超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

230 / 254
VSダークエンジェル ~危急存亡の秋~

 イナズマジャパンのキックオフで試合再開。ボールは豪炎寺からディランに渡る。

 

「何か企んでいるようだが通用しない!」

「人間どもは俺たちに蹂躙されていればいいんだよ!」

『ヘルアンドヘブン!』

 

 5度目の必殺タクティクスの発動。その必殺タクティクスを前に、十六夜がイビルズタイムを使った様子がない。このままでは、また全員が動きを封じられてその間にやられて……

 

「…………あれ?」

 

 しまう……そう思っていたが、一向にこちらの選手たちが止まる様子も、向こうの選手が速くなる様子もない。一体何が……?

 

「作戦成功だな」

「な、何だアレは!?」

 

 周りを確認するとそれはすぐに分かった。それに気付くと同時に感心してしまう。確かに、あんな無茶苦茶なことは十六夜にしか出来ない対処法だな……

 

「あの必殺タクティクスの肝は最初の雷と光にある」

 

 ようやく対等に戦えるフィールドが整ったことで、鬼道が指示を出してボールを運ぶ中、不動が種明かしを始める。

 

「ヘルアンドヘブンはセイントフラッシュとブラックサンダーの掛け合わせ。攻略するにはそれぞれを攻略すれば良い。ブラックサンダーの効果は最初に降り注ぐ黒い雷……アレが落ちた範囲に居る奴らの時を止めるというもの」

「それは……そうですね」

「ベンチの俺たちの時は止まっていないしな」

「ああ。そして、その効果は最初に付与するだけに過ぎない」

「「「……?」」」

 

 多くのベンチに居るメンバーの頭に疑問符が浮かぶ。最初に付与するだけ?それが一体どうしたと言うのだろうか?

 

「さっきの一連のプレー。十六夜がボールを奪った瞬間、イビルズタイムの効果が切れる。だが、効果が切れてもあのフィールドで普通に動けていた」

 

 さっきの時間稼ぎの間、十六夜のイビルズタイムの効果は何度も切れていた。そして、その度に何度も使っていたが……

 

「なるほど。最初に付与するとはそういうことなのね」

「えっと……どういうこと?」

「あの必殺タクティクスは、範囲内に居る選手の時を止め続ける必殺タクティクスじゃないってことよ。あくまで最初の雷が落ちたときに、近くに居た選手の時を止めることが出来るもの」

 

 違いが分かるようで分からない。最初に付与する……つまり、最初のその効果さえ無効化してしまえばいいってことか。

 

「とりあえず、最初の雷が重要で、それさえ何とかしてしまえばいい……そういうことであってるか?」

「ああ。十六夜は最初に発動したイビルズタイムで、ブラックサンダーの効果を打ち消した。だから、その後はイビルズタイムの効果が切れても、ブラックサンダーの効果を受けずに動ける」

「ということは、最初の雷さえ無効化出来れば、ブラックサンダーの効果は無意味になる。それを可能にしたのが()()よ」

 

 そう言って天井を指さす雷門。そこには、十六夜のペンギンたちが、まるで雲のようにところせましとフィールド全てを覆うように並んでいた。

 

「フィールドの選手たちを覆う巨大な傘。空中のペンギンたちが全ての雷を受けるから、あのペンギンたちの時しか止まらない」

 

 ベンチにまで影響が及ばないから、範囲はそんなに広くないと思っていたが、ドンピシャだ……そう続けたがなるほど理解した。つまり、時を止められた状態でどうのこうのするのではなく、そもそも時を止めさせなければ良いって事か。

 

「十六夜くんがあのペンギンを展開し続ける限り、もうブラックサンダーは使えない」

「そういうことだ。クソみたいなチート効果を持つ必殺タクティクスだとしても、発動させないようにすればいい。そして、今回の策は検証も兼ねていたが……アタリのようだな」

 

 そう言って今度は相手のゴールの後ろ側を指す。そこでは、ペンギンたちが壁を作っていたのだ。

 

「もう1つの必殺タクティクス、セイントフラッシュの効果は光を受けたアイツらの動きを速くするというもの。つまり、光が届かなければ奴らは速くならない」

 

 そう言われて先の戦いを思い返す。確かに十六夜は実験の過程で様々なことを確かめたが、こうやって光を届かせないことは検証していなかったな。ここは洞窟みたいな地下だから高さにも横幅にも限りがある。外に比べればペンギンを敷き詰めるだけでいい。この空間だからこそ出来た力業みたいな対策方法だな。

