どうにもオレたちが悪役って感じが否めない。
いやね?さっきはグランが「円堂を動揺させるために友達のフリをして近づいたんだ」「最低だ」とかなんとか言われていたよ。やれやれ、うちのキャプテンは本当に困る。
ん?オレに関して?ああ、何か「あのミイラ男親玉じゃなかったんか」とか「あのミイラサッカーするんだ」とかミイラミイラうるせぇよ。言っておくがミイラじゃねぇよ?人間だよ?……あ、今は宇宙人か。
で、結局試合はするんだけど、オレたちは特に試合前だからと言って話し合うことはない。そのため、そのままポジションについて、雷門がポジションにつくのを待つ。
「はぁ……」
空を見上げるとそこには厚い雲が。途中で降らないといいけど。
そんなことを考えていると、気付けば雷門側もポジションに着いていた。
ピ──!
雷門ボールで試合開始。浦部がドリブルで上がってくるが、フォワードのウィーズがあっさりボールを取って、そのまま攻め込む。
「一ノ瀬!」
鬼道からの指示で一ノ瀬がマークに付こうとするもマークに付く前にあっさり抜いていく。
その間にこちらもミットフィルダー陣が攻め上がる。わぁ、戻ろうとする雷門よりも圧倒的にこっちの方が速いわ。
「な、何なんですかあのスピード!?」
向こうが驚くのも無理はない。なんたって今まで見てきたのとは文字通り
「アーク!」
「コーマ!」
「ウルビダ!」
「グラン!」
素早いパス回しであっという間にゴール前。
「行くよ。円堂君」
「来い。ゴールは割らせない」
グランの普通のシュート。
「マジン・ザ・ハンド!」
円堂は必殺技を繰り出すも呆気なく破れ、ゴールに刺さった。
「……入っちゃった」
心底驚いているグラン。いや、確かに入っちゃったけどさぁ……。
『ゴール!開始1分。ジェネシスあっという間に先制です!』
お前……何か、毎回見ている気がするなぁ。円堂たちのストーカーか?
「嘘だろ……?」
「何だよ……今のシュート」
「信じられない。マジン・ザ・ハンドがあんなに簡単に破られるなんて……」
多分こっちも同じ気持ちなんだろうなぁ……あんなに簡単に破れるなんて思ってもいなかっただろう。
「なんてパワーだ……でも、もうゴールは許さない!」
「それでこそ円堂君だ」
そして雷門ボールで試合再開。呆気なくウルビダが取って、ドリブル。そしてグランにパス。
「行くよ!円堂君!」
「今度は止める!」
再びグランのシュート。
「マジン・ザ・ハンド!」
再び円堂のマジン・ザ・ハンドは呆気なく破れた。
「円堂!」
その後は本当に単調な作業ゲー感がやばかった。
雷門ボールで試合再開しても、フォワードもしくはミットフィルダー陣があっさり奪う。軽快なパス回しをしたり、ドリブルをしたりで、最後はグランが普通にシュートを打って、円堂のマジン・ザ・ハンドを破って点を取る。
オレを含めたディフェンス陣は試合が始まってから、まだ1歩も動いていないのに、向こうはボロボロ。そりゃそうか。全力で取りに行こうとしても、ドリブルしているこちらのメンバーに追いつけていないもん。
『決まったぁ!ジェネシスこれで15点目だぁ!』
気付けば15回、そんなことを繰り返していたらしい。初めてだなぁ。試合でこんなに退屈してるの。
「もう終わりなの?君の実力はこんなもんじゃないはずだよ」
地に伏す円堂にそう告げるグラン。
グラン……それは分かってるけど言い方言い方。お前……それじゃあただの煽りだぞ?
