超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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VSダークエンジェル ~三つ巴~

 ダークエンジェルのキックオフで試合再開。すると、ボール保持者にすぐさまディランとマークが2人がかりでプレスを仕掛けた。

 

「これは……!」

 

 パスを出した……が、パスを受け取った相手に対し、今度はエドガーとフィディオがプレスを仕掛ける。パスを回すと今度はディランとマーク……

 

「こ、これは……!?」

「まさか、ハイプレス!?」

「いや、ただのハイプレスじゃない。ボール保持者に2人の人間がプレスを仕掛けている……」

「なんて戦術だ……でも、ただでさえ人数差があるのにそんなことしたら、体力を消耗するだけじゃ……」

「いや、これでいい。覆しようのない人数差があるからな。相手側にプレッシャーを与えるには、これぐらい思い切った方がいいだろ」

 

 4人がどんどんボールを持った選手にプレスを仕掛ける……抜かれたら終わりの戦術。人数差を感じさせないためとはいえキーパーが不在の中、こんな大胆なこと。

 そんな戦術に感心している中、ボールはデスタに渡った。

 

「アヤト!」「テレス!」

「「俺/オレに合わせろ!……ああっ!?」」

 

 プレスを仕掛けるのは十六夜とテレスのコンビ。

 

「っ!何だコイツら……!」

 

 その2人のブロックを前にしたデスタは、思うようにボールキープが出来ない。

 

「凄い……キープするだけで精一杯みたい……なんてディフェンスだ……」

「そりゃそうだろう。何たって、アルゼンチンと日本が誇る、世界でも最強格のディフェンダー2人組のプレスだ」

「そうね。あの2人に仕掛けられたら、突破は愚か、キープすらかなり難しいはずよ」

「しかも、パスコースも完全に防いでいやがる。完全に孤立しているな」

 

 口では今にも喧嘩を始めかねない感じだったが連携は完璧。その完璧な連携に追い詰められるデスタ。そして……

 

「ふざけるな!テメェら如き……」

「がら空きだ!」

「なっ!」

「カウンタ-!」

 

 デスタが強引に突破しようとしたところで、十六夜がショルダータックルを仕掛け、ボールとデスタの間が空いた瞬間にテレスが割り込んでボールを奪う。……何だあの2人は……たった2人でそこらの必殺技、必殺タクティクスよりも厄介だぞ?しかも、互いの動きが分かっているようなプレーで……

 

「お前は撃たせない!」

「ここで止める!」

 

 ボールはエドガーに渡った。先ほどのシュートから警戒されているのだろう。2人の選手がブロックに来るが……

 

「悪いが、このメンバーでシュートが撃てるのは私だけではないんでね」

 

 と、フィディオへとパスを出す。……よく考えると今出ている選手ってテレス以外全員シュートを撃てるような……

 

「そうだろう?」

「もちろんだ!オーディンソード改!」

 

 そんなことを思っていると、エドガーからのパスをダイレクトでシュートを放つフィディオ。そのシュートコースには……

 

「任せたよ!マーク!ディラン!」

「ああ、受け取ったぞ!」

「ミーたちに任せなよ!」

 

 マークとディランの2人が走っていた。迫り来る剣……2人はシュートに対し……

 

『ユニコーンブースト改!』

 

 シュートチェインをした。ゴールへと伸びていく剣を追いかけるようにしてユニコーンが走って行く。

 

「ジ・エンドV2!」

 

 相手の必殺技により、剣が潰され、シュートが止められようとする……だが、

 

「……何だと!?」

 

 後ろから迫っていたユニコーンが強引にボールを押し出し、ゴールへと押し込んだ。

 

「ミーたちのシュートがギンギンに決まったね!」

「ああ、フィディオもありがとう。お陰で決められたよ」

「そうそう!アメリカとイタリアの連携だね!」

「いいや、それだけじゃない。エドガー、アヤト、テレス……3人のお陰でもあるよ」

「君たち3人の連携があってこその得点だろう」

「まぁ、決めたのはお前らの力だろ?」

「それより後3点差だ。さっさと追いつくぞ」

「「「おう!」」」

 

