超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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VSオーガ ~日雷~

「な、何なのあれ……」

「何度突破しても目の前に現れる……十六夜に近しい実力者を何度も何度も倒さないと進めないとか最悪だ……」

 

 ベンチではメカ十六夜の戦い方、その脅威に恐れを隠せないでいた。

 

「で、でも!パスを出せば解決じゃ……!」

「いや、パスは出せない。一瞬でパスコースに入られて取られるのがオチだ」

「あっ……!」

「だ、だけど、このまま相手ゴール前まで行けるんだったら……!」

「シュートモーションに入った瞬間に取られるだろうな」

「ちょ、ちょっと待ってくださいッス!じゃあ、今の十六夜さんは……!」

「終わりのない戦いを強いられているってことになるね……」

 

 十六夜はメカ十六夜を突破する。次の瞬間にはメカ十六夜が目の前に現れる。この光景を既に何回も見てきた。

 

「しかも厄介なことに、メカ十六夜側は今の十六夜を分析し、少しずつ対応が出来始めている……」

「つまり……メカ十六夜ってヤツは十六夜のプレーを学習して成長しているわけか!」

「相手は機械……!人間の比じゃない速さで成長しています……!」

「流石に無理ですよ!連戦を強いられ相手は学習して成長!?その上1ミスでアウトとか流石の十六夜君でも無理ですよ!」

 

 一歩ずつゴールまで近づいている。だが一歩進む度、その一歩が重くなる。

 

「イビルズタイム。十六夜綾人、ココデ止メル」

「もう聞き飽きたわ!うぜぇんだよこのストーカーロボットが!」

 

 それでもまだ戦えているのは流石としか言い様がない。言い様がないが……

 

(クソが……!無限リスポーンかつ進化する敵とか面倒くさ……!)

 

「イビルズタイム。勝率99.9999%」

 

 相手からすればたった一度でも奪えばいい。それかこのまま時間を稼げば良い。あまりにも不利すぎて笑えない。たった1度勝てば良い相手と1度も負けてはならないこちらではあまりにも状況が悪すぎる。

 

(パスは無理だ。パスコースに割って入られる。シュートも無理だな。適当に撃っても取られて終わり。必殺技もどうせ阻害される。イビルズタイムで対抗?いや、ボールに触れれば切れる以上使えないし、そもそも向こうは使っても消耗している様子がまるでない。ジリ貧になるのは目に見えている……そして、スルタンタイムははっきり言って使ったら負けだ。まだサッカーの枠組みに一応収まっているのに、アレを使わされては負けに等しい。その上使ってしまえばこんな試合楽に終わるが、ここまでのアイツらの頑張りを全て無に帰すことになる以上、流石にそれは気が引ける。だから、考えるべきはこいつを封殺すること。さて、その手段だが……)

 

「イビルズタイム。十六夜綾人、ココデ止メル」

「…………やめるか。そんな思考のリソースを割く余裕ねぇわ」

 

 ボソッと言葉を吐き捨てる十六夜。

 

「イビルズタイム。十六夜綾人、ココデ止メル」

「アッキー!何とかしてくれ!」

 

 そして、そんなことを恥ずかしげもなく堂々と言い切った。

 

「けっ、わざわざ英雄(ヒーロー)登場みたいに格好付けてやってきておいて人頼みかよ。……ただまぁ、理不尽なクソチート技解放されたら、ゴールに辿り着く前に詰むか」

「流石、理解が早くて助かる」

「どうなろうが文句言うなよ、アホペンギン」

「行けるところまで行くから、後任せる」

 

 珍しい……アイツが他人に思考を丸投げするとは。普段のアイツならこんな状況でも自分一人でなんとかすることを第一に考えそうなのに、本当に珍しいな。

 

「イビルズタイム。無駄ダ。何ヲタクラモウトモ通ジナイ」

 

 十六夜が突破した先にメカ十六夜が現れる。突破しても突破しても突破しても、すぐさま目の前に現れる。

 

「舐めんなクソメカ!」

 