そして、グランが円堂に背を向けたそのとき、
「試合はまだ終わっちゃいない。諦めなきゃ必ず反撃のチャンスは来る。だからそれまでこのゴールは俺が守る!」
その言葉を聞いて安心した。どうやら心は折れていないらしい。まぁ、それでこそ円堂だな。
「よぉし!まずは1点!なんとしても奴らから奪うんだ!」
「「「おう!」」」
その円堂の声に真っ先に反応するは鬼道。……ただ、悪いが点をやるつもりはないよ。
何度目かの雷門のキックオフ。再びボールはあっさりとこちらが奪い、コーマがドリブルで上がっていく。
「アーク!」
コーマがアークにパス……がそれを読んでいた鬼道がパスカットに成功する。
「…………流石だな」
いい加減にこっちの動きも見慣れてきた頃だ。多分、今のは偶然じゃないんだろうな。
「吹雪!」
鬼道から吹雪へパスが繋がる。おっと、初めてミットフィルダー陣を抜いてきたな。
「行けっ!吹雪!」
「吹雪さん!」
「よし1点だ!」
しかし、吹雪は何故か足を止めてしまう。その隙を付いてゾーハンがスライディングをし、ボールを外へと出す。
……うーん。やっぱり、吹雪は何かに苦しんでいる。今までのことも踏まえると彼は多重人格者。正確に言うなら解離性同一性障害を患っていると推測される。もちろん推測の域は出ないが……で、彼の中にある2つの人格。おかしく見えるのはその2つの人格が争っているからでは?というのがオレの見解だ。まぁ、オレにどうこうできるような範疇を超えているから気にしすぎてもアレだが。
雷門のスローインをあっさりカットし、反撃に出る……が、再び鬼道によってパスカットされた。
「吹雪!」
そしてボールは吹雪へ。
「よぉし!今度こそ俺が!」
「やめろぉおっ!」
ディフェンスに向かうが……なんだ?さっきからコロコロ人が変わっているんだけど……?おいおいそんなので大丈夫かよ。
「エターナルブリザード!」
そしてこっちの心配をよそにエターナルブリザードを放つ……が。
「フンっ」
シュートコースに先回りし、軽々と止めることができた。
「…………?」
おかしいな。この前のあの威力はどこへ消えたんだ?いいや、下手したら今まで見てきた彼のエターナルブリザードの中で最弱なのでは?
というか、キーパーどころかディフェンダーに止められたことで雷門や観客たちに衝撃が走ってる。知らんけど。
『な、なんと吹雪のエターナルブリザードがディフェンダーに止められた!?これは失敗かぁ!?』
うーん。確かに失敗かもなぁ。もう1回撃たせたら変わるかな?
「…………」
あ、ウルビダがこっち見てる。あの目は多分……
「シュートを決めろ……かな?」
まぁ、いいけど。というわけでオレはあの独特の走り方をしながらドリブルで上がっていく。
「抜かせない!」
鬼道と一ノ瀬がディフェンスに来る。一瞬視線を横にずらして、
「ムーン!」
ウルビダにパス。そしてウルビダがダイレクトで返してくる。やれやれ、そのままで良かったんだけどなぁ。まぁいっか。
「行くよ……円堂」
マークにやって来た壁山を軽々突破して円堂と向き合う。
そしてオレは急停止して、目を閉じ、手を水平に振るう。
辺りは一気に暗くなり夜を思わせる。唯一残っている光は上空に現れた満月からの光のみ。
目を開くと同時に真上に向かってボールを蹴り上げ、
ピ──!
「ムーン──」
オレの指笛が鳴ると同時に上空に浮かんでいる満月からボールに向かって飛んでくる5つの光。
オレは高く跳躍し、光が集まったボールを上空からゴールに向かって蹴りつける。
「──フォース!」
光は6つに分かれる。1つはボール。5つはペンギンの形をしてボールと共にゴールへと向かう。
「マジン・ザ・ハンド!」
円堂のマジンは呆気なく破れ、ボールは円堂ごとゴールへ刺さった。
『ゴール!これでジェネシス16点目!な、何なんだあの必殺技はぁ!?』
シュートを決めると同時に、月は消え辺りは元に戻っている。
「上出来だ」
「まぁな」
その後も雷門ボールで試合再開するも、鬼道を中心にボールをこちらから取れたとしても、シュートを打つ前にはディフェンダーが止める。
しかも、少しずつだがジェネシス側の動きは速く、代わりに雷門側はボロボロになっていき遅くなる。やれやれ。まだ誰一人として本気出していないのに。
そんなこんなで気付けば20点差。内19点はグランのシュートだったりするが。
「…………?」
だが、この絶望的な状況で2人の選手の様子がおかしかった。1人は風丸。彼はおかしいというより、さっきから力の差に絶望した感じでいつもの感じとは違う気がする。まぁ、彼の方は仕方ないかもしれないが、問題はもう1人の方の吹雪。今はフォワードとは言え、ディフェンスもできるはずの彼が、この攻められ続けている状況で味方のフォローに行っていない。
『またグランにボールが渡った!』
「円堂!」
グランがドリブルで円堂の元へ。
「来い!」
倒れそうに見えるが……まだ流石に倒れないか。
「好きだよ……円堂君。君のその瞳!」
そしてボールを上に上げて……ちょっと待って。あれってまさか……
「流星ブレード!」
それはオーバーキルだろ!?必殺技使ったオレが言えた立場でもないけどさ!?
