超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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受け取った

 謹慎生活……と言うと何か悪いことしたみたいだが、練習禁止生活2日目の夕方。

 

「鬼道、アッキー今暇ー?」

 

 本日も1日、自室で言いつけを守って大人しく過ごしていました。流石にそろそろ運動をしたくなるが、流石に我慢している。

 

「そうだな。今は空いている」

「これはこれは謹慎処分のアホペンギンさんじゃないか」

「誰が謹慎処分じゃ」

「で?どうしたんだよ。お前から試合外で声を掛けるなんて珍しいな」

「その珍しいのをなるべく日常にしたいんですがね……鬼道、コレお前に渡すわ」

 

 そう言って彼の前に置いたのは影山のノートの束。

 

「良いのか?それは総帥がお前にって渡してきたものでは……」

「もちろん、全部に目を通した。必殺技を書き留めたノートたち……正直、分かりやすさって意味では円堂の爺さんのノートとは比較にならない」

 

 そもそも論として、向こうは円堂を始めとしたごく一部の人間にしか読めないわ、仮に読めたとしても擬音語ばかりだわで、向こうも凄いのは凄いのだろうけど、残念な要素たちが足を引っ張っているせいで……うん。これは影山が凄いのか。

 

「これは影山が最後に遺したもの。だったら、影山と一番関係が深いお前に渡すのがいいかと思ってな」

「そうか……」

「一応、この0巻も渡しておく。お前らならヘタな使い方しないだろ」

 

 0巻には十六夜専用と書かれた紙が貼られていた。どういうことか聞いたら、常人が使えば病院送りになるレベル以上の必殺技しか書かれていないそうだ。……いや、酷くね?危険物だからオレに押しつけようってか?そんな必殺技なくても最近は病院の常連になっているのに。

 

「0巻くらいはお前が持っておけ。さっきも言ったがこれらは本来、お前が受け取ったものなんだからな」

「うへぇ……アッキー、いる?」

「いらねぇ。そんな病院送りになる技とか身につける気にもならねぇよ。お前が持ってろ」

「へーへー……ただ、鬼道に渡す理由はもう1つあるけどな」

「もう1つ?」

「そうそう。さっきも言ったし、お前らも軽くは見たんだろ?ここに書かれているのはペンギン技だけじゃない。それ以外の技もシュート、ドリブル、ブロックなど多種多様。しかも、これらの技をそのまま再現しなくても、ヒントにして、自分の技を編み出してもいい親切設計。何が言いたいかと言われると……これらの技はお前らには必要だろ?」

「お前らにはって、随分と上からだなぁ?」

「そういうつもりじゃねぇよ。この前の円堂とのやり取り、そして、円堂の新必殺技の兆しから、お前らのことだ。自分も何か新しい技を……とか考えているんだろ?」

 

 サッカーにおいて強くなるときに、基礎能力向上は1つの手。ただ、この世界……特にこのチームでは強力な必殺技を身につけることで強くなろうとする者が多い。もうそれは受け入れることにするし、言わんとすることは分かるからそこに一々噛み付きはしない。

 

「そうだな。シュートも、ドリブルも、ブロックも……今の俺たちの持っている必殺技だけでは足りないことが分かっているからな」

「特にシュートだな。前のオルフェウス戦もそうだが……純粋な個人だけで得点を決めたのはお前だけだ、十六夜。個人の決定力不足は深刻だし、連携技だからって全部が通用するとは限らねぇ」

「パワーによるゴリ押しで決めようとしたら火力不足なのは分かるし、何かと絡め手でごまかしているところもあるしな」

「その絡め手のレパートリーを増やすにも新必殺技の存在は嬉しいものになる」

「正直、やるべき課題は大量にある……テメェが認めるようなチームメイトになるにはな?」

「へぇ。アッキーのことは結構認めているんだけど?」

「うっせぇバケモノ。テメェの求めるレベルに、俺1人じゃ不足していることは痛感しているんだよ。俺がもっと強ければ、テメェの力をもっと引き出せる道が見えていた……イタリア戦で見せた俺とお前と吹雪の3人の連携は、まだまだ序の口。もちろん、加われる4人目、5人目の存在もだが、何より俺の頭脳と技術のレベルを上げないとな」

