「ディラン!カウンター準備!」
「もちろんね!」
パスを出された相手に向け、ディランがプレッシャーをかけにいく。
「後ろは任せたよ!」
パスを出されたが、追いかけることはせず、そのまま向こうの最終ラインでスタンバイするディラン。
「マーク、フィディオ!中盤は任せる!抜かれても待機だ!」
「おう!」「分かった!」
マークが中盤で相手と対峙する。その近くにはフィディオが待機し、マークが突破される、或いはパスが出されてもフォローできるようにしていた。そして、その間にエドガー、十六夜、テレスの3人が陣形を整える。
「この状況下でカウンターに人を置くだと!?」
「舐めたことを……!」
既に後半も終盤戦に突入しようとしている。時間をかけ、11人揃うまで全員で守り切ることを考えても良いはずだが、あくまで点を取りに行く姿勢を見せる6人。人数も体力も差があるもののそれでも誰1人弱気になっている様子はない。
「こっちだ!」
「はい!」
ボールを持った選手はそのフィジカルで強引に突破する。そして、デスタにボールが渡った。
「エドガー!」
「分かっている!」
テレスとエドガーがブロックに向かう。
「ハッ!小細工なんざいらねぇんだよ!どうせ、テメェらは限界なんだろ!」
「そうだ!貴様らが限界なら我々が負けるはずがない!」
そこにセインが加勢し、2対2の状況が出来る。そして、ボールを空中にやると2人はそれぞれ純白な羽と黒い羽を生やし、2人同時に空中に飛び立つ。
「ッチ……マズいな……!」
「流石に学習しましたか……!」
何をしようとしているのか分からない。そんな中で、テレスとエドガーの2人はその場から離れようとするが、セインが羽を飛ばすことで逃がさない。その間にデスタはボールを中心に黒い紋章を描く。
「テレス!私が殿を務める!」
「頼む!」
紋章が描き終わったようで、デスタとセインの2人はボールの上へ。その間に、エドガーがテレスの退路を確保して、テレスがその場を離れようとする。
『カオスエクスプロージョン!』
そして、それぞれがデスタとセインがそれぞれ黒いオーラと白いオーラを足に纏い、ボールに目掛けて振り落とす。落とした後、片方が白で片方が黒のX状の衝撃波がエドガーに落ちてきて……
「うぐぁああああああ!」
「エドガー!」
エドガーが吹き飛ばされる。そして、落ちてきた衝撃で、最初に飛ばした純白な羽が爆発し……
「ぐああああああああ!?」
「テレス!」
近くに居たテレスも巻き添えになる。ブロックに行った2人が消えたことで、自陣ゴールまで道が出来る。
「ゴールがガラ空きだ!」
「これで1点!」
そのまま2人同時にシュートを放つ。キーパーさえいればまだ防げただろう。だが、キーパーが居ないからこそ、必殺技を使わず早さ重視でノーマルシュートを放った。本来なら止められたであろうそれは、今のこちらにとっては致命的な一撃になる。
「あぁ……!」
ベンチでは落胆の声があがる。当然だ、折角追いついたのにまた放されるのか……と。そう思った瞬間、自陣ゴールへ向かって走る1人の選手に気付く。
「十六夜!」
「流石は十六夜さんッス!」
ただ1人、十六夜がボールより先を走り、シュートコースに割り込もうとしている。恐らく、さっきの必殺技を受け、こうなる未来が見えていたからだろう。だが……
「間に合わない」
「そ、そんな……!」
アイツの今のスピードじゃ、あのシュートに割り込めない。すぐに突き放されてしまう。このままじゃ守れない……!
「ッチ……!」
(マズい……!計算がズレたな……!魔王様が2対2の状況を作るとは……あんな煽り耐性低い格下と思っているヤツらに負けることを嫌いそうな2人が協力して突破する道を選ぶとは……!クソ、今のままじゃ、決まっちまう!進行方向を変えても追いつくルートがねぇ!ッチ!どうする?詰みか……?)
