時は円堂たちの試合が始まった時間まで遡る。
「さてと、お手並み拝見ってところか。実力みせて貰うぞ、L」
「うーん、シスター。これ、何処まで力を出していいやつ?」
「好きにして」
「余裕で居られるのも今の……っ!」
相手選手からボールをあっさり奪ったL。
「だったらさ、十六夜綾人。暇だし勝負しない?」
「勝負?」
「うん、勝負。どっちがこの
十六夜に話をしながらもLは淡々と相手を突破していき……
「ほい1点」
あっさりとゴールを決めた。1-0で残り9点。
(へぇ……八神を軽くあしらえる実力って言うのは嘘じゃねぇな……。テクは本物でスピードもフィジカルもそこそこある……ざっと分析した感じ、能力値はかなり高いなコイツ。それでいてまだ本気を出していねぇ……遊んでいるか……)
「で?この勝負乗る?」
「そうだな……いいぜ。なんだか予想より弱いし、ただ戦ってもつまらなさそうだ。その遊びの誘いに乗ってやるよ」
「ふざけたことを……まだ1点だ!今のは油断していたに過ぎない!」
相手のキックオフで試合再開。
「そういうのダサいけど?戦場で油断したら死ぬに決まってんだろバーカ」
「ちょっ、キーパー……!?」
「2人しかいねぇのに律儀にキーパーとか守るかよ……っ!?」
十六夜があっさり相手選手からボールを奪った次の瞬間、十六夜は伸びてきた足に驚きを見せつつ、ボールを後ろにやってキープする。
「オイコラL……テメェ、何しようとした?」
そして、頬をピクピクさせながらそう言った。
「何って、十六夜綾人からボールを奪おうとしたかな」
肩をぶつけながら悪びれる様子なくそう言って続ける。
「このままじゃ、十六夜綾人が決めるじゃん?点を多く取った方が勝ちで、向こうの人たちじゃ止められない。じゃあ、俺が阻止するに決まっているでしょ!」
「ハッ……そういうルールなら先に言えよ……いいぜ、潰し合おうかL!」
「そうこなくっちゃ!精々、俺を楽しませてよ!」
そして、2人の戦いは過熱する。
「オラッ!」
十六夜が1点決めれば……
「ソラッ!」
Lが1点決め返す。
(お、おかしい……どういうことだ!?十六夜綾人のデータと違う……!?我々が得ているデータではあんなプレーはしないはず……!?)
そんな様子に相手は困惑を隠せない。
(我々は当初、帝国との練習試合を始め、フットボールフロンティア全国大会に介入する予定で進めていた。何故かそれは叶わなかったが、我々はちゃんとフットボールフロンティア世界大会のデータも得て、解析班を始め分析をしてきたはず……だからこそ、おかしい!この男、得ているデータとプレーの質が異なりすぎている!)
「まぁ、不思議に思うよね。ブラザーから勝負を吹っ掛けたけど、それにしても、あの2人は協力しないどころか嬉々として互いからボールを奪おうとする始末。十六夜綾人も乗り気なのは、円堂守とある意味で同列扱いしているあなたたちでは理解不能」
フィールドでは2対11ではない。1対1対11の戦いが起きている。
「あなたたちの世界線はサッカーのせいで人類が弱体化した……十六夜綾人が円堂守の意思に心の底から染まっていたままの世界線ってところ。でも、残念。この世界線の十六夜綾人はある意味で円堂守と対立している。これはこの先も、十六夜綾人と円堂守は心の底から互いに染まらない」
もはや11人は居ないも同然だった。余りにもレベル差があり過ぎて、戦いにすらなっていない。
「あなたたちが得ているのはあなたたちの世界線の彼らのデータ。でも、こちらの世界線ではその多くが無意味になる。……そして、そのせいであなたたちは間違えた。十六夜綾人を円堂守とセットで考えていたあなたたちは、彼らを切り放し個々で倒すことを選んだ。そうすれば、倒しやすいと踏んで……それは意味のない選択。それは簡単に読める選択……まぁ、精々」
「ラスト1点……!」
「決めるのは……!」
「「オレ/俺だ!」」
お互いを手で制止ながらもつれ合うようにして同時に足を振り抜く。2人によって放たれたシュートは相手キーパーの伸ばした手を弾きゴールに刺さる。