 後半が始まってまだ数分も経っていない。それなのに、気付けば5点差が3点差に縮まっていた。

 

「ハッ……エグい流れだな」

「そうなのか?確かにすげぇとは思ったが……」

「最初の2人組のハイプレスは相手にプレッシャーを与えるため……そう思っていたが、それだけじゃない。プレスに行った2人がパスコースを限定していたんだ」

「えっと……じゃあ、デスタに渡ったのは狙い通りだったってことか?」

「そうなる。そして、デスタから奪ってのカウンター……アレも十六夜たちが奪う瞬間には動き出していた」

「それの何処がエグいんだ?」

「気付かねぇのか?そんなこと誰も指示してねぇんだよ。お互いのプレーをただ見るだけじゃない。他の1人1人のプレーの理由を瞬時に理解し、そこから自分のやらなければならないことを把握し、各々の仕事を果たす……それを全員が完璧にこなしている」

「不動の説明を聞いてもピンと来ないかもしれないが、全員が高いレベルで戦術を理解し、あそこまで淀みないプレーの連続をするのは、少なくとも今のイナズマジャパンには不可能だ。優秀な司令塔たちの指示なしなら尚更な」

 

 久遠監督がそう断言する。確かにイナズマジャパンは鬼道や不動という強力で絶対的な司令塔が指揮し、他の選手がそれに従って連動することが多い。例外が居るが基本的に彼らの指示に従う人間ばかり。もちろん、指示に逆らえってわけではないが、それでも強力な司令塔の指示なく、全員が互いのプレーの意図を把握、理解して最善の行動をする……そんな今の6人のようなプレーはイナズマジャパンは出来ていない。

 

「彼らのプレーを見て学べることは多い。お前たちの同年代の世界トップクラスと呼ばれるプレイヤーたちがどんなサッカーをするのか……こんな状況だが、よく見ておけ」

 

 ダークエンジェルのキックオフで試合再開。ボールを持ったのはデスタ。

 

「クソがクソがクソがぁ!!どうなってやがる!たった6人しかいねぇのに!」

「オーオーご乱心だねぇ」

「仕方ないだろう。前半とは一転して一気に思うように行かなくなったんだから」

「ハッ!テメェらなんざぶっ潰してやるよ!」

 

 そう言ってデスタはタックルで強引にこじ開けようとする。そこをディランとマークは左右に分かれて避けた。

 

「ハッ!腰抜けが!そんなに俺が怖いのか!」

「前方不注意だ、魔王よ」

「なっ……!?」

 

 そこに現れたのはエドガー。デスタが油断した隙を突いてボールを奪うことに成功する。

 

「目の前の相手しか見えていない……視野が狭いようだな。お前たちのフィジカルが脅威であることは認めよう。だが、真正面からぶつからなければ容易く奪える」

「ナイスだよ!エドガー!」

「ああ。プラン通りだ」

「チッ……!」

 

 ボールはエドガーからフィディオに渡る。

 

「さて、ベンチでは勉強会が始まったようだけどどうする?」

「だったら、オレたちだけで攻めようか。勉強会ついでに見せてやろう」

「分かった。じゃあ、俺たちの連携を見せる感じで行こうか」

「ということでお前らは休んでいて問題ねぇよ。人数かけ過ぎたら相手が可哀想だ」

「じゃ!お言葉に甘えるねぇ!」

「カウンター警戒で下がっておくよ」

「失敗しても私たちがフォローするのでご自由に」

「まっ、仕事が増えないことだけ祈るわ」

 

 フィディオの隣には十六夜が立っていた。フィディオは十六夜にボールを預けるが、それだけで他の4人は攻め上がろうとしない。自陣深くに下がっている……発言からも2人に攻撃を任せるようだ。