 

「な、なるほど……ヘルアンドヘブンを完全に無効化したわけですね!」

「えぇ。十六夜くんがペンギンを展開し続ける限り、彼らはもうヘルアンドヘブンもその基になっているそれぞれの必殺タクティクスも使えない」

「じゃあ、やっと対等に戦えるんですね!」

「よっしゃ!これなら勝ったも同然だろ!」

「真爆熱スクリュー!」

 

 そんなベンチの声に応えるように豪炎寺の進化した必殺技が放たれる。

 

「ジ・エンドV2!」

 

 そのシュートに対し、手を差し出すキーパー。すると、ボールは空中で止まり徐々に押しつぶされていき……

 

「フン、この程度か」

 

 あっさりと止めてしまった。

 

「ヘルアンドヘブンが使えないからって調子に乗るな人間!このゴールは人間如きに破らせんぞ!」

 

 そう言ってボールを前線へと投げるキーパー。

 

「……相手の必殺技も進化してやがるな」

 

 今の流れを見て不動がそう呟く。

 

「魔王になったことで強化されているってことですね……!」

「ああ。だが何処まで強化されているかは、十六夜が一番理解しているはずだ」

 

 誰にも分からないところで、既に何回も戦っている十六夜だから分かることということか。

 

「アヤト!アイツらは前と何が変わった!」

 

 それを聞き出そうとテレスが声をかける。

 

「フィジカル面だ……ヤツらの身体能力は、格段に上がっている……」

 

 相変わらず息が上がり、汗を滝のように流し、立っているだけでやっとな死にかけの十六夜がそう答える。そんな彼の言葉を受け改めて見ると、確かに天空の使徒の面々の通常時のスピードが上がっていた。

 

「後は必殺技だろうな。あのキーパーの様子を見る限りは」

 

 そして、鬼道が言うように必殺技も進化してると見ていいだろう。

 

「テクニック面や頭脳なんかは変わってねぇ……ただ、性格が前より攻撃的になっているから注意しろ……」

「なるほどな……つまり」

 

 テレスが何かを察したようで動き出す。

 

「ハッ!ぶちのめしてやるよ、人間が!」

 

 ボールはデスタが持ってドリブルをしている。そこにブロックに向かったのはテレスで……

 

「なっ……!」

 

 あっさりボールを奪ってみせた。

 

「駆け引きの上手さは変わってねぇ。寧ろ分かりやすくなっているな」

 

 そう言ってボールを前線へと渡す。

 

「キドウ!指示を!」

「ああ!十六夜は休んでいろ!」

「悪い……任せる」

「皆、攻めるぞ!」

「「「おう!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 前半も時間的にはそろそろ終わりを迎えるだろうか。あれから、ヘルアンドヘブンが使われることはなく、一進一退の攻防が繰り広げられる中……

 

「マズいな……」

 

 その状況のマズさを口に出したのは監督だった。

 

「ああ、かなりマズい状況だな」

「そうですね……」

 

 続いて不動と雷門もそのマズさに気付いた様子を見せる。

 

「え?互角の展開だから良いんじゃないの?」

「点は取れていないけど、まともに戦えているし……」

 

 だが、多くの者が状況に彼らの言うマズい理由に気付けていない。

 

「雷門。データはどうなっている?」

「時間が経つにつれ、被シュート数が増えています。テレスくんが中心となって、必殺技によるシュートは撃たせないようにしていますが……通常のシュートが増え始めています」

「攻撃面は?」

「はい。こちらはシュートまで持ち込める展開が少なくなっています」

 

 点数だけ見ればあのまま動いていない……が、展開だけ見ると徐々に追い込まれている。こちらも最初こそ豪炎寺がシュートを撃てていたが、ここ何分は1本もシュートを撃てていない。ディフェンスも最初はまだ張り合えていたのに、今では突破されてしまう展開が多くなった。

 

「原因は間違いなく体力面だろうな。デザートライオン戦と同じ状況になりつつある」

「デザートライオン戦……」

 

 確か、あのチームと対峙したときは相手のフィジカル重視のプレーにこちらも対抗したために必要以上に体力をどんどん削られて……

 

「……っ!そういうことか……!」

 

