「マギアレコード」 Pueri et puellae magicis 作:ゆっくりff
~みかづき荘sideカズキ~
「調整屋?」
一通りの訓練を終えて、みかづき荘の全員で朝食
をとっている時に、俺は話題に上がったとある人
について聞き返していた。
「あれ?カズキさん知らなかったんですね。この
町の魔法少女ならだれでも知っている人物
ですからてっきりもう知ってるのかななんて」
今日の朝食当番だったいろはは、準備を
進めながら、話しかけてくる。
「名前は知っていたが、ほかに調べたい事は
山ほどあったからな。後回しにしていた…まあ、
とはいえ居を構えたし、そろそろ色々な事に手を
出していこうとは思っていたころだ」
「なら、ちょうどいいですね、調整屋さんに
ついて聞きますか?」
「ああ、よろしく頼む」
こうして、俺はみかづき荘の皆から調整屋
の話を聞いた。
「…まあ、とどのつまりソウルジェムを調整する
ことができる魔法少女が、行っている商売…
という感じか?」
「そうですね。端的に言えばそうなるかな…」
「調整ね…」
今いろは達から聞いた話だけでも、俺は正直その
調整屋…みたまと呼ばれる人物がとんでもない
能力を持っていると把握する事が出来た。
少なくとも他人のソウルジェムをいじる能力
なぞ、聞いたことがない。もしかしたらほかにも
いるかもしれないが…まあ、ポンポンいても困る
他人のソウルジェムをいじる…これがどれだけ
ヤバイ能力なのか、果たしていろは達は把握
しているのだろうか?
いじるなどと言い方を変えてはいるが、
ソウルジェムはその人の命と言ってもいい。
つまり、彼女にソウルジェムをいじってもらう
ということは彼女に文字通りすべてを託す
事になる。
「ポテンシャルをその能力に持ってかれて戦う
ことが一切できず、ソウルジェムを調整する
ことで、対価としてグリーフシードを要求する
と…」
「そうそう!あいつのおかげで俺たちの魔法とか
身体能力とかかなり強くなってるんだぜ!」
「ただ力を強くするだけじゃなくて、魔力の消費
を抑えたりとか…何でしょうかね…なんでも
できます」
さなとフェリシアがみたまについて捲し立てる
…ふむ、どうやらそのみたまと言う人物は相当
信頼を得ているようだ。皆の顔を見ればすぐに
わかる。そして、いろはが名案を思いつたと
言わんばかりに、笑顔をカズキさんに向ける。
「そうだ、カズキさんそのソウルジェム
見てもらうのはどうですか?」
「なんだと?」
「ほら、それ確かキュウベイでも正体が
分からないんですよね?でももしかしたら
みたまさんならその正体がわかるかも、それに…
調整ができれば、カズキさんの戦闘能力も底上げ
できるかも…」
なるほど…と思った。確かにもう何年か…少なく
とも二桁以上の付き合いになるこの指輪も戦闘に
関係する事には、調べ尽くした。そろそろ、
根本的な事にも手を出すのも悪くないかも
しれない。調べてもわからなければまあ、それは
それでみたまという少女とつながりを持てて、
さらにわかれば万々歳。彼女のことについて
人伝でしか分からない以上一定のリスクはあるが
リスク承知でやってみるのはありだと判断した
「そうだな…確かにありかもしれないな
案内を頼めるか?」
「はい!任せてください」
「じゃあ私たちも一緒に行きましょう。マギウス
の戦いに備えて、調整をしておきましょう。
鶴乃には私から連絡しておくから準備でき次第
行きましょう。」
とやちよはそういってささっとご飯を掻きこんで
洗い物をするために食器を運ぶ
「なら、俺も少し準備をしておこう。すまんが
やちよ洗い物頼むわ」
と言って俺は食器をやちよに渡して部屋に戻ろう
としたがやちよに留められる
「あ、カズキ君。調整屋って非戦闘地域って
言われてて、中立区域だから、戦闘は一応やめて
頂戴ね」
「ああ、オッケイ」
まあ、…保険は必要、見ず知らずの魔法少女に
合うときには必要、当然だ。何せ俺はいつでも
最弱の位置に属する。戦闘ができないと言って、
油断は出来ない。中立区域らしいが、まあそこで
争いを起こさなければいいだけだろう。
~廃墟前sideカズキ~
道中で鶴乃と合流した俺たちはとある廃墟の前に
立っている。どうでもいいが、この町はなぜか
廃墟が多い気がする…まったく撤去にも金は
かかるというが、勿体ない。
入る前にまとめた彼女に関する情報を整理して
みようと思う。高校2年生で彼女が魔法少女に
なってまだ日は浅いらしい。とある廃墟でその
能力を活かして調整屋という仕事をしている
ようで、この神浜市で戦うには彼女の能力で
ソウルジェムの強化必須だという。それだけ神浜
の魔女は強いと言うことだ。まあそんな事より
俺としては、ソウルジェムをいじるという
とんでもない能力が何の疑いもなく魔法少女の間
で流行っているということが一番気にかかって
いる。これには二つの可能性がある。1つはこの
町は魔法少女の数に反比例して、ソウルジェムの
秘密を知っている人物が少ない可能性だ。これは
はっきり言って非常にまずいことだ。何らかの
拍子で、この町に魔法少女の真実が広まった瞬間
に町中に魔女が溢れかえる可能性も十分にある。
生き残った魔法少女達で果たして魔女を殲滅
できるだろうか?…早めに調べる必要が
ありそうだ。
もう1つは彼女、八雲みたまがそれほどまでに
彼女達に信頼されているということだ。こっちの
ほうがありがたいが、もしこっちが理由ならば
どういう人物か早急に調べる必要がある。この町
に長く滞在するなら、中心人物となりえる奴の
ことは把握していないと、厄介ごとに巻き
込まれる可能性もあるし、何よりそれだけの
信頼があるならば、敵に回った瞬間神浜市で
仕事が出来なくなる可能性も出てくる。どんな
人物か調べあげて、良好な関係を築ければなお
いいが…まあそれは話してみてからでいいだろう
「まあ、こんなものか…」
「ん?どったのカズキ君?」
「いや、気にするな鶴乃。こっちの話だ。
それより早く行こうか。」
~調整屋sideカズキ~
中は思った以上に綺麗に装飾されていた。
様々な青色をベースに部屋中が彩られていて
ソファーなどの家具も置いてある。
入り口から奥の方の壁に設置された、巨大な
ガラスも目を引く。
(廃墟…?ずいぶんと好き勝手にやっている
みたいだな)
やちよの八雲の呼ぶ声を聴きながら、俺は部屋
を見て回っていた。随分と居心地がよさそうと
思ったが、それだけだった。奥の部屋に向かう
扉があることから、もし仮に何かあるとしたら
向こうの方だろうか…?