 倒しても倒してもキリがない。1体のはずなのに、体感では無数にいるようにさえ思える。だが、何度現れようとお構いなく倒しに行く。果敢に挑み続け一歩でもゴールへ近づこうと足搔く。

 

「イビルズタイム」

「ちょっ!?ふざけ……!?」

 

 決して折れないその足搔きは、いつしかゴールへと辿り着くのでは……そんな安直なことを思っているとメカ十六夜と十六夜が肩をぶつけた瞬間、メカ十六夜の姿が消える。急にぶつけていた相手が居なくなったことで転倒しそうになる十六夜。

 

「イビルズタイム。フィニッシュ」

「終わらせんな!」

 

 ボールを奪おうとするメカ十六夜に対し、地面に片手をつけると、両足でボールを挟み、勢いよく側転をすることで、相手からの突撃を防ぐ。

 

「イビルズタイム。フィニッシュ」

「うぜぇって!」

 

 空中に現れ、ボールをかっ攫おうとしたところを膝を折り曲げ何とか回避する。

 

「イビルズタイム。フィニッシュ」

「もう良いって!」

 

 すぐさま下にズレて現れた相手に対し、手を勢いよく放して跳び上がることで回避する。

 

「イビルズタイム。フィニ――」

「これ以上キツっ!?」

 

 跳んでいくコースを読んで奪おうとするところを片手を勢いよく地面につけ、回転することで防ぐ……いや、アイツの身体能力なんなんだ?もう反射的に無茶苦茶に身体を動かしているだろ。

 

「――イビルズタイム。フィニッシュ」

 

 そして、その無茶苦茶な動きの先にヤツはいる。一周まわってホラーだろこれ。こんなの絶対に相手したくないな。

 

(マズっ……!地面に激突したその次がねぇ……!流石に詰み――)

 

「やれ!」

「スノーエンジェル改!」

 

 次の瞬間、メカ十六夜と十六夜は纏めて凍りづけにされた。

 

「速攻だよ!」

「警戒が薄いのは……佐久間!」

「ああ!大きいのくれ!」

 

 ボールを奪った吹雪は不動にパスを出す。

 

「分かった!すぐ撃てよ!」

 

 不動の声は切羽詰まっていた。当然か、メカ十六夜が封じられている間に放たなければ、あのクソゲーが再開してしまう。

 その意図を感じた佐久間はすぐさま行動を起こす。不動が佐久間の前方を通過するような高いパスを出すと、

 

 ピー!

 

 そのボールに向かって走りながら指笛を吹いた後に利き足で力強く踏み切ってジャンプ、体を捻りながら体を倒し、地面を背にした状態から利き足を後ろにしてボールを跨ぐ様な形で両脚を前後に大きく広げる。

 

「バイシクルペンギン!」

 

 召喚した赤い五羽のペンギン達が利き足を咥える事無く直接ボールにぶつかる。それと同時に利き足でバイシクルシュートを放った。

 

「ハイボルテー……はぁっ!?」

 

 少々距離の空いたシュート。それに対し、相手キーパーが必殺技を放とうとする……が、

 

「ゴメンね。一緒に凍らせちゃった」

 

 両手に収まるはずの2人の選手のうち、片方の選手が十六夜たちと共に凍りづけにされていた。あまりのことに驚き、別の必殺技に切り替えようとするがもう手遅れ。佐久間のシュートは既に相手キーパーの横を通過していた。

 

「ナイスシュート!」

「やった!同点ですよ!」

「佐久間!今のは……」

「皇帝ペンギン1号を改良した必殺技。影山のノートを参考に試行錯誤して編み出した必殺技だ」

「なるほどなぁ。足に喰いつかせなければ、あの技の負担は一気に軽くなるわけか」

「これなら禁断の必殺技の威力だけを使える……良い技に仕上げたな、佐久間」

「ありがとうな。ただ、まさかメカの動きを封じるのに、前もやっていたアレを使うとは驚いたが……」

「切羽詰まっていたからね。またやらせてもらったよ」

「だが、それだけじゃねぇ。まさか、ハイボルテージに必要な選手も一緒に凍らせるとはな」

「丁度近くに居たからね。隙を作れるかと思って」

「何にせよ、やって来たバケモノの尊い犠牲のお陰で同点だな」

「オイコラ。人のことを勝手に尊い犠牲にすんじゃねぇよ」

 