「なら、オレはお前が扱いきれないくらいのバケモノとして、もっと黒くなってやろうかね」

「やってみろよバケモノ。テメェに首輪とリードをつけて操ってやるからよ」

「それくらいの意気込みだと助かる」

 

 前々から感じてはいたが、このチームで一番波長が合いそうなのは不動だ。自分の進化も当然だが、彼が強くなってくれれば彼との連携はもっと凶悪なものになる。もっと最高に最悪に破壊ができる。

 

「話を戻すと、オレがそれらを持っているとお前らが探す手前があるだろ?前からだけど、オレがお前らと一緒に居る率は低めだからな……」

「殆ど個人行動だろ」

「ダントツでワースト1位が何言ってるんだ」

「……そういうわけだから、鬼道が持っていた方が他の奴らも探しやすいし見やすい。オレはこのチームでは浮いた存在だからな……アッキーと一緒で」

「勝手に浮いてろ。テメェのそれは自業自得だろうが」

「えぇーアッキーだって、『俺はチームでの嫌われ者』って自称していたじゃん」

「うっせぇぞアホペンギン。小っ恥ずかしいこと掘り起こすんじゃねぇ」

「心配するな。不動も十六夜も、どちらもイナズマジャパンの仲間だ。もう不動のことは誰も嫌っていないし、十六夜のことは俺たちが浮いた存在にさせない。お前たちは1人じゃないんだ」

「「…………」」

 

 何だろう。余りにも醜い争いを繰り広げるせいで、鬼道さんに優しく諭された気がする。

 

「取り敢えず、お前のためにもチームのためにも鬼道、これらはお前が持っていろ。いいな?」

「分かった。確かに受け取っておく」

「じゃ、オレは引き籠もるわ」

「引き籠もる前に十六夜。お前に影山からの伝言がある」

「伝言?……いつの間に?」

「オルフェウス戦の直後だよ。何処かの誰かさんがさっさと帰ったからな」

「……そう言えばそうだったな。それで?」

「『十六夜、お前の気持ちは間違っていない。……たとえ、誰にも理解されなくとも、私はお前を肯定してやる』……だとよ」

「そっか……オレたち相手に鉄骨落としてきた前科がある人に言われると、オレもそっち側に思われそうだけど」

「けど?」

「……あの人とはサッカーについて話してみたかった。一度で良いから、純粋にサッカーについて語りたかった」

「「…………」」

 

 目の前の2人も……いや、彼ら以外にもそう思っているヤツが居るだろう。オレたちの多くは最後の最後までサッカーを通し、サッカーを超えた場所で敵対していた。でも、最後の最後、闇を払ってくれたフィディオたちのお陰で影山零治という男の本当のサッカーを見ることが出来た。

 ……でも、あの人と語る機会は二度と来ない。永遠に失われてしまった。……オレがもっと早く黒幕を潰していれば……後悔先に立たずと言うが、影山には生きていて欲しかった。生きて、罪を償って、憑き物が取れたあの人と向き合ってみたかった。

 

「……あの人は似ているんだよ。オレという作品を作ったクソ制作者(マスター)に」

「「は?お前を作った?」」

「あ、ゴメン言い方変えるわ。オレにサッカーを教えてくれた師匠。狂っててイカれている最悪の師匠……でも、オレにとっては最高の師匠だったよ」

「……そうか。お前にも居たんだな……そういう(せんせい)が」

「……もう会えねぇけどな。でも、その人の教えはここにある。お前と似ているよ、鬼道」

「……フッ、まさかこんなことで共通しているとは思わなかったよ、十六夜」

 

