超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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迷子と誘いの手

 突然ですが問題です。

 エイリア学園の施設は広いです。広いって事はどういうことが起こるでしょうか?

 

「やっべ……」

 

 答えは道に迷うです。

 いやね。広いからちょっと散策して戻ろうと思ったら戻れなくなったんだよね。いやはや、誰か地図作ってよ。施設マップは重要だと思うよ。うん。というわけで、誰か助けて。

 

「ここどこだよ……はぁ」

 

 最初に見た警備ロボット君たちも今では特訓相手だったりするもののオレのことを侵入者扱いしなくはなった。というかこいつらに道案内機能つけようよ。そうすればオレが迷わなくてすむ。正確には迷った後にしっかり帰れると言うべきか。

 

「っと……」

 

 基本自動ドアだからロックされてない限り近づくだけで扉は開く。おっと?なんだこの部屋。

 

「確かあれは……」

 

 何か巨大な紫色の石……あぁ、少し前にウルビダに見せられた……

 

「エイリア石ですよ」

「そうそうエイリア石……?」

 

 さっと、後ろを振り向くオレ。卑しいことはしてませんよ?人畜無害なただの迷子ですよ?

 

「あなたは確か……研崎さんでしたっけ?」

「覚えてくれていましたか。十六夜綾人君」

 

 まぁ、頑張って覚えたから……何故かこの人とおっちゃんだけ日本人の名前だったし。

 

「ここではムーンとして通っていますよ?」

「知っています。ですが私がお話したいのはムーンとしてのあなたではなく、十六夜綾人としてのあなたです」

「はぁ……」

 

 ぶっちゃけ、大差なくね?

 

「……ん?お話?」

「ええ。その前に質問です。あなたは持てる力は最大限使うべきだと思いますか?」

 

 質問の意図がマジでわかんねぇ……けど、その質問なら、

 

「そりゃあそうじゃないんですか?」

 

 別に間違ってはいない。少なくともオレはそう思う。

 

「同意見ですよ。武力だけではありません。財力、知力、能力など持てる力は最大限に発揮してこそ真の価値があります。逆に発揮しない力など宝の持ち腐れ、それほど意味のないものはありません」

「はぁ」

「君たちのやっているサッカー……それも同じ事です。走力、体力、キック力など個人が持てる力を最大限発揮することも大切です」

 

 何だろう?言ってることは間違ってはいない。間違ってはいないのに僅かな違和感を覚える自分がいる。この小骨が喉奥に刺さってるような気味の悪い感覚は一体……?

 

「あなたは現在ガイアに所属していますね?ですが、あなたと他のメンバーには壁がある。そう感じていませんか?」

「雰囲気って意味じゃそんなにないが、実力って意味じゃ確かにあるかな」

 

 ガイアの中では最弱の自信がある。当然と言われれば当然かもしれないが……

 

「追いすがろうとしても追いつけない。感じているのではありませんか?無力感、焦り、嫉妬、羨望…………彼らに対し、チームメイトに対しそういう感情はありませんか?」

「……まぁ、ないと言ったら嘘になるな」

 

 いつまでも追いつけないまま。間近でずっとアイツを見てきたから分かる。どれだけ練習しても特訓しても追いつけていない。今もずっと後ろ姿を追っているだけだ。

 でも────

 

「でしょう!力が欲しいとは思いませんか?彼らを見返す、彼らを超えるための力が!」

 

 と、スイッチが入ったように熱弁する研崎さん。あまりの変わりように思考を止めてしまう。そして、見せてくるのはこの部屋にあるような巨大なエイリア石ではなくもっと小さなエイリア石……ああ、ウルビダが見せたものか。

 

「君には素質があります!私がこの力を君に授けましょう!」

 

 そして石をそっと握らせてくる研崎さん。

 その瞬間、全身を駆け巡る衝撃のようなものを感じる……!

