどんどん薄くした」

「でも、そんなこと出来るんですか?」

「光を強くすることで、闇を見えなくさせた。チームという光が十六夜という闇を覆い隠した」

 

 何かとんでもないことを言われている気がするが、否定は出来ない気がした。確かにこのチームは円堂守を中心とするチームとして強い光と、十六夜綾人個人の強い闇……それが、チームの戦術面にも表れているところがある。

 

「そして、油断を誘うため……鬼道と不動が何度もカテナチオカウンターを発動させて取られたのは、佐久間が必殺タクティクスを破るカギだと思わせるため。追加人材が、破るカギだと疑わせないため。ただ、それは囮……本命は、空中に留まっていた十六夜だ。現に私たちは誰一人、十六夜がいつから空を飛んでいたか把握していない」

「「「た、確かに……」」」

 

 十六夜はよくも悪くも目立つ方の選手ではある。だが、フィールドでその存在感を常に発揮するわけではない。他の存在感が強ければ、当然埋もれてしまう……いや、自ら埋もれたのだろう。チームの放っている光を使って、自分を覆い隠した……

 

「ただ、あの3人目は誰でもよかったわけじゃない。佐久間は鬼道の動きならついて行ける囮であり、最後のフィニッシュを決めるのに必要な人材だった。破れたのはあの4人だったからだ」

 

 フィールドでは不動がよくやったみたいな感じで十六夜と佐久間に声をかけていた。そうか……十六夜は単身で空を飛べるようになったのなら、自分のタイミングで自由自在に飛べるし動ける。それに、ペンギンが居ない分、見つかる要素も減った。

 

「1度きりの奇襲……だが、これでオルフェウスは、カテナチオカウンターを発動できなくなった」

「何でそう言い切れるんですか?」

「今のを防ぐには、デモーニオが空に居て十六夜と対峙する必要がある。だが、そうしてしまえば地上は3対2……いや、フィディオを抜いた後なら3対1。いくらナカタが強力でも、あの3人が抜けないとは思えない」

 

 確かにあの3人だったら抜けるだろう。攻略の難易度はさっきまでの状況に比べると格段に下がっている。

 

「だが、まだ油断は出来ない……試合の残り時間は約10分。今の1点のために時間を少々使いすぎた。それだけ、相手が強力なのだが……」

「勝つには後2点必要……時間との勝負になりますね……」

 

 残り10分ちょっと……ここから追い上げていけるのか。ただ、気になるのは……折角1点を取ったのに、十六夜の顔が曇っていることだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何度も何度も頭の中で戦った。

 

 

 

 

 

 何度も何度も再現したイメージの中で戦った。

 

 

 

 

 

 何度も何度も敗北を味わった。

 

 

 

 

 

 何度も何度も挑んで何度も何度も負ける。

 

 

 

 

 

 何度も何度も策を練り直し手を替え品を替え戦い……そして負ける。

 

 

 

 

 

 ……ああ、一体、どうやったら……




次回……勝てない、勝てる、勝つ
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