 確かに。影山の作品である鬼道と、コーチの作品であるオレ。まさか、誰かの作品として作られたという意味で同じとは……出会ったときは想像もしなかった共通点だ。

 

「またいつか、影山の話を聞かせてくれ。あの人の話を、お前の立場から改めて聞いてみたい」

「それなら、お前の師匠の話も落ち着いたら聞かせて欲しい。十六夜綾人というサッカー選手を作った人の話は俺も興味が湧いた」

「……いつかな。そのときは不動も混ざらないか?お前からの話も興味はある」

「そんな話せるほど影山と関わってねぇよ。……でもまぁ、聞かせてくれるなら聞いてやるよ」

「フッ、素直じゃないな」

「いいじゃねぇか。それでこそアッキーだ」

「バカ言ってねぇでさっさと引き籠もりやがれ、アホペンギンが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 練習禁止生活3日目。その日オレはコトアールエリアに足を運んでいた。

 事前に雷門には訪問する旨を伝えてある。もちろん、久遠監督にも外出の許可は取ってあるし……

 

「響木監督も着いてきてもらってすみませんね」

「いや、俺が着いてきたかっただけだ」

 

 見張り役……ではないが響木監督と一緒である。コトアールエリア……大介さんに会いに行くと言ったら、一緒に行っていいか?と聞かれたのでついてきてもらっている。円堂にはまだ大介さんのことを教えていないけど……そう言えば、このことをいつ教えようか?ガルシルドの野郎が豚箱の中だから、いつ教えてもいいはずなんだけど……まぁ、流れに任せるか。

 

 コンコンコン

 

「十六夜綾人です」

 

 ノックを3回、するとドアが開いて……

 

「来たわね十六夜くん。響木監督、お久しぶりです」

「ああ、元気そうだな」

「えぇ、おかげさまで。ではこちらへ」

 

 そう言って案内してくれる雷門。中に通してもらい、2脚の椅子が用意されていたので座らせてもらう。既に対面には……

 

「はっはっはっ、その顔だと上手くぶつかったようだな、十六夜」

 

 赤キャップとサングラスを外した大介さんが座っていた。

 

「大介さん……!」

「こんなに大きく立派になって……互いに歳を取ったな、響木」

「夢じゃないんだな……」

 

 一度は死んだと思われた大切な人が相手だ。生きていることはオレや鬼瓦刑事など他の人から通して知っていた。だけど、こうして実際に会ったことで本当に生きていることが実感できる。

 雷門がティッシュを響木監督のもとに差し出し、それを受け取っている。

 

「では、自分の用件は手短に。……ありがとうございました。おかげさまで彼らと向き合う一歩を踏み出せました」

「なぁに、お礼なんていらん。実際に踏み出したのはお前さんだ。儂はその背を軽く押したに過ぎない」

「いえ、その一押しがなければ、オレは向き合う選択肢を選ぼうとしなかった。あなたの一押しがオレに踏み出す勇気をくれました」

「そうか……向き合って、ぶつかってどうだった?」

「そうですね……やはり対極だし、分かり合えないと思います。その結論はそこまで変わらなかったんですが……なんて言うか、前よりもマシな関係になれそうだと思いました」

「それでいいんだ。一回で分かり合える……なんて簡単な話ならお前さんたちは苦労していないはず。何度でもぶつかって、少しずつ分かればいい」

「はい。だから、もう対話することを恐れない……そうやって少しずつ積み重ねていきますよ」

「うむ。もう大丈夫そうだな!」

 

 前のことの報告は終わった。これで用件は半分伝え終わったことになる。

 