 

「何か、こういうシチュエーションだと最初に出会ったときを思い出すね」

「あーあのときは2人で共闘したんだっけ?つっても、だいぶ実力差があったけど」

「そうだったね。でも、今のアヤトとならもっとエグい連携が出来るはず」

「だな。魅せてやろうか、オレたちの最高にイカれた連携を」

「ゴチャゴチャうるせぇぞ!舐めんな人間!」

「突っ立ってお喋りとは余裕だな!黙らせてやる!」

 

 ボールを持った状態で立ち止まって話す2人に、デスタとセインがボールを奪いに行くが……

 

「行くよ!俺に固執してくれ!」

「「なっ……!?」」

「ああ……()ろうぜ!フィディオ!」

 

 フィディオはボールと共に前へと走り出し、2人の間を突破していく。置いていかれるセインとデスタを余所に十六夜はフィディオを追い掛け……

 

「「「はぁ!?」」」

 

 次の瞬間、双方の選手たちに驚愕が走る。相手ディフェンダーを前に立ち止まったフィディオから十六夜がボールを奪い去ったのだ。

 

「何しているんですか!?」

「それ味方だぞ!?」

「遂に敵と味方の区別がつかなくなったのか!?」

「落ち着け十六夜!そっちは敵じゃないぞ!?」

「頭おかしくなったのか!?」

「正気に戻れ!」

 

 ベンチが驚きを隠せない中、十六夜がボールを蹴る。その先に居るのはフィディオで……

 

「もっと喰わせろ!」

「まだまだ満足しないでくれよ!」

 

 そして、ボールを受け取ったフィディオに向けて走る十六夜。

 

「な、何だあの2人……!?」

「理解不能……意味不明過ぎるだろ……!?」

 

 相手ディフェンダーを前に立ち止まったフィディオ。その1対1に割り込み、相手ディフェンダーよりも早く奪うのは十六夜。しかし、フィディオに動揺はなく、奪われた瞬間には走っていて、その先へとパスを出す十六夜。じゃあ、十六夜を警戒すれば良いかと思うと、次の相手には割り込んできた十六夜を壁にしてフィディオが突破、壁に使われた十六夜は突破したフィディオを追い掛け……

 

「……ハッ、無茶苦茶過ぎる……止めるのがほぼ不可能な連携だな」

「い、いやいや連携って……」

「どう考えても、十六夜くんが頭おかしいことをしているだけですよ……」

「ここまで相手に取られていないのが奇跡なだけじゃ……」

「そうだな。だが、お前らがそう思うのなら、あの連携はそれだけレベルが高く……そして、お前らじゃ止められないってことだ」

 

 不動の言葉にムッとするのは多くのベンチメンバー。それはそうだろう。目の前に広がっているのは連携とはほど遠い何か。十六夜が味方からボールを奪いに行くというおよそサッカーではあり得ないプレーをしているのだ。

 

「理解不能なプレー……つまり、それだけ次の手が読めないということ。次に何をするか分からない相手の先を読んでボールを奪うことなど出来やしない。まして、世界トップクラスの選手たちが相手となれば尚更ね」

「な、夏未さんも分かっているんですか?十六夜先輩のあの動き……」

「えぇ。十六夜くんの言うようにまさに最高にイカれている」

 

 と、雷門も分かっている側のようで、あの2人の連携をそう称する。いやまぁ、十六夜のプレーに理解不能なものが混ざっているのは今更だが……

 

「今の十六夜はフィディオに固執……執着するプレーをしている。フィディオからボールを奪うことに思考を特化させ、実際に奪おうとしている」

「それはまぁそうだろうけど……」

「いや味方ですからね!?その奪う相手!」

「でも、それはフィディオも理解している。だから、フィディオは大きく2択……敢えて十六夜にボールを奪わせて突破するか、十六夜を相手ディフェンダーにぶつけて隙を生んで突破するか。大きくこの2択をその場その場で選んでいる」

