「マギアレコード」 Pueri et puellae magicis   作:ゆっくりff

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戦闘シーンがない…!


デート

~教室sideいろは~

 

なんとも癖になるようなリズムのチャイム

が学校内に鳴り響き、今日の授業の終わり

を知らせてくれる。もうすぐ冬休みが

近づくということもあって、教室内は

全体的に浮いている。かくいう私も、

みかづき荘に訪れる初めての冬休み。

行きたいところ、やりたいこといろいろ

妄想して、若干浮かれ気味。

 

「?」

 

ピロリーンと陽気な音とともに、バッグに

しまっていた、スマホが一瞬小さく振動

する。今日は何か予定を入れていたわけ

でもないし、最近はカズキさんが夕飯や

お弁当。買い出しなどをしてくれるため、

この前みたいにスーパーの特売情報が

やちよさんからくるとかも、なくなって

いる。

 

「あれ?さなちゃんからだ」

 

差出人はさなちゃん。近くのケーキ屋に

集合!と書いてあった。多分これ、

フェリシアちゃんが書いたものだと思う。

だって、言葉遣いちょっと荒いし…

 

「あそこのケーキ屋って、何か目新しい物

ってあったっけ?…まあ、たまには

いいよね?」

 

やちよさんからも食べすぎ注意の警告が

出たこともあって、ちょっと後ろめたい

気持ちもできてはいるが、ご無沙汰だった

ケーキにありつけるチャンスとなれば、

食いつかないわけにはいかない。

それに赤信号みんなで渡れば…なんて

言うし、もし仮に怒られるのも1人

じゃないから、少しは気持ちも楽だった。

 

「よし、何食べようかな~♪」

 

先生や友人に挨拶をして、メニューを

思い返しながら、私は目的のケーキ屋に

向かった。

 

 

 

~新西区のとあるケーキ屋~

 

 

目的のケーキ屋はついこの間オープンした

ばかりの小さなケーキ屋だった。前々から

行きたいなと思っていたのだけれど、

小さい店ともあっていつも席は満員で

近隣の女子高生を集めていた。長蛇の列

とまではいかない物の、いつも一定以上の

列を作っているので、気軽に行こうとは

思えない場所だった。運よくやちよさんと

少ない時に言ったときはそれはそれは

とろけるような濃厚なクリームに、それに

合った、果汁たっぷりの甘いイチゴの

ショートケーキを食べることができた。

当然私もこれは1口で好きになれた。

 

「結構並んでるな…」

 

先に来ているフェリシアちゃん達が列に

いるのかな?と軽く探してみるが列には

いない。周辺にもそれらしき人物は

見当たらない。

 

「うーん?今から並ぶってことなのかな?

でもこれ待ってたら夕飯食べられそうも

ないな」

 

ならば、店内かな?と店内が見える位置に

移動すると…

 

「あれ?フェリシアちゃんにさなちゃん?

それに鶴乃さんも!」

 

「おっせぞーいろは!」

 

「いろはちゃーんこっちこっち~」」

 

2人大げさな身振り手振りで私を呼ぶ。

周りの視線を集めかねないので、ささっと

私は3人に合流した。2人はなにやら真剣

な顔をして、店内を隠れるように窓から

覗いている。幸いにもここは軒下と言える

場所で立ち止まって携帯をいじったりする

人もたまにはいるので、ここにたむろ

しているくらいで、変な目では見られない

 

「あ、あの~…やっぱりやめませんか?

やちよさんに悪いですよぉ…」

 

「いーや!これは明らかにするべきだ!」

 

「そうだよ!まだ、数年だけど影も見え

無かった師匠の春だよ?」

 

今冬だけど…と鶴野は最後にボソッと

つぶやく。いまいち3人の話がつかめない

けれどやちよさんに関してということだけ

はわかった。事情の説明を要求したら

見たほうが早い。見て私も判断してくれ

と言われたので、仕方なく店内を見てみる

 

「えーと…やちよさんと……あ!カズキ

さん!」

 

店内にはやちよさんとカズキさんが

ケーキを楽しんでいる姿を確認できた。

やちよさんは普段あまり化粧はしない。

やるのはお仕事の時くらいだったはず。

そしてお洒落も実はあまりしていない。

仕事じゃなければ外出時も結構ラフな格好

で外出しているはず…だけれど今の

やちよさんは道行く男性を虜にするくらい

の魅力的な姿になっていて、同性の私から

みても、その姿に見とれてしまった。

 

「なーなー!あれやっぱりデートだよな?

あんなやちよ見たことねーぞ」

 

「いろはちゃんどう思う?」

 

「………ええ!?あ、すみません。

えーと、まあ、デートなんでしょうかね?

