超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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強さと違和感

 ピ、ピ──!

 

 あれからもお互いシュートの嵐だった。ゼルのガニメデプロトンを円堂のマジン・ザ・ハンドが完全に止め、吹雪のエターナルブリザードをデザームのワームホールが止める。他のシュートも2人のキーパーの素早い反応により止められ未だ両チーム無得点である。

 というか君たち。あまりにもシュート打たれすぎじゃない?ディフェンスは何をしているんだ?まぁ、イプシロン側は時折ワザと打たせてる感じがするけど……。

 

「デザーム様。0ー0のこの状況でなぜ笑っていられるのですか?」

 

 ゼルがデザームに問いただす。

 向こうのベンチではこの互角という状況に満足している者もいる。しかし、点数がお互い入らないことにもどかしさを覚えている者もいる。

 

「ムーン様。貴方はどうお思いですか?この現状を」

「そうだね。マスターランクチームに所属する者として言わせてもらうなら……我らエイリア学園が未だ無得点のこの状況。おまけに試合展開も互角と来た……恥に思え」

「「「…………っ!」」」

 

 一瞬で強張るイプシロンの面々。まぁ、いつもよりは強い言葉を使ったからな。

 

「お、おい……なんだ?あの空気?」

「喧嘩……?」

「そもそもあのミイラ男何者なん?」

「エイリア学園の親玉なのか?」

 

 隣のベンチでは勘違いの声が多発する。やれやれだ。

 

「だけど、オレ個人……ムーンとして言わせてもらうなら、キミたちの動きは悪くない。後半も思い切り、楽しんでやってこい!」

「「「…………っ!!」」」

 

 オレはそのままベンチを立ち去る……いや、トイレ行くだけなんだけどね。

 

「へぇ……宇宙人にもいいこと言うやつがいるんだな」

「そうだな……だが、油断は出来ないぞ」

「分かってるって。でも、この声どこかで聞いたことがある気がするんだよな……」

 

 あ、やっべ。円堂に声バレしてそう。

 いや、まだセーフだな。振り返って見たけど気付いてなさそうだし。そりゃそうか、包帯で声がこもっているんだ。気付くわけないない。あはは、心配しすぎだよな全く……

 

「あ、十六夜さんの声に近かったッス」

 

壁山ぁぁあああああああああああああああ!

 

「十六夜かぁ……確かに似ていたな。アイツ、今頃何しているんだろうな……」

 

 ずっと、隣で試合を見てましたよ。はい。

 やばい。立ち聞きしていると思われたらマズい。そのまま包帯剥がされた日にはもっとマズい。よし、逃げよう。

 

「…………」

 

 と、向こうから歩いてくるのは……吹雪士郎か。

 

「…………」

 

 ?何かブツブツ言ってね?

 

完璧に……なるんだ。完璧に……

 

 如何にも怪しい男(オレ)とすれ違ったにも関わらず、まるで視界に入ってないようにスルーされた。自分で言うのもあれだけど、今存在感すごいんだけど……というか、

 

「こわぁ……」

 

 あそこまでブツブツと独り言を言っているところを見ると、凄く怖く感じる。

 

「…………ちょ!?えっ!?」

 

 トイレに行くと何か水が溢れているんですけどぉ!?えぇっ!?何で蛇口から水出しっ放しになってるの!?誰だよこれ!?嫌がらせかよ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ピ──!

 

 後半戦開始。イプシロンと雷門が一進一退の攻防を繰り広げる中、オレはある選手に注目していた。

 

「吹雪……か」

 

 最初に彼を見た北海道でのジェミニストームとの試合。続いて京都でのイプシロンとの試合。そしてこの試合の前半戦。

 最初見たとき、彼は大人しいプレイヤーだと思った。試合外の姿とか纏う雰囲気とかそこからもそう思えた。

 だが、彼のプレー。特にオフェンスの時は雰囲気が変わり荒々しさが見えた。

 でも、たったそれだけなら話は単純だ。前の世界にも居た試合になると性格が変わるやつ。ああいうタイプなのだろうと。

 

「サイドから崩すぞ吹雪。パスだ」

「点取るには俺が必要なんだろ!」

「おい!待て!」

 

 マキュアからボールを奪い、ドリブルで突っ込む。鬼道からの指示にも従わず、こちらのディフェンス陣を抜くとシュート体勢に入った。

 

「エターナルブリザード!」

「ワームホール!」

 