「利用してあげるからちゃんと踊ってね。哀れなお人形さんたち?」
10点先取……かかった時間3分と少し。あまりにも呆気なく、圧倒的な差を持って十六夜綾人とLの2人は勝利を収めた。
「ッチ。ラスト1点は同時か……ありゃ、互いに0.5点でどうだ?」
「そう?だったら、5.5対4.5で俺の勝ちだね」
「8割」
「ん?」
「良くて8割だろお前。必殺技等を使っていないのは当然として、全力は出していない」
「さぁ、どうかな。でも、十六夜綾人も似たようなものでしょ?おもり、付けたままでしょ?」
「ん?ああ、外すの忘れてたわ。だとしても、今回は負けでいい」
「そう?最初の1点とかルール言う前だったからごねてくるかと思ったけど」
「こんなお遊びの勝利そこまでの価値はねぇ。互いに本気を出していない以上、こんなの茶番。勝っても負けても何もない無価値な戦い。まぁ、お前の実力の一端を見れただけで儲けものだと思うし、それに……」
「それに?」
「円堂も試合しているんだろ?そっちに乗り込むぞ。本隊がどれだけの強さか知らん以上、ここで雑魚相手に体力も時間も消費する意味はねぇ」
「へぇ、俺との勝負より円堂守たちを優先か……」
「ああ?アイツらがいなきゃ、イナズマジャパンは成り立たねぇだろ。そしたら、世界大会で戦えなくなる。アイツらはオレが頂点に立つのに必要だからな」
「ふぅん。取り敢えず、君たちさ。通信しようと思っているだろうけど繋がらないよ?」
と、オーガの分隊の面々に声をかけるL。
「な、何故だ……応答がない」
「そりゃそうだよ。始めから妨害工作はしてあるからさ」
「「「……っ!?」」」
「な、なら!せめてここで……!」
リーダーらしき男が警棒らしき武器を手に十六夜を襲う。その武器からはバチバチと音を立て、電気が迸る。
ガシッ!
「なっ……!?」
ドンッ!
しかし、十六夜は冷静にその武器を躱すと、そいつの顔面を鷲掴みにして地面に叩きつけた。
「ゴハッ!?」
「やめろよ、往生際が悪い。テメェらは勝負に負けたんだ。敗者が勝負の結果ガン無視で突っかかってくるんじゃねぇ」
押さえつけられた男が武器を十六夜にぶつけるよりも早く、十六夜は顔面を掴んでいる手からバチバチと電気を迸らせる。
「あばばばばば!?」
「ザ・タワーの雷……ゼロ距離で喰らったお味は如何かな?」
「リーダー!?このバケモノが……!」
「なんて男だ!こんなのあんまりじゃないか!」
「捕らえろ!こんなのを野放しにしては危険だ!」
「お前だけは行かせない……!」
「戦闘準備!数はこちらが上なんだ!」
「生死は問わない!ヤツをここで抑えろ!」
それを見て残りの10人も臨戦態勢を取る。各々が隠し持っていた武器を取り出し、立ち上がったバケモノと向き合う。
(何だよこいつら、ここに閉じ込めたあげくサッカーで負けておいて往生際が悪いな。オレたちが勝ったら解放するって約束何処に消えた?……おかしい、この世界はサッカーの勝敗だけには従順じゃないのか?)
「ハッ、最初からリアルファイト希望ならそう言えよ……3秒やる。跪き懺悔し命乞いしろ」
「誰が従うか!」
「そっか……」
ふぅと息を吐いて、相手を見据える十六夜。その顔には何処か残念と書いてあるようだった。
「…………」
そして、十六夜が一歩踏み出したタイミングで、Aが行く手を遮るように手で制する。
「あなたが出る幕ではないわ。あなたが出たらやり過ぎちゃう」
「そうだね。もう君たちは眠っていていいよ。おやすみ」
次の瞬間、Lは残りのオーガの分隊に向け何かを発する。すると、弾き飛ばされたように飛んでいき、
「「「ぐはっ……!?」」」
10人がスタジアムの壁に激突した。フィールドの壁にはクレーターが10個出来る。
「君たち程度じゃ敵としての格が足りないよ」
「……え?」
「心配しなくてもちょっと寝ててもらうだけだよ。そして……」
「ゴーストミキシマックス」
倒れ伏す11人の兵士たちにAから光が降り注ぐ。すると11人がゾンビのように起き上がる。目は虚ろで光が灯っていない。
「あなたたちはただの傀儡でいい。自我も能力も何もいらない。そして、おいで、デュプリ」