 と、盛り上がる彼らのところに氷から解放された十六夜が現れる。

 

「完璧な攻略法だろ?メカ十六夜を封じつつ読ませない……そして、点まで取って万々歳だ。使い勝手の良い死に役が来てくれたお陰で楽に点を取れたわ」

「お前に任せたことを後悔しそうになったわ。そして、反論が出来なくて悔しいんだが?後、勝手に人を死に役にすんなそんな犠牲心で来てねぇよ」

「前の試合で気付いたからな。お前ならどんな無茶やっても大丈夫だって」

「雑すぎる信頼ありがとな。つぅか、無茶な動きして身体いてぇわ。柔軟性をもう少し高めよ」

「ただ、2度目は通じないよ。どうやってあの理不尽の塊(メカ十六夜君)を倒すの?」

「いや、お前のお陰で何とかなりそうなプランを思いついた。点取るのは任せるぞ、お前ら」

 

 そう言うとポジションにつくイナズマジャパンの面々。そして、オーガのキックオフで試合再開。

 

「コイ!ペンギンノ王者(エンペルト)!」

 

 すると、化身を発動するメカ十六夜。

 

「はぁ……フィールドで見ると迫力あるなぁ」

 

 胸をギュッと掴みながら、その化身を見上げる十六夜。

 

「感心している場合か!それは見た目以上の強さだぞ!」

「トツゲキ。ココデ倒ス」

 

 化身を発動したメカ十六夜はスピードを上げ、真っ直ぐ十六夜へと突撃していく。

 

「ボス、ペラー」

『これはまた、厄介そうな者が相手か』

『何だか試合中に呼ばれるのは久々な気がするね~』

 

 そんな突撃に臆することなく、ボスとペラーを呼び出した。

 

『で、どうするの?アレ』

「売られた喧嘩は買う主義」

『つまり、正面からぶつかるわけだな』

 

 そして、ペラーを左肩に乗せ、ボスと共に突撃していく。怪物と兵器の肩と肩がぶつかり合う。

 

「1000%」

「なんだそりゃ……ちょっ!?」

「「「十六夜!?」」」

 

 ぶつかり合いは互角……そう思っていた次の瞬間、メカ十六夜が馬力を上げる。ぶつかっていない側……右腕や右脇など、身体の右側からいくつもの噴射口が現れ、そこから蒸気のようなものが吹き出る。そのまま、ぶつかりあった十六夜を勢いよく吹き飛ばす。

 

「カハッ!」

『大丈夫!?』

「さ、サンキューペラー……ナイスクッション……」

 

 吹き飛ばされた十六夜はフィールドの外の外壁まで吹き飛ばされる勢いだったが、ペラーの呼び出したペンギンたちに、外壁に衝突するギリギリのところでキャッチされる。

 

「まじか……!?十六夜が押し負けた!?」

「嘘だろ……!?なんだよあの威力……!」

「つぅか、何だよあの右側から出ていたヤツ!」

「噴射口……まさか、あそこから空気を出してぶつかる力を増したのか……!?」

「反則だろ!?どうやってあんなのと戦うんだよ!」

 

 収納されたのか、今のメカ十六夜は普通に見える。あの化身と呼ばれるもののせいで、タダでさえぶつかり合いは強化されているのに、あんなもの出されたら人間じゃ勝てないぞ……相手はロボット……とは言え、そんなのありなのか……!?

