練習は一層熱が入り始めた。
決勝戦の相手は今までとは格が違う。円堂も新しい必殺技の練習に関して悩む中、今は自分たちのレベルアップも重要だ。
「円堂君たち必死ね……」
「あぁ。でも、何て言ったらいいんですか?私たちは見てるだけであそこに参加出来ないっていうか……」
「もどかしい?」
「そう!それですよ!」
「でもあそこまで無理しなくても……決勝戦で何があるか分からないし……」
「夏未さん、なんか皆に試合して欲しくないみたいですね……」
「そ、そんなことないわ!」
決勝戦……まさか、世宇子中に影山は関わっているのか?
「じゃあ、気持ちよく練習してもらう為に……やりますか!」
「やりますか!」
「え?どういうこと?」
と、何処かに消えていったマネージャーズはスルーしておいて、
「次、十六夜!」
「はいよ!」
ま、今は練習だな。プロジェクトZに
「皆~」
「おにぎりが出来ました」
「「「おぉっ!」」」
オレと鬼道以外の全員が我先にとマネージャーたちの元へと行く。
「俺、いっちばぁーん」
おにぎりへと伸ばした手。しかし、
パンッ!
「いって。何すんだよ……」
その伸ばした円堂の手は雷門によって弾かれた。
「手を洗ってきなさい!」
「「「はぁーい」」」
やれやれ、
「おにぎり~おにぎり~」
円堂を先頭に手を洗いに向かう集団。そいつらと、オレ、鬼道と既に手を洗い終え、ハンカチで拭きながらゆったり歩く集団が合流する。
1つ言おう。何でお前らオレたちを見て驚いてんだ?練習直後だし飯の前に手を洗うのは常識だろ?
で、マネージャーズのチェックを受ける。許可が降りたが、
「まぁ、キャプテン(バカ)を待つか」
「そうだな」
別にそういうルールがあるわけではないが…………ぶっちゃけ、先に食い始めてるとアイツらがうるせぇ。
で、戻ってきた連中にも許可が降りる。
「「「いただきます!」」」
一斉におにぎりを手に取り我先にと食べ始める。
「たく。そんなに急いで食ってたら喉に詰まるぞ」
「そんなべタなことがあるわけないだろ!」
まぁ、急いで食ってる理由は壁山とかいう食うスピード、量においてモンスター級がいるからだ。早くしないと全部食われる。
「ははっ!これ変てこな形だなぁ。なぁ、十六夜」
「……お前、そっと後ろを見てみろ」
「え?」
「私が握ったのよ?」
円堂の後ろから仁王立ちする雷門。普通に怖いと思うよ。そんな中、円堂は笑って誤魔化そうとする。
「いや、えーっとまぁ形はどんなでも味は一緒だよな!」
そう言って食べる円堂。すると何とも言い表し難い物凄い顔をする。
「しょ…………しょっぱい」
なるほど。今まで塩の分量間違ってるんじゃね?と思ったのは
「お塩つけ過ぎたかしら?」
「いや、練習で汗かいた分、塩分補給しないとな……」
その後無理矢理飲み込む円堂。しかし、喉に詰まらせた。雷門が背中叩いて何とかしているが……はぁ、言ったのになぁ。
あれからも練習の日々。そんな、ある日の日中。大き過ぎる出来事が起きてしまった。
「よし、来い!」
『ドラゴントルネード!』
『ツインブースト!』
相変わらず無茶な特訓だ。マジン・ザ・ハンドを完成させるべく、染岡と豪炎寺のドラゴントルネードと鬼道と一之瀬のツインブーストを同時に止めようとしているのだから。この前3つのボールで同時のシュートを止められるわけがないとかなんとか言ってなかったか?
で、2つのシュートが円堂の元へ辿り着く前に割って入る人影がいた。
次の瞬間。2つのシュートはそれぞれ片手ずつ、軽く止められていた。
「…………は?」
というか、アレ誰?
「すっげぇ!ツインブーストとドラゴントルネードを止めるなんて。お前すっげぇキーパーだな!」
「残念ながら私はキーパーではない。私のチームのキーパーはこの程度のシュート、指1本で止めてしまうだろうね」
指1本で止めようとしたら突き指しそうだな。いや、折れるか。…………っと、そんな非現実的、非常識的な発言を我ら雷門中に対して言える存在。いや、言えるチームはオレは1つしか思い当たらない。
「キミの所属しているチームってのは、世宇子中学のことかい?」
「へぇ。よく分かったね。十六夜綾人君。じゃあ、私が誰か分かるかい」
分かるか。アンタ誰だよ。
「世宇子のキャプテン。アフロディだ」
…………えぇ?日本人?