「後は宣言に来ました」

「宣言とな?」

「はい。オレは世界大会決勝戦……世界一を決める最後の試合の相手は最高に強い相手と戦いたいです」

「ハッハッハッ、まるでもう自分たちが次の試合に勝ったような言い方だな」

「勝ったような?……いえいえ、勝つんですよ。ブラジル代表は黒幕がいなくなり、最高の力を発揮してくれるでしょう。予選リーグとは比べものにもならない、本当の強さを見せてくれるでしょう。そんな最高な相手を、特に今大会最も完成された選手と言われるマック・ロニージョ……万全で最強な彼を真正面から叩き潰し、決勝戦の切符を手に入れる」

「……なるほど。いい目をしておる。前ほど危うさはないが、それでも丸くはなっていない……か」

「生憎、この牙は丸くなっていません。寧ろ、日に日に研ぎ澄まされていますよ」

「ハッハッハッ!もしかしたら、お前さんは守たちに染まってくれれば、相手からすると楽だったかもしれないな!それで?」

「最後に戦うのは、オルフェウスかリトルギガントか……正直分かりません。あなたのチームは全員が重りをつけた上、必殺技を縛っている……実力を殆ど見せずにリーグ戦を終えたので、判断がつけられないです」

「ほぅ……」

「もちろん、個人的にはオルフェウスにリベンジをしたい思いはありますが……正直、どちらが相手だとしても構いません。オレが戦いたいのは強い方です。だから、あなたたちがもし立ちはだかるなら……」

「……今の状態じゃ足りないと?……中々、生意気なことを言ってくれる小僧だな?」

「足りない?何を言っているんですか、足りるなんて考えはないですよ。少なくともオレはあなたたちが相手になってもオルフェウスが相手になっても、もちろんその前のブラジル代表相手も。どれも挑戦者(チャレンジャー)として戦います。でしたら、超えるべき相手の壁は高ければ高いほど、喰らう相手は強ければ強いほど燃える……違いますか?……それに嫌ですよね?世界大会決勝戦がクソつまらない白ける戦いになっては」

「ハッハッハッ!いやぁ、十六夜!お前は本当に面白い男だ!こんな面白い男は生まれて初めて会ったかもしれんな!」

「お気に召されたのなら光栄です」

「…………良いのか?世界大会決勝戦が儂らの蹂躙で終わる白けた戦いになってしまうぞ?」

「出来るものならどうぞ。生憎とオレは……いえ、イナズマジャパンは相手が強ければ強いほど燃えるので」

「そうか……それなら安心せい。決勝戦には万全な状態で挑む。リトルギガントの全身全霊を持って戦うと誓おう」

「ありがとうございます。その言葉を聞けて安心しました」

「さてと。これで負けられなくなったな?もしも、こんな大口をたたいてブラジル戦に負けて決勝戦に上がれないなんてことが起きようものなら、儂は十六夜綾人という男を口先だけが立派で世界の壁を甘く見ている無知で夢見がちなただの小僧と評価を改めざるを得なくなるぞ?」

「お好きにどうぞ。あなたがどんな評価を下そうと、オレはオレの野望の為に戦うだけですから。……それに、オルフェウスにあなた方が負けたらこの宣言は台無しになってしまうことをお忘れないよう」

「確かにオルフェウスは強い。それは認めておるよ。……だが、儂らの方が遙かに強いと証明して見せよう」

 

 大介さんが楽しそうな笑みを浮かべる。オレも今、口角が上がってしまっていることだろうな。最強のチームを作ってくれるって話で安心した。これで、最高に楽しめそうだ。

 

「……では自分はこれで、また何かあれば来ますね」

「うむ。いつでも遊びに来ると良い」

「では私も下がります」

 

 そう言って、雷門と共に下がる。ここから先は2人きりにさせてあげたいからな。

 

「今の宣言は十六夜くんの独断?」

「え?もちろんだけど?」

「はぁ……はっきり言って、今の状態ですらイナズマジャパンがリトルギガントに勝てる確率はたったの数パーセント……それを限りなく0にしたわよ?そのことは分かっているの?」