「は、はぁ……?」

「フィディオくんの立場としては、自らと言うエサをバケモノに喰わせるか、それともバケモノを囮に突破するか……でも、実際はそれだけじゃない。十六夜くんに不意打ちで奪われるという3択目が存在している」

「いや、不意打ちで奪ったらダメじゃ……!?」

「その3択目は存在したらダメなやつじゃ……?」

「だから読めないんだよ。そもそも、今の十六夜の動きに合理性なんてものはねぇ。非合理の塊……だから、プレーの中にはフィディオの想定を超えるものも出て来ている」

「しょ、正直……どのプレーが想定内なのか分からないんですけど……」

 

 ベンチから観ても分からない。フィディオからボールを奪った十六夜のプレーは、フィディオがワザと取られただけか、それともフィディオにとっても想定外なのか。全くと言っても良いほど違いが分からない。

 

「つまり、仮に合理的で頭を使っているフィディオだけを読めたとしても、非合理で感情に従って動く十六夜がノイズとなって割り込むから読めなくなる。それに大前提として、フィディオのテクニックは世界でもトップレベル……ただの1対1ですら勝てねぇんだ。それなのに、状況は常に1対1対相手という意味が分からない三つ巴状態」

「み、三つ巴って……でも、実際のところはこっち側が2人で……」

「最低でも2対1……でも、その2人はボールを奪い合っていて三つ巴……」

「わ、訳分かんねぇ……!どうやって対抗するんだよ!?」

「これに対抗するなら、フィディオくんが合理的に作った未来と、十六夜くんの非合理的な動きを完全に読み切る必要がある。そんな真逆の思考を同時に読み切るなんて、正直無理な話よ」

 

 何となく言いたいことが分かってきた。フィディオが最適な解答……頭脳で計算された機械的なプレーをするなら、十六夜は最悪な解答……感情のみの自己中心的な野生的なプレーをする。フィディオが上手く使っているわけでも、十六夜が完全に振り回しているわけでもない。だから、相手はどちらかだけを完全に理解したとしても止められないし、仮に理解されてもあの2人には確かな個人としての能力がある以上負けるとは限らない。更にフィディオには影山東吾の、十六夜には理性のプレーとそれぞれがもう1つずつ異なるプレースタイルを持っているから……。

 

「……どう止めろと?」

 

 もし、あの2人がそれぞれのプレースタイルを瞬時に切り替えられるなんてなれば、一体どうやって止めればいいんだ?

 と、そんなことを思っていると、唐突に十六夜が走るコースを変えた。いやまぁ、今までがフィディオからボールを奪おうとしていたから、それはそれでおかしいんだが……でも、フィディオはそんな十六夜の動きを一切見ることなく、そのまま左サイドへと直進していく。一方の十六夜は右サイドへ向かってフィディオの方を振り返ることなく走って行く。ディフェンダーはそれぞれ分かれてフィディオと十六夜のブロックに行く。

 

「来い!」

 

 キーパーは必殺技を出すためか片手を突き出して、フィディオに照準を合わせていた。パスを出す素振りはない。流石にシュートの邪魔をしては意味がないから、離れていったということだろうか?

 そして、フィディオは目の前のディフェンダーを躱すと足を振り抜きシュートを放つ。放たれたシュートはゴール右上隅を狙ったもの。

 

「フッ……」

 

 必殺技じゃないと見るに手を下ろし、跳び上がって手を伸ばすキーパー。だが……

 

「ごちそうさま!」

「んなっ……!?」

 

 シュートコースに割り込んだ陰が一つ。十六夜が飛び込み、空中で左足を振り抜きコースを変える。ボールは跳んでいるキーパーの反対方向……ゴール左下隅へと刺さった。

 ボールがネットにかかり、十六夜が転がるように着地。そして勢いよく立ち上がると、そのままフィディオの方にダッシュし……

 

