超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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ただの人間として

 とある日の昼下がり……とある3人が露天風呂にて集っていた。

 

「……さて、話でもしようじゃないか」

 

 1人は天空の使徒を率いるリーダーであるセイン。警戒心を隠す気はなく、目の前の相手と対峙している。

 

「ハッ、テメェらと話とか……!」

 

 1人は魔界軍団Zを率いるリーダーであるデスタ。彼もまた、この状況に警戒と苛立ちを隠さず向き合っている。

 

「話し合いは良いけど静かにな……」

 

 そして最後の1人は十六夜綾人。湯に肩まで浸かってボーッと空を見上げている。

 

「つぅか、オレ中に戻って良い?ほら皆、中の風呂入っているしさ」

「ダメだ。君が戻ったら私たちは冷静に話し合いが出来ない可能性がある」

「こっちはいいんだぜ?望むところだっての」

 

 どうしてこうなってしまったのか……十六夜は空を見上げ、ここまでの記憶を呼び起こすのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再建工事が始まって数日。連日の皆の特訓……もとい頑張りのお陰で工事は順調に進んでいる。本日は工事で呼んでいる人たちは休日……いやまぁ、彼らは完成するまで働き続けると言い張ったが流石に問題だと思ったため、ちゃんと休みにした。

 

「で?何処に向かっているんだよ」

 

 そんな日の昼前、オレはセインに連れられてマグニード山を降りていた。

 

「前に言っただろう。話があると」

「あー言っていたな」

「工事も順調のようだからな。私たちが居なくても多少は大丈夫だろう」

 

 既に工事も何日目か……動きも分かってきたようだし、八神やヒロトを始め指揮を執ってくれる人も居る。天空の使徒の面々ともかなり打ち解けたようで、その辺りの不安もない。今日も工事の人たちがちゃんとオレらだけで出来ることを用意してくれたのでそれを熟すだけで、仕事面の不安もない。……唯一の不安はオレが一向に天空の使途の面々の顔と名前を一致させていないことだが、バレていなさそうだしよしとしよう。

 

「で?わざわざ場所を変えてどうしたんだ?このまま行くと悪魔のところだろ?」

「……私たちはもう天使じゃない」

「……は?」

 

 何を言っているんだコイツは?いや、元々がおかしいんだけど……は?

 

「そもそもの話から始めよう。私たち天空の使徒のメンバーは……元々人間なんだ」

「…………はぁ」

「思ったより驚きがないな?」

「いやまぁ……だって、見た目思い切り人間だし、風呂に一緒に入ったが身体から人外要素感じないし……ほら、翼とか天使の輪っかとかがあれば人外だと思うけどさ。お前ら、服装変えたら人間と変わらねぇよ」

 

 初めて出会ったときから思ったが……うん。天使より天使のコスプレした人間って印象を抱いたし。

 

「そうか……正確に言うと、私たちは天界の力を受け継いだ特別な人間。君たちと変わらない存在だよ」

「その割にはオレたちのこと下等種族扱いしていたけど」

「うぐっ……あ、アレは自分たちが特別だと思い込んでいて……も、もうそんなこと思っていないからな?」

「いいよ別に。あそこまでバキバキに折られて尚、自分たちのことを特別視出来るほどのナルシストであってもオレは気にしねぇよ」

「……寧ろ自分たちは普通で、君が特別な怪物にしか思えないけどな……」

「何度も言うがノーマルだっての」

「……ただまぁ、もう自分たちが特別だなんてそんなことは思えないんだ」

「心が折れすぎてか?」

「それもあるが、特別だと思えた力……天界の力が私たちにはもう殆どないんだ」

「…………え?」

 

 何か今、すごいこと言った?