と、Aの背後に現れたのは……
「……え?オレ?どういうこと?」
十六夜綾人とLにそっくりな男子2人だった。これには十六夜も驚きの声を上げる。
「これはデュプリと呼ばれる存在。正確にはその上位存在のメモリーデュプリだけど……そんな些細なことはいいよ。十六夜綾人にも分かるように伝えるなら、私が生み出したあなたたちの偽者。化身の一種ね」
「お、おう……そうなの?って、化身って何?」
『それは後に分かる』
「うわっ!?え?お前喋るの?」
「私の記憶にあるあなたたちの情報を基に完璧に再現した存在。会話もある程度は出来るし、自律して動ける。そこまで行くと自我があるように見えるけど、ちゃんと私の支配下にある。だから絶対に逆らえない」
「うわぁ……つまり、お前が生み出したオレたちの分身ってことで良さそう?」
「その認識でいいわ」
「え?お前の下僕になっている気分になるからちょっと嫌なんだけど。チェンジで」
「あなた自身を下僕にしてもいいんだけど?」
「主人がお前とか絶対嫌だな。立場チェンジで」
「ここで上下関係を分からせてやろうかしら」
「まぁまぁ。ちなみに、シスターの生み出す彼らはオリジナルの必殺技も一部を除いて使うことが出来るよ。シスターの記憶から生み出した存在だからね」
「はぁ……よく分からないけど……もしかして、お前がコレで9人生み出していれば11人対11人の普通のサッカーが出来たんじゃ……」
「いやよ。面倒くさい」
「え?凄い楽に生み出していたけど……」
「一応体力使うからね。それに、11人対11人の30分ハーフで試合したら、もっと凄惨なことになっていたでしょう?」
「違いない。無駄な時間が増えていそうだ」
そして、Aが2人に増える。
「これもデュプリ?」
「ううん。分身」
「…………」
そのままデュプリの十六夜とLは操られた11人と試合を始める。それを見守る分身のAと本物の3人。得点は0ー0となっていた。
(何かデュプリって言うオレたちの偽者を生み出せるし、自分は簡単に分身してみせるし、もう何だろう……Aって本当に人間かな?人外の所業だろ)
「ちなみに、あなたもデュプリをいずれ使えるようにさせるし、分身もさせるわ」
「…………はい?」
「スカイウォークは身に付けられたでしょう?分身もいずれ使えるようにさせるわ」
「……お、おう……そんなこと言っていたなぁ……ところでLは出来るのか?」
「ん?俺はこんな精度の高いデュプリは生み出せないし、分身も出来ないけど?」
「おい……って、空は歩けるのかよ」
「そりゃぁ、便利だからねぇ」
「…………」
(便利で空を歩けたら苦労しねぇんだよ)
「でも、ブラザーは念動力やテレパシーを使えるわ。私には出来ないもの」
「…………」
(あぁ、さっき吹っ飛ばしていたなぁ……じゃねぇよ。普通は出来ねぇんだよ)
「まぁまぁ、シスターが特別なんだから。俺なんて普通のセカンドステージチルドレンが使える程度の能力しか使えない。シスターはそれらの多くが使えない代わりに、俺たちに出来ないことが出来るんだから」
「…………」
(……コイツら、もしかしなくともヤバいか?何なんだこの人外ども……つぅか、セカンドステージチルドレン?何だそりゃ……コイツら本当に何者だ……?)
「さてと、さっさと走るよ。今から行けば前半の間には余裕で着くわ」
「お、おう……」
「十六夜綾人、結界に向けてキック」
「はいはい」
パリンッ!
目の前の結界の一部が砕け散り、人が通れるだけの隙間が出来る。そこからオレたちは飛び立つのだった。と言うか、今更だけど蹴って壊れる程度の結界なら勝負を引き受ける必要なかったんじゃね?
「到着しましたよっと」
「そうだな……って勝ってるじゃねぇか」
円堂たちの戦うスタジアムの観客席に着くオレたち3人。そこで見えた電光板の点数は3-0とイナズマジャパンが優勢である。
「本隊がこの程度ならわざわざ来なくて良かったかもな……」
「ふふっ、それはどうかしらね」
「ああ?」
不敵な笑みを浮かべるA。さてはコイツ……何か企んでいるな?