 

「きっと気に入るはずです……さぁ、見せてください十六夜綾人。君の本当の力を……!」

 

 オレは無言でその場を去った。

 

「クククッ。エイリア石を見るだけでは効果がなかろうともこうして触れさせてしまえばこちらのもの。さぁ、見せてもらいましょうか。『ハイソルジャー』十六夜綾人……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いたいた。探したぞムーン」

「ん?」

 

 迷子、食堂にて発見される。いやぁいいね。食堂があるって。

 

「どうした?」

「どうした?って、お前、午後はイプシロンと練習するって言っていたじゃないか」

 

 あ……。

 

「全く。向こうが今度漫遊寺を襲撃に行く前の最終調整をしたいって、お前に頼んでいたんだろ?」

 

 さーっと目を逸らす。

 

「はぁ。目を離して迷子になったかと思えばお前ってやつは……」

 

 ヤバい。完全に忘れていた。

 

「ほら行くぞ」

「へーい」

 

 というか、日頃からイプシロンは練習台にされているんだよなぁ……あと、ジェミニストームも。あんだけ雷門が苦戦しているのに、こっちからすればただの練習台扱い。恐ろしいわ。てか、可哀想。

 そういや、何でこいつはオレのスケジュールを把握してるんだ?ガイアのメンバーには誰にも言ってなかった気がするけど……ま、いっか。

 

「今日は頼みます。ムーン。ウルビダ様」

「え?なにウルビダも頼まれてたの?」

「いいや。ただ付いてきただけだ」

「というかウルビダ様って……」

「なんだ?文句あるのか?」

 

 いやね。何か女王様みたいだなぁーって。お似合いだなーって。ちょっと笑えるなぁーって。

 

「デザーム。こいつにあの技を放ってやれ」

「ゑ?」

「分かりました」

「ゑ?」

「行け。お前たち」

 

 ボールはマキュアに渡り彼女の両隣にゼルとメトロンが、そして力を込めると周りに巨大な岩がいくつも突き刺さり……え?あ、ちょっと待って。

 

『ガイアブレイク!』

 

 マキュアがオーバーヘッドキックの形で、左右の2人は跳び上がってそれぞれ蹴り込む。

 

「ちょ、心の準備がぁああああ!?」

 

 必死にボールの軌道をそらそうとするも……あ、これダメなやつだ。威力が違いすぎる。そりゃあ、こんなの今のオレじゃどうにもならない。

 ボールはオレごとゴールに刺さる。

 

「む、ムーン様!?」

「大丈夫ですか!?」

 

 駆け寄ってくるイプシロンの面々。あぁ、君たちの心遣いに癒やしを覚えるよ。

 

「ふむ……まだまだか」

 

 おいウルビダ。お前は心配の1つもかけられないのか?泣くぞ?流石に泣くぞ?

 

「よし。まずは連携の確認だ。ムーンと私がディフェンスをする。お前たち11人は奪われないようにパスをする。範囲は試合コート全て」

 

 待って。11対2でその広さとかやばくね?ボールを奪うどころか触れることができるかすら怪しいぞ。

 

「なぁに。ムーン。お前の力を持ってすれば取れないことはないさ」

「どっから来るんだよ……その自信は」

 

 とか何とか言いつつボールを奪うことに何度も成功したりする。パスの出す方向とか癖さえ分かれば案外やりやすかったです。

 

「これがマスターランクチームの実力……!」

「我らなどたった2人に負けてしまうというのか……!」

 

 可哀想に思えてきた。雷門ってこれからこいつら相手するんでしょ?でも、そいつらをあっさり倒せそうな、オレたちのようなチームがまだ控えてるって……はっきり言って絶望的だろうなぁ。

 

「まぁまぁ、そう自分たちを責めないでよ。動きはよく出来ている。だから後足りてないのは……」

 

 と、いくつか思ったことを挙げていく。そんな中で1人。デザームは自分の胸に手を当てていた。

 

「どうした?」

「いえ。何でもありません」

「そう」

「次はディフェンス練習とキーパーの練習を兼ねる。私たちが攻めるからお前たちは全力でディフェンスしろ。兼ねると言ってもワザとキーパーまで行かせる必要はない」

「「「はい!」」」

 

 そんな感じでイプシロンの面々との最終調整は夜遅くまでやっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてイプシロン漫遊寺襲撃当日。

 

「ムーン。京都へ行くぞ」

「はい?」

 

 なんか前も似たようなことあったような……。

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