 

「魔王が復活して、君たちに討伐された。そして、円堂たちと別れたその後だ。ヘブンズガーデンに戻ろうとした私たちの下に2人の少年少女がやってきた。そして、その者たちが私たちを気絶させ……翌日、目が覚めたとき、私たちの手には天界から貰った力の殆どが失われていたんだ」

「…………」

「だから私たちはほとんどただの人間と変わらない。見た目だけじゃない、力という意味でも私たちはただの人間になったんだ」

「……つまり、堕天したと?」

「そう言えるかもな」

 

 何処か寂しそうな笑みを浮かべる。そうか……持っていた力が……

 

「ちなみに、その少年少女なんだが……」

「なんだが?」

「……君に似ているんだよ」

「はぁ?」

「正確には君と八神玲名……君たち2人に似ているんだ」

「…………」

 

 その言葉でなんとなく犯人たちが分かってしまった。アイツらがやったのか……

 

「で?オレにその犯人たちをとっ捕まえて縛り上げてマグニード山の火口に叩き落として力を取り戻す儀式を行えと?」

「野蛮すぎるだろ!?誰もそんなこと頼むつもりはないからな!?」

「え?そうなのか?てっきり堕天させられて恨んでいるかと」

「心配しなくてもいい。私たちはもう天界の力を取り戻そうとは思っていない。そんなものがなくても、生きていくのに支障はない……君たちと過ごして、人間の力を見てそう思ったからな」

「そうか。だったら、今後は人間らしく、人間と力を合わせて生きてみたらどうだ?」

「ああ。純粋な人間である君の仲間たちと過ごしていると、そんな未来を歩んでもいいと思っている」

「何か言い回しおかしくねぇか?」

 

 何だろう。まるでオレだけその純粋な人間という枠組みから外されたような……何でコイツは学習能力が無いんだ?何回、オレが普通の人間だと言えば伝わるんだ?

 

「……だからこそ、確かめないといけないんだ」

「確かめる?」

「力を失ったのは我々だけなのか、ということを」

 

 その疑問を無視されつつ、辿り着いたのは魔王様と戦ったグラウンド。我々だけ……ああ、

 

「悪魔たちか……」

「彼らも魔界の力を受け継いだ特別な人間……私たちと近い存在なんだ」

「この流れだと、そうなんだろうな」

「ああ。だが、私たちが力を失ったのに、彼らはそのままではバランスが崩れてしまう。彼らの抑止力が居なくなってしまう」

「抑止力……ねぇ。被害者からすれば、お前らはどっちもどっちだったけどな」

「うぐっ……だ、だが、私たちから力を失ったということは、私たちの中にあった魔王としてのソレも消失したということだぞ。普通の人間は人を憎む気持ちで魔王にはなり得ないだろう?」

「暴走するヤツは居るだろうが、魔王にまでジョブチェンジはしねぇな。……なるほど、天界の力も魔界の力も胡散臭さはあるけど、どちらも魔王の種がある……力を失ったから種も消え、種が消えたなら今後発芽することはない……か」

「だが、もしも力が消えたのが我々だけなら……」

「今後は悪魔側が自由に出来るわけか」

 

 そのままグラウンドの奥にある石の扉を開ける。

 

「「……っ!」」

 

 そこに広がっていた光景は悪魔たちが全員倒れている姿だった。

 

「おい、何があった」

 

 一番近くで寝ているデスタを叩き起こす。

 

 ぐぅううううううううう

 

「…………は?」

 

 するとお腹が鳴る音が響いた。

 

「……え?空腹でぶっ倒れているだけってこと?」

「……そういうことか」

「どういうことだよ」

「彼らも殆ど力を失ったってことだ」

「え?どうやって分かった?」

「そもそも我々は人間で言う食事を必要としなかったんだ」

「はぁ?」

「正確に言うと最小限で良かったんだ。我々、天空の使徒は人々が捧げる祈りがあれば生きることができて、彼らだったら人の魂があれば十分だった」

「それ聞いて、初めてお前らのことを人外だと思ったわ」

「だが、力を失った我々は祈りだけで生きられなくなってしまった。当然の話だ。普通の人間はそれでは生きていけない」

 