「どうだろ?勝率なんてものよく分からねぇからなぁ。……たださ、雷門。お前、忘れているだろ?」

「あら?何をかしら?」

「オレと円堂は考え方が対極だ。だけど、オレも円堂も相手が強ければ強いほど燃えるタイプだ」

「……なるほど。2人ともとんだサッカーバカだったわね。……でも、大介さんも相当よ?」

「知っている。……だから本気でやってみてぇんだろうが」

「とんだ戦闘狂ね……と言うか、あなたは次の試合でオルフェウスが負けると思っているの?」

「友達としては勝って欲しいし、個人的には決勝戦でリベンジしたい。でも、完全なオルフェウスとは二度と戦えない……完全じゃない相手にリベンジ成功してもつまらないからな」

 

 影山が居なくなり、ナカタも残っているか分からない。この先の彼らがどんなに強くなっても、少なくともこの大会中は影山もナカタもフィディオも揃っていたあのときのオルフェウスより弱体化されていることが分かってしまう。

 だから、彼らと戦いたい思いに嘘はないが、リトルギガントに勝てる可能性は低いと思う。

 

「なるほど……じゃあ、次の試合、オルフェウスが惨敗しても折れないことを祈っているわ」

「なぁに、問題ねぇよ。それに、ただただアイツらが惨敗するとは微塵も思っていない。舐めすぎると痛い目見るぞ」

「心配しなくても舐めないわ。最大限警戒した上での発言よ。それに私も本気でリトルギガントの選手たちを勝たせるから」

「そうか。……それなら、オレがマック・ロニージョをぶっ倒す。そして、チームも勝たせる」

「あくまであなたが倒す方が先に来るのね……言っておくけど、ロニージョは予選リーグで本来の力を全くと言って良いほど出せていない。それなのに、今大会でトップクラスの実力者としての地位を確立している。……個人選手ランキング第3位さんじゃ、1位には勝てないわよ?」

「…………え?何その選手ランキング?」

「あら、知らないの?……ガルシルドの失脚で決勝トーナメントが延期した中、運営側はこの大会の熱を絶やさないように色々とイベントを進めている。その一環で観客たちやプロの選手たちにアンケートを取っているらしくてね。その中にある個人選手ランキング……現段階の評価は1位がロニージョ、2位にフィディオ、そして、3位に十六夜くんが居るわ」

「へぇ……ナカタは?」

「彼の場合は圧倒的に出場数が足りていないからそのランキングでは除外とのことよ。もちろん、彼が強いことはあなたたちの試合を見た誰もが分かることだけど、たった1試合の後半だけじゃ正しく評価出来ないとのことよ」

「なるほど。じゃあ、オレは世間からすると4位なわけね」

 

 ナカタとロニージョのどちらが強いかは分からないが、2人とも今のオレとフィディオより上に居ることは確か。世間も選択肢に居なかっただけで、選択肢にいれば、オレたちより上に入るのは確かなことだろう。

 

「世間が認めているのに嬉しそうじゃないわね。個人ランキング世界4位って十分凄いと思うのだけど?」

「お前らのチームは誰も本気出していないし、他の奴らだってそれが正しい評価か疑わしいところもある。正直、オレが強いと思われていようが雑魚だと思われていようが、周りの評価なんざ興味ねぇ。オレはオレの思う強いヤツ、戦いたいヤツと戦って勝つだけだ」

「じゃあ、その宣言が虚言にならないことを祈るわ」

「ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま戻りましたー」

 

 あれから夜になった。響木監督と大介さんの話は予想通りと言うべきか終わらなかった。流石に向こうに泊まることは避け、落ち着いた頃にまた改めて話そうという結論に達したよう。数十年単位で積もった話は一日で終わらないのは予想できたことで……これは円堂を連れて行ったらまた長くなるだろうな。孫と祖父の話がすぐに終わるほど彼らは冷めた関係じゃないし。