「凄っ!ホントに来やがった!」

「凄いよアヤト!本当に俺からゴールを奪うなんて!」

「いや、凄いのはお前だよ!なんつーか、このタイミングでここに行けば喰えるって誘導された気がした!どんなシュート撃っているんだよ!」

「いやいや、それでも反応したのはアヤトの凄さだよ!正直、反応されると思っていなかった。あのシュートをダイレクトで軌道を変えたのは本当に凄い!」

 

 パンッ……フィディオとハイタッチを交わす。そのまま何処か興奮気味に言葉を続ける。

 

「つぅか、そこまでもだ!何だよ、オレの本能でのプレーを完全理解していたのかよ!何処までも引き出されたし、出し抜かれた!完全に上手く使っていただろ!」

「そんなことないって!寧ろキミのプレーにはいくつも驚かされた!俺がエサとしてワザと生み出した隙は全部逃さなかったし、何なら俺ですら予想外のポイントで奪ってきたよ!」

「何言ってるんだよ!お前からは驚きも何にも感じなかった!全部掌の上かって感心させられたぞ!」

「こっちこそ、一瞬で喰われるから思考を追いつかせるのが大変だった!それでもキミのプレーが俺の選択肢を爆発的に増やしてくれたのは違いないよ!」

 

 冷めない熱……何というか、あそこまでテンションが上がっている2人は珍しいように思える。特に十六夜に至っては、過去一でテンションが上がっているんじゃないか?もちろん、フロー状態は抜きにしているが、正直あそこまではほとんど見た覚えがないんだが……

 

「ハッ……やりやがった」

「凄いけど……あんなに盛り上がるもんなの?」

「何というか……珍しいくらいテンション上がっているな……」

 

 フィールドでは他の4人も巻き込んで、今のゴールの感想を楽しそうに共有する。恐らく他の4人は今の一連の流れの凄さが分かっているんだろう。冷めた感じはなく、全員が盛り上がっている。……そのせいで、ベンチとフィールドの温度差が凄いんだが。こっちなんて、何でアイツらあんなに盛り上がっているのか?か凄さを理解して何も言えないかの2択で、圧倒的に前者が多いのに……

 

「そうだな……あのシュートのヤバさを理解すればあのテンションも頷ける。いいか?十六夜が唐突に走る方向を変えた後からゴールが決まるまで、十六夜とフィディオは互いのことを一切見ていない」

「「「…………は?」」」

 

 そう言えば……確かに見ていなかった気がする。…………ん?改めて言われるとそれっておかしくないか?

 

「いやいや嘘だろ!?見てないのに、どうやって合わせたんだよ!」

 

 ゴールが決まるまでってことは、十六夜はフィディオの撃つ瞬間を見ていないはず。いや、それだけじゃない。フィディオも十六夜が何処へ動いたかすら見ていないはずだ。

 

「だから合わせたんじゃねぇよ。合理的に動くフィディオは自身が決めるのに最適なコースを、最適なタイミングで撃った。あくまで自分が決めるシュート……それを非合理的に動く十六夜が勝手に奪って勝手にコースを変えた。連携シュートではあるが、連携をしていない。もちろん、必殺技を使わないという前提を課していたとは思うが……それでも、各々が自分が決めるために各々の指針で動いた結果生まれたのがあのとんでもシュートだ」

「とんでもって……いやいや、ただのシュートやん?必殺技じゃあるまいし、そんな凄いん?」

「そうね……今の凄さは必殺技を基準にしてしまうと霞んでしまうかもしれない。でも、ノーマルシュート相手にキーパーが必殺技を使うことは少ない。フィディオくんがゴールしか見ていない以上、キーパーがシュートチェインを予測するのは無理だし、十六夜くんもフィディオくんを見ていない以上、キーパーやディフェンダーも彼がシュートに関わることは考えにくい。相手からすれば予測することが出来ないし、途中で唐突にコースを変えられては反応も難しい」