 それはそうだろう。祈れば空腹を紛らわすことは出来ても、それだけで生きることは出来ない。食事をする……栄養を摂取することは生きるために必要不可欠。祈りだけで生きていけたら、飢餓で苦しむ人は居ない。

 

「つまり、こいつらは人の魂を喰らうことが出来ず。こんな場所だから食事にもありつけない……このままでは餓死するのも時間の問題だと」

「ああ。きっと、彼らは我々と同じ状況なんだろう。ほんの僅かに魔界の力が残っているお陰でまだ生きている。だが、放置すれば……」

「死ぬのは時間の問題……ねぇ。で?どうするんだよ元天使様」

「どうするって?」

「助けるか見殺しにするか。こいつらはお前らと敵対しているんだろ?」

 

 そう問いかけるとセインはデスタの下に寄って、肩を貸す。

 

「バカ言うな。確かに敵対はしている。だが、こんな形で見殺しにするなど、出来るはずがない」

「あっそ」

 

 ということでオレも近くに居る奴らを担ぐ。

 

「ペラー。そろそろ出てこれる?」

『大丈夫だよ!綾人の器は完全に修復できた!』

「オッケー。おいで、ペンギンたち」

 

 そういうことでペンギンたちを呼び出して、残りを持ってもらう。

 

「いいよ、お前の意見に従ってやる。ただし、責任は取れよ」

「もちろんだ。恩に着る」

 

 そのままオレたちはヘブンズガーデンに戻る。

 

「十六夜!こいつらは……!?」

「悪い八神、細かい話は後で。適当な食事作るから準備してくれ」

「分かった」

「セイン、説得とか諸々頼むぞ」

「ああ。すまない皆!一旦手を止めて話を聞いて欲しい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 風呂場で2人の話し合い……もとい、言い合いは白熱した。

 ちなみに、風呂場にいる理由は悪魔側が臭かったからである。もう何日も風呂にすら入っていなかったのだろう。話し合おうにその臭いが気になって、臭過ぎて話す気がないと言ったら悪魔側の女性陣が段々気づきはじめ……うん。

 

「どう思う怪物!こいつらと分かり合えないぞ!」

「ハッ!分かり合えるなんて大間違いだ!」

 

 そこから天使、悪魔、ヘブンズガーデンにいたイナズマジャパンの面子全員で風呂場に来たのだが、こいつらの仲裁役なんていう面倒なものを押しつけられてしまった。本当に面倒に感じている。

 

「もう何でも良い……」

 

 人外の力を失って人間となった者たち……だけど、それぞれ持っていた力のせいで、その亀裂は根深いものになっているんだろう。それは力がなくなった今も残っているように、それだけで解決することが出来ないほどまで深いものになっている。

 

「皆、元気そうだな!」

 

 右に左に、オレの頭上を言葉が飛び交う中、この場に命知らずとも言える1人の男が入ってきた。

 

「円堂?何でここに?」

「魔界軍団Zを保護して風呂に行ったって連絡を受けて、皆で来ることにしたんだ!」

 

 へぇー……そう言えば、工事初日のときは呼び損ねたっけ?いや、そもそも呼ぶ選択肢なんて頭の中に入ってすらいなかったが……

 

「んじゃ、キャプテン。こいつらの仲裁は頼むわ」

「おう!……って、十六夜は?」

「ちょっと出掛けてくる。こいつらのことは好きにして良い。他のヤツらに、明日の朝には帰るはずって伝えておいてくれ」

「お、おう……?」

 

 そして、服を着てオレは自分のやりたいことのために動き出す。というか、やりたいことがあってオレが休みたいから、工事の人たちも休みにしておいたのは黙っておこう。

 

「最初は……っと」

 

 まずはイギリスエリアに。目当ての人物は早々に見つかった。

 