「十六夜!飛べ!」
「円堂……?」
ベンチでは円堂からそんな声が発せられる。
「スカイウォーク!」
すると次の瞬間、何かを思いついた十六夜は空高く飛翔する。
「即興!皇帝ペンギンX!」
「あれ……?」
そして、何故か右足にペンギンをつける。その動作に円堂は疑問を口にしていた。しかし、そんなベンチの驚きも無視して十六夜はペンギンをつけた右足を振り上げる。
「目標捕捉……発射!」
狙いを定めると右足を振り抜く。振り抜かれた足……その勢いのままペンギンたちが発射される。発射されたペンギンたちはボールを取り囲むと空中に押し止める。
「追撃!」
そして、自らも空中に押し止められたボール目がけて追撃に行く。空中から地面に向かって思い切り蹴りをぶち込む。
「「なっ……!?」」
「反撃!走ってんだろお前ら!」
上空から蹴りをぶち込み、ボールを地面にぶつけて止めた十六夜。体勢を崩しつつもすかさず、前線に居るフィディオへとパスを出す。
「アヤトも!カウンターだよ!」
「分かってる!」
立ち上がった十六夜が前線へと駆け上がる。
「すげぇ……流石は十六夜だ!俺が想像していたことよりすげぇことをやったな!」
「ハッ……ペンギンをシュートに向かわせ遅延。そこに自分が蹴りをぶち込むとか……とんでもないことやってんな」
「ブラスターペンギン!そう名付けましょう!」
「あ、今回は早かった」
「誰にもこの役目は奪わせません!」
「何と戦ってんねん」
「ただ、あの技……対人には不向きだな。あんなのやったら一発退場だろ」
確かに……ペンギンを相手にぶつけ、空中から跳び蹴りをする……うん。危険すぎる必殺技だ。シュート相手ならともかく、あんなの対人では使えないだろう。シュートブロック専用の必殺技ってところだな。
「さっきの話を聞いた上でだけど、まだあんなに走れるなんて驚きだよな」
「いくら心配をかけたくないとは言っても、これまでの運動量はかなりのものですよ」
「やっぱり、アイツらの体力は無尽蔵なのか?」
そういう声が聞こえる。確かに、必殺技を受けたエドガーやテレスも立ち上がって前線へと走っている。他の選手もだが、十六夜の体力もとうに限界を迎えている……状況はアルゼンチン戦と近いものを感じる。だが、あの時と違って、アイツの足は止まらない……あの時より体力がついたから?いや、違う……
「命を燃やしている……」
この後のことなんて何一つ考えていない。試合が終わった後のことなんて何も考えていない。己の全てをこの試合に賭け、今この瞬間も勝つためだけに最善を尽くしている。
普段はもちろん、後半最初に比べれても足取りも重くなっていき、力も入りきっていない。だが、それでも全員が勝つために今できることをする。この試合に賭けられたモノの重さは相変わらずで、負けられないプレッシャーは相当なものなのに、彼らからは苦しさを感じない。それどころか、楽しそうなところもあって……
「憧れるな……」
その域に達したいと思う自分がいる。命が賭けられているこんな状況で臆することなく、命どころか全てを賭ける。それでいて、どんなに苦しく絶望しかない状況に陥っても、勝つという希望を信じさせてくれる。改めて、彼らの立っている次元に到達したい思いが溢れてくる。
「このっ!」
フィディオのシュートがキーパーによってキャッチされる。だが、既にこちらの体制は整っている。どこに出されようと誰かが対応できる位置取り……これなら大丈夫だと……誰もがそう思っていた。
「舐めんな!」
その瞬間、キーパーが天井ギリギリまで飛翔した。そしてギリギリまで腕を引いて力を込めると……
「オラァッ!」
空中から勢いよく振り下ろされる。投げ出されたボールは勢いよくフィールドを縦断する。
「「「なっ……!?」」」
フィールドの選手たちも想定外のことに反応が遅れる。驚く私たち全員を置いていくような不意打ちの一撃は、自陣ゴール手前でワンバンすると、ゴールへ向かって勢いよく跳ね上がる。
「フハハハハ!貴様ら、パスコースを防ぐことに注力しすぎてゴールがガラ空きだったぞ!」