「そうかよ……なら帰るのはお前の企みを見てからにするよ」
「賢明な判断ね。そうじゃないと、あなたはFFIで戦えなくなるもの」
「そうだろうな。ここからオーガが何らかの手段で逆転勝利しようものなら円堂からサッカーが捨てられる。そのことはイナズマジャパンが崩壊することに等しい」
「そうね。でも、それだけで終わらない。その余波は至る所に響いてくる。少なくとも、あなたは関係ないなんて絶対に言えなくなる」
円堂からサッカーが消える……イナズマジャパンを始め、日本という国のサッカーが大きく変えられてしまうだろう。一国のサッカーが大きく変わる……その影響は未来において、オレという人間に響く可能性は十分にある。あるんだが……
「ただ、3点差で試合内容も正直イナズマジャパンが圧倒している。魔王様みたいにお前が力を与えないと逆転出来ないレベルの差だろ」
「そうね。でも、今回はそんなことしないわ。連続して同じ手を使うのはつまらないでしょう?だから、彼らには手出しをするつもりはない」
「ああ?じゃあ、どんな企みをしているんだよ」
「それは見てのお楽しみ。後半になれば出てくるわ」
ポンポン、と自分が座っている隣の席を叩く。座れってことだろう。オレはそれに従い、隣にはLも腰をかける。左右をAとLに挟まれる形だ。出てくる……彼女の言葉に引っかかりを覚えながら試合を眺める。
そして、時は前半終了間際。ボールは八神が持っていた。彼女のドリブルは彼らを圧倒している。
「八神をあんなザルどもで止められるわけねぇだろ」
「流石だね。こうして見ると、彼女のレベルも格段に上がっている」
「そうね。あなたの強化作戦がうまく行っている証拠かしら」
「ああ、お前が特訓してくれているんだっけ?」
「そうだね。特訓してくれていると言われると、何だか善意でやっているみたいで気が引けるけど……」
「本人の望む強化ならこれからもよろしく頼むよ。……ただまぁ、もし裏があってそれが彼女に害を為すなら容赦なく潰すけど」
「おぉ、怖い怖い。でも、心配しないでいいよ。俺たちにとっても八神玲名は大切な存在なんだ。そんな存在に危害を与えるつもりはないよ」
「そうかよ」
いつの間にかタブレットを持っていたLがそんなことを笑顔で言う。何か、Aのオレに対する扱いと大きく違うような気がするけど……いいか。不思議とコイツの言うことも信じられはする。何もないならそっとしておくのが吉か。
と、そんな中、八神はキーパーと2人のディフェンダーを前に急停止し、体を屈めて力を溜める。それと共に宇宙服を身に付けた5羽のペンギンを足元から呼び出し、ボールと共に上空へと打ち出す。打ち出した先は満月が青く輝く夜空。ペンギンたちが蒼い満月の下でボールを周回しているところに背面跳びの格好でボールの下に回り込み、オーバーヘッドキックを放つ。
『ブルームーン!』
シュートと同時に宇宙服を弾き飛ばしたペンギンたちは、蒼い光を放ちながらボールと共にゴールへと突き進む。
『ハイボルテージ!』
一方の相手キーパーは両手にそれぞれ2人のディフェンダーを乗せ、必殺技を放つ。しかし……
『ぐあああああっ!?』
現れた電気の壁をペンギンたちが貫き、シュートはゴールへと突き刺さる。4-0。ベンチでもフィールドでも今の得点に盛り上がりを見せる。
ピ、ピー!
前半終了のホイッスルが鳴り響く。
「八神玲名の必殺技……うん。あの技を破れるレベルのシュートを身につけているなら強化はうまく行っているわ」
「そうだね。今、オーガ側からの映像データを拝借して確認し終えた。得点の詳細はこんな感じ」
「……そう。知っていたけど確認ありがと。この面子が決めているのなら、ちゃんとイナズマジャパンの強化は進んでいるわね。必殺技的にもちゃんと成長を遂げているみたい」
「やっぱり、オルフェウス戦の敗戦と、十六夜綾人との問題と、この前の天使悪魔とで、彼らは今以上の進化を求められていることを理解している。その影響がこうして純粋なオーガとの試合で圧倒という結果に繋がっているんだろうね」
「そうね。フルメンバーではないこの状況でここまで戦えているのなら上出来。だからこそ、私の用意したモノが意味をなす」
「ほんと、無駄にならなくて良かったよ……って十六夜綾人?聞いている?いや、聞かなくてもいい話なんだけど……」
「……ああ、悪い。何か話していたか?」
「話していたかって……いや、君が知る必要ないから良いんだけど……」
「大方、八神玲名の技に見惚れていたんでしょ。彼女の技には強さだけでなく、確かな美しさがあったしね」
「……そうだな。当てられたのはシャクだがその通りだよ」
何というか、その技に……いや彼女に魅せられた。もちろんそんな意図がないことくらい分かるが……それでもオレは目が離せなくなっていた。そうか……
「ははっ」
「え?急に笑い出して気持ち悪い」
「うっせぇ。……やっぱり、最高の彼女だよ」
不器用ながらも約束を果たそうと一途で、彼女なら本当にオレの隣に立ってくれそうだ。順位も優劣もつけたくはないが、きっと彼女は同じフィールドに立ち、隣で戦ってくれる存在……そんな感じがする。だからこそ、オレももっと強くならないとな。あんな良い彼女が隣に立ちたい、追いつきたいと思えるレベルにならないとな。
「そう。それより来るわよ?私の用意したとっておきのモノ」
「は?来るって……」
と、その言葉に反応したときフィールドの上空からコートへと4本の太い光の柱が降りてくる。そして、次の瞬間、
ドンッ!ドンッ!ドンッ!ドンッ!