「その通りだ。円堂守君。改めて自己紹介させてもらうよ。世宇子中のアフロディだ。君の事は十六夜君と合わせて影山総帥から聞いているよ」
「なるほど。世宇子中の背後には影山がいるわけね」
「やはりそうか」
「て、テメェ!宣戦布告に来やがったな!」
「宣戦布告?何を言ってるんだい?宣戦布告というのは戦うためにするもの。私は戦うつもりは無いよ」
戦うつもりがない……ねぇ。
「私は忠告に来たんだ。戦わない方がいいってね。君たちが負けるからさ」
へぇ。言ってくれるねぇ。
「神と人間が戦っても勝敗は見えている」
うわぁ。自分のこと神とか言っちゃってるよ……うわぁ。イタイヤツだ。
「試合はやってみなくちゃ分からないぞ!」
「そうかな?林檎は木から落ちるだろう?世の中には抗えない事実というものがあるのさ。そこに居る鬼道有人君がよく知ってるよ」
「だが、帝国と雷門が同じとは限らねぇはずだぞ」
「同じさ。人間であるという共通点がある。だから練習もやめたまえ。神と人間との力の差は練習で埋められるものじゃないよ。無駄なことさ」
「うるさい!」
あーあ。円堂が怒っちまったよ。まぁ、共感できるが。
「練習が無駄だなんて誰にも言わせない!」
さすがキャプテ──
「練習はおにぎりだ!」
──ン?ん?んん?
「俺たちの血となり!肉となるんだ!」
言いたいことはすげぇ分かる。すげぇ分かるんだが……
「あはは。上手いことを言うね。練習はおにぎりか」
いや、この空気の中言うつもりはさらさらないが、練習がおにぎりというのはオレにはちょっと分からない。
「…………笑うとこじゃねぇぞ」
「しょうがないなぁ。それが無駄なことだって証明してあげるよ」
持ってたボールを後方上空に蹴り上げる。そして、そこまで一瞬で移動。軽い感じで蹴って来た…………が。ボールは空中で凄まじい回転をし、赤い閃光を纏う。流石にこのシュートを邪魔する気はないが、なるほど。木戸川清修のあいつらのシュートがかわいく見えるレベルだわこれは。
正面から受け止める円堂。が、円堂はゴールの中に吹き飛ばされ、ボールはゴールのバーを超え外に。
「「「円堂!」」」
駆け寄る雷門イレブン。一瞬目が閉じていたが、目が覚めた円堂の見る先はアフロディ。集まった仲間によってアフロディが遮られたそのとき、
「どけよ!」
およそ、普段からは考えられない怒気で声を発してどかせる円堂。
「来いよ!もう一発!」
鬼道が後ろから抑えようとするも振り払われる。あまりのことに誰も円堂を止められない。まったく。オレはあえてアフロディと円堂の間に立つ。
「……どけよ」
「落ち着けよ。バカ」
「これが落ち着いていられるか!」
「…………落ち着けって言ってんだろうが。何、心配してる仲間に向かって八つ当たりしてんだテメェは。怒りをぶつける相手がちげぇだろうが」
オレは円堂の肩を軽く押す。すると、円堂は尻もちをついて、立てない。
「その足の震えで、もう1発打たれて止めれるのかテメェは。すっこんでろ」
オレはアフロディの方と向き合う。
「悪いねぇ……
「あはは!神のシュートを止めた円堂守もだが、今のを見て尚挑もうとする十六夜綾人。君たちは面白い。君との勝負は決勝戦でつけてあげるよ。決勝が少し楽しみになってきた」
そしてそのまま消えるアフロディ。
「何なんだアイツは」
「世宇子中はあんなのばっかだ」
えぇ……あんなイタイ奴らばっかなの?
「決勝戦。とんでもないことになりそうだ」
「てか、面倒なことになったなぁ」
あーあ。…………ただ、今のままじゃ足りないか。やっぱりもっと強く……か。
「悪かったな。十六夜。皆もごめん」
「やっと戻ったかバーカ」
「でも、今のシュートで新しい必殺技が見えた気がする」
え?マジ?
「やれるよ俺たち」
どこが?
「いや、今のお前たちじゃ、絶対に不可能だ」
現れた響木監督がそう告げた。ですよねー。