 

『ぐぬぬ……!』

 

 化身の方はボスが食い止める……が、パワーで押し負けている。辛うじて耐えているだけで、ほとんど相手になっていない。

 

「だったらボールを奪うことだけを考えるか……!ミサイルペンギンV3!」

 

 フィールドへと戻った十六夜がメカ十六夜に向け、ペンギンたちを射出するが全て化身によって弾き飛ばされる。

 

「ッチ!なら、やっぱりインファイトしかねぇか!」

 

 もう一度、十六夜がタックルしに行く。

 

「1000%」

「二度も引っ掛かるかよ!」

 

 再び怪物が激突するが、兵器の右側から噴射口が出て来る。そこから蒸気が噴き出るが、十六夜は身体を引き、後ろにステップすることで回避した。メカはボールを持たず、十六夜の前を通過する……これで、ボールを確保することに成功……

 

「1000%」

「っ!?」

 

 そう思った瞬間、人間で言う腰のあたりが一瞬持ち上げられたと思うと、メカ十六夜の上半身だけが、180度回転する。お腹と尻が同じ方を向くという人間ではあり得ない事態。そんな、人間ではあり得ない挙動を見せたと同時に、勢いよく十六夜に向かっていく。回避できたと、一瞬の油断を突く一撃で十六夜が吹き飛ばされる。

 

「クソが!」

 

 ザザザザッ……十六夜が何回転かして飛ばされた後、地面に片手と両足をつけてなんとか踏みとどまろうとする。地面が10メートルほど抉られたところでようやく制止した。

 

「反則も良いとこだろ!?」

「か、回転した!?」

「何でもありかよあのメカ!?」

 

 十六夜を吹き飛ばしたのを確認すると、上半身が180度回転し元に戻る。

 

「人外が……!応戦するぞ!最低限のケアだけして、ヤツを止める!」

「おう!時間を稼げばいいんだな!やるぞ皆!」

「うっす!」

「ああ!」

「うぉりゃぁ!」

 

 不動の声かけでイナズマジャパンの綱海、飛鷹、木暮の守備陣が時間を稼ごうとする。

 

「ッチ、ただのペンギンじゃ歯が立たねぇし、ボスでも勝てねぇか……あのペンギンを倒すにはボス以上のパワーが必要……ペラー、アリアは?」

『どうだろう?ペンギン界最強のパワーを誇るし……あの姉さんなら勝てる可能性は十分あると思うけど……』

 

 そんな中、急いでフィールドに戻りながら何かを話す十六夜。

 

「じゃ、呼んでみる」

『ま、待って!契約者が別にいるペンギンは基本的に呼べないし、それに……』

 

 ピー!

 

 フィールドに戻った十六夜が珍しく指笛を吹く。もう最近は動作なしのノータイムでペンギンを呼び出していたから、本当に久し振りに指笛を吹く姿を見る。

 

『…………』

 

 十六夜の召喚に応じて1匹のペンギンが姿を表した。

 

「あがっ……ぐっ……ああああああああっ!!!?」

 

 そして、何故か蹲る十六夜。

 

「邪魔ダ」

 

 一方のメカ十六夜は大量のペンギンを呼び出し、押し寄せる相手を退けゴールまでの道を作ろうとしていた。

 

「マズ……!さっきのシュートか!」

「撃たれたら終わりだ!何とか妨害するぞ!」

 

 シュートを撃たれたら終わり……ここでの1点は致命的だと悟り、何とかブロックしようと試みる仲間たち。

 

『ちょっ!?えぇっ!?本当に呼び出せた!?というか、オレたち一族を3匹を同時に呼び出せるほどの器はないんだからダメだって!流石に壊れるよ!?かなりの激痛が走っているでしょ!?』

「知らねぇよんなこと……!アリア……!何とか……って、お前誰だ?」

『……って姉さん!?いや、姉さん違いだけど……ジェーン姉さん!?』

「……ジェーン?」

『長女だよ!上から2番目!』

 

 蹲りながら何かを話す十六夜。ペンギンたちと話しているのだろうか?そう思っていると、呼び出されたペンギンは辺りを見渡す。

 

『……外?……日の光……帰る』

『待って待って!?帰らないで姉さん!』

『ぺらー?久し振り、元気してた?』

『えっと、それは姉さんが部屋から出ないから会えないだけで……』

『眠いから帰るね。…………どうやって帰るんだっけ?』

『ジェーン!すまんが協力してくれ!』

『あれ?にいさんも居るんだ……?ここ人間の世界だよね。よく集まったね』

『我らが主人が呼び出したんだが……』

『凄い凄い。私たち一族を3匹も同時に呼び出すなんて異例。初めて聞いた。……じゃ、帰るね。あ、でも帰り方……』

 

 ドンッ!