 ここでようやく気付く。ダークエンジェルは接触プレーが多い。しかも、デザートライオンと違って、ワザとボールをぶつけることもあるし、ラフプレーだって平然としてくる。その上……

 

「お互い連戦……なんだが、向こうは魔王の力のせいか全く体力が落ちていねぇ。それどころかヤツら4点も差がついていて余裕があるからか、遊んでいる節さえある」

「対してこちらの運動量が徐々に落ちている。特にイナズマジャパン側の4人がやべぇな」

 

 4人……豪炎寺、吹雪、鬼道、ヒロトの4人だな。十六夜のヤツはヘルアンドヘブン対策後は最小限しか動いていない。そして、海外勢も彼らと比較するとという話で決して体力が多く残っているわけではない。全員の体力が試合終盤……いや、それ未満だ。

 

「ハハハッ!そろそろバテてきたようだな!人間どもが!」

 

 その様子を見て魔王たちが嗤う。この状況を楽しんでいる、彼らでもて遊んでいる……それは誰が見ても明らかだった。やろうと思えばすぐに倒せる……それなのにそうしない。

 

「タダでさえ連戦で体力が回復しきってねぇし、そもそも最初の時点で試合をするための体力調整すら出来ていねぇ。そんな状況なのに、ここに来て集中力の低下、パフォーマンスは最悪で、絶対に負けられないプレッシャー……そこに大問題の交代禁止ルール。これのせいで、体力がある程度回復してきたこちらのメンバーを送り込めねぇ」

「クッ……汚ぇぞ!万全な状況ならこいつらが負けるわけねぇ!」

「そうですよ!豪炎寺さんがあんなヤツに負けるわけないですよ!」

「そうだそうだ!俺たちと交代させろ!」

「ゴチャゴチャうるせぇぞ人間!」

「儀式の邪魔をするんじゃねぇ!」

 

 ベンチから抗議の声があがるが、まるで聞き入れようとする様子がない。

 

「皆……!」

 

 円堂がシュートを止める。……しかし、ほとんどの選手が相手ゴールへと走れていない。足が止まっている選手も居る状況……

 

「あがれ……!」

 

 ボロボロの鬼道が息を乱しながら点を取るために指示を出そうとする。今でこそ私たちは傍観者にならざるを得ないが、彼らはこれで2試合目……自分たちの敗北が文字通り死に直結するような緊迫した戦いの連続。しかも、点差は4点で一刻も早く1点が欲しいような状況。想像を超える重圧と相手による痛めつけによって、精神も肉体も悲鳴を上げている。

 

「…………なるほど。賭けですね」

「どうする?止めるか?」

「……いえ、ここまで来てしまったら乗るしかないでしょう」

「監督?」

「そうだな」

「そうですね」

 

 賭け……監督の言う意味が分からない。不動と雷門は何かを察したようだが、賭けとは一体……?

 

「ハハハッ!無様だな!魔王の力を得た我らを前に手も足も出ないか!」

「おうおう頑張っているなぁ!もしかしたら点を取れるかもしれないなぁ?」

「「「アハハハハハッ!」」」

 

 イナズマジャパンのメンバーが重い足を動かし、一歩ずつ前へと進もうとする。その様子を見て魔王たちが嗤う。相手選手は誰もその歩みを止めようとしない。まるで、どうやっても自分たちが失点しないと高をくくっているようで……

 

「はい、残念でしたぁ!」

「今回もダメだったなぁ?」

『ステイ・ワールド!』

「ぐっ……!」

「豪炎寺!」

 

 ゴール前に居る豪炎寺にパスが通ったものの、相手DF2人による必殺技が発動する。空からは黒い光、地面からは白い光に挟まれ押しつぶされる。そのまま苦しんでいるのをニヤつきながら魔王はボールを奪っていく。

 

「ほらほら、ボールが欲しいんだろ?それならくれてやるよ!」

「うっ……!」

「ヒロトさん!」

 

 相手選手からの強烈なシュート性のパスがヒロトに当たって吹き飛ばす。

 

「おいおいパスしてやったんだから取ってくれよ?」

「何をふざけたことを……!」

 

 そのまま相手選手はボールを空中に向かって蹴ると、悪魔のような翼をはやして飛び上がる。飛びあがった後、生えていた翼を相手選手に向けて振って、羽を相手選手にめがけて飛ばし鬼道の周りに落とす。

 

「サタン・ボンバー!」

 

