超次元サッカーへの挑戦   作:黒ハム

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病を看るから看病である

 それはカオスVS雷門の試合が終わってからだった。

 オレは未だに燻るこの熱を抑えきれずに、ウルビダに特訓に付き合ってもらうよう打診した。

 彼女は(何故か)頬を紅くしながら承諾した。

 そう、ここまではよかったのだ。ここまでは。

 

「……ん?」

 

 どこか、いつものウルビダと違う。何というか……

 

「行くぞ」

 

 受け取るパスもいつものような強さはなく弱い。それだけでなくコントロールも悪い。……何かがおかしい。

 

「ウルビダ」

「何だムーン……次行くぞ」

 

 既に疲れた感じを見せる。普段の彼女ならば、こんな軽いウォーミングアップだけでここまでは疲れない。明らかに変だ。…………ふむ。

 

「ちょっといいか」

 

 オレは彼女に近付き額に手を当てる……

 

「い、いきなり何をする!」

 

 普段の彼女ならもっと素早く反応出来たのに遅い。それに掌に伝わるぬくもりというか暖かさ……これは。

 

「お前……熱があるんじゃないか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 結論から言いましょう。ウルビダさんが風邪を引きました。

 原因?簡単に言うと無理のしすぎだって。え?じゃあ、無理しかしてないオレって……あ、神様がきっと風邪を引かないような身体にしたんだろう。うん。そうだねきっと。だから滝に打たれて全身ずぶ濡れで一晩外で上裸で過ごしても風邪なんか引かない体質に……おいバカって言ったやつ前に出ろ。バカは風邪を引かない?あれは違うわ。バカは風邪を引いたことに気付かないんだよ。あれ?じゃあ、円堂は皆勤賞しか獲ったことないって言ってたから、正真正銘のバカでは?おぉ、なるほど。確かにあの熱血さなら風邪を引いたことに気付かない以前にウイルスとか菌をあの熱で燃やしてそうだなぁ……。

 

 閑話休題。

 

 話がそれた。うん、確か神様ってすごいって話だったね(違います)。そういや最近神様に電話することなくなったなぁ……まぁいいか。ここで暮らしていくのにいつまでも神様にすがっていてもどうしようもない。オレはオレのやりたいようにする。すなわち──

 

『さっきから現実から目を背けようと必死だね。綾人』

 

 ──必死?必死って何のことだいペラー君。言いがかりはよしたまえ。

 

『いや、姉御の部屋で2人きり。しかも、姉御が今後ろで着替え中だからって……』

 

 あああああああ!それを思い出させるなバカ!仕方ねぇだろ!?こうでもしてないと、後ろで着替えているウルビダの衣服のすれる音とかが気になってしまうんだから!

 

『綾人も男の子だったんだね……』

 

 おいこの野郎。どういう反応だコラ。

 

『てっきり綾人はサッカーしか興味がないかと』

 

 他にもあるわ!女子にも興味があるわ!

 

『特に姉御には興味津々?』

 

 ……うるせぇ。

 

「……もういいぞ。振り向いても」

 

 そう言われたので振り向くと、布団を被って目元当たりだけを出しているウルビダ。

 あ、あれ?おかしいな。ウルビダってこんなに可愛かったっけ?

 

『姉御は喋らなければ美人だよ』

 

 だよな。喋ると残念さが垣間見られるよな。

 

『そうそう。本当にもったいないよね』

 

 うんうん。

 

「…………さっきから悪口を言ってないか?」

「何も言ってないよ?」(察しが良過ぎじゃね?)

「……そうか」

 

 あぶね、今回はごまかせた……のはいいんだけど。ああどうしよう。いつもにしては珍しい、なんともいえない沈黙が流れているんですけど……。

 何となく気まずくなって部屋を見渡してみる。ウルビダの部屋は一言で言えばシンプル。全然ごちゃごちゃしていない。

 

『ねぇねぇ綾人。これ、前綾人があげてたやつでしょ』

 

 ああ、お前のぬいぐるみか。大切にしてくれているんだな……って何でお前が知ってるんだよ。

 

『そりゃあ、綾人の事は何でも知ってるからね』

 

 おっと?プライベートの侵害か?……まぁいいや。

 そして、視線を移すと勉強机の上には2つの写真が立てられていた。1つは幼い頃のウルビダ……八神を含めた、お日さま園での写真。皆、笑顔が見られる。もう1つは……

 

「…………それは私の本当の両親だ」

 

 オレの疑問に答えてくれるウルビダ。いや、あなた凄いですね?何でオレの思考が読めたの?

