超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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炎のエースストライカー

 オレたちボールからのキックオフ。スコアは8対0と帝国のリード。スコアだけでも圧倒している帝国だが、試合そのものを完全に支配している。

 

「続けろ。奴をあぶり出すまで」

 

 鬼道の言葉。これって、豪炎寺が来るまで続くってことだよね……?来なかったらどうなるの?

 

「サイクロン!」

 

 帝国ディフェンダーの蹴りによって出来た竜巻で飛ばされる半田。ちょっと待って!何故蹴った時の風であんな竜巻が発生するんだよ!?どんなキック力だおい!?

 

「百裂ショット!」

 

 帝国の必殺シュート。……え?本当に100回ぐらいボールを蹴ってない?どうなってるの?何でボールをそんなに多く蹴られるの!?

 

「キラースライド!」

 

 あ、今までの中でジャッジスルーの次に現実的な技だ。でも、君の脚は何本だい?オレには2本とは思えないのだけど。

 

「出て来いよ。さもないと、アイツを」

「叩きのめす!」

 

 スコアは15対0。オレたちは、全員倒され、帝国のフォワード陣により、円堂は人間サンドバックにされていた。……おかしいな。サッカーってこんなんだっけ?

 

「いい加減にしろよ……」

 

 円堂の前に立って、シュートを受け止める。本当にいい加減にして欲しい。人が必殺技とか使え無いからっていい気になって……!

 

「ほう。まだ立つか」

「行くぞ」

 

 ドリブルで単身突破を試みる。今気付いたが必殺技と言っても弱点のある必殺技もある。まぁ、弱点がないやつとか、突破口がないやつは知らね。

 

「キラースライド!」

「甘い!」

 

 この世界での逝かれた跳躍力を考えれば、こんなの跳べば突破できる!

 

「サイクロン!」

「くっ……!」

 

 こんなの……!

 

「なに!?」

 

 強引に正面突破するしかない。なるほど。こんな強引な方法が取れるって事は、ここで1年努力したってだけじゃないのか。神様に身体が強化されてるのか。なら、安心だ。

 

「行けぇ!」

「フッ」

 

 渾身のシュートも相手キーパーは片手でキャッチ。……ん?片手で、キャッチ?

 

「やれ」

「ジャッジスルー!」

 

 キーパーからボールを受け取った奴がジャッジスルーを仕掛ける。マズい!避けるのが遅れ──

 

「うわぁぁあああああああっ!」

 

 何mも吹き飛ばされる。……一体何回飛べばいいのだろうか。……あ、もうダメ。

 

「百裂ショット!」

 

 円堂に向かう必殺シュート。円堂は止めたようにも見えたがボールの威力に負け、ボール諸共ゴールの中へ。これで16点目。おまけに、雷門はフィールド上に立てる選手がいない。よし、秘密兵器の出番だ。

 

「審判……選手交代。オレに代わって、ベンチの目金」

 

 奴なら!奴ならばまだ無傷だから何とかしてくれるかもしれない!

 

「い、いやだ!こんなのいやだぁ!」

 

 め、目金!?と、逃走しやがったアイツ!ご丁寧にユニフォームを脱ぎ捨てて……ってどうするんだよ!?かなり状況不味くない!?というか、オレが倒れて動けないんですけど!体力は残ってないし!

 

「無様だなぁ」

「無理だな」

「お前らでは俺らから1点を取ることすらな」

 

 笑う帝国イレブン。ダメだ。正論に加えて体力も残ってない。くっ……これが実力差か。というか次元が違いすぎるんだよ……!

 観客からも諦められてるし……こりゃ、もう──

 

「まだだ!」

「円……堂?」

「まだ……終わってねぇ。まだ……終わってねぇぞ!」

 

 再び始まるシュートによるサンドバック状態。あの野郎、何でそこまで諦めが悪いんだよ……!

 

「クソ野郎がぁぁぁぁぁあああああ!」

 

 もう体力なんて残ってない。あるのは気力だけだ。

 

「百裂ショット!」

「止めてやる!」

 

 シュートの前に立ち、右足で蹴り返そうとする。くっ、何だよこれ。強すぎる!

 

「くそがあぁぁぁぁああああああああ!」

 

 叫びと同時に右足を何かが後ろから支えてる感じがする。よく分からないがこれなら……!

 

「吹き飛べ!」

 

 そのままボールはラインを超えて外へ。

 

 ドサッ!

 

「十六夜!?おい!十六夜!」

「わりぃ……もう動けねぇ」

 

 もう限界を超えている。ダメだ。動きそうにもない。

 

『誰だアイツ!』

『あんな奴うちのチームに居たか!?』

 

 周りの観客がうるさいなぁ……何だ?

