「これより、帝国学園対雷門中学の練習試合を始めます」
整列する雷門イレブンと帝国イレブン。この世界に来て早一年。ついに初めての試合かぁ。
「両キャプテン。コイントスを」
しかし、帝国のゴーグルを付けたキャプテンはポジションにつこうとする。
「鬼道君。コイントスを」
ふむふむ。向こうのキャプテンは鬼道って名前なのか。
「必要ない。好きに始めろ」
なるほど。これが強者の余裕ってやつか。
オレたちのフォーメーションは5ー4ー1。染岡のワントップで、オレは5人のディフェンスの真ん中。完全に守備型のフォーメーションだが、まぁ、仕方ない。オレたちの……というか、オレの作戦としてはカウンターで1点取るって感じだ。
「さぁ、皆頑張って行こうぜ」
審判のホイッスルと共に雷門のキックオフで試合開始。ボールは染岡からバックパスでマックス。そして再び染岡へ。
「……やっぱ跳躍力がおかしくないか?」
染岡が帝国選手2人のスライディングを跳んで躱す。うん。あり得ねぇ。
「すげぇぜ俺。結構やれるんだな」
いや、やり過ぎだって。もう。
「染岡。パスだパス」
染岡から上がってきた風丸にパスが通り、染岡、マックス、宍戸とパスが通る。
……上手く行きすぎじゃない?
「怪しい……」
宍戸のセンタリング。半田が合わせると見せかけスルーし、染岡がシュートを放つ。……アイツどんだけ跳んでるんだよ。このシュートには、普通のキーパーなら反応できないはず。そう、
「なに!?」
相手のキーパーは手でボールを弾き、そのままキャッチ。
「鬼道。俺の仕事はここまでだ」
そして相手キーパーの仕事終了宣言。いやいや、それは舐めすぎでしょ。
「ああ。始めよう……帝国のサッカーを」
「始める?」
いや、円堂。キミ、どれだけ耳がいいの?今鬼道は向こうのゴール付近で呟いていたよね?何で、キミに聞こえてるの?いや、オレが言えたことでもないけどさ。まぁ、オレは神様のお陰で聴力も上げられてるから。何故かは知らないけど。
「行け」
鬼道がパスを出し、受け取った選手はピッチ中央。センターラインからシュートを放つ。おいおい、超ロングシュートかよ。
「舐めすぎだ」
オレはトラップの要領で止めにかかる。これぐらい離れていれば普通に止めれると思った。しかし、
「おいおい……威力高くね?」
止めたのはいいけど数センチほどオレ自身の身体は後ろに下げられていた。普通のシュートに見えるヤツでだ。……これが必殺技というやつか(違います)。
「なに?止めただと」
若干驚く鬼道。ふむ、やはりこれが必殺技なのか?普通のシュートにしか見えなかったが(必殺技ではありません)。
「とりあえず、少林」
少林にパスを出して、再びマックス、染岡にボールが渡る。しかし、ディフェンダーの激しいチャージングの前にボールは取られてしまう。……え?あれ、ファールじゃないの?
「ふっ。まさか、豪炎寺以外にも面白そうな奴がいたとはな」
そして、ボールは鬼道へ。何故か1対1の状況になっていた。
「へぇーキミたちの狙いは彼なんだ」
なるほど。豪炎寺はバトルものとかでありがちな強い味方キャラってわけか。……まだ、味方になっていないけど。
「ディフェンダーに寺門のシュートを止められたのは誤算だったが……まぁいい」
口では何か言いつつフェイントを織り交ぜながら突破しようとする鬼道。
「悪いがその程度のフェイントでは抜けないよ」
こっちは元の世界での10年以上の経験と、この世界で八神に鍛えられたんだ。そう簡単には抜かれない。というか、八神のフェイントというか、ドリブル凄いんだよな……あいつ、本職はミッドフィルダーか?
「なら、これはどうだ?イリュージョンボール!」
鬼道の周りを3つのボールが……ってちょっと待て!コレどうなってるの!?いやいや、ボールをいくつも使うとか反則でしょ!?いや、イリュージョンだから幻覚!?それでも、いろいろとアウトでしょ!まさか、コレが必殺技なのか!?こんなのアリかよ!
「甘いな」
「なっ……!」
気付けば突破されシュート。円堂が止めようとするもボールは雷門ゴールに突き刺さった。……ちょっと待て。今のドリブルをどう止めろと?まさか、目には目を歯には歯を必殺技には必殺技をか!?いや、そんなの持ってないから!必殺技とかないからね!?
ハーフタイムに突入。あれからオレたちは帝国のサッカーで痛めつけられた。オレは時にはイリュージョンボールで翻弄され、時にはジャッジスルーとかいう非道な必殺技の前にボロボロにされた。スコアは7対0で帝国のリード。というか、試合自体帝国の圧倒的な力の前に成す術はなかった。
しかも気付けばベンチに2人ほど増えていてツッコミを入れたいが生憎入れる元気がない。
「どうなってんだアイツら。誰1人息が乱れてないぜ」
「そりゃそうさ。奴ら走ってないからね」
「僕らずっと遊ばれてるって感じですよ」
いや、感じじゃない。完全に遊ばれてる。
「くそっ。このまま終わってたまるか。後半は奴らを走らせて消耗させるんだ」
しかし、円堂の意見にチームメイトは否定的な雰囲気。
「なんだなんだ!勝利の女神がどちらに微笑むかなんて最後までやってみなくちゃ分からないだろ!そうだろ!なぁ?皆!」
しかし、この円堂の熱い雰囲気の語りですら誰1人賛同しない。いや、賛同する体力が残ってないのだ。
「後半を開始します。集まってください」
審判からの後半開始宣言。チームメイトも前半と同じポジションにつく。
審判のホイッスル。帝国ボールで後半戦が開始された。ボールは鬼道へ。
「行くぞ……デスゾーン開始」
ちょっと待て。デスゾーン直訳すると『死の地帯』いやいや、色々おかしいから。
「そして奴を引きずりだせぇ!」
鬼道の蹴ったボールは、前を走る3人の選手の真ん中辺りに飛んでいく。そこで3人の選手はジャンプ。ボールを中心に正三角形の頂点の位置で回転。黒というか紫のオーラを纏いながら3人同時に蹴る。……うん。コレが必殺シュートか。あのオーラってなんだろうな……というか、それ以前に滞空時間長すぎだろアンタら!?後、どんだけジャンプするんだよ!お前ら高跳びで何m行くの!?
「止めてやる!」
紫のオーラを纏ったボールを蹴り返そうとするも、
「うわぁぁぁああああっ」
完全に力負けし、挙句吹き飛ばされる。……シュートで何mも吹き飛ばされるとか初めての経験だよ畜生。
ボールは円堂の顔面に。そのままゴールに円堂ごと突き刺さった。
……超次元サッカー。何でもありだな……そう思いながらオレは空を仰いでいた。
主人公の弱点。
転生して一年が経ってもまだ元の世界の普通のサッカーをベースに考えている。
初見の必殺技には対応が一切できない。
心の中で必殺技にツッコミをしまくる。