ベンチに戻ったオレたち雷門中イレブン。だが、表情は浮かない。
「何であいつら何もして来ないんだよ!」
苛立ちながらベンチに座った染岡。
オレたちはオーガを見る。しかし、奴らはただ両手を後ろに組み、フィールドに体を向けて整列して待機しているだけ。もうこいつらサッカーチームというより軍隊。サッカープレイヤーより軍人とかに居そうだ。
「……妙だよな」
ああ、この様相を変えたフィールド……これもオーバーテクノロジーだよな。てか、今日の天気予報晴れなのに曇ってるのも妙だし……
「ああ……!なんか、こう……この辺がイライラしてくんだよな!オーガの態度!」
ユニフォームの上から心臓の部分を握りしめる染岡。あ、そこなのね。
「でもシュートチャンスはいっぱいあったじゃないですか!」
「そうですよ!何で撃たなかったんですか!?」
と、ベンチから見ていた少林と宍戸が声を出す。
「……撃てなかったんだ」
「そうは見えなかったぞ?」
「染岡君の詰めが甘かっただけじゃないんですか?」
「……分からねえ。どうもスッキリしねぇ」
スッキリしない……か。
「攻め切れない……と言えば分かるか?もう一つ……深く入り込めないんだ」
「それに、さっきいっぱいシュートチャンスがあったって言ったな?あれは全く違うぞ」
『え?』
「確かにそう見えたかもしれない。だが現実はあんなのチャンスじゃない。奴らが何かを狙って意図的に誘い込むための罠だった」
シュートチャンスがあればシュートを打つ。サッカープレイヤーとしては普通のことだ。ただ、そのシュートチャンスが意図的に生み出されそれを潰される。これを繰り返されるとオレたちはシュートを打てないことに苛立ちを感じ、感情が荒れる。
と、ここでマックスがドリンクのボトルを思い切り地面に叩きつけた。
「くそっ!こうなったらどんな手を使っても前に出るぞ!」
「それじゃ反則になっちゃいますよ」
「変えたいんだよ!流れを!」
チームの空気は最悪。これはヤバいな。
「俺……なんか嫌な感じがするっス……こんなサッカー嫌っス」
「壁山……」
確かに……?ん?まさか奴らの狙いはこの感情か?この感情を生み出させることか?……いや、だからなんだよって話だが。
「皆!しっかりしろ!皆の気持ちも分かる!前半は確かにサッカーしている感じじゃなかった。俺だって上手く言えないけど……本当にそんな気持ちで後半を戦うのか!」
「実際……その通りだけどよ……。どうすりゃあ良いんだよ?」
円堂の熱弁に皆は一応は落ち着きを見せる。
「推測だが後半は間違いなく奴らは動きを見せる」
オレたちにトドメを刺すべくな。知らんけどこのまま終わるはずはない。
「だから前半のようにはならないはずだ」
問題はどんな動きをするか。こればかりは蓋を開けてみないと分からない。
ピーー
後半戦開始。オーガのボールで試合は始まった。ミストレからエスカバ、そしてバダップへとボールが渡り、ドリブルで攻めてくる。それを豪炎寺と染岡は動かず通す。二人を突破したバダップはミストレへパス。受け取ったミストレ。そこを鬼道がスライディングで奪う。
「行け!一ノ瀬!」
そしてすかさず一ノ瀬へパス。
「円堂!土門!」
一ノ瀬が二人を呼び、二人は上がっていく。そして、三人は最高速度で一点で交わり、
『ザ・フェニックス!』
この試合初となる必殺技及びシュートを放った……が、これは奴ら、わざと打たせたな。
するとザコメルは右手に雷を纏い!?嘘だろ!?いや、あれは雷じゃない!電気だ!……いやどっちも大差ないな。うん。
「ニードルハンマー!」
そして、その右手はボールを貫いたぁ!??そのまま右手を引っ込めるとボールは何事もなかったように球形に戻ったぁ!???