あはははは…」

 

と質問をあいまいに返答するが、いろは

もそんな感じだと思ってはいた。

 

「もしかして3人とも、やちよさん達の

後をつけていたんですか?」

 

「そうだよ。気になるでしょ!?」

 

「まあ、確かに気になりますけど…」

 

「じゃあいろはも今から共犯だな。一緒に

探ろうぜ!」

 

うーん…悪い気もするけれど、罪悪感

よりは好奇心のほうが上回っているので、

私はうなづいてしまった。

 

 

~街中sideいろは~

 

 

しばらく眺めていたら、彼女たちが席を

立ったので、私たちは慌てて人込みに

紛れて様子を確認する。

 

「静かにね?」

 

「分かってるよ」

 

フェリシアちゃんとさなちゃんがお互いに

人差し指を立ててお互いに注意を

呼びかけている。人込みとあって、背の

低い私たちはやちよさんたちの姿が

ちらちらとしか確認できない。

なので背の高い鶴野だよりだ。

 

「つ、鶴乃さん、見失ってないですか?」

 

「大丈夫、だいじょ…………」

 

「ど、どうしました?」

 

鶴野が少し真剣な顔で黙って耳を

済ませているように見える。

 

「ふふ!次の目的地がわかったよ!」

 

「おお、さすが鶴乃だな!で、どこだよ?

次の目的地っていうの」

 

「ふっふーん!次はね、水名区にある

和菓子屋○○だって。知ってる?」

 

「あ、はい私の学校の近くにあります

案内できますよ」

 

水名区はさなが通っている水名女学園が

存在する。さなは、一般人には見えなく

なったため、友達と会話や、先生に質問

などはできないけれど、将来何が起こるか

分からないから、勉強だけはしておいた方

がいいと、今も学校に通っている。

 

 

~和菓子屋sideいろは~

 

 

やちよさんは話しながらゆっくりと歩いて

いたので、私たちは少し先回りして、

和菓子屋に到着できた。しばらくしたら

やちよさん達がやってきて店内に

入っていった。ここは京都などに

ありそうな和菓子屋で、軒下に大き目の

丸いイスがいくつか並んでいる。

 

「こっちの物陰なら、様子を見ながら

声が聞き取れそうですよ」

 

「お、さすがさなちゃん!詳しいね」

 

さなちゃんに案内された物陰に身を

潜めていると、彼女たちの声が聞こえて

きた。…けれど相手から見えにくいと

なると、声も様子も確認しづらいけれど

しょうがない。

 

「うーん…断片的にしか…聞こえてこない

なぁ。ちょっと待ってね…」

 

と鶴乃は耳を澄ませながら、聞こえてきた

会話を私たちに教えてくれる。

 

「少し…では…カズキ…と…思わなかった

ありがとう」

 

「気にすんな……だ。よく…したな」

 

「……ためよ。そのためなら私………

邪魔…すべて…戦える」

 

「…それに……好き……言った…」

 

鶴乃から断片的に伝えられる言葉は

それだけ聞いても訳の分からないもの

だけれど、それでも…

 

「やちよさん…カズキさんに告白した…

って感じなんでしょうか?」

 

「はわわわ…やちよさんすごいですね

でも、ちょっと勇気もらえますね…」

 

さなちゃんの言葉に私たちは首をかしげる

さなちゃんは少し寂しそうな顔をして、

 

「私はもう、誰の目にも留まらないので、

無理ですけれど…魔法少女でもああして、

恋人を作れるんだなって…」

 

「はははっ、そうだね。相手がカズキ君

だからそういう意味ではちょっとずるい

かもだけれど、私達にもいつか、なんて」

 

鶴乃さんもいいものが見れたと、顔が

にやけている。ところで…

 

「こ、ここでやめにしない?やちよさん

に迷惑だよ…」

 

しかし、フェリシアはおもちゃを見つけた

子供みたいに、手放すつもりはないようだ

いやだよ、と尾行を続けるみたいだった

 

「それにまだ、本当に付き合ってるって

分からないんだろ?なら、徹底的に

調べ上げようぜ!」

 

「もう、フェリシアちゃん…」

 

「まあまあ、いいじゃんいろはちゃん~

ここは1つ先輩のデートを見て学ぶって

事で」

 

そういわれると、少し言葉に詰まって

しまう…ちらりとやちよさんたちに視線

を向ける。私は最後尾にいるため、様子

は見れても、言葉は聞こえない。でも…

聞く必要もないのかもしれない。

身振りを合わせながら、私たちには

向けてこともないような笑みを浮かべて、

カズキさんに話を続けるやちよさん。

カズキさんのほうは表情豊かという訳では

ないけれど、悪い感じはしない。

見た感じ聞き手に回っているようで、

和菓子をつつきながら、もぞもぞと口を

動かしている…2人ともとても幸せそうだ

 