「よっ、エドガー。元気にしている?」

「おや、イザヨイですか。えぇ、このように一切の不調なく。キミこそ元気そうで何よりです」

「そう。試合後にお礼言う前に別れたからな。バタバタも落ち着いたし、ちゃんとお礼を言っておこうと思って」

「キミには一応、ハーフタイム中にも感謝はされましたけどね……キミたちに問題がなさそうなら何よりです」

「それでも改めて言わせてくれ。力を貸してくれて、ありがとう」

「私は当然のことをしたまでですよ。それに、感謝を受け取るのならキミよりもレディーたちからの方が嬉しいですね」

「うっせぇ。……たく、素直に受け取ってくれよ」

「ふふっ、私なりのジョークを交えたつもりでしたが、少々本音を言い過ぎましたかね」

「おい」

 

 そして、少し雑談をする。

 

「さて、次はアルゼンチンエリアだな」

「なるほど、彼に会いにですか」

「そうそう。ただ、もう自分の国に帰っているとかないよな?本戦終わって何日も経っているし……エドガーがちゃんと残っていてくれて良かったんだが……」

「なるほど……その様子だと知らないようですね」

「何を?最近は地上の世界の情報に疎くてな」

「君は普段、何処かの城の玉座で寝ているのかい?」

「その城は魔王城とか言わないよな?」

「おや、自覚がありましたか」

「オイコラ」

「実は、決勝トーナメントに進出できない6チーム……私たちはまだ試合が出来るのですよ」

「え?マジで?」

「えぇ。本来はそのような予定はなかったのですが、決勝トーナメント前に、まだ戦っていないチームと試合をすることが決定したんです」

「つまり、グループが違って戦えなかった奴らと戦えると?」

「そういうことです」

 

 なるほど……本来のタイムスケジュールだと、本戦のリーグ戦が終わって数日後に決勝トーナメントが開催されていた。それが延期してしまった以上、何かイベントを企画している……その一環というわけか。

 

「ただ、私はそのようなイベントがなくても滞在する予定でしたけどね。世界一になるのは誰なのか……この目でしっかり見届けたいですから」

「……そっか。そういや、エドガーってこの大会が終わったらどうするんだ?やっぱり、プロに?」

「既に自国のトップチームで話を頂いています。前向きに検討している状態ですね」

「……なら、次にお前と本気で戦えるのはプロの舞台か」

「……もしや、キミもこちらに?」

「ああ。同じヨーロッパの国だ……きっと戦うこともあるだろうな」

「ふふっ、それは楽しみだ。キミとは大舞台で、あのときの決着をつけたい。今度は私が最後を飾るとしよう」

「それはこっちの台詞だっての」

 

 そのままエドガーと別れる。彼との試合……あの試合は最後の最後までお互いにフィールドに立てなかった。最後の幕引きはオレたちの預かり知らぬところで起きていた……そんな決着。だけど、倒れる寸前の勝負は完全にオレの負けだった。リベンジを果たす……その機会が早く訪れるとありがたいな。

 

「ああ?アヤトか?」

「よぉ、テレス。元気そうだな」

 

 アルゼンチンエリアにて、走り込みをしているテレスと出会う。

 

「何か用か?」

「この前のお礼と必要があればお見舞い。もっとも、後者の必要はなさそうだな」

「あの程度、1日寝れば治るだろ」

「そっか。じゃあ、お礼だけ。ありがとう、力を貸してくれて助かったよ」

「ふん。礼を言われる筋合いなんてねぇよ。勝手について行っただけだ」

「お前も素直じゃねぇな……いや、お前は素直じゃねぇか」

「オイコラ。テメェにだけは言われたくねぇぞ」

 

 そのまま少し雑談を挟む。

 

「そういや、お前たちも試合がまだあるらしいな」

「……そうらしいな」

「何か不服そうだな?」

「当たり前だろ。この前は言っていなかったが、俺たちジ・エンパイアがまともに戦い合えたのはエドガーたちナイツオブクイーンだけだ。それ以外は、どのチームも万全じゃなかった……それなのに、決勝トーナメントに進出出来なかった。俺たちのチームは世界基準で見れば弱かった」