4回の地響きがフィールドを襲う。光の柱の先では砂煙が立ちこめていた。
「ちょっ……何だあれ?」
「文字通りの秘密兵器」
「は?秘密兵器って……」
煙が晴れたとき、そこに立っていたのは……
「ロボットだと!?いや、ユニフォーム着ているけど……はぁ!?まさか、アレらが参戦するのか!?」
「そうね。でも、ただのロボットじゃないわ。その特徴をよく見てみなさい」
「特徴……って、あのツンツンヘアーは豪炎寺!?隣のゴーグルにマントは鬼道か!で、横が吹雪で……最後が誰?」
「あなたよ、十六夜綾人」
「はぁ!?つぅことは……偽物!?」
ガタッ、と思わず立ち上がってしまう。目の前に自分そっくりのロボットだと……そんなの……
「今から乗り込む!自分のロボットと
「ストップ」
ガタッ!と思わず立ち上がって身を乗り出したところ、Aが服の裾を掴んで下に引っ張る。
「ぐぇっ」
「座ってなさい。あなたが戦うには早すぎる……それに、今行ってもどうせベンチよ?」
「……うぐっ。確かにそうか……」
向こうがどれだけの情報を得ているか知らないが、久遠監督のことだ。今の点差を考えるとオレが行ったところで今すぐに出す必要性はない。それに、目の前に現れた謎のロボットどもの分析を進めるという意味でもベンチの方が都合が良いはずだ。
「分かったよ」
そう言って腰掛ける。
「まぁ、あの偽物たちの実力によってはオレの出る幕ないしな」
「その通りよ」
オーガ側はロボットを4体投入し、選手交代が行われた。一方のイナズマジャパンは交代なし……と言うより、人員不足で交代ができないようだ。さきの特訓で疲弊しきった彼らはこの試合出せない……出せるなら八神が出ているわけがない。そういうことなのだろう。
そして、後半が開始する。
『マキシマムファイア』
『風神らいじ――っ!?』
早々にメカの豪炎寺と鬼道の連携により、オーガ側に1点が入る。
『氷結ノグングニル』
『風神雷じ……あっ!?』
続けざま、メカ吹雪によってオーガ側に2点目が入る。あまりにも呆気ない2失点。だが……
「強さとしては十分……って言いたいが、ちょっと弱いな。物足りない」
「そう?」
「オリジナルの分析はちゃんと出来ているようだが……それにしては簡単に対処できる程度。今の2失点も円堂の技の発動の溜めが長いという弱点をついたに過ぎない。そして、その弱点をついた程度ならアイツ1人で解決できる。実際、2失点目の時点で動きを見せていたしな」
「そうね」
「その上、少なくとも3体の動きのプログラムぐらいは鬼道や不動は気付いているだろうが、あまりにも単純でつまらない」
「そうね。ノーマルモードのアレらは単純なプログラムを基にしか動けない。タネさえ分かれば対処は容易。この程度じゃイナズマジャパンの勝利は揺るがない」
「だろうな……ってノーマルモードだと?まるで別のモードがあるみたいじゃねぇか」
「ふふっ、それは見ていれば分かるわ」
不動の策が嵌まったのか、ボールを奪うことに成功したイナズマジャパン。ここからシュートまで持ち込む……
『ペンギンカーニバル』
と行きたい気持ちを挫くようなペンギンたちの突撃。フィールドの10人をなぎ倒していく。
「ひでぇ技だな……ボール保持者以外も全員なぎ倒すとか……」
「そうね。別の世界線だとアレは必殺タクティクス……数人がかりで発動するもの。それをたった1体で可能にしている」
「数人がかり……ねぇ」
『マキシマムファイア』
『今度こそ!風神雷神!』
メカ豪炎寺がシュートを放つも、発動短縮に成功した円堂の必殺技がそれを受け止める。
「そもそもあのメカたちは何なんだ?偽物にしてはさっきからオレたちの覚えていない技を使っている。本物を真似する気があるのは見た目だけか?」
メカたちが使っている必殺技はいずれも本人が覚えていないもの。ただ、プレーの傾向……スタイルは多少ベースにしているのか、似ている部分があるがそれまでと言ったらそれまで。
「そうね。パラレルワールド……もしもの世界。そのもしもの世界であなた含む彼らが覚えている技よ」
「……つまり、この世界のオレたちとは違う自分たちを参考にしていると」
