地区大会決勝戦の2日前。オレ、円堂、染岡、風丸、木野、土門の6人は屋上に集まっていた。
「どーするよ!決勝まであと2日!それまでに新監督見つけなきゃなんねーんだぞ!」
「あーもう!規約なんか嫌い!」
「皆のモチベーションも下がってるから、練習もなんだかなぁって感じだし」
「そりゃあ、監督いないって理由だけで不戦敗になるんだ。無理もねぇよ」
「まさかこんなピンチがあるとは思わなかったなぁ。なーんにも良い手が浮かばなーい!」
空を見上げる円堂。しかし、何も浮かばない。
「……俺やっぱり雷雷軒のおじさんにもう一度頼んでみる」
「お前だけだと心配だからついて行くわ」
まーた追い返されたんだったら何にもなんねぇからな。
で、放課後。円堂がダッシュで雷雷軒を目指してるので慌てて追いかける。しかし、そんなオレたちの前に1人のおじさんが立ちはだかる。
「あ、あの時の」
「円堂守に十六夜綾人だな。俺ぁ、こういうもんだ」
おじさんは警察手帳を取り出して俺たちに見せる。
「えっ!?刑事さん!?」
「へぇ、鬼瓦刑事かぁ……で、何の用ですか?」
まさか円堂を逮捕しに来たとか?そう思いながら付いて来いって感じだったので、鉄塔広場まで3人で移動する。
「話って何ですか?」
「サッカー部の監督……捜してるんだってな」
「まさか!刑事さんが監督やってくれるんですか!?マジ!?」
「落ち着け円堂。職業的にもそれは厳しいはずだ」
「それに、そもそも俺はそんなガラじゃねぇよ。でもまぁ、サッカー好きってことに関しちゃあ、お前さんたちが生まれるずっと前からの筋金入りだ」
一応オレ今年で20歳です……心だけは。……あれ?そう思うとオレって結構年上じゃね?まぁ、何と言うかこっちの世界に来てから精神年齢下がった気がするが。
すると、右手を1回転しながら突き出し、
「ゴッドハンド!」
ただし、何も出ない。やっぱ、これが普通だよね。あと、引いてやるな円堂。
「帝国との練習試合の時、お前さんがゴッドハンドを使った時は鳥肌が立ったね。伝説の、イナズマイレブンが蘇ったとな」
「イナズマイレブンを知ってるの!?」
「おうよ!なんたって負け知らずだったんだからな!」
「すんげぇ!」
「そりゃ凄いな」
しかし、ここで暗くなる鬼瓦刑事。
「お前たち。イナズマイレブンの悲劇は知ってるか?」
首を横に振るオレたち。何かがあったことは古株さんの話から推察されるが、内容までは知らない。
で、鬼瓦刑事の話によると40年前のフットボールフロンティア全国大会決勝。雷門VS帝国。が、決勝戦の会場に向かうべく雷門サッカー部の乗っていたバスがブレーキの故障により事故を起こし、怪我をした。当時の彼らは這ってでも会場に行こうとしたが、試合会場に試合を棄権すると1本の電話が入った。結果、帝国の優勝でそこから40年間無敗だそうだ。
「……誰がそんな電話を?」
「まだ分からん。ただ、あの電話の裏には何かがある。俺はその真相を調べるためにやったのさ」
おそらく、ただの事故では無く仕組まれた事故なんだろう。だが、誰がやったかは分かっていない。
「急にこんな話しちまって悪かったな」
「いいえ。オレとしては知れたのは大きいです」
そう、とても大きい。これが何かの役に立つかは分からない。ただ、雷門サッカー部に所属、円堂守と関わっていく上では聞いておいて損はないと思う。少なくともオレはそう感じた。
「ねぇ、本当に雷雷軒のおじさんはイナズマイレブンなの?」
「……そうとも。大介の教え子さ。ポジションはお前さんと同じキーパーだ」
「キーパー!」
そう聞くと走り始めた円堂。おいこら待て。
「ありがとう刑事さん!」
「ありがとうございました!」
お礼を言ってダッシュ。
「円堂!策は何かあんのか?あの人はちょっとやそっとの説得じゃ動かんぞ!」
「安心しろ!キーパーなら話せる!」
いや、意味わかんねぇよ。
で、雷雷軒に着いたオレたち。
「……またお前らか」
「また、俺たちだよ」
「すみませんね。まだ監督が見つかってないもので」
新聞を読んでる響木さん。
「何度来ても答えは変わらんぞ」
「だったら、俺と勝負しようよ」
「勝負だぁ?」
え?勝負すんの?
