「円堂守……十六夜綾人……!貴様が!貴様らがいるせいで……!」
ちょい待て。さっき、円堂だけだっただろ。何取ってつけたようにオレの名前を出してやがる。オレを巻き込むんじゃない。
で、オーガボールで試合再開。すると、バダップ、エスカバ、ミストレの三人が構えた。
「我々は負けることなど許されないのだ!」
上空にボールを蹴り上げ再び、
『デスブレイク!』
デスブレイクが地面を抉りながら突き進む。クソ、さっきより憎悪とか怒りとかで威力が上がってねぇか?心なしか背後に鬼が見える。
「円堂守っ!サッカーを捨てろぉっ!捨てるのだぁっ!!」
ダメだ!さっきと違ってボールに近づくことすら出来ない。何なんだよこれ!
『円堂!』
『キャプテン!』
「円堂さん!」
「守兄ぃ!」
「円堂君!」
「円堂ぉ!」
「円堂っ!」
おそらく近づけたとしても今のオレじゃ満足にシュートの威力を削ることすら叶わない。いや、もしオレが完全だったとしてもあのシュートはオレには止められない。
「ひいじいちゃぁぁーーん!」
円堂は恐れることなく真っ直ぐにボールを見つめる。
「バダップ!俺はサッカーを捨てない!サッカーが大好きな仲間がいる限り……俺は絶対諦めない!」
「その通りだ円堂!オレたちは絶対にサッカーを捨てない!例え何があってもな!」
オレも円堂に応えるようにして叫ぶ!そうだ!誰がサッカーを捨てるかってんだよ!
「うぉぉぉあああああああ!!」
再び吠えるバダップ。どうやらオレたちの答えが気にくわなかったようだ。いや、気にくわなかったって次元じゃねぇだろアレ。
すると、円堂の右手に今までにないくらいの光が集まってくる。
「未来に届け!」
そしてその手を掲げると巨大な手が現れる。ゴッドハンド?いや違う。その手はもっと大きく、もっと強い。
「オメガ・ザ・ハンド!!」
円堂のオメガ・ザ・ハンドとバタップたちのデスブレイクが正面からぶつかり合う。円堂のオメガ・ザ・ハンドはデスブレイクを握りつぶそうとするもその威力に押し負けそうになってしまう。
「うぉぉぉぉおおおおおおおおお!!」
だが簡単に押し負ける程円堂も柔ではない。
「負けるもんかぁぁっ!!」
右手を再び突き出すように構える。すると、徐々にオメガ・ザ・ハンドは、デスブレイクを握りつぶし始め、フィールド中に光が溢れた。
その光が止むとそこには、ボールをしっかりと受け止めた円堂の姿が。
「……ははっ。何も言えねぇよ」
「やっぱりひいじいちゃんはすっげぇや!」
ピ、ピーー
鳴り響く試合終了のホイッスル。
最終的にスコアは3-2でオレたち雷門の勝利だ。
『やったぁぁあああああ!』
グラウンドへと集まり勝利を分かち合う雷門イレブンと助っ人たち。
気付けばオーガによって変えられたスタジアムは元に戻っていた。
「バダップ!」
円堂がバダップに話しかける。
「すげー決勝戦だったな!お前たちと一緒に試合出来て良かった!」
「よくこの決勝戦をすげーの一言でまとめたな……でもま、過程はどうあれお前らと戦えて楽しかったと思えてるよ。ありがとな」
「だからまた、サッカーやろうぜ」
「その呪文を俺たちにもかけるのか!」
…………え?呪文?
「勝負が終われば、皆仲間だろ?」
いやお前。そもそも呪文って言われて何も思わなかったの?