 

 イナズマジャパンとは言わずもがな、オルフェウスともヒデナカタやデモーニオが居なかったし、ユニコーンとは一ノ瀬を抜いた状態……確かに、どのチームも一番強い状態ではない形で戦っていた。

 

「イザヨイアヤト」

「ん?」

「いつか再戦しろ。いつか万全のお前と万全の俺たちで勝負をして白黒つけようじゃねぇか」

「それは望むところだっての」

「……正直、俺は自分の技が世界一の守備を誇ると思っていた。絶対に破られないという自信もあった。どんなシュートも弾き返す無敵で不落の要塞……だが、この大会でそれを真正面から破ってゴールを決めたバカが現れた。しかも、そいつはストライカーじゃねぇって話だ」

「テレス……」

「これでも感謝しているんだぜ?……テメェが必要以上に膨れ上がった自尊心やらプライドやら打ち砕いてくれた。ちゃんと現実を見れた」

「……そっか」

 

 テレスの目に炎が宿る。きっと、あの技が破れたことはオレが思う以上に彼の中でも衝撃だったのだろう。

 

「まだまだ俺は強くなる。万全のお前のシュートを軽々弾き飛ばせるくらいにな」

「それは頼もしい。その必殺技を粉々に砕く日が楽しみだ」

「こっちも、お前がその言葉を吐けないような圧倒的な壁を見せつけてやる」

「またな、テレス」

「ああ」

 

 そして、そのまま別れる。テレスとは純粋なディフェンダーとしての能力という意味でも、勝ち越しているとは言い難い存在。あのチームは彼の圧倒的な守備力ありきのチーム……1つの国が託せるほどの堅牢さ。彼とまた正面から戦える日が来るといいな。

 

「ヘイ、アヤト!元気そうだね!」

「お前らこそな。ディラン、マーク」

「キミも無事なら良かったよ」

 

 アメリカエリアにて、ゴールを前に練習するディランとマークの2人と出会う。

 

「2人とも元気そうで何よりだ」

「オフコース!」

「ああ、元気が有り余っているくらいだ」

 

 そのまま少し雑談をする。

 

「今度の試合に向けてミーの闘志はギラギラに燃えているね!」

「だから練習を……確か、別グループの奴らとの試合があるんだろ?」

「知っていたか……そうだね。キミたちの決勝トーナメントの前哨戦として戦わせてもらうよ」

「前哨戦……」

「そうそう!もう既にミーたちはこの大会の主役にはなれない。だけど!主役の試合よりも熱い試合を見せて!観客たちの心に刻み込むことは出来るね!」

「世界一の座は他国に譲ることが確定してしまった。だけど、世界中の人々の心に、記憶に刻んでやるさ。俺たち、ユニコーンという存在を」

 

 前座が主役を喰らう……か。それに……

 

「他国に()()とか言うじゃねぇか」

「おっと、口が滑ってしまったかな。でもそうだね……ちゃんと最後は俺たちが取り返す。今は明け渡すことになったとしてもね」

 

 マークが笑顔でそう返す。どうにも世界トップレベルの選手たちは、ちゃんと自国のエースである、柱である自覚と自信があるらしい。

 彼らはまだまだ強くなる。話して改めてそう思わされる。だからこそ……

 

「言っておくが、その座を奪うのはオレの仕事だ。奪わないで貰えると助かるよ」

「どういうこと?ユーは世界一になることを諦めたのかい?」

「いいや?イナズマジャパンを世界一にして、オレがその座を奪う。もし、次があるのなら世界一の座を奪うのはお前らじゃなくてオレだってことだ」

「……ははっ、面白い未来を描いているんだね。そんな未来を描く選手が居るなんて思いもしなかったよ」

 

 オレの荒唐無稽とも思える発言を聞いて、オレのやろうとしていることを察した様子のマーク。

 