「そ、それは……」

「ただのシュートに見せかけた、必殺技よりも難易度の高いシュート。アレを止めるには空中でも体勢を変える術を持った相手か、それともシュートが迫るにも関わらず2人目の動きをずっと見ていてやることを瞬時に予測できたか、はたまた全部のシュートに必殺技を使うか……止められるキーパーは限られている」

「凄いことは伝わってきたが……それって誰にでも出来るのか?」

「無理だ」

 

 バッサリ切り捨てる不動。それはそうだろう。そもそもが無茶苦茶なことを言っているんだ。お互いに見ることなく、タイミングを一切計らず、まして遠慮もしなければ、シュートコースの共有すらしない。それなのに1人目の本気のシュートに対し、2人目が迷うことなく割り込んでダイレクトでコースを変える。それまでのプレーでもあの2人はあの2人にしか出来ないであろうプレーを魅せた。私たちじゃ絶対に不可能な連携……しかも、あの連携は世界大会本戦を経て互いに本気でぶつかったから出来るモノではあるが、練習を一切していないぶっつけ本番のもの。つまり、まだまだ完成されていない、伸びしろがあるもの……

 

「…………」

 

 悔しいな……今の私の実力じゃ、十六夜の力をあそこまで引き出せない。こっちが100以上を引き出せても、アイツの100には届かない。アイツに合わせてもらう連携が精々だ。

 

「「「…………」」」

 

 他のメンバーも似たようなことを思っているのだろう。これまで各々何度も感じた場面はあっただろうが、自分たちでは十六夜綾人という男の力を引き出せない……まだまだ隣に立つのに弱いことが分かってしまう。フィールドに立つ彼らとの間にある壁の大きさが理解させられてしまう。……だから1つでも学ばさせてもらう。未来のためにこの試合を目に焼き付ける。

 フィールドでは盛り上がっていた空気も落ち着き、各々がポジションにつく。そして、4度目となるダークエンジェルのキックオフで試合が再開する。

 

「でも、これで2点差だろ!?勝てるぞ、十六夜!皆!」

「行けぇ!そのまま魔王なんかぶちのめしてまえ!」

「そうですよ!たった6人しか居なくても、十分戦えています!」

「このまま逆転できるかも!頑張って!」

「……いや、それは難しいだろうな」

「えぇ、少なくとも勝ち切るのは彼らとは言え厳しいでしょうね」

 

 楽観的な意見に対し、厳しい意見が飛ぶ。ボールはデスタから元悪魔側の7番の選手へと渡った。

 

「貴様らに魔王の力を思い知らせてやる!」

「えぇ!ひれ伏しなさい人間ども!」

 

 そういうとMFになった元天使側の8番の選手が腕に電気を纏って、電気の球を作る。そして、その玉を空中に飛ばすと、そこには雷雲が。そんな中、もう一人がボールに黒いエネルギーをチャージし、ボールを雷雲の中にシュートする。

 

「おいおい……!何か出来てるぞ……!?」

 

 雷雲はフィールドの中央に出来ていた。そして、ボールが雷雲中に入って少しした後、そこには巨大な黒い雷の球が……

 

「愚かな人間に魔王の裁きを!」

「恐怖しろ人間!」

 

 そこに、向かうのは先の2人。元天使が純白な羽を元悪魔が真っ黒い羽を生み出し、雷の球目がけ飛翔する。

 

『カオス・サンダー!』

 

 そして、それぞれ足に白のオーラと黒いオーラを纏い、一人が普通に、もう一人がオーバーヘッドキックで同時に蹴りを叩き込む。

 

「何だコレ……!」

「近づけねぇだと……!?」

 