「何がどうなってんのぉ!?」
明らかにパンクしたよね!?明らかにボールにドデカイ穴開いちゃったよねぇ!?何で一瞬で戻ってんの!?
『なにぃ!?』
いや、止められて驚いてるけどそこじゃないんだ!驚くのはそこじゃないんだ!
『Gyaaaaaaaa!』
何か向こうのゴールの後ろにある置物が鳴いてるし!あぁもう!なんなんだよ一体!
「敢えて打たせたな」
「よし、次だ」
『おう!』
「よく冷静でいられるなおい!」
と、ツッコミながら自陣ゴールへ戻っていくと、
「フェーズⅢ……スタート」
何かバタップが呟いた。そういや前半始まる時にフェイズⅡて言ってたな。あれ?フェイズⅠはどこに消えた?
するとボールはザコメルから前線のエスカバへ。
「ディフェンス!」
円堂の声と共に、ミットフィルダーとディフェンス陣が動き出す。
「はあああっ!」
エスカバの唸り声。すると背後に六つの発射台が地面から現れた!?発射台が開き発射口が見える。そこにはサッカーボール!?
「そんなのありかよ!?」
「デスレイン!」
エスカバが紫のオーラを纏わせたボールを蹴り出すと同時に発射台からも同じように紫のオーラを纏ったボールが発射される。計七つのボールがゴールに襲いかかる……。
「ってどれが本物だよ!」
そのうちの一つのボールを打ち返そうと拮抗するも残りの五つのボールが地面に衝突した衝撃波で吹き飛ばされる。残ったボール(おそらく本物)は円堂の正面へ。
「ゴッドハンド!」
しかし、ゴッドハンドはあっけなく崩壊。円堂ごとゴールに突き刺さった。
『Gyaaaaaaaa!』
そしてオレたちのゴールの後ろの置物が吠える。
「…………っ。いってぇなぁ……」
オレは立ち上がるも、
「マックス!栗松!」
一緒に直撃していた二人は動くことができずにいた。
「半田、少林寺。交代だ」
遂に本性を現したオーガの前に負傷する二人。シュート一発でこれかよ……。やばくね?
そして、雷門のキックオフで試合再開。ボールが豪炎寺に渡った瞬間。エスカバ、ミストレの二人の強烈なタックルによって倒されてしまった。
「豪炎寺!」
ボールはエスカバからバダップへ渡る。
「野郎!」
バダップからボールを奪おうと突撃しに行く染岡。だが、対するバダップは足を高く振り上げ、ボールを染岡の顔面に当てつつ遙か上空へと蹴り飛ばす。そして、そのボールに向かい跳躍した。
「止めるぞ!」
『おう!』
染岡と豪炎寺以外の八人がゴール前に集結する。
バダップはボールを両足で挟み込み捻る……え?あのボールねじれすぎじゃない?
「デススピアー!」
そして、足がボールから離れると、ボールは回転するどす黒い槍へとその姿を変えて、
「あれがボールの成れの果てだと!?んなわけ……!?」
ボールがやってくる風圧だけで吹き飛ばされそうになる。既にオレ以外の七人が吹き飛ばされたが……クソ!なんて力だ。横から近付けない……!
「円堂!」
「ああ。今度こそ止める!」
そう言うと体を捻る円堂。徐々にパワーが胸の辺りに集まっていく。そして、
「マジン・ザ・ハンド!」
「なんかマジンが現れたぁ!?」
円堂の背後に現れたマジン。そのマジンが円堂の動きに合わせて右手を突き出す。ちょっと待て!マジンが止めるからってそんな安直なのかよ!いや、安直なのは多いけどさぁ!
「うわぁぁ!」
マジンはデススピアーにほんの少し抵抗しただけで呆気なく破れてしまう。その風圧で飛ばされるオレ。
『Gyaaaaaaaa!』
響いた音。その音はオーガの狂気そのものな気がした。