「よく分からないけど、ユーにもやりたいことがあるってことだね!」

「そうなるな」

「じゃあ、ミーももっと強くなるよ!多分、ユーのやりたいことはミーたちの障害になるからね!次は必ず倒すから覚悟するんだよ!」

 

 シュッシュッと拳を突き出すディラン。彼は頭では完全に理解していないかもしれないが、心ではなんとなく分かったのだろう。

 エキシビションマッチもあるが、それがなかったとしてもこの2人は……いや、2人を含めて、エドガーもテレスも誰も腐らなかったんだろうな。敗北を味わい、各々が強くなろうとしている……その熱量は油断なんて出来ないレベルで……

 

「良かったよ、お前らと戦えて。最高の友に出会えて良かったよ」

「ミーもユーたちと出会えて良かったよ!世界にはまだまだ面白そうな選手が居る!だけど、ミーたちだって負けていないよ!」

「ああ。彼らを全員倒して、次こそ頂点を掴むのは俺たちだ」

「じゃあ、見させてもらうよ。その熱が嘘じゃないことを」

「ユーも見せてくれよ?その言葉が本物ってことをさ!」

「悪いが俺たちも世間の声と同じ意見だ。……イナズマジャパンはザ・キングダムに負ける。君たちの強さを知ってもやはり彼らには届かない……だから、見せて欲しい。その声を覆すだけの、黙らせるだけの力があるかどうかを」

「任せておけ」

 

 そのまま2人と別れようとして思い出す。彼らには宣言をしに来たわけじゃない。本題があったことを。

 

「ディラン、マーク……ありがとう。力を貸してくれて、すごい助かった」

「お礼なんていらないよ!友達を助けるのに理由は要らない……そうでしょ?」

「同意見だ。俺たちは当然のことをしたまで。感謝は必要ないよ」

「どいつもこいつもなんで素直に受け取ってくれねぇんだか……まぁいいや。応援している、今度の試合も頑張れよ」

「ユーたちも頑張れよ!」

「ああ。メインはキミたちなんだからさ」

 

 そして、今度こそ2人と別れる。

 

「フィディオ、ちょうど良いところに」

「アヤト?もしかして、何かあったか?」

「いいや。ちょっと顔を見に来ただけだ。あの試合で後に引きずるような怪我をされたら困るからな」

 

 そのままやってきたイタリアエリアにて、フィディオと出会う。

 

「それを言うならアヤトたちの方が心配だよ。キミは……」

「この通り、完全復活している」

「そうだね。マモルの腕は大丈夫?」

「ああ。ちゃんと完治したよ」

「そう……それなら良かったよ」

 

 ホッと胸をなで下ろすフィディオ。よく考えなくても、一番後に影響が出そうな怪我をしたのって円堂なんだよな……大丈夫って知っていたから何も気にしていなかったけど。

 

「ありがとな、フィディオ。力を貸してくれて、凄い助かった」

「どういたしまして」

「……お前は素直に受け取ってくれて良かったよ……」

「え?」

「他の奴らはどいつもこいつも素直に受け取ってくれなかったからな……」

「あはは……でも、アヤトも逆の立場だったら素直に受け取らないでしょ?」

「そうでもねぇよ」

「じゃあ、今更だけどチームKとの戦いでは力を貸してくれてありがとう、って言ったら?」

「別に。オレはやりたいことをやりたいようにやっただけだ」

「ほら。やっぱり、キミも素直じゃない」

「…………」

 

 え?もしかして、感謝って素直に受け取るの凄い難しいことなのでは?