 オレは響木監督を待つ間は雷門と話をしたり、コトアールの街並みを見たり、ちょっと病院に行ったりと自由に過ごしていた。もっとも、サッカーを禁止されているせいで暇な時間が多かったが、だからといってあの人たちの話に水を差すのは忍びないし……

 

「響木さん、お帰りなさい。十六夜も戻ったか」

「すまんな、話し込んでいたらすっかり遅くなってしまった」

「いえ、積もる話もあったでしょう。心配なさらず」

「では、これにて失礼します」

 

 そう言って監督たちの部屋から立ち去っていく。少し前にオレが見た響木監督が倒れた映像……アレがもしも何かを暗示しているのなら、響木監督を1人で帰すわけには行かない。何というか……影山のときの映像が、その後影山が消されることを示していたのなら、響木監督の映像だって無視するわけには行かない。

 

「もっとも、それならガルシルドが脱獄するって言う話もあるわけだが……」

 

 そっちはもうオレの手には負えないからな。脱獄できないことを祈るほかあるまい。

 

「ん?八神か?」

「十六夜か。お帰り」

「ただいま。遅くなった」

「気にするな。響木監督と用事を済ませに行ったのだろう」

 

 他の皆には響木監督と出かけることは伝えてあった。流石に何処に何をしに行くことまでは久遠監督しか知らないが……そのおかげか、特に何していたか深くは聞かれない。やはり、信用がある人間との行動ってそう深掘りされないんだな……

 

「ちょうど良い。今、時間あるか?」

「あるけど、どうした?」

「この前の続きだ。そう言えば、1つ聞き忘れていたことがあった」

「そう。じゃあ、部屋入るか」

 

 そう言って八神を自室に招く。そして、椅子に彼女を座らせるとベッドに腰掛ける。

 

「続き……となると、記憶関連か?」

「そうなるな。もちろん、答えたくないならそれでいいんだ」

「ありがとう。答えられる範囲で答えるよ」

「そうしてくれ。……それで聞きたいのはお前の才能についてだ。ライオコット島に来る前、お前は自分の本当の才能が何なのかって話をしていただろ?」

「あーあったな」

 

 確かファイアードラゴン戦のケガでサッカーが出来ないとき、八神には話していたな。なるほど、彼女の中では点と点が繋がったわけか。

 

「そうだな。そのことなら思い出したよ」

「そうなのか。結局、お前の本当の才能って何だったんだ?」

「奪う才能……それが本当の才能だった」

「奪う……?」

「あー……噛み砕いて説明するなら、他人の技術や思考を自分のものにするスピードが早いって感じだな。相手の技術を盗むのが上手って感じ?」

「つまり、相手の真似が上手いってことか?」

「その認識で大丈夫だと思う」

 

 八神が自分の中に落とし込もうとうんうん、と何度かうなずきながら考えている。本当にざっくりとしか言っていないが……

 

「それなら納得出来る部分があった」

「え?」

 

 何やら納得出来る部分があったらしい。オレにはよく分からないが……

 

「だって、お前がよくやっていることだろう?」

「え?具体的には?」

 

 よくやっている?余りにも身に覚えがなさすぎて、思わず聞き返してしまう。

 

「そうだな……例えば、3人での連携技をかっ攫うことをよくやっているだろ?最近だとユニコーン戦だな」

「あーグランフェンリルね」

「そうそう。記憶が戻る前ならあの武方三兄弟のトライアングルZでも似たようなことをやっていただろ?」

「そんなこともあったなぁ……懐かしいな。で、それがどうした?」

「普通は無理なんだよ」

「は?」

 

 何を言っているのだろうか?え?普通じゃないのか?