「その考えが未来の人間を弱体化させた!貴様らのせいで戦う事を忘れてしまった!だから俺たちは未来を変えようとしたんだ!」
ちょい待て。その貴様らにオレを含めるのは間違ってるぞ。誰だ上官は。文句言いに行ってやる。……てか、
「別にそれはねぇだろ」
「何だと!」
「いやさ、試合が終われば皆仲間になる。サッカーってのはボールを蹴り合って点を決めるために攻めたり、逆に取られないよう守ったり。きれい事だけどそういう事を通じて皆最後は皆がつながり笑顔で終われる。違うか?」
「ククク……僭越ながら私もバダップ君へ一言。確かに誰かと競う意味での戦う心は必要でしょう。ですが、君の言う傷つけるための戦いは不必要であると思いますよ」
「ごまちゃんの言う通りにゃ!誰かを無闇に傷つけることは間違っている。ボクは皆が手を取り合って笑顔で楽しく過ごすことのできる。そんな世界がいいにゃ!」
「本当に未来を思うのなら、無益な戦いの必要ないお互いに分かり合える未来への道を模索し、理想の未来へ向けて前進すること。これが大切なんじゃねぇのか?」
オレ、五条、琴星、斎村。四人の言葉にバダップは反論することができない。
「バダップ……本当に強くならなきゃいけないのはここじゃないかな?」
円堂はトントン、と左胸……心臓部を軽く叩いて笑う。
「大切なのは戦う事じゃない。戦う勇気を持っているって事だろ?勇気があれば未来だって変えられる!仲間と一緒にもっと強くなる事だって出来る!」
すると、バダップは何かに気付いた顔をする。
「……俺たちはお前たちの言う『勇気』を見失っていたのかもしれない。円堂守よ!未来は……俺たちの進むべき未来は――」
「見つかるさ!」
バダップの不安に円堂は何の迷いもなく応える。
「お前たちの勇気で!きっとな!」
そして右手を差し伸べる円堂。それにバダップは応えようと右手を差し出そうとする……が。突如赤い光が空から降り注ぎ、円堂とバダップの間に壁となって握手を塞いだ。
「バダップ!」
バダップたちから光が出てきた。おそらく転送されるのだろう。
最後にバダップは自分の左胸をトントン、と叩く。
「…………!」
そして、空へと消えていった。
「円堂……」
「ああ。アイツにも伝わったな」
『ひいじいちゃん!』
と、ここでカノン、レイの曾孫ズが声をかけてくる。
「ありがとなカノン!」
「助かったぞ。レイ」
未来から来た二人。そして、異なる世界線から来た三人の元へ行く。
「琴星!五条!斎村!お前たちもありがとな!」
「ああ。お前たちとサッカーできて楽しかったよ」
「守兄ぃ!綾人!ボクも皆とサッカーできて楽しかったにゃ!」
「ククク……私も君たちと共に戦えて嬉しかったですよ。ああ、鬼道。こちらの私にもよろしくお願いします」
「円堂。十六夜。最高のプレーだった。これから何があっても挫けるなよ」
『ああ!』
……って、挫けるようなことがこれから起こるのか?あの円堂が?
「ひいじいちゃん」
すると、レイが手を前に出す。
「オレ。ひいじいちゃんの曾孫でよかったよ」
「……たく。それを中学生のオレに言うなっての。でもまぁ、お前みたいな曾孫が生まれるって事はどうやらオレの家族は平和らしいな」
オレも応えるようにして手を前に出し、レイの手を握る。
「いや……ひいばあちゃんは怒らすと怖いって聞いてるんだけどなぁ……」
と、何か小声で呟くレイ。
「どうした?」
「何でもないよ」
円堂の方もカノンと握手している。
「元気でな。レイ」
「ひいじいちゃんこそ」
そして、オレらが手を放すと、青白い光が現れた。おそらく帰る時間が来たのだろう。
「十六夜!またサッカーやろうぜ!」
「ええ。また一緒にやりましょう」
「絶対またサッカーをする。約束だにゃ!」
「ああ!もちろんだ!」
斎村、五条、琴星、そしてカノンとレイの五人は笑顔で手を振る。オレと円堂はそれを見送った。
「……行ったな」
「……ああ」
「……またね」
と、オレらが少ししんみりした空気を出してるなか、舞い散る紙吹雪。
振り返るとそこには、ベンチのメンバーを含めた雷門サッカー部全員がいた。
『フットボールフロンティア全国大会、大激闘を制したのは雷門中!新たな日本一の誕生だぁ!』
「俺たちは日本一だぁ!」
『おぉぉぉっ!』
次回でオーガ編終了です。
次回は本編短めあとがき長めでお送りします。