流石に予想外だった。まさか、キーパーがゴールに向かってボールを投げるとは……これで6-7……まさかの失点で再び相手に放される。
「このザルディフェンダー共が!貴様らのような下等種族の考えなど手に取るように分かるわ!どうだ?キーパーにゴールを決められる気分は!こんなに呆気なくゴールを決められる気分は!ハハハッ!魔王を甘く見るんじゃない!貴様らは我らの贄!贄ごときが我らに勝てるわけがないだろうが!アハハハハッ!」
調子に乗っているのか、さっきまでもて遊ばれていたことも忘れ、高笑いする相手キーパー。
「「…………(ピキッ)」」
そして、その言葉に対し青筋を立て、ぶち切れている選手が2人居た。
「誰がザルな下等種族だと……!」
「調子乗んじゃねぇよ単細胞が……!」
「待ちたまえ。煽られてどうするつもりだ?」
「そうだぞ。今のゴールは仕方ない。割り切って切り替えよう」
「そうだね!ミーが取り返してくるから心配しなくていいよ!」
「ということで、アヤトもテレスも落ち着いて……」
他の4人が必死にフォローする中、十六夜とテレスは自陣ゴールに入ったボールを拾うと、ハーフラインに向けて歩き出す。
「おいお前ら」
「ポジション交代だ」
「「「へ?」」」
「「あの調子乗ってる野郎の顔面に一発入れてくる!」」
「「「…………」」」
…………え?
「ちょっ、落ち着け十六夜!?」
「テレスも落ち着けよ!」
「お前らDFだろ!?ポジション交代って……」
「しかも、得点じゃない!?顔面に入れてくるって……!?」
「冷静に!冷静になってください!?」
「早まるな!今なら引き返せるぞ!?」
「さ、流石にマズいですよ!?」
あまりのことにベンチも騒然とする。フィールドに居る4人も頭を抱えているあたり、これは戦略とか作戦とかじゃない。煽られた2人がぶち切れての暴走である。アイツらは何度私たちを動揺させれば気が済むんだ?上がったと思ったら落とされまた上げられ落とされでまるでジェットコースターに乗っている気分だ。頼むから安心して任せられるままでいてくれ?おかしいな、さっきの円堂の話だとお前らは私たちを不安にさせないんじゃなかったのか?今無茶苦茶不安にさせられているぞ?おいさっきまでの格好良い憧れるお前たちはどこに消えたんだいいから元のポジションに早く戻れ何しているんだちょっとそれ以上は……
「行くぞテレス!ぶち込みに行く!」
「ああ!破壊しに行くぞアヤト!」
ダメだ。キックオフは当然のように十六夜とテレスの2人がしている。何というか、ここに来てあの2人が初めて心の底から手を取り合っている気がする。
そして、これは本当にダメなヤツだ。ベンチの動揺も悲鳴も聞こえていない。私たちでは彼らを止めることは出来ないのだろう。
「やれやれ……まぁ、あの2人なら大丈夫でしょう」
「そうだな。一応、カウンターに備えておこうか」
「2人とも煽り耐性が低いねぇ……寛大な心を持つべきだよ」
「あはは……2人とも、ほどほどにね」
後方では呆れながらエドガーとディランがフォローに入り、フィディオとマークが最後列で警戒をする。もう止めることを諦め、出来ることをやる……なんて切り替えの早さだ。ベンチの私たちは未だに動揺を隠せず祈る者まで出て来ている始末だぞ?
「ハッ!調子乗んなよ!」
デスタからのタックル……だが、
「足りねぇなぁ……!」
「に、人間!?貴様の何処にそんな力が……!?」
「全然足りねぇんだよ!力も格も何もかも足りねぇんだよ!魔王ってならもっと圧倒的な実力でオレを潰しに来いよ!残酷なまでの差を見せてみろよ!テメェ程度の存在如きが魔王を名乗るんじゃねぇ!序盤の町から出直してこいこの雑魚ゴブリンがぁ!」
「て、テメッ……ぐあっ!」
真正面からのぶつかり合いで、十六夜がデスタのタックルを吹き飛ばす……いくら相手の体勢が力任せで考えられていないとは言え……火事場の馬鹿力だろうか?万全なアイツならやりかねないが……いや、それでも何しているんだ?お前、身体中ボロボロで体力も限界のはずだろ?え?何処にそんな力があるんだ?