「刑事さんから聞いたよ。おじさんキーパーなんだろ?」
「……鬼瓦の親父か。あのお節介め」
そして興味なさそうに新聞に目を戻す響木さん。そんな中、円堂はカバンを投げ置き、真剣な眼差しで言う。
「キーパーなら、どんな球も受け止めるもんだろ!昔のことは聞いたよ。一度試合が出来なくなったからって、それがどうした!人生まだまだ、終わってねーぞ!」
「フン、このガキンチョが」
全く。中2が自分の何倍も歳いってる相手に人生語るなっての。
「やれやれ。でも、響木さん。悪いがオレも円堂と同じ意見ですわ。アンタが選手として果たせなかった夢。監督となってオレたちに託してみませんか?」
「面白いことを言うな」
「俺、思うんだ。キーパーは足を踏ん張って、ヘソの下に力入れて。でないと、守れるゴールも守れないだろ?」
「はっはっはっ。……大介さんも似たようなことを言ってたな。キーパーがゴールを守っているからこそ、皆、安心して全力で相手にぶつかっていけるってな」
「そうだよ!だから俺も全力でおじさんにぶつかる!勝負だ!」
「勝負だぁ?」
「キーパーの俺を見てくれ!おじさんが3本シュートを撃って、俺が3本とも止めたら……監督をやってくれ!」
おっそろしく一方的に吹っ掛けたなコイツ。
「まぁ、アホくせぇ勝負でしょうね。だから、円堂が負けたら、オレたちはアンタに金輪際監督をするよう頼みに来ない」
「大した信頼だ」
「ああ。オレはいつもコイツに背中を預けてる。信頼できるからオレは好きに動けてる。というか、自分とこのキャプテンが最初から負けると思うチームメイトなんか何処にいるんですか?」
信じてなきゃ、オレはあんなに試合中攻めたりしない。自由に動けるのは、コイツが後ろで守ってくれているという安心感があるからだ。
「ふっ。いいだろう」
そして、河川敷に場所を移す。
「円堂。折角の機会なんだ。楽しめよ」
「おう!」
オレはベンチのところに座って勝負を見届ける。
「おじさん!久しぶりにボール蹴るんじゃないの?」
「まぁ、見てるといいさ」
「よぉし!来い!」
響木さんのシュート。回転しながらかなりのスピードで下の隅を狙う。それを円堂は何とか反応し弾く。
というかあの人何歳だよ。普通に凄いんだけど。
「なんてパワーだ。流石は元イナズマイレブン。1本目、止めたぞ!」
「やるなぁ」
軽くボールを上げるとそのままダイレクトで打つ。狙いはさっきと逆側だが少し上。威力は上がっている。
「はぁぁああああ!」
それを熱血パンチで正面に回り込み、響木さんのところへ弾き飛ばす。
「熱血パンチ」
「どうだ2本目だ!」
2人共楽しそうにやってるな。この流れで誘えないかな?
「調子に乗るなよ。最後の1本、止められなかったら監督の話はナシだ」
あ、無理だわ。
「鬼瓦の親父が言ったことが本当なら……見せてみろ!」
コースはど真ん中。純粋なパワーシュートだ。下手したら並大抵のシュート系必殺技より威力たけぇかも……でも、このくらいのシュート。見慣れてる気がするなぁ。なんでだろう。
「ゴッドハンド!」
巨大な右手がシュートを完璧に止める。
「ナイスセーブ!円堂!」
「はっはっはっ。こいつは驚いた!大介さんがピッチに帰って来やがった!おい、孫。お前名前はなんというんだ?」
「円堂守!」
「守か……いい名前だ」
「で、響木さん?監督の件は?」
「ああ、約束だからな。引き受けよう」
「よっしゃあああああ!」
「やったな円堂!」
「これで、試合に出られる」
「さっさと戻るぞ。あ、響木監督も」
「新監督だ!」
オレと円堂は響木監督を連れて部室に来ていた。
「響木正剛だ。よろしく頼む。さぁ、決勝戦はもうすぐだ!お前ら全員鍛えてやる!」
「「「おおぉ──!」」」