 

 すると、拳を地面に当て、立ち上がる十六夜。

 

『え?綾人が立った……?常人なら意識を失ってもおかしくないレベルなんだけど……?』

「はぁ……はぁ……ジェーン……思い出した。テメェの武器は速さだったな」

『そうだね。どうして知ってるの?わたしのふぁん?』

「ちょっと協力しろ」

『気分じゃない』

『姉さん!?』

『……だけど、いいよ。折角だし、協力する。でも、期待はしないでね?』

「今からお前を蹴り飛ばす」

『でぃーぶい?別にそんなことしなくても大丈夫だよ……あのぼーる、取ってこればいいんでしょ?』

「あぁ?そんな簡単に……」

「ペンギン・ザ・ランディ――」

 

 次の瞬間、十六夜の新たに呼び出したペンギンが勢いよく飛んでいく。その速さは今までのどのペンギン技のペンギンよりも速く……

 

「――ング」

 

 敵のペンギンと味方の攻防を一瞬で通過し、メカ十六夜が蹴るよりも速く、サッカーボールに嘴を刺すと、そのまま上空に飛んで十六夜のもとへ帰る。

 

『これでいい?』

「「「……は?」」」

「……お、おう……ありがとう……?」

 

 敵も味方も本人でさえも唖然とする。なんだあのチート級の速さを持つペンギンは。なんだあの動きは……

 

「十六夜綾人、ヤハリ危険。イビルズタイム」

 

 しかし、メカ十六夜は人間の心がないためか、一切動揺した様子がない。シュートが不発に終わったのを一瞬で理解し、切り替える。化身が消えたヤツはすぐさま十六夜の目の前に現れ、1対1を作り出した。

 

「ボス!」

『うむ!』

 

 すると、ボスが消える。残るのはペラーと、新たに呼び出していたジェーンというペンギンだけ。何故かペンギンたちは十六夜の左肩と右肩に乗っているが、そんなことは気にしないことにする。

 

「ふぅ……良かった。痛みが消えた……これなら動ける」

『そんなことより早くわたしを帰して欲しいんだけど……』

「ココデ止メル」

「カウンター!」

 

 すると、十六夜は何の迷いもなく不動へとパスを出した。そして、

 

「ミサイルペンギンV3!」

 

 同時にメカ十六夜を囲うようにペンギンを呼び出す。

 

「ピピッ……イビルズタイム、使用不能」

「だろうな。時を止めている中じゃこいつらを動かせない。これでその理不尽な必殺技を封じさせてもらう」

「ペンギンボム」

 

 すると、メカ十六夜側も十六夜を囲うようにペンギンを呼び出す。ただし、そのペンギンは触れたら爆発するような危険物だが。

 

「ッチ、お互い様ってわけか……」

 

 片や爆弾、片やミサイル。お互いが凶器に囲まれ身動きが取れなくなる。

 

「不動!コイツの足止めは任せろ!」

「足止めされているの間違いだろ!だがよくやった!ラスト1点取りに行くぞ!」

「ああ!皆、最後の攻撃だ!行くぞ!」

「「「おう!」」」

 

 十六夜とメカ十六夜以外の選手が一斉に動き出す。

 

「ゾーン・オブ・ペンタグラム」

 

 すると、ボールを持った不動の前にメカ鬼道が立ちはだかる。

 

「ッチ……面倒くせぇ技を……!」

 

 メカ鬼道の生み出した空間に囚われてしまう不動。

 

「ジェーン、あの半球貫いてこい」

『無理』

「よし……って、は?」

『体力切れ。もう飛ぶ力が残ってない。きゅぅ』

「…………は?」

『ジェーン姉さんは引きこもっていたから……体力が落ちているかも』

「…………」

 