「通さないぞ!」
立ち塞がったセイン。だが……
「こんな感じだったか?ひとりワンツー!」
「「「え?」」」
セインを相手にした瞬間、十六夜は軽くボールを前へと蹴り出して自身はダッシュする。ボールは地面に着くと勢いよく回転し、セインを突破した十六夜の足下へと収まる。
「力も技術もねぇ奴らが粋がるな!伸びきった鼻を顔面ごと叩き潰してやるよ!」
「クソ……!何だこの男……!?」
だが、驚いたのはそこではない。アイツはあの必殺技を練習なしの本番一発で成功させた。これが十六夜綾人の奪う才能……学習能力の高さの片鱗か……そして、十六夜の語彙が終わり始めたのはもう何も言うまい。きっと頭に血が上りすぎたんだろうな(現実逃避)。
「オレに献上しろ!オレの下まで運べ!」
「偉そうに命令すんな!さっさと走れ!」
そこからパスが出される。ボールを受け取ったのはテレス。本職がDFとはいえ、彼の突破力はかなりのもの。万全な状態であればボールを取られる心配はそこまでないが……ちょっと今は不安が勝っている。あの2人、本当に大丈夫なのかと胃がキリキリし始めた。
「安直な突進だな!ここで散れ!ゴー・トゥ・ヘル!」
相手DFが必殺技を放つ。空から黒い光がボールに向かって堕ちる……が、
「温い!」
「な……!?」
それを真正面から受けるも弾き返した。そして、そのまま固まる相手の脇を通っていく……は?
「フッ、だがこれは防げまい……ゴー・トゥ・ヘブン!」
次なるDFが必殺技を放つ。地面から白い光の柱が現れてテレスを包み込む……が、
「効かん!」
「は……!?」
その光も真正面から受けたがボールと共に突き破る。いや…………は?
「ならばこの技で……!」
「苦しみ後悔しろ!」
『ステイ・ワールド!』
そして、魔王がその必殺技を使い、テレスは上下から白と黒の光に挟まれる。
「この程度の技で……!これしきの覚悟も心も熱も何もねぇ空っぽの技で……!俺の意志が折れると思うなぁっ!!」
「「うわわあああああぁぁっ!??」」
「俺を止めてぇなら命賭けろクソ魔王!ふんぞり返って偉そうにしてんじゃねぇぞ!」
だが、それらの光をまとめて正面から弾き返すテレス。彼らの必殺技ではテレスの歩みを止めることが出来ない。意志の問題で済ませていいのだろうか?本当に同じ人間か?十六夜もだが、アイツらは本当に同じ人間か?ここまで来ると、世界トップクラスの選手になるのに人であることをやめないといけないのか?何だあのバケモノども。
「す、すげぇ……!何だよあのドリブルは……!」
「凄い……あんなドリブルがあるのか……」
円堂や飛鷹といった一部のメンバーが目を輝かせていた。確かに、今出ているメンバーは十六夜の脳筋突進以外、テクニックやパスでの突破が多い。そんな中、今のテレスのようなどんな壁も己の身一つで突破する。不屈の意志と鍛え上げられたフィジカルで全ての障害を破壊する……その姿は、足下のテクニックがそこまでない選手に、一つの選択肢を見せてくれている気がした。気がしたが……だからと言って完全に納得できるかは別問題だ。
それにしても、あのレベルのモンスターがあの場に後4体居るのか……あれ?円堂たち出なくても勝てるのでは?横目で見るとヒロトや吹雪辺りが苦い顔をしていた。何というか……どんまい。敵認定されなければ生きて帰ってこれるだろう。
「約束通り献上してやるよ!」
「時間ピッタリ、予定通り!」
そんなことを思っていると、相手のブロックを文字通りフィジカルで破壊したテレスは、相手ゴール前で反転。後ろに居た十六夜にパスを出した。
「恐怖し絶望しろ魔王ども!これが人類の怒りと知れ!」
十六夜のテンションが相変わらずバグっていた。バグったテンションがある意味最高潮に達していた。もはや勇者側の台詞とは思えない、味方側とは思えない発言をした彼は、今放てる彼の最強の必殺技を放つ。
「オーバーサイクロンP!」
蹴り出されたボールは相手ゴールへと向かい……
「アイアンウォール改!」
何故かテレスの必殺技がその行く手を阻む。
「「「…………え?」」」
現れた鉄壁が十六夜のシュートを防ぐ。
「な、何しているんですかぁ!?」
「それ味方のシュートだぞ!?」
「頭イカれたのか!?」
「遂に敵と味方の区別が……!」
「目の前に居るのは敵じゃないよ!?」
「ここで仲間割れしてるんじゃねぇよ!?」
「争っている場合じゃないですよ!?」
「ちょっ、お前ら落ち着け!?」
ベンチでも驚愕の声が上がる。味方のシュートをシュートブロックとか何考えているんだ……!?