 

『おや?彼はもしや、昨年のフットボールフロンティアで、1年生ながらその強烈なシュートで一躍ヒーローとなった、豪炎寺修也!』

 

 豪炎寺がこちらに歩いて来る。

 

『その豪炎寺君が、なんと雷門のユニフォームを着て、我々の前に登場!』

 

 あまりの事に冬海先生と審判が駆け寄る。

 

「待ちなさい!君はウチのサッカー部では……」

「良いですよ。俺たちは」

 

 冬海先生の言葉を遮る鬼道。

 

「それでは、帝国学園が承認したため!選手交代を認める!」

 

 審判の宣言により、豪炎寺の参加が決定した。

 

「豪炎寺!やっぱり来てくれたか!」

 

 円堂は豪炎寺の肩に手をかけるが崩れる。

 

「ああ、大丈夫か?」

 

 すかさず豪炎寺が支える。

 

「遅過ぎるぜ、お前」

「豪炎寺。オレと選手交代でフォワードに行ってくれ。頼む」

「ああ、任せろ」

 

 オレは皆の支えもありながら、ベンチに座る。

 

『さぁ雷門は十六夜に代わって新たな10番、豪炎寺が登場です』

「我らの目的はここからだ」

「なるほど。奴が狙いか」

 

 ふむふむ。やはり、豪炎寺を見に来ていたか。

 帝国側のスローインで試合再開。ボールは鬼道に渡り……

 

「行け。デスゾーン」

 

 鬼道からフォワード陣へボールが渡る。そして、デスゾーンを放つ。

 

「よし」

『走ったぁ!何故か豪炎寺、円堂を全くフォローせず!1人帝国ゴールに上がっていく!』

 

 なるほどね。

 

「なに?」

『目金と同じ敵前逃亡かぁ?』

「あいつ、俺を信じて走ってるんだ。俺が止めると信じて。これを止めた俺から、ボールが来るって!必ずパスが来ると信じて!」

 

 円堂から今までにない力を感じる。その力はオレンジ色にも見える巨大な右の掌の形を作り出し、シュートを完全に止める。

 

『止めたぁ!遂に帝国のシュートを止めたぁ!』

 

 待て待て待てぇー!もう、何が何だか分かってないが、何故今の状況を周りにいる奴らは平然と受け入れてるんだぁ!?おかしくね!?普通あり得ないよねぇ!?

 

「行けぇ!豪炎寺!」

 

 円堂からのロングスロー。ボールは豪炎寺に渡る。……いや、君どんだけボール投げてるの?そして、豪炎寺はボールを高く上げ、自身もジャンプ。空中で回転しながら炎を纏い、

 

「ファイアトルネード!」

 

 左脚でシュートを放つ。ボールは炎を纏いキーパーに止められることなくゴールへ……って待て!ちょっと待て!何で君は平然と炎を出してるんだい?色々とヤバいだろこの世界……

 

『ゴォール!遂に!遂に!雷門イレブン。帝国学園から1点をもぎ取りましたぁ!』

 

 盛り上がる観客。待って!おかしいよね!?何で、豪炎寺が炎を纏ったというか、出したことに誰一人驚かないの!?オレだけか!?オレだけなのか!?この状況をおかしいと思っている常識ある一般人は!

 

「ただいま、帝国学園側から試合放棄の申し出があり!ゲームはここで終了!」

『なんと!ここで帝国学園は試合を放棄!これは実質雷門側の勝利とも言える展開です!』

 

 試合には名目上勝利はした。何とも言えない気持ちにオレは空を見上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合も終わり、観客、帝国学園が帰ったとき、オレたち雷門サッカー部はグラウンドに集まっていた。

 

「よく来てくれたなぁ。これで、新生雷門サッカー部の誕生だ」

 

 ユニフォームを脱ぐ豪炎寺。

 

「これからも一緒にやっていこうぜ」

 

 円堂に投げ渡される10番のユニフォーム。

 

「……今回限りだ」

 

 去っていく豪炎寺。

 

「あ、豪炎寺。ありがとな!ありがとう!」

 

 豪炎寺を止めなくていいのかという意見に止めなくていいと答える円堂。オレは止めた方がいいと思うよ。だって、今の豪炎寺上半身裸じゃないか。

 

「さぁ、この1点が俺たち雷門サッカー部の始まりだ!」

『おぉー!』

 

 まぁ、その1点を取ったのが、まだサッカー部に所属してない人間だけどね。

 八神には悪いが放課後の特訓は今日は無しにしてもらおう。だって、ボロボロで疲れたし。……早くこんな異常な世界に慣れたい。後、これ以上ツッコミしかない必殺技が出ませんように。


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