(学ぶ…かぁ…)

 

今はまだやったことないけれど…おめかし

をして、長い時間をかけて、着ていく服を

選んで…あんな風にデートをして…

 

「って!!//」

 

仲間たちが驚いたようにこちらを見てくる

が私は顔を手で隠してうずくまりなんでも

ないよと否定するので、精一杯だった。

言えないよ…やちよさんたち見ててそんな

事妄想してたら、カズキさんの隣に私が

いるところを想像したなんて…

 

結局私はフェリシアちゃん達を止める事

はできないかった。と、言ってもここから

特別なことは何もなかった。ただただ

お店を回って、食べて、回って、食べて…

うーん…デートってこういうものなの

だろうか?さっきから甘いものを食べて

回ってるだけのような気がする…

やちよさんは別に甘未が大好物ってほど

ではなかったはずだ。と、思っていたら

次はデパートに行くようだった。時間的

にも日はすでに落ちていて、冷たい秋風

が髪を揺らす。やちよさんたちも多分

そろそろ帰ってくるはず…何せ今日の

夕食当番はやちよさんだったはず

遅くなると連絡は受けているけれど、

造らないとは受けていないので、時間的に

ここで夕食の材料を買って帰るという

デートプランなのだろう。

 

「ふぁ……ねっむ~…」

 

「あはは、なんかあれからずっと同じ

光景見せられたら飽きもするよね…」

 

大きな欠伸を見せておぼつかない足取りで

歩くフェリシアちゃんを誘導するように

鶴乃ちゃんが肩に手を載せる。

 

「あ、やちよさん見失っちゃうよ!」

 

「ほらほら!急いで急いで」

 

「待ってくれよぉ~…」

 

この時間帯にもなれば、部活帰りの学生

からサラリーマンなど、人も多くなって

くる。やちよさん達はデパートに入って

行くが、私達は尾行している関係上後ろ

からついていってるわけなので、人込みが

掛かってしまうと簡単に見失ってしまう。

案の定デパートに入るころには完全に

見失ってしまった。仕方がないので、広い

デパートを手分けして探すことにした。

 

 

 

~デパート内部sideいろは~

 

 

 

「ううん…何処にもいないなぁ、どこに

いったんだろう?」

 

あれから20分くらい経過していた。

さなちゃんは入り口で待っているため、

出たなら連絡が届くはず。でも来ていない

ということはまだ、ここにいるはずだ。

 

「鉢合わせしないように探すのがこんなに

神経使うなんて…つかれちゃった…」

 

3人で探していてもこれだけ広いデパート

で、探しているのだから見つけるのが

とても難しい…まあ、

 

「あっ」

 

見つかる時はあっさりと見つかるもんだ

さっと近くの棚に移動して物陰から観察

してみる。

 

「あ…」

 

そこにはショーケースからブレスレットを

店員さんに取り出してもらい、それを

やちよさんが付けている姿が見て取れた。

やちよさんは頬を緩ませて、はにかむ

ような笑顔を見せている。

 

「………………」

 

もはや確定…と言わざる負えなかった。

彼は間違いなく特別な関係を築いている

いいことじゃないか、それは間違いない。

1人でずっと頑張ってきたやちよさん。

この町の魔法少女を何年もかけてまとめ

あげてきたやちよさん。私たちはずっと

やちよさんを頼ってきた。もちろんやちよ

さんからも頼られる時もあった。でも、

やっぱりまだ心からというか立場状、

どうしてもやちよさんは最年長、ベテラン

という責任が付いて回る。そのやちよさん

がそういった事情なしで、頼れる存在

カズキさん。やちよさんが愛情という

感情を抱くなんて何の不思議もない。

…でも

 

(なんだろう…この気持ち)

 

まるで見たくない物を見てしまったような

物を見てしまったというか、認めたくない

…いやなかったというか、そんな気持ちを

抱いてしまった。

 

「何やってるんだ?」

 

だからだろうか、カズキさんがいつの間に

こっちにやってきた事に気が付かなかった

のは…

 

「あ、あれ?か、かか、カズキさん!?」

 

「い、いろは!?」

 

遠くで店員さんと話をしていたやちよさん

も私に気が付いてしまった。

 

 

 

~デパート近くのベンチsideいろは~

 

 

 

「なるほどね…まったくあなた達は…」

 

とやちよさんは頭を抱えて呻る。あの後

私たちはやちよさんに集められて、事情

の説明を要求された。まあ、隠し通せる

はずもなく、全部ばれてしまった。

 