「来いよアヤト!」
「行くぜテレス!」
しかし、驚く私たちを差し置いて、十六夜はボールに向かって走り……
「スカイウォーク!からの……!」
右足には皇帝ペンギン1号のペンギンたちを、左足には皇帝ペンギンXのペンギンたちをつけて空へ駆け上がる。そして……
「皇帝ペンギン1号!皇帝ペンギンX!」
必殺技を放っていく。それも1度じゃない……
「皇帝ペンギン1号!皇帝ペンギンX!皇帝ペンギン1号!皇帝ペンギンX!皇帝ペンギン1号!皇帝ペンギンX!皇帝ペンギン1号!皇帝ペンギンX!」
何度も何度も放っていく。放つ度、新たなペンギンを呼び出し、古いペンギンは壁を破ろうと突き進む。ラッシュをボールに叩き込んでいく。
「オラオラどうしたどうしたぁっ!テメェはこんなものかぁ!あぁっ!?」
「なわけねぇだろうがぁ!テメェこそこの程度でぶち壊れたら承知しねぇぞ!」
お互いに本気だ。テレスは本気であの猛攻を耐えている。まるで、相手側のDFのようにシュートを防いでいる。対して十六夜は本気でその壁をぶち壊そうとしている。一切の加減を感じない攻撃だ。
「もっと来いよ!もっと見せてみろよ!この程度かモンスター!この程度じゃこの壁はビクともしねぇぞ!もっと俺を壊す気で来いよバケモノがぁ!!」
「もっと速く!もっと強く!もっと鋭く!足りねぇ足りねぇ足りねぇ!」
次の瞬間、十六夜の動きが加速する。
「壊す殺すぶっ潰す!もっとあげろ!もっとぶち上げろ!もっともっともっともっと!!」
見間違いだろうか。彼の放つ1号のペンギンとXのペンギンの赤はまるで彼の命の炎を、彼に流れる血を表しているような紅に見える。命を使っているような、命を削るようなラッシュ。それらを全て受け止め押さえるのはテレスの鉄壁。彼の鉄壁が荒れ狂う業火を抑えている。嵐のようなシュートを食い止めている。
言葉には決して出していない……だが、彼らの間にはお互いへの信頼を感じる。互いが本気をぶつけ合っても、相手がそれに応えてくれる……そんな相手への期待、その期待に応え高め合って行く。……彼らはこの一撃に全てを賭ける気だ。この一撃に全部を乗せて……
……そして、そんな無茶苦茶シュートが鉄壁にヒビを入れ、そのヒビが大きくなっていく……
「「「…………は?」」」
突如、壁は消え去った。破れたのではない。初めからなかったように消え失せた……テレスが自ら消したのだった。
「ぶち込め!」
「ラスト一発!」
そして、すかさず十六夜が最後の一撃を見舞う。お互いにいつ消すのかが分かっていたようでタイミングがバッチリ噛み合う。大量のペンギンと溜めに溜めた超強力なシュートがゴールを襲う。
「ジ・エンドV3!グアッ!?ゴホッ!?フガッ!?ホベッ!?グハッ!?アガッ!?ボガッ!?グヘッ!?グギッ!?ゴボッ!?うぐぅ!?ぐぇっ!?うがっ!?ぐぎゃ!?うべっ!?」
相手キーパーは必殺技を放ち何体かのペンギンを食い止めるも、圧倒的な物量の前には意味をなしていない。大量のペンギンが相手キーパーに突撃し飲み込み、相手キーパーの悲痛な声が響く。
「ゴバッ!!?」
そして、最後にボールが相手キーパーの顔面に直撃。キーパーごとゴールへ突き刺さり、ゴールがキーパーと共に吹っ飛び……
ドンッ!