 前半よりもパワーが上がったシュート。だが、ワームホールを打ち破るにはまだ足りなかった。

 ……今の一連のプレーを見ても思う。確かに指示に従わなかったのはアレだが、別に指示が絶対ってわけじゃないからそこはいい。問題は、彼が2人いるように思えてしまうことだ。明らかに普段……というか攻撃の時と守備の時の彼は別人に思えて仕方がない。

 ボールはメトロンへ。マキュア、ゼルの三人がボールを持って雷門ゴールを目指す。

 メトロンの前に立ち塞がるのは吹雪……だが。

 

「しまった……!」

 

 マフラーを握り、何かと戦っているように見えた吹雪。そんなあからさまな隙を逃すわけがなく、メトロンは彼を抜き去った。

 

「ガイアブレイクだ!戦術時間2.7秒」

「「「ラジャー!」」」

 

 そして3人は並び、前に一度モロに喰らったあの技……

 

『ガイアブレイク!』

 

 イプシロンが使える2番目に強いシュートを放った。

 そのシュートコースに割って入ったのは木暮。逆立ちして何かしらの技を放とうとするも、背中にボールが直撃。そのままボールと共にゴールへ向かう。

 

「木暮!?」

 

 円堂も予想外の事態に必殺技を出す暇もなく、そのまま一緒にゴールに刺さった。

 

『ゴール!雷門!イプシロンに先取点を奪われたぁ!』

 

 イプシロン側が1点決めた……が。あの木暮という選手。何か焦っているのか?そういや前半もなんか必殺技出そうとして、出す前に抜かれていたし……。

 

「さぁ、ここからだ!気持ちを切り替えて行くぞ!」

「「「おぉっ!」」」

 

 円堂は一言二言木暮に声をかけた後、全体に向けて声を出す。雷門には誰1人として今の失点を攻める者はいない。

 

「今の1点は相当精神的にも来ているはず。だが、円堂の一言で空気が変わった」

 

 正確には空気が変わらなかったと言うべきか。どちらにせよ、雷門の中に負けそうといった弱気な気持ちを感じない。やれやれ……流石というか何というか。

 やっぱりアイツの周りに及ぼす影響力は計り知れないな。

 試合再開。精神的に折れていたなら総崩れしそうなものだが、やはり精神的には一切折れてない。前半同様、いやそれ以上にお互いが全力でぶつかり、試合は動かないでいた。

 

「だからこそ……」

 

 だからこそ、たった1人だけ。今もなおイプシロンではない何かと戦っている。彼にはさっきの円堂の一言が届いたのか?周りの者の声が届いているのか?

 

「メテオシャワー!」

 

 ボールはマキュアに。必殺技で壁山と塔子の2人を倒しゴールへと迫る。

 

「今度こそ止めてやる!」

 

 立ちはだかったのは木暮。その表情に、言葉に焦りは感じなかった。

 

「旋風陣!」

 

 逆立ちし、足を広げものすごいスピードで回転する。そして、ボールは彼の足に吸い寄せられるように行って……

 

「…………よくあれだけ回っていられるよな……」

 

 もう何回転したとかそういう次元じゃない。あれだけのスピードで回転してなお、目も回してなければフラフラにもなっていない。

 ボールは木暮が確保、そのまま吹雪へと繋がる。ドリブルを始めたがまだ大人しい。

 

「……変わった」

 

 ディフェンスに行ったクリプト。彼女を抜き去ると同時に豹変する。そして、

 

「エターナルブリザード!」

 

 さっきよりも更に威力が上がる。……打てば打つほど威力が上がっていくそのシュート。だが、

 

「ワームホール!」

 

 まだデザームのワームホールを打ち破るには足りなかった。

 しかし、さっきよりも出てきたボールの威力が高く地面にめり込む……というかデザームの前の地面に穴が開いた。

 

「いいぞ……!もっと強く!もっと激しく打ってこい!」

 

 いや打ってこいじゃないからね?気持ちは分からなくはないけど試合中だからね?