 

「いや、無理に決まっているだろ?3人での連携技というのは呼吸を合わせ、タイミングを調整し、他のヤツの動きを理解して合わせないと発動できないものが多い。そして、そういう難易度が高い技は強力だが、失敗すれば発動すら出来ないか発動できても威力やコントロールなどが数段落ち、必殺技として意味をなさない」

「それはまぁ……」

「それなのにお前は相手の3人での連携技に割り込み、それでいて威力もオリジナルと遜色ないときた。そんなこと普通は出来ないからな?」

「な、なるほど……」

 

 言われてみれば多少は納得できた。(いにしえ)の記憶を辿るなら、イナズマブレイクも合宿のときのその場のノリで出来たっけ?なるほど……もちろん、練習すれば精度や威力は上がるが、ぶっつけ本番での即興(アドリブ)でも最低限は担保されているのか。そして、それは普通じゃないと……

 

「後はお前の必殺技の習熟スピードを考えると今の話は納得できた」

「と言うと?」

「0から作る……オーバーサイクロンPの完成には凄い時間がかかっただろ?」

「そうだな。かなり苦戦した記憶がある」

「その前もムーンフォースのときもそこそこ時間がかかっていた。だが、ベースがある技や何か周りから見たもので着想を得た技の習得は尋常じゃなく早い」

「……そうかな?」

「そうだろ。聞けば皇帝ペンギンXは試合中に盗んだんだろ?他にも皇帝ペンギンOは相手の技を見てそこから自分の形を作った。奪う才能……自分のものにするスピードが早いか。オリジナルを作るのは常人と同じく時間を要するが、ベースさえあれば一瞬で生み出せる……」

 

 八神さんが凄く興味深そうに思考を広げている。どうやら、この世界に来ても無意識のうちからオレは才能を使っていたらしい。正確にはこの世界ならではの使い方で、だろうか。

 

「つまり、お前は自分に再現できる技なら、世界中の選手たちが使うありとあらゆる必殺技を扱えるのだろう?」

「理論上はそうなるな」

「それどころか、既存の必殺技同士を組み合わせて新たな必殺技も作れる」

「構造をばらして組み合わせる……まぁ、出来るだろうな」

「サラッと言ったが、それって破格の才能だろ。しかも、禁断の技と言う代償がある必殺技すら、その代償を軽減出来るものもあるんだろ?……必殺技だけに注力しても世界最強になれる可能性を秘めている。まるで、生きる必殺技全書……だが、当の本人はフローという集中状態に入るためには必殺技を捨てないと行けない」

「そうだな」

「それにお前はあまり必殺技を使わない傾向にある」

「あれ?気付かれていた?」

「……流石に気付くだろ。何試合お前の試合を観てきたと思っている?」

 

 何試合……この世界にやってきて出場した試合ほとんど全てですかね?もちろん、そこまでの自覚はないと思うが。

 

「お前は使える必殺技という手札が多いのに、普通の状態ですら切ることは少ない。特にシュート以外でお前が自分から必殺技を使うってことはほとんど無いと言って良い。ディフェンダーなのに、相手と相対するときにブロック技を使わないことが良い例だ」

「そうだな。ブロック技はシュートブロックで使うことが多いな。相手の必殺シュートに対抗するためって言うのが多い」

 

 それ以外で考えても、相手の必殺技や必殺タクティクスを崩すため……能動的ではなく受動的に使うことが圧倒的に多い。能動的に使うことがこの世界の選手基準では圧倒的に少ないのだろう。

 

「惜しいな……本当だったら、お前にはあらゆる必殺技を習得させたい。そうすれば夢が広がるだろ?」

「へぇ。でも、それをしないのは何で?」

「お前が望んでいなさそうだから」

「よくお分かりで」

「分かるだろ。お前は必殺技の習得のための時間がイナズマジャパンのメンバーの中で群を抜いて少ない。そして、必殺技を能動的に使うこともほとんどない。つまり、お前は必殺技というものを、自分から率先して身につける気があまりない」

「確かにな。自分の中で優先度が高くないのは事実だ」

 