背後の壁に激突し、ゴールが崩壊した。背後の壁には亀裂が入った。
「「「…………」」」
「「よし」」
敵味方全員の開いた口がふさがらない中、テレスと彼の肩を借りた十六夜が拳を合わせる。制裁が完了し満足したのか、ボロボロになって崩れたゴールの中で倒れる相手キーパーと、あまりの光景にドン引きしている魔王たちを無視して、テレスは十六夜に肩を貸しながら2人揃って自陣へと歩いて戻っていく。
「人間を怒らせた罰だ」
「これでもまだ煽れるか?」
「「「あ、アスタロト!??」」」
魔王たちが全員ダッシュでゴールへと駆け寄る。魔王以上のバケモノがそこには2体いた……やったのはアルゼンチン戦の十六夜のゴールに近いもの。アレを意図的にやることで、シュートの威力とペンギンたちを最大限に高める……テレスのアイアンウォールが、十六夜の自己シュートチェインの重ねがけをする時間を稼ぐ。なんてエグいことを考えるんだ……
「いやー今の一撃で使い切った。もうこれで動けないかも」
「俺も今のを耐えるのに力を使い切ったな」
「何だか凄い気分が良いな。このまま寝てもいいぐらいだ」
「ここまで清々しい気持ちはいつぶりだろうな。今日は良い夢を見れそうだ」
そんな、ベンチもドン引きな状況で、当の本人たちは何処か晴れやかな顔で話していた。何というか、凄いやりきった感を出しているんだが……よく思い返せばアイツらのあのシュートの根幹にあるのは相手の挑発に乗せられたムカつきだったな。自分たちを犠牲にしてでも皆を救うため的な主人公みたいな理由じゃなかったな。
とりあえず、お前たち相手を見てみろ?ゴールが破壊されたんだぞ?そして、その破壊されたゴールの中で相手のキーパーが目を回して、倒れたまま気絶しているぞ?それを魔王たちが狼狽えながら救出して介抱しているんだぞ?もうどっちが敵か分からないんだが?
「ちなみに2人とも。あの惨状見てどう思った?」
「「ムシャクシャしてやった。後悔はしていない」」
「「「…………」」」
コイツらの方が魔王だろ。危ない、あと少しで騙されるところだった。
と、そう思っていると十六夜を支えていたテレスも膝をつきそうになり、ディランとエドガーが2人を支える。
「全身全霊の一撃ってわけだね!とりあえず、2人ともナイスゴール!」
「まだ同点なのによくやりますね……もうほとんど動けないでしょうに」
「ハッ、いいだろ別に。俺たちが使えなくても、お前らだけで勝てるっての」
「ああ。だって、ここからは……な?」
「そうだね。ここからは6人じゃなくなるからね」
「そうだよね?マモル、皆」
フィールドの6人がベンチに居る5人の方を向く。
「行ってこい、お前たち」
「「「はい!」」」
そして、5人がフィールドに入っていく。
「おかえり、お前ら。ちょっとは休めたか?」
「体はね。気は休まらなかったかもだけど」
「まるでオレたちが、ハラハラさせるプレーしかしてねぇみてぇじゃねぇか」
「実際、半分くらいそうだったでしょ?」
「否定はしない」
「できねぇの間違いだろ、アヤト」
「ああ?お前に言われたくねぇよ、テレス」
「ああ?何か言ったか?ここでテメェを捨てても良いんだぞ?」
「全く……喧嘩が過ぎると君たちを支えるのやめますよ?」
「そうそう!ミーたちに支えられていること忘れないでよね!」
「あはは……キドウ、前半とポジションは同じで良いよね?」
「もちろんだ」
「次の得点はどっちが決めるか勝負だね、ゴウエンジ!」
「お前な……でも、イナズマジャパンのエースには期待しているよ」
「あなた方は……あまり気負わなくて大丈夫ですからね?」
「休んだ分の仕事はするさ」
「よぉし!皆!この試合絶対勝つぞ!」
「「「おう!」」」
11人が揃った最終局面。試合はもう間もなく決着の時を迎えることになる。
……ところで相手のキーパー倒れているしゴールも破壊されたけど試合ってまだ終わってないよな?