「その通り。もちろん、この世界の今のあなたたちが覚えている技も覚えている。ただ、必殺技のスペース的に1枠だけね」
「必殺技のスペース?」
「人間みたいに沢山使えるわけじゃない。彼らは4つの必殺技を覚えている」
「いや、4つ使えりゃ十分だろ……はぁ、頭が痛くなりそうな話だな。まぁ、あのメカたちは明らかにオーバーテクノロジー。100年は先の技術ってところだ。そんな奴らが別の世界線の自分たちを参考にして作ったって言われても驚かねぇよ」
「あぁ、説明不足だったわね」
「不足しかしてねぇだろ。で?何が?」
「あれを彼らに提供したの私よ」
「…………」
ああ、そうだったのか。コイツが招いたことだったのか……
「……確かに辻褄が合うか」
「凄い切り替えね。普通なら『お前が元凶か!』って怒るやり取りがあるものじゃない?」
「無駄だろそんなこと」
「で?何に納得したの?」
「もちろん、お前がオレを引き留めていたことも如何にも自分が用意したって発言もそうだが……一番は数が足りなくて、中途半端なんだよ」
「どういうこと?」
「もしもあのオーガの奴らが用意したモノなら、たった4体だけとか舐めているだろ。11体用意すればいい。もちろん、あんなモノが量産出来ないのなら話は分かる。だが、それでもやっぱりおかしい」
「何処もおかしくないんじゃない?」
「よく考えろ。サッカーを消す対象であるオレのメカがあって、何で円堂のメカがないんだ?しかも、相手のキーパーの技はイナズマジャパンに通用しない……存在するなら投入するはずだし、作る優先度はオレと同等以上で高めなはずだ。……だから、奴らにとってもあのメカはオーバーテクノロジー。或いは試作中で実戦投入を見送っているかのどちらか」
「なるほど……いい推理ね。その通り……だから、オーガ側も上手く使えない。最初で最後の実戦投入だからね。残りの7人が殆ど空気になっているのがその証拠」
「そうだな。ヤツらは上の方の兵士って言ったところ。統率はあるが、未知の異分子を扱い支えるような訓練は受けていない。だからフォローも完璧には熟せていない」
「それと円堂守のメカがないって話だったわね。それはワザと。だって、そんなの投入したらイナズマジャパンの勝ち目はない」
「最強のキーパーまで参戦したら点の取りようがない。いよいよ勝機がないってか」
「そういうこと」
フィールドでは、メカ十六夜のペンギンズバスターとメカ豪炎寺、メカ鬼道によるプライムレジェンドのシュートチェインで1点を真正面から奪ったようだ。
「4つの技って言っていたけど大丈夫そうか?既に3つ割れているし、円堂から単独でゴール奪えそうか?」
「無理でしょうね。見せていない技では破れないもの」
「だよな。だったら、耐えれば勝ちってところか?今のシュートチェインも対策そのものは簡単な部類だし」
「そうね……ノーマルモードのままじゃ無理でしょうね」
「さっきから言うノーマルモードって一体……?」
『『『『ハイパーモード、起動』』』』
「モードチェンジしたな」
「そうね」
『コイ!ペンギンノ王者(エンペルト)!』
メカ十六夜の後ろに現れた影がペンギンの形を為す。
ドクン――
「っ!?」
それを見た瞬間、オレの中の何かが反応する。その何かが今にも暴れ出しそうな感覚が襲ってきて、咄嗟に自身の胸を押さえ蹲る。
「十六夜綾人?大丈夫?」
「化身の共鳴反応ね」
「共鳴……もしかして、化身を覚醒させるために彼らを?」
「そうね……十六夜綾人は化身使いまで後、二段階ってところ。今、必要なのは本物の化身との対峙……化身擬きはちらほら居るけど完全に化身を覚醒させている者はいない。だから、ちゃんと覚醒した化身を出現させることで、十六夜綾人の中にある化身を呼び起こす」
「フィールドでも何人か反応を見せたみたいだね。程度はあるけど、自分の中にある種が影響を受けているみたいだ」
「それは正直どちらでも良いわね。でも、これならあと一歩で行けるかも」
「その一歩って?」
「ふふっ」
苦しみが徐々に収まってきたが……何か人が苦しんでいる隣で談笑しているヤツいなかったか?