 最近はAの無茶ぶりでスカイウォークを身につけたが、過去を思い返してもその場のノリと勢いで出来た技って言うのはいくつもある。努力して身につけようとして出来た技がそんなに多くない。そして、これからも自分から努力して身につける技は多くはないと確信できる。その特訓の時間を別のことに割くだろうから。

 

「そうだろ?それに、必殺技に注力していない今のお前がイナズマジャパンの中では最強で、世界基準でもトップクラスなんだ。そんな選手に、こうした方がいいと意見できる程私は強くない。その道を選ばないお前に勝てていない現状で、そんなことを言っても説得力が無い」

「なるほど……」

「でもまぁ、お前の才能が分かったお陰で今まで引っかかっていた疑問も解消できた。教えてくれてありがとう」

「どういたしまして。あぁ、そうだ八神」

「なんだ?」

「オレは確かに必殺技の習得というモチベは高くない。だけど、ゼロってわけじゃないんだ。……だからまぁ、困ったらこれからもアドバイスを頼むよ」

 

 ただし、特訓の時間をゼロにはしないだろう。この世界で生きていくには必殺技という存在は切っても切り離せないことが嫌というほど理解出来た。今後を見据えるのなら手札は多ければそれに超したことはない。手札を切らないのと手札になくて切れないのは雲泥の差がある。

 

「それはお互い様だろ。私だってお前に色々と聞くことがあるんだ」

「そうだな」

 

 コンコンコン

 

 と、このタイミングでドアがノックされる。

 

「どうぞー」

 

 ガチャ……と開けて入ってきたのは、

 

「お邪魔だったかな?」

「ヒロトか。気にするな、こっちの話はキリがついたところだ」

「邪魔そうなら私は席を外すが?」

「いいや、八神が居るならちょうど良いよ。2人相手だからこそ出来る話がある」

 

 ヒロトだった。

 

「俺は強くなりたい。今の俺のレベルじゃ、イナズマジャパンが世界一になるのには足りていない」

「そうだな」

「でも、正直どうすればいいか分からないことが多い。情けない話、このイナズマジャパンで今の自分には何が出来るのか、世界一になるためには自分は何をするべきか分からないんだ」

「……そうか」

「ああ、ゴメンね。そのことに関する答えを2人に求めているわけじゃないんだ。何というか……そうだね、十六夜くんを見ているとどうしても、今の自分は本当にこのチームに必要なのか、自分には何が出来るのか不安になってくる」

 

 ヒロトには迷いが見えた。何となく言わんとすることは分かるし、このチームの選手で何人かが思っていそうなことだ。ただまぁ……比べられている対象から何かを伝えられても今の彼には心の底から響くことはないだろう。

 

「それで、君は忘れていた過去と向き合っている。ああ、ゴメンね。記憶喪失になるくらいだったんだ。その中には辛いことや、触れて欲しくない部分もあるのに……」

「いいよ、気にしないでくれ」

「……俺も過去の自分と向き合ってみようと思うんだ。もしかしたら、それが何かのきっかけになればいいかもって思って。……だから、協力して欲しいことがある」

 

 そう言って彼はその内容を語り始めた。




 リトルギガントに強化フラグが立ちました。……何しているんでしょうね、この戦闘狂の主人公さんは。と言うか、主人公とAの2人のせいでこの後の試合が全部カオスになる予感がしますね。味方の強化追いつくかな……?それとも次の試合に負けて、打ち切りエンドみたいな感じになるのか……?一体、どうなってしまうんでしょうかね?

 次回、天使と悪魔に喧嘩を売った日……その日、魔王の本当の恐ろしさを知ることになる。

 ちなみに下には久し振りにアンケートを設置してみました。このアンケートで展開を決めることはないので気軽に予想してみてください。

遂に天使と悪魔襲来。捕まるのは……

  • 特に変わらず原作の2人だけ
  • 我らがメインヒロイン、八神玲名
  • 我らが主人公、十六夜綾人
  • 我らがマスコット、ペラー
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