 捕まっている十六夜は、何故か頭を抱えていた。

 

(マジか……あのスピードなら突撃させて破壊出来るかなって思っていたんだが……)

 

「ちなみにペラーさんは?」

『ジェーン姉さんみたいなスピードもアリア姉さんみたいなパワーもないからねぇ。最悪嘴骨折しちゃって入院だよ』

「そっかぁ……それはマズいなぁ……この爆弾投げつけてみる?」

『触れた瞬間ボンッ!だよ?』

「なら却下だな」

「不動!後数秒耐えろ!飛鷹!来てくれ!」

「飛鷹……ああ、そういうこと!」

「お、おう!」

 

 パスを出さない不動にメカ鬼道がブロックに来る。彼らが中で相対する中、鬼道の指示で飛鷹が近くまで走って行き……

 

「必殺技で受け取れよ!」

 

 不動がバックパスをする。その先には飛鷹が居るが間には必殺技の壁がある。

 

「真空魔V3!」

 

 ボールはあらぬ方向に飛んでいく……と思われたが、飛鷹の必殺技で生み出された空間に吸い寄せられる。

 

「そう言うことですか!たとえ何処へ飛ばされたとしても、あの必殺技なら関係ありません!」

「なるほど……飛鷹くんのあの技はメカ鬼道くんの技に対して相性が良いんだね」

 

 と、ベンチで話している中……

 

「コイ!ペンギンノ王者(エンペルト)!」

「炎魔ガザード!」

「豪雪ノサイア!」

 

 化身が3体同時に現れる。試合も時間は残りわずか……ここで勝負を決めに来たということだろうか。ここでの1点は間違いなく試合を決める一撃になる。

 

「行かせるかよ!」

 

 十六夜の周りにはペンギンが消え、メカ十六夜の周りのペンギンは吹き飛ばされてしまった。ペラーが気付けば十六夜の頭の上に移動し、当の本人はメカ十六夜とぶつかり合いながら並走している。

 一方でそれぞれ化身を出しているメカ豪炎寺とメカ吹雪は飛鷹の方へと走っていく。

 

「こっちだ!」

「うっす!」

 

 綱海が声を出してパスを要求する。そこへとボールを出す飛鷹。

 

「うぉおおおおお!ツナミブーストV3!」

 

 そして必殺技を発動する。巨大な津波が現れ、2体の化身を飲み込もうとする。

 

「効カナイ」

「ちょっ!?」

 

 だが、巻き込んだメカ吹雪の化身の周りから凍り始め、やがて津波が全部凍ってしまう。

 

「綱海!オレに出せ!」

「分かった!頼むぜ、十六夜!」

 

 その様子を見て声を出すのは十六夜。見ると、巻き込んだメカ豪炎寺の化身の周りから氷が溶け始めている。しかし、その蒸気を凍らせようとするメカ吹雪の化身……

 

「どうなってるんだ!?」

「メカ吹雪くんの化身は冷気を纏っている……その冷気は強力で、自身の周りの水を全て凍らせるほど。対してメカ豪炎寺くんの化身は熱気を……その熱気は自身の周りの水を全て蒸発させるほど」

「つまり?」

「綱海くんの津波を吹雪くんの化身は自身ごと凍らせてしまった。そのせいで身動きを封じられ、メカ豪炎寺くんをも凍らせてしまう。対して、メカ豪炎寺くんの化身はその氷を溶かそうと熱気を放ち、周りの氷が水に変わり、水蒸気に変わろうとする。でも、それをメカ吹雪くんの化身が凍らせてしまい……」

「それが繰り返されることでお互いを閉じ込める鎖が出来たわけか」

 

 綱海はそこまで狙ったわけではないだろう。だが、あの化身2体を巻き込むほどの津波を出したおかげで、結果的に封殺することに成功している。

 ボールを追いかけるのは十六夜とメカ十六夜。肩をぶつけ合い、腕で押さえあいながらボールに向かってひた走る。

 

「このメカが痛ぇんだよ!つぅかマイボールだ邪魔すんな!」

「奪取率80%、コレハ捕ラセナイ」

 

 あの化身って言う凄まじいモノを出している相手に、生身で張り合うアイツは本当に人間だろうか?と言うかイビルズタイムを使わない?そう言えば、化身が出ている間はあのメカは必殺技を使わないし、ペンギンすらも満足に呼び出せていない……もしかして、そういう制約なのか?