「何笑っているんだ?」
「計画が上手く進んでいるから。笑みもこぼれるわ」
「…………」
オレの隣に黒幕が居る件について。いや、両サイドの間違いか?コイツら本当に……
「つぅか、何だよあのパワー。必殺技なのか?」
「さっきも言った化身と呼ばれるモノよ。必殺技とはちょっと違う……物凄い強力な存在とでも思ってくれていいわ」
「いや、それにしても強力すぎだろ。あの化身とやらの必殺シュート、止められるか?」
「今のあなたたちのレベルじゃ難しいんじゃない?全員が本調子でフルメンバー、その上でシュートブロックを重ねがけして良い勝負出来るかって感じ?」
「つまり、今のオレたちでは止められないってわけか。それに、強力なシュートもだがパワー含め全ステータスが上がっている……ハイパーモードとやらか化身か分からないが……」
メカ十六夜が発動した化身のシュートで同点に追いつかれ、メカ豪炎寺の発動した化身もゴールをこじ開け逆転。ここに来て1点を追う展開になってしまった。
ガタッ
「座りなさい、十六夜綾人」
「流石に今のままじゃ負ける。今から乗り込む」
「何度も言わせないで?……座れって言っているの」
Aから圧を感じる……が、それを無視して動こうとする。
「ブラザー」
「こうなると思ってたよ!」
「……っ!?」
突然のことだった。自分の身体を地面に押しつけようとする力。思わず膝をつき動けなくなってしまう。
「さっきの念動力か……!」
「ゴメンね。なるべく手荒な真似はしたくないんだ。大人しくして欲しいな!」
「っ!」
一層力が込められる。膝だけで無くそのまま手も地面に着き、身体を支えるのがやっとだ。
「もう少し待ちなさい、十六夜綾人」
「何でだよ……!こうしている間にもう1失点しているんだぞ?これ以上の失点は致命的だ」
メカ吹雪の化身がゴールをこじ開け2点差に広がる。
「知っている」
「だったら……!」
「悪いけど、これって円堂守の戦いなのよ。十六夜綾人の戦いは既に終わっている。確かにこの試合に負けて彼からサッカーを奪われたら、あなたに影響は出る。でもね、これは彼らの始めた試合なの」
「だからって……!」
「今から乗り込んで、あなたに頼って逆転して勝つって未来が訪れたとするわ。結果だけ見ればそれで良いんでしょうね。円堂守は今まで通り仲間とサッカーを続けることが出来る。誰も傷つかないし、何もなくさないハッピーエンド」
「その未来をたぐり寄せねぇと、後は全部バットエンドだろうが……!」
「…………でも、それでいいの?あなたが仲間だと信じたい彼らは、あなた頼りのハッピーエンドが訪れて、今回も大変だったけど皆の……あなたの力で勝てた。……そんなことで満足する程度の存在でいいの?」
「……っ」
「今は大ピンチでしょうね。そんなことは誰もが分かっている。だけど、こんなピンチの中で何も事を為せず、あそこに居ないあなたに頼って、無様な姿を見せるような弱者たちを……あなたは仲間って思える?」
「……思えないな」
「そういうこと。後半に入ってイナズマジャパンは1点も取れていない。よく分からないメカが来て、化身なんて未知のモノも出てきて、コンディションは万全でなくて、負けたらサッカーを奪われるなんて、泣き言の1つ2つ言いたくなる。……だけど、このまま何も出来ずに負けるなら、そんな程度の人たちあなたの仲間になれるはずがない。誰かに縋り頼り泣きつくようなチームが世界一なんて夢のまた夢。……違う?」
「……違わねぇな」
「私はね。あなたに戦うなって言っているわけじゃない。彼らを見定めろって言っているの。あなたと円堂守がぶつかって、和解してそこそこの日数が経過した。良い機会じゃない?この絶望的な壁に折れるか、それとも何かを見せるか。……というか、ここで彼らが負けたらこの大会で戦えなくなるって言っているけど、別にあなたが世界一になるのはこの大会じゃなくてもいい。相応しい仲間を集めて、相応しいチームで次の機会を伺えば良いんじゃない?」
「………………分かったよ」
ドンッ!
「え?」
手を勢いよく離し、そのまま膝を持ち上げ足を踏み抜き、勢いよく立ち上がる。
「もういいL。頭冷えた。今すぐ跳んでいかねぇよ」
「いや……え?何でこの力を前に立ち上がれたの?」
「いい加減慣れた。悪いけど、オレを縛り付けるにはこの程度じゃ足りねぇよ」
「あ……うん。……割と本気で押さえつけたんだけど……この力に生身で反抗できるとか、やっぱりバケモノか」
「今回は大人しくお前に説得されてやるよ、A」
「そこはあなたの意見に感動し賛同しますでしょ?」
「うっせぇ」
「あと、跳んでいくならおもり外しなさい。つけたまま戦いに行くのはバカのやることよ」
「…………あ」
「それに、そんな乱入方法じゃ面白くない。魔王の登場には相応しい登場があるでしょ?」
「はぁ!?前半終了前にはここに着いていた!?」
「正確には前半終了10分前か?」
「いや、だったらもっと早く来ても良かっただろ!?」