 まさに災害。その黒い雷の玉は、周囲に白い雷と黒い雷を落とし、地面をえぐりながら一直線に突き進んでいく。その雷のせいで、十六夜やテレスと言った面々が割って入ろうに阻害されてしまう。

 そして、そのシュートは無情にも無人のゴールに刺さってしまう。得点は3-6と3点差になってしまったのだ。

 

「マジか……アイツらもあんな強力なシュートを放てるのか……」

「らしいな。デスタとセインばっかり撃つから、他の奴らは撃てねぇと思っていた……いや、勝手に思い込んでいたな」

「反省だな。情報を更新(アプデ)しておかねぇと」

「警戒対象が増えたな。頭に叩き込むぞ」

 

 その失点に落胆するわけでもなく、冷静な分析をする十六夜とテレス。

 

「サッカーではあり得ない状況だが……今のこっちにはキーパーがいない。必殺シュートを撃たれれば、長距離から放たれても入ってしまう」

 

 撃たせたシュートなら歓迎だが、撃たれたシュートはマズい。まして、普通ではほぼ100%撃たない状況でも、今なら撃てるし、そのまま入ってしまうリスクさえある。適当なロングシュートですら命取りになってしまう。

 

「でも、それなら十六夜くんがキーパーになれば……」

「そうなると、今度はフィールドの選手が5人だけ……流石に5人だと負担がバカデカくなるだろうな」

「なら俺が……っ!」

「まだ休んでいなさい。ここで怪我を悪化させて、世界大会本戦に関わるようなことは起こしたくないでしょう?」

「でも……!」

「あなたなら、右手が使えなくても左手、それがダメなら足や頭と身体を張って止めようとするでしょう。……でも、ここであなたが再起に時間がかかる怪我を負ってしまっては、たとえ試合に勝ったとしても意味がない。彼らがあなたをここに置いて戦っている意味がなくなる。違う?」

「……っ!」

「……今は耐えろ円堂。お前もあのフィールドに戻る時が来る。今は少しでも休んでいるんだ」

「……はい……!」

「それに、アイツらは最初から多少の失点くらい覚悟している。仲間たちを信じていろ」

 

 その久遠監督の言葉を受け、顔を上げる円堂。フィールドで戦う仲間たちは……

 

「「ぽん!ぽん!ぽん!」」

 

 何故か十六夜とテレスがじゃんけんをしていた。

 

「「「…………」」」

 

 どうしようか。ベンチでアイツらを信じようと、さっきまでのプレーで何処か安心感さえ覚えていたのに……この試合から1つでも学ぼうとしているのに……ほんとに、何してるんだあのバカは?何でここに来て頭を抱えさせることをしているんだ?

 

「クソっ!何でオレは負けてしまったんだ……!」

「ハッ!俺の勝ちだなアヤト!」

 

 膝をつき項垂れる十六夜とそれを見下ろすテレスの姿を見て、この試合終わったかもしれないと思い始めた私は悪くないと思う。




 何しているんでしょうね?この2人は。

オリジナル必殺技紹介

カオス・サンダー

シュート技 属性.林

進化タイプ.V 二人連携技

モーション

一人が腕に電気を纏い素早く電気の球を作り
その玉を空中に飛ばし
雷雲を作る
その後
もう一人がボールに暗黒のエネルギーを素早くチャージし
し終えたらボールを雷雲の中にシュートする
少し経つと
ボールが雷雲のエネルギーを全て吸収し
巨大な黒い雷の球が出来上がる
出来上がった後
一人が純白な羽をもう一人が真っ黒い羽を生み出し
それぞれ足に白のオーラと黒いオーラを纏い
炎の風見どりみたいに
一人が普通に
もう一人がオーバーヘッドキックでシュートする
シュートしたら
ほとんど黒い雷の玉が
周囲に白い雷と黒い雷をおとしながら
地面をえぐりながら
一直線に突き進む❗️

やまちゃん様より頂きました。ありがとうございます。

 次回、サッカーしようぜ?
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