「まあ、いいじゃねーか、別に見られて

困るものでもない。」

 

「そ、そうなんですか?でも人に見られる

デートって落ち着けるものなんですか?」

 

さなちゃんがカズキさんに尋ねると、

カズキは首をかしげて

 

「デートならそうだろうよ。でもデート

じゃないからな」

 

「「「ええ!?」」」

 

「むしろなんでデートだと思った…ああ

やちよか」

 

やちよさんは顔を赤らめて、ちょっとと

言うが、普段と態度が大違いすぎると言う

と言い返せないのか言葉に詰まっていた。

 

「俺は甘未が好きなんだよ。だからやちよ

にこの町の案内を頼んでたんだ。さすがに

数年も離れてたら、いろいろ変わるもの

だからな」

 

「じゃ、じゃあ最後のブレスレットって

…」

 

「ああ、これか…まあ、ここまできちゃ

しょうがないな」

 

と彼は提げていたバッグから可愛らしい

紙袋を取り出した。手のひらに収まる

くらいの大きさで、触ってみると少し

だけひんやりとしていて、とても固い。

金属品のようだ。

 

「なあ、開けてもいいか?」

 

「ああ、かまわんよ開けてみろ」

 

皆で紙袋を持って困った顔でみんなで

見つめあう。やちよさんをちらっと見ると

頷いたので、恐る恐る開けてみる。

私の中には小さな指輪があった。

シンプルな銀の指輪に控えめなデザインの

お花が付いていて、とっても可愛らしい

 

「わぁ…可愛いです」

 

他の人も各々似たような反応を示している

さなちゃんにはネックレス、フェリシア

ちゃんには髪留め、鶴乃ちゃんには挟む

タイプのイヤリングがそれぞれ入っていた

 

「カズキさんこれは?」

 

「やちよからだ」

 

「やちよさん?」

 

なんでも仲間内でこうやって物をそろえる

のを結構気に入ったみたいだった。

マグカップとコースターを私たちは

お揃いのものを買っている。カズキさんが

新たに仲間に加わったので、何か…と

思っていたみたい。

 

「…自分で言うと結構恥ずかしいわね…」

 

「あはは、でもとっても嬉しいですよ!」

 

「そういってもらえるとこっちもうれしい

わ、大事にしましょうね」

 

私たちは笑いあって買ったものを見せ

あっていたが、私はその輪に入らず

カズキさんに質問をしてみた。

 

「これ、カズキさんが買ってくれたんです

か?」

 

「大半はな、と言ってもそこまで高い物

じゃないからな。」

 

「もう、そういう事言ったら台無しですよ

せっかくなんですから、そういうことは

言っちゃだめです」

 

「ははは、そうだな…悪かったよ」

 

「ちなみにカズキさんは何を買ったん

ですか?まさか、買ってないとかはない

ですよね?」

 

カズキはため息を吐くとポケットから

スマートフォンを取り出した。そこには

前までにはなかったはずの1つの装飾品が

取り付けられてあった。青色の宝石…まあ

あれも多分安いものなのだろうけれど…

 

「カズキさん…これって、自分で買った

んですか…?」

 

「まあ、見たらすぐに分かるよな。

いや、これはあいつが選んだ物だ」

 

そう、カズキさんが見せてくれた装飾品

は見れば見るほどやちよさんの

ソウルジェムにそっくりなのだ。

ソウルジェムは文字通り私たちのすべて…

やちよさんの込められたその思い…想像

するのに難しくない。

 

「…カズキさんは「まあ、まて」

 

私が言葉を重ねようとするとカズキさんは

それに重ねてつぶやいてくる。

 

「あいつも知っている。俺は気持ちに

答える事は出来ない、とな」

 

彼の顔に落ちる影から読み取れる感情を

私は一切読み取ることはできなかった。

でも…それがいい表情でない事くらい

いくら私でも理解できた

 

「カズキさん…?これでいいんですか?」

 

確信はついていないけれど、間違っている

カズキさんは別の何かを望んでいる

そんな気がする…

 

「ああ、いいんだ。それが俺の選んだ、

選び続けてきた…俺の道だ」

 

そういって彼は私を残して、早く帰るぞー

と皆の所に向かう。どうにも腑に落ちない

けれど…彼がそう言ってるのだから…

と私はあきらめた。

むろん抑え込んだだけだけれど。

 




描きにくかったですはい。ただどのような状態なのかと会話登場キャラの心情とかで
シーンは少なかったのに意外と文字数稼げた気がします。ただ難しいのに変わりはありませんね…頑張ります!あ、ピクシブで絵を描き始めたのでよければ見ていただければと思います。そのうちカズキ君も書いていきたいな。

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