時は戻り、十六夜が結界を壊し、グラウンドに現れた後……色々と事態が動いたため、試合は一時中断。ベンチの方にイナズマジャパンの全員が集まった。
「でも、状況を見たらお前らが優勢だったからな。正直、拍子抜け。手を出さず見物を決め込んだが……あの鉄屑どものせいで話が変わった」
「それで参戦する意思があるんだったら、もっと早く……」
「協力者が言っていた。この逆境でお前らが何も出来ずやられるか……それとも何かを為すのか。見届けてからでも遅くはないって」
「へぇ。それで?」
「アイツらから自力で1点を取ったお前らが、何も出来ていない訳ねぇだろ。……だが、ロスタイム込みでも残り10分切っている。こんな残り時間が少ない中、2点取って勝つにはカギが足りねぇ」
「フッ、なるほどな。……任せていいんだな?」
「ああ。あのオレとそっくりな鉄屑をぶっ潰す……アイツを押さえられれば、ちょっとは楽になるだろ?」
「ハッ、そりゃぁいい話だ。元々お前が居なくても戦えていた相手……相手の面倒くせぇ野郎をぶっ潰してくれるなら、十分勝機はある」
「だが、アイツらは俺たちを基に造られている。お前自身と戦うとなると相性は最悪だぞ?」
「上等。その方が燃えるだろ」
「選手交代だ。八神、下がって大丈夫だ」
「分かりました」
そのままフィールドの10人はポジションへと戻っていく。
「ふぅ。じゃあ、後は任せたぞ」
八神が軽く手を挙げる。それに対して十六夜は……
「前半ラストのシュート、最高だったぞ
「なっ……!?」
手を合わせる……のではなく、八神の頭をポンポンと手で軽く触れる。
「彼女が最高の働きをしてくれたんだ。後はゆっくり身体を休めていてくれ」
視線は討つべき敵を見据え、そのままフィールドへと駆けていく。
「…………あのバカ」
突然の行動に思わず顔を紅くする。
「頑張れよ、
そして、そう小さく呟くのだった。
十六夜含めた全員がポジションに着くと試合再開。ボールはメカ鬼道からサイドを全速力で駆け上がる……
「捕捉。ターゲット、十六夜綾人」
「へぇ、オレと
メカ十六夜に渡った。十六夜目がけてドリブルを仕掛ける。
「勝率90%」
「やっぱり、100って言わねぇんだ」
メカ十六夜がフェイントを仕掛ける……が、
「じゃあ、その10奪うわ」
「何だと!?」
「こちらのメカがあっさり奪われるなんて……!」
十六夜が速攻で奪うことに成功する。
(今のは読めなかったようだな。分析出来ているのは記憶が戻る前の円堂に染まってるようなプレー。理性でのプレーしか読めねぇ以上、今みたいなオレ視点の勝率が低いプレーは計算に入ってないか)
そして、そのまま攻め上がる……が、
「気を付けろ!ソイツは……!」
「ペンギンカーニバル」
不動が声を掛けると同時にメカ十六夜は必殺技を発動し、ペンギンの大軍を呼び出す。十六夜だけでなく、イナズマジャパンの他のメンバー諸共倒しに来た。
「あーこんな感じか?ペンギンカーニバルっと」
「「「はぁ!?」」」
それを見るなり、十六夜も必殺技を発動する。大量のペンギンたちが、メカ十六夜の呼び出したペンギンたちとぶつかり合う。
「ははっ……流石はバケモノ。もうコピーしていやがったか」
「ゴメンな、メカのオレ。その技奪っちゃった」
特に悪びれる様子もなく言葉を発する十六夜。そのまま、敵陣へと切り込んでいく。
「作戦修正」
一方のペンギンカーニバルが封じられたメカ十六夜は停止し、何やら呟く。そして次の瞬間、
「……っ!?」
「十六夜綾人、ココデ止メル」
何の前触れもなく、メカ十六夜は十六夜の前に現れる。
(コイツ……今何処から……!?…………いや、そう言えばあったな。オレの必殺技の中に今の現象を説明できるものが)
「ッチ、イビルズタイムも使えるのかよ……まぁいいや。強引に突破させてもらう」
驚きを見せたものの、すぐさま切替、メカ十六夜を突破する十六夜。しかし……
「イビルズタイム。十六夜綾人、ココデ止メル」
「うざっ!?クソゲーかよ!?」
メカ十六夜はすぐさま目の前に現れる。思わず本音が漏れてしまった十六夜。
「勝率99.9%」
「あぁ?そうやって何回も挑めばいつか勝てるって?」
ボールを素早く跨ぎ、右のアウトサイドで軽く触れ右から抜くと思わせると素早く右のインサイドでボールを動かし、左側から速度を上げて抜けていく。
「イビルズタイム。十六夜綾人、ココデ止メル」
「クソ甘い作戦だなポンコツ!だったら、何回でもぶちのめしてやんよ!」
試合終盤、試合の行く末は、更なる
激突する
メカ十六夜、おそらくイナイレ二次創作界隈の選手たちの中でも屈指の暴挙を連発する。そんな理不尽を前に無事オーガ戦を終えることが出来るか?
習得技紹介
スカイウォーク
使用者 L
当然この男のスカイウォークも必殺技の域を脱している。
ペンギンカーニバル
使用者 十六夜
ゲーム版では必殺タクティクスだが、それをメカ十六夜が単独で使用し、それを見て習得した。相変わらずのチート性能である。
イビルズタイム
使用者 メカ十六夜
イビルズタイムのある意味で正しい?使い方。何度負けてもすぐに