 

「ちくしょぉおおおおおっ!」

 

 叫ぶ吹雪。……今の彼にはデザームを倒すことしかない……か。

 

「でも、そのおかげで吹雪のシュートは撃つごとに成長している。それをデザームは見て熱く燃えている」

 

 別に熱くなるのはいいが……特に吹雪の方。彼は今ディフェンダーのはず……それなのに攻めることしか考えていない。いや、考えられなくなっていると言うべきか。

 そして再びボールは雷門。一ノ瀬と浦部がボールを持ち上がってくる……が。

 

「こらぁ何すんねん!ウチらのラブラブボール!」

 

 …………浦部の発言はともかく、味方から強引にボールを奪い去る吹雪。

 北海道でのジェミニストームとの試合を思い出すが、あの時と違いただただ、ゴールを決めることしか頭にない。言ってしまえば自己中心的なプレーだ。

 

「吹雪!無茶だ!」

「どけぇっ!」

 

 鬼道の制止を振り切り、ディフェンスに来たメトロンとモールを強引に突破する。

 

「さぁ来い!」

「今度こそ吹き飛ばす!…………余計なことをするなぁああ!」

 

 エターナルブリザードを打つ吹雪。だが、撃つ直前、一瞬おかしくなかったか?まるで何かが暴走を阻止しようとしたみたいに……?

 

「ワームホール!」

 

 そんなオレの疑問をよそに更にパワーを上げたエターナルブリザードとワームホールが衝突する。先ほどまでと違い、謎の吸い込む空間に吸い込まれることなく空間を壊そうとしている。

 

「決まれぇっ!」

「いけぇっ!」

 

 円堂と吹雪からの声。それに応えるようにボールはワームホールを正面から打ち破った。

 

『ゴォオオオオル!同点ゴール!』

 

 ボールはゴールに突き刺さった。1ー1の同点。

 喜ぶ雷門。対してイプシロン側には少しの悔しさはあるものの、それを凌駕する熱を感じる。

 そしてイプシロンボールで試合再開。マキュア、ゼル、メトロンの3人が上がり、

 

『ガイアブレイク!』

 

 シュートを放つ。シュートはディフェンス陣の間を抜け円堂の元へ。

 

「あのスピードだと、マジン・ザ・ハンドは間に合わないな」

 

 間に合ったところで止められる保証はないがな。……そう思っていると、左腕を上げた円堂。そして心臓の部分から何か飛び出て円堂の身体の周りをグルグルと何回転か。そして、右手にその飛び出た光が宿り。

 

「マジン・ザ・ハンド!」

 

 マジンが出た。

 …………ああ、そう言えばマジン・ザ・ハンドのあのいつもの動きは心臓の部分に気を溜めて、それを右手に伝えるためにやっていたんだっけ。なるほど。これなら体を捻らなくても右手に気が伝わ……んなアホな。遂に気が独りでに飛び始めたのかよ。マジか。マジで言ってるのか。

 円堂の進化した(進化した?)マジン・ザ・ハンドはガイアブレイクを完全に止めた。

 

「おっしゃぁ!」

 

 ま、まぁモーションの疑問はともかく、威力は確実に上がっているなうん。

 勢いに乗る雷門。残り時間がわずかの中、吹雪が飛び出す。

 

「これが最後だ!吹き飛ばせ!」

 

 シュート体勢に入る吹雪。

 

「エターナルブリザード!」

 

 本日何度目かのエターナルブリザードが炸裂する。威力もさらに上がりワームホールでは絶対に止められないだろう。

 

「来るか……なら私も応えよう!」

 

 そうして右手を掲げるデザーム。するとそこには巨大なドリルが。

 

「ドリルスマッシャー!」

 

 そのドリルは勢いよく回転しながらエターナルブリザードと衝突する。そして、そのまま上へ弾き飛ばし軽々キャッチする。

 …………何度見ても分からない。あれは錬金術ですか?いや、何もないところから急にバカみたいにデカいドリルが出て来てるから、オレの中では生成説が濃厚なのだけど。でも生成説はいいのだけど、問題は役目が終わったら一瞬で消えるんだよね……ふむ。

 

「……実は、アレの素材は金属じゃない説」

 

 何故だろう。ドリルスマッシャーとか言ってデザーム自身がグルグル高速回転しながらボールにパンチしている姿が想像される。今度やらせてみようかな?

 

「はっはっはっはっ!」

 

 そして、急に笑い出したデザーム。そのままボールを外に出す。

 

「試合終了だ」

「なんだと!?」

 

 いや、審判が決めるからな?お前が決めるなよ。

 

「確かに時間は残っていないが……」

「引き上げるぞ」

「「「はっ!デザーム様」」」

 

 っと、これに合わせて帰るか。

 

「ふざけんな!まだ勝負はついてねぇ!逃げんな!」

 

 おーい。デザームが挑発しすぎたせいで怒ってるぞぉー。

 

「再び戦う日は遠くない。我らは真の力を示しに現れる」

 

 そう言い残し、イプシロン+オレの姿はグラウンドから消えた。

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