 

「だけど、その気持ちは一緒だよ。俺も彼らも、自分たちが戦いたいから君たちと戦った。友達のために戦うと自分たちの意志で決めて、その通りに戦っただけで、大層なことはしていないよ」

「……そっか」

「そういうこと」

 

 そのまま雑談を少し。

 

「そう言えば、決勝トーナメントにはナカタは出るのか?」

「ううん、出ないみたい。正式にキャプテンの座を俺に渡して、去って行ったよ」

「そっか……アイツにもリベンジを果たしたかったが……会う機会があったら、無理矢理にでも出させようかな」

「あはは……こればかりはキャプテンの意思もあるからね。だけど、リベンジを果たすのはまだまだ先の話になると思うよ」

「へぇ?どういう意味で?」

「……世界一になるのは俺たちだ。だから、その願いは果たせない」

 

 フィディオの言葉に思わず笑ってしまう。

 

「ハハッ、じゃあ見せてくれよ?影山とナカタが居なくて弱くなったんじゃ、リベンジを果たしてもつまらないし、その舞台に上がれなければ意味ないからな」

「そうだね。次の試合で見せるよ。俺たちがあのときよりも強くなっているところを」

「そうだな」

 

 きっとフィディオは知らない。次に彼らが戦う相手は、今までのどのチームよりも圧倒的な強さを持つことを。……でも、何でだろう。たとえ勝率が限りなくゼロに近いとしても、彼らなら何かを起こしてくれる……そんな気がする。

 

「フィディオお兄ちゃん!それに、アヤトお兄ちゃんも!久し振りに会いに来てくれたの!?」

「久し振り……って、言うほど空いたっけ……?」

「うーん、1週間は空いてたと思うから……」

 

 と、フィディオと話していると元気そうに少女が駆け寄ってくる。

 

「すっかり慣れたようだな」

「もうバッチリだよ!」

「良かったな」

「うん!」

 

 しゃがんで彼女と目線の高さを合わせる。その少女……ルシェは年相応の笑みを浮かべ、笑顔をみせる。目が無事に見えるようになって何日か……彼女はもう普通の女の子として暮らすことが出来ているのだろう。見えるようになった目にも慣れてきて、笑顔も戻って……本当に良かった。

 

「ねぇねぇ、アヤトお兄ちゃん!」

「何だ?」

 

 そうしみじみ思っていると、衝撃的なことを言われる。

 

「この前魔王を倒しに行ったんでしょ!そのときの話をしてよ!」

「…………え?」

 

 何でルシェが知ってるの?そう思ってフィディオの方を見ると……

 

「あはは……実は、あの日。イナズマジャパンのバスで運ばれたのを、チームメイトと一緒に見られちゃってね……」

「……そういうこと」

 

 あの試合はオレだけでなく、海外勢も満身創痍で倒れていたそうだったし……うん。しかも、それだけボロボロになったのが魔王と試合したからって、監督たち大人が話せば荒唐無稽な話だと一蹴されないだろうし、彼らはチーム内でもかなりの信用度を誇る。大人たちの証言に本人たちの言葉が加われば間違いないだろうな。

 

「いいよ、分かった」

「やった!じゃあ、フィディオお兄ちゃんと3人でお泊まりだね!」

「どうせなら、オルフェウスのメンバーも呼ぼうぜ。賑やかな方が良いだろ」

「え!?いいの!?」

「うん。俺から声をかけておくよ」

 

 この後、オルフェウスメンバーとのお泊まり会はルシェが騒ぎ疲れて眠るまで続いた。

 そして、翌朝。マグニード山に行くと……

 

「元天空の使徒の面子と元魔界軍団Zの面子は、共同でヘブンズガーデンで暮らすことにしたんだ」

「…………は?」

 

 何か仲良くなっていたセインとデスタにそんなことを言われた。よく見ると、イナズマジャパンのメンバーとも仲良くなっていて……え?君たち和解したの?何でたった半日でここまで仲良くなっているの?……もしかして、オレだけ仲間外れ?仲良くないのオレだけ?……いや、今までの確執を全部吹き飛ばすとか一体、何やったんだよ円堂のヤツは……

 というか、そのせいで設計図の修正作業から始めないと行けないし、資材も追加で注文しないといけないんだけど?テメェら絶対手伝えよそうじゃねぇと終わらねぇからな?

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