 

「…………両親は……確か……」

「…………ああ。私が小さい頃に亡くなったよ」

 

 エイリア学園に居るオレ以外の選手たちは全員が全員、お日さま園という孤児たちの施設出身だ。主に2つ。両親が死んだか捨てられたか。

 

「…………お日さま園に来たばかりの私はすぐに泣いていたそうだ。両親のことで哀しみがあった」

「…………仕方ねぇだろ」

 

 まだ幼いんだ。両親が死んで悲しくなかったなんてよほどの事がない限りあり得ないだろう。

 

「…………でもお父様は私を──私たちを受け入れてくれた。サッカーボールをくれたり勉強を教えてくれた。私はそんなお父様について行きたい。この計画もお父様はきっと正しいと思うから付いてきている」

「……そうか」

「…………お父様から聞いた。お前も両親がいないって……すまない。勝手に聞いてしまって」

「……いいよ。調べりゃ簡単に出て来る」

「……なぁ、ムーン。いや、十六夜……私は怖いんだ」

 

 震える手をこちらに差し出す八神。

 

「……おかしな話だと笑ってくれ。私は怖いんだ……お前が、十六夜が目の前からいなくなることを」

「…………っ!」

「ずっとそばにいて……」

 

 差し出された手。しかし、こちらが取る前に引っ込め、そのまま反対側を向く八神。

 

「……今のは忘れてくれ。いや、絶対に忘れろ。いいな?」

「分かったよ」

「約束だぞ?」

「へいへい」

 

 まぁ、そんなに言われても絶対忘れるつもりはないけど。

 

「それと部屋に戻れ。お前もうつりたくはないだろうし練習もしたいだろ。こんな私に構うな」

「いや。オレは大丈夫だ。看病ぐらいさせろ」

 

 オレは椅子をベッドの横に持ってきてそこに座る。

 コイツが風邪を引いた原因の一端はオレにもあるだろうからな。それにこんな状況じゃ誰も看てくれるやつなんていない。それはさすがに可哀想ってものだ。

 そして、八神の頭をなで始める。

 

「……ありがとな」

 

 程なくして眠りについた八神。

 

「……ごめんな」

 

 オレは謝った。その声が彼女に届いていないと知っていても。

 お前はオレを同じような境遇を持つ仲間と思うだろう。でも本当は違うんだ。本当は逆なんだ。オレが両親の前から消えた存在なんだ。

 

『綾人……』

「……ペラー。オレは改めて決めたよ」

『……うん。オレはそれに付き合うよ』

 

 八神。オレはお前のそばにいる。…………だから、

 

「…………ごめんな」

 

 これはオレのワガママで、正しいかは分からない。

 だが、この先どうなろうとオレはこの道を進んで行く。

 もう迷わないし引き返さない。

 例え誰が敵として立ちはだかろうとオレは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして終幕へと物語は進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 十六夜が決意を固めた頃、他の場所でも同じように動いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「おいバーン。この通知を見たか」

「ああ。クソっ!なんでガイアが正式にジェネシスの称号なんだ!」

「……なぁバーン。1つ提案をしていいか?」

 

 動き出すガゼルとバーン。

 

 

 

 

 

 

 

「ジェネシス計画も大詰めですね」

「えぇ。最終段階ですね。準備はもうまもなく終わります」

 

 最終段階へと移行する計画。

 

(私の方も少しずつピースは埋まってきています。あと少し……)

 

 潜む野望。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、雷門側でも大きな動きを見せていた。

 

「円堂君」

「はい!」

 

 アフロディを新たに加えた雷門。

 

「貴方にはゴールキーパーをやめてもらうわ」

「…………え?」

 

 キャプテン円堂に重大な宣告が言い渡されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すべての決着が付くまで後……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




時系列云々はダイヤモンド戦がカオス戦に変わったために起きたものと思ってください(一応)。
思い切りタイトル詐欺をしていたような……そうでもないような……。
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