ゴールの強度Tier表作ったら、デモンズゲートのゴールは一番下ですね。間違いありません。……ところで、何でこの主人公ゴール破壊しているんだ?それって敵側がやることじゃないのか?
良かったなアスタロト……この作品や原作が全年齢対象作品で……ceroCかDあたりだったらお前もっと悲惨なことになってたぞ……?
オリジナル必殺技紹介
カオスエクスプロージョン
ドリブル技 属性山
進化タイプ.改 二人連携技
モーション
ボールを空中にやり
二人がそれぞれ
天使みたいな純白な羽
悪魔みたいな黒い羽を生み出し
二人同時に空中に飛び立つ
純白な羽をはやしてる一人が
翼を振るい純白な羽を
相手選手にめがけて何度も飛ばす
その間に悪魔の羽の一人が
ボールの周りに
ブリタニアクロスみたいな暗黒の紋章を生み出す
生み出した後
二人がボールの上にいき
それぞれ二人が白いオーラ黒いオーラを
足に纏いボールに目掛けて振り落とす
落とした後
片方が白片方が黒のX状の衝撃波が
相手選手に落ちてきて
ぶっ飛ばす
落ちてきた衝撃で
最初に飛ばした純白な羽が爆発し
他の選手もぶっ飛ばすこともある?
やまちゃん様より頂きました。ありがとうございます。
ブラスターペンギン 属性 火 成長タイプ V シュートブロック可
皇帝ペンギンXを元に編み出された、シュートブロックに特化したディフェンス技。なお、当初は皇帝ペンギン1号を元にする予定だったが、より強力かつ負担の少ない皇帝ペンギンXをラーニングした事でこちらに変更した。
ジャンプすると同時に指笛を吹き、黒いペンギンを五羽呼び出す。上空で後ろに振り上げた利き足をペンギン達に咥えさせた後、シュートされたボールに向かって利き足を振り抜いてペンギン達を弾き飛ばす。取り囲む形で突撃したペンギン達が空中で押し留めているところに追撃で自ら飛び蹴りを加える事でボールをグラウンドに叩きつける。
なお、完成当初は通常のディフェンス技としても使用する予定だったが、ペンギン達を直接ぶつけてから自らも突撃する為に相手に直接使用するには余りにも危険で一発退場の恐れもある事から、シュートブロックに限定する事になった経緯がある。
技名はペンギン達と十六夜がボールに突撃してシュートを止める様を銃撃に見立てた目金が命名した。
h995様より頂きました。ありがとうございます。
ひとりワンツー
習得者 十六夜綾人
超次元要素の少ない技であり、フィディオが使っているのを見て習得した。もしかしたら、使っていないだけで
無茶苦茶シュート
使用者? 十六夜、テレス
新しい必殺技ってわけでもないし、名前も付けられていない。十六夜とテレスが全身全霊をぶつけることによって出来てしまった無茶苦茶なシュート。相手からすると、鉄壁の向こうからペンギンの大軍が押し寄せてくるのはトラウマものだろう。この技を受けたものはペンギンを見るだけで発狂してしまうようになるのだとか。もしかして、アレスオリオンでペンギンが集約されてしまうのはこんなことを想定していたからなのか……?ところで、今更だけど皇帝ペンギン1号って禁断の技だよな?まぁ、今さらか。
次回、エール……長かった戦いも遂に決着です。