 

「ハッ!だったらテメェも道連れだ!吹雪!」

 

 十六夜が激突しながら反対側の手で親指下に向ける。サムズダウン……なんて治安の悪いハンドシグナルを出すんだアイツは。

 

「スノーエンジェル改!」

 

 十六夜とメカ十六夜が激突した瞬間、吹雪の必殺技が発動する。そんな治安の悪い指示を受け取り遂行した。これで、2体が凍れば……

 

「なんだそりゃ!?」

「嘘だろおい!?」

 

 その瞬間、人間ではあり得ない現象が巻き起こる。メカ十六夜は化身を消すと同時に十六夜を押さえている自身の腕を切り放す。そして、メカ十六夜自身は飛び退き、切り放された腕はまるでロケットのように火を吹いて、十六夜を押さえ続ける。

 

「あんなの反則では!?」

 

 その反則級な回避方法により、メカ十六夜は腕一本を犠牲に凍りづけにならなくてすむ。化身が霧散したメカ十六夜はそのままボールを取りに行こうとする……が、

 

「ペラー!?」

 

 ボールを先に拾ったのはペラー。ボールに嘴を刺して確保する。

 

「甘イ、コノ程度……」

 

 メカ十六夜はペラーからボールを奪おうと追撃に行こうとする。だが、一歩踏み出した段階で、すぐそばで火柱が上がるのが見え動きを止めた。

 

「何ダ?」

 

 その火柱が上がっているのは先ほど十六夜が凍らされた場所。

 

「ファイアトルネード×スノーエンジェル」

「読マレテイタ?」

 

 そして、その炎の中から現れた十六夜は右足に炎を纏い地面に踵落としをする。すると次の瞬間、メカ十六夜の周りに火柱が上がり、相手が火柱の壁で包囲される。

 

「甘いのはテメェだポンコツ」

「ハッ、流石かよ……!」

 

 炎の檻に閉じ込められたメカ十六夜。今度こそ封殺することに成功する。

 

「鬼道!豪炎寺!」

「行くぞ!」

「ああ!」

「3人とも頼んだよ!」

 

 ボールはペラーが吹雪に渡す。そして、吹雪から鬼道へと渡り、鬼道がダイレクトでボールを空へ向かって蹴る。蹴られたボールは紫雷を纏いながら上昇し、空中で留まる。

 

『イナズマメテオ!』

 

 跳び上がる3人は上空で帯電するボールに向かって同時にオーバーヘッドキックをする。3人の息が完璧にあったシュートは黄色い閃光となってゴールへと向かっていく。

 

「「ペンギンボム」」

 

 炎の檻から解放されたメカ十六夜が必殺技を放つ。シュートを止めるべく抵抗を見せるが、同時に必殺技を発動した十六夜の呼び出したペンギンがそれを阻止する。空中ではメカ十六夜と十六夜のそれぞれが生み出したペンギンたちが衝突することにより、爆発が至る所で起こっている。

 

「防ガレタ……?」

 

 そして、シュートはその爆発の下を通り、巻き起こる爆風の中を突き進む。

 

「ハイボルテージ!」

 

 そしてキーパーが必殺技を発動する。その衝突で辺り一面に電気が迸る。

 

「「「行っけぇ!」」」

「ぐああああああああっ!」

 

 その雷は現れた壁を貫き、3人の選手を吹き飛ばす。これでシュートはゴールへと突き刺さ……

 

「マダダ……イビルズタイム」

「「「なっ……!?」」」

 

 次の瞬間、シュートコースの先にメカ十六夜が現れる。ゴールラインギリギリに突如として現れたソレは、シュートを止めるべく最後の壁として立ち塞がる。

 

「あんなの反則だろ!?」

「そんな……!?」

「止メル確率100%」

 