 羽を飛ばした後、空中にあるボールに黒いエネルギーをチャージし、それが溜まると鬼道の足元目がけシュートする。ボールが地面にぶつかると同時に、溜められていたエネルギーが拡散。そのせいか落ちていた羽が全部爆発して……

 

「うぐっ……!」

「お兄ちゃん!」

 

 その爆発は鬼道を巻き込み、彼を吹き飛ばす。

 

「遅い遅い。もう走れないだろ?だったら寝てなよ!」

「あっ……!」

「吹雪!」

 

 ボールを奪いにいこうとした吹雪よりも早くボールに到達すると、そのボールを吹雪に当てる。そのまま吹き飛ぶ吹雪。

 

「お前たち!狙うならゴールにしろ!サッカーは相手にボールをぶつけるスポーツじゃないぞ!」

 

 円堂が声をあげる。ボールを使った虐殺……サッカーではないそれに我慢の限界を迎えている。

 

「ハッ!じゃあ、そろそろお前も潰してやるよ!」

「我々のやることに逆らうとは愚かだな」

「来い!何度来ても、ゴールはやらないぞ!」

 

 構える円堂に対し、ボールを持ったセインとデスタ。

 

『シャドウ・レイV2!』

 

 デスタがボールに魔界の力を込め黒く染め上げる。そしてそのボールを渡すと、セインがオーバーヘッドキックを放つ。魔界の力に天界の力が加わったそれは、金と黒のオーラが混ざり合いながらゴールへと向かう。

 

「真イジゲン・ザ・ハンド!」

 

 円堂の必殺技が放たれる。生み出された半球とその光が真正面からぶつかる。

 

「潰してやると言っただろ?」

「地獄に堕ちろ、人間」

 

 するとデスタとセインが如何にも邪悪な感じで裏のある笑みを見せる。一体何を……

 

「……っ!円堂避けろ!」

 

 何かに気付いた十六夜が、切羽詰まった声をあげる。円堂がその言葉に反応するよりも早く、光は半球を貫通し……

 

「うぐっ……!?」

 

 地面に突き立てていた右腕に激突。円堂を吹き飛ばしてからボールはゴールに刺さった。

 

 ピ、ピー!

 

 得点板は4から5へと変わる。鳴り響くのは前半が終了したことを告げる笛の音。その笛の音が聞こえた瞬間、ベンチに居る選手たちは急いでフィールドに駆け寄る。そんな中、十六夜は腕を押さえて倒れ込む円堂の下にいた。

 

「おい、テメェら……狙っただろ」

「狙っただぁ?さてさて、何のことだろうなぁ?」

「フン、たまたまコース上にその人間の腕があっただけだろう?」

「…………そうかよ」

「ハハハッ!いいぜその顔?もっと怒りを見せろ!」

「だが、もう何もできないだろ?その無力感を抱えて死に行け!」

「…………」

「恐怖し絶望しろ人間!そして我らの糧になるのだ!」

「後半も蹂躙してやるから楽しみにしておけよ!」

「「ハハハハハハハハッ!」」

 

 笑うデスタとセイン。だが、選手たちはボロボロで特に4人は倒れたまま動けない。

 前半が終了し0-5……点差以上に絶望的な状況下で、私たちに勝機は残されているのか?




オリジナル必殺技紹介

ステイ・ワールド
2人連係ブロック技
使用者:ゴー・トゥー・ヘブン使用者、ゴー・トゥー・ヘル使用者
ゴー・トゥー・ヘブンとゴー・トゥー・ヘルの同時発動により、上下からの圧力で相手を押し潰す技
天国へ昇ることも、地獄へ落ちることも許さず、現世で永く苦痛を与えるといったイメージの技です

Ganzin様より頂きました。ありがとうございます


サタン・ボンバー

ドリブル技 属性.火

進化タイプ.V

モーション
ボールを空中にけり
その後悪魔のような翼をはやし
空中に飛ぶ
飛んだ後悪魔の翼?を相手選手に向けて振り
羽を相手選手にめがけて飛ばし
羽を相手選手の周りに落とす?
飛ばした後空中にあるボールに
暗黒のエネルギー?をチャージし
チャージし終えた
後相手選手の足元辺りにシュートする
ボールが地面にぶつかったら
暗黒のエネルギー?が拡散し
その影響で
悪魔の羽?が全部爆発し
相手選手を吹っ飛ばす

やまちゃん様より頂きました。ありがとうございます。


 次回、死中求活
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。