「うわぁああああああ!」
そして、吹雪がそのシュートに向かって走り出す。
「吹雪!」
ダメだ!シュートを止めようとして向かったというより自棄になっている感じがする!
「ッチ!」
放たれるグランのシュート。そのシュートに飛び込む吹雪。ダメだ……普通に走ったら間に合わない!
「クソっ!イビルズタイム!」
オレは指を鳴らし時間の流れを極限まで遅く──ゼロにする。使いたくはなかったが、使わざるを得ないらしい。
この技は都合がいいのか悪いのか知らんが、時が止まっている以上何かを動かすとかそういうことは出来ない。だから吹雪を動かして直撃を避ける……みたいなことは出来ない。
「自棄になってんじゃねぇよ!」
オレは吹雪とシュートの間に割り込み、ボールに向かって蹴りを加える。
そして、オレがボールに触れた瞬間、止まっていた時は動き出す。
「……!?いつの間に!?」
周りからすれば一瞬で移動したように見えるこの技。種が分かりゃ正体はバレる……というかもうバレている可能性は普通にあるが。
「クソがぁっ!」
オレがこいつのシュートを止められないことは最初から分かっている。だからオレが出来るのは精々コースを変えるくらい。
直後、ボールは地面にぶつかり辺りに衝撃が走る。
その衝撃でオレと吹雪は吹き飛ばされる。
オレは綺麗に着地できたが吹雪は倒れたまま動かない。
吹雪のもとへと駆け寄る雷門。このままでは試合続行は不可能だろう。
「吹雪さんっ!」
「吹雪!」
救急車をすぐ近くにいたやつが呼びに行く。これで雷門との試合も終わりかな。
「大丈夫かな」
「行こうぜグラン。こんな奴らとやってもウォーミングアップにもなりゃしない」
その言葉を聞いてオレも彼らから背を向けて歩き出す。
「待てっ!」
そこで鬼道が制止をかけるが誰も聞かない。グラン以外は既に帰ろうと歩みを止めない。
「ムーンと言ったか。お前のお陰で吹雪にシュートが直撃しなかった。それは感謝している」
オレは片手をあげて手を振る。まぁ、そのために動いたんだからな。
「1つだけ聞かせろ。……お前は十六夜綾人じゃないのか?」
「「「……え?」」」
声からして分かるが……雷門の面々は驚いているな。…………はぁ。
「バレたのなら仕方ないなぁ」
オレは足を止めて彼らと向き合う。
別に誤魔化してもいいけど……ぶっちゃけ面倒。あの鬼道有人がただの憶測で、そんな荒唐無稽と思えることは言わない。きっと、何かしらの証拠……というより確信を持って言っているはずだ。それを聞いてもいいが時間の無駄。
だったら、バラしてやろうか。
「流石だね鬼道有人。正解だよ」
オレは顔に巻かれた包帯をゆっくりと取る。いやぁ、暑苦しかったなぁ。
「──初めまして、そしてお久しぶり。オレはエイリア学園のムーン。君たちの知っている十六夜綾人だよ」
改めて……というより、初めての人もいるから笑顔で自己紹介をする。
こちらが笑顔の一方で雷門のメンバーには衝撃が走っていた。特に、オレと一緒に戦ったことのある奴らはその衝撃が大きいようだ。
「お、お前……宇宙人だったのか?」
「そうだよ円堂。まぁ、君たちを騙していたつもりはなかったんだけどね」
これ以上長居しても質問攻めに遭いそうだ。やれやれ。
「行こうかグラン」
「そうだね……それじゃ、またね」
「お、おい!待てよ十六夜!お前には聞きたいことが……!」
「今の君たちに何かを言うつもりはない。聞きたいことがあるなら強くなってから出直してこい」
そして黒い風がオレたちを包み込む。
そのままオレたちはエイリア学園に帰るのだった。
「お前が……敵なのか?……嘘だろ?」
膝を突き、崩れ落ちそうになりながら発せられた弱々しい声。
その声は十六夜には届かなかった。
オリジナル技
ムーンフォース
シュート技
遂にペンギンを自力で呼べた模様。
その上月からペンギンがやってくる。
夜とか月とかのイメージは野坂の必殺技月光丸・燕返し。