 ベンチでの嘆きとメカ十六夜の勝利宣言。もうボールはメカ十六夜の目の前まで迫っている。このままでは止められて……

 

「なわけねぇだろ」

 

 トンッ

 

 立ち塞がったメカを一人の選手が押さえこむ。立ちはだかった壁がどかされる。

 

「ピピ、止メル確率……50……30……10……」

「どけよスクラップ、ここはアイツらの道だ」

「……0」

 

 身体でメカ十六夜を押さえ、消えたはずのコースを生み出す。シュートは十六夜が開けた道を通りゴールの中へと突き刺さる。

 

「は、入った……!」

「や、やった!やりましたよ!」

「これで勝ち越しだな!」

 

 ピ、ピー!

 

 試合終了のホイッスルが鳴り響く。スコアボードは7-6。

 

「俺たちの勝利だぁ!」

「「「おう!」」」

 

 決勝点を決めた彼らのもとにフィールドの彼らもベンチのメンバーも駆け寄る。

 

「何故……読マレタ?腕ヲ切リ放ス機能ハ見セテイナイハズダ」

「ああ?そんな機能、想定外に決まっているだろ」

 

 一方の十六夜は、メカ十六夜の問いかけに答えていた。

 

「ダッタラ……」

「オレを模倣しているなら何かしら対策を講じて、同じ手には引っ掛からないはず。だから、テメェが何とかして氷漬けを回避する前提でプランを立てた。テメェが何をしようとその先で潰すための策を立てた。……そんな単純な思考も読めないようなら、テメェはオレのニセモノ失格だ」

「ソウカ……コレガ本物ノ十六夜綾人……コレガ敗ボ……ク」

 

 各所でメカたちが膝をつき、その目から光が消えうせる。動きが完全に止まり、戦いが終わったことを告げる。

 激戦はイナズマジャパンの勝利で幕を閉じたのだった。




 ジェット噴射での突撃で1アウト。
 上半身が180度回転して2アウト。
 ロケットパンチで3アウト。

 と言うことでまともな審判が居たら何枚レッドカードを貰っていたんでしょうね。まだ戦闘用アンドロイドらしく相手を物理的に倒そうとしなかっただけマシなのか?


オリジナル・登場技紹介

バイシクルペンギン 属性 林 成長タイプ V シュートチェイン可 使用者 佐久間
試行錯誤の末、皇帝ペンギン1号の負担の軽減化に成功したカスタマイズ技。正式名称は「皇帝ペンギン1号・BC(バイシクルカスタム)」だが流石に長過ぎるので、シュートの特徴を簡潔にまとめた略称を技名として使っている。
上空のボールに向かって走りながら指笛を吹いた後に利き足で力強く踏み切ってジャンプ、体を捻りながら体を倒し、地面を背にした状態から利き足を後ろにしてボールを跨ぐ様な形で両脚を前後に大きく広げる。召喚した五羽のペンギン達が利き足を咥える事無く直接ボールにぶつかると同時に利き足でバイシクルシュートを放つ。ボールに直接ぶつかったペンギン達はそのまま2号と同様の動きでボールと共にゴールへと突き進む。
上空のボールを流れを止めずに直接シュート、ペンギン達に利き足を咥えさせずに力を貯める時間を短縮といった事を実行した結果、肉体の負担を軽減すると共に必殺技の高速化とそれに伴う「相手キーパーに必殺技を使わせない」スピードの獲得にも成功している。その代償としてシュートの威力が多少低下しているものの、元々が相手キーパーの選手生命を断ちかねないという過剰なものであった為、デメリットとは一概に言い難い面がある。

ペンギンボム
使用者 十六夜綾人
解説等々は前回行ったため省略させていただきますが、十六夜綾人がメカ十六夜の技を奪った結果使えるようになった。

イナズマメテオ
アレス(正確にはReloaded?)版イナズマブレイクのことである。
原作はともかく、本作ではイナズマブレイクの進化版として登場している。
名称の案をやまちゃん様よりいただきました。ありがとうございます。
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