「はいは~い…あら皆いらっしゃ~い」
奥から、気の抜けたような女性の声が聞こえた
振り返ってみると紺色と白をベースに
スカートに肩に胸にとフリルをひらひらさせた
可愛らしい服装。もはやあることに意味を
感じかねないほど短すぎるスカートから見える
きれいな美脚。それに袖もないので腕を隠すもの
が何もない。全く、恥じらいはないのだろうか?
しかしこの世界は男性が皆無の世界なのだから
もはやなにも言うまい…。まあ、そんな感じの
銀髪の女性が奥の扉を開けて姿を現した。
「こんにちはみたま、時間空いているかしら?」
「大丈夫よ~。丁度仕事を終えた所なの」
みたまはそう言ってこちらに歩み寄ってくる…
そして、俺に気が付いたかのようにこちらを
見つけてあら?と声を出す。そして、少しばかり
険しい顔をする、当たり前か。
「えーとやちよ…その人は?」
「いきなりごめんなさい。紹介するわ。この人は
カズキ君。最近噂になっている男性の噂はご存知
かしら?」
「そうね。話す人増えてるものよく知っているわ
魔法少女を助けてくれる謎の存在。今現状
情報収集求むって声がすごい上がってるけれど…
まさかやちよが連れてくるなんて…」
「ふふっ、今は一応私たちのチームよ。今後は
活動区域を広げていくって話だけれど…」
とやちよは俺のことをちらっと見る。
まあここらで自己紹介がいいだろう。
「初めまして、だ。俺の名前はカズキ。
グリーフシードの販売、および魔法少女同士の
いざこざを仲介してたりする。」
「へぇ~私は八雲みたまよ~よろしくね…?
でも仲介…ね。差し当って、調停者って
所かしら?」
その瞬間誰かが、息を飲むような音が聞こえた
気がした。誰が息をのんだかは予想が付く。
多分俺の横にいるいろはとやちよ…それと八雲
のものだろう。まあ、当然だろう。いくら
魔法少女、戦闘慣れしているとはいえ、それは
あくまで魔女相手…
「……………」
流石にこうして、とてつもない殺気を出す人間
と会うことなぞ、ないだろう。
「え、え~と…」
八雲は殺気を感じてか、急によそよそしい態度
に変わる。
「八雲…お前その名前どこかで聞いたか…?」
「ちょ、調停者の事…?それは…普通にあなたの
行動彼女たちに聞いて…挨拶をみて、思ったこと
…というか、調停者って言葉…知ってたし…
調停者が似合ってるかな…と」
「…………」
目が泳いでいる…がどちらかというと助けを
求めるかのように、やちよたちに向いている。
ここから見えるだけでも手足から冷や汗を
流している。足を少し小刻みに動かし、指を
ひっきりなしにこすり合わせている。
嘘をつく…というよりか、困っているような
感じがする。言葉選びも、嘘をつくときのような
考えてしゃべる…という感じではなく、手早く
兎に角思ったことをしゃべる…前後の言葉に
脈略がなく、何かしゃべらなくては、という
考えが感じ取れる………まあ、しろだな
「すまない、わからないならいいんだ。
ただ、調停者という呼ばれ方はあまり好き
じゃない。悪いが、別の呼び方で頼む」
「え、ええ…じゃあ、やちよに合わせてカズキ君
で、かまわないかしら?」
「ああ、それでいい。よろしくな八雲」
「みたまでいいわ~みかづき荘のみんなはそう
呼んでるから」
「ん?そうか。じゃあよろしくな、みたま」
ふむ、殺気で怖気づいてしまったようだが、
即座に元のしゃべり方に戻した。どうやら彼女
はキャラを作っているようだ。まあ、こんな
しゃべり方する奴なんて基本いない。
「それで~…カズキ君はどういった御用時かしら
いろはちゃん達も」
「えーと私たちはいつものように調整を…
個人個人にまた細かい指定があると思うので…」
「ふふっ了解よ~奥の部屋でゆっくりと
話し合いましょう。それであなたは…」
「こいつを見てくれ。」
と俺は左手にはめていた指輪をみたまに渡す。
彼女はじーっと眺めて何なのかを推測している
が、すぐに結論は出たようだ。
「これ…ソウルジェム?」
「正確には違う。キュウベイからのお墨付きだ。
詳細は伏せるが、これは願いによって生まれた
物だ。」
「願い…なるほど。」
「ソウルジェムを調整できるお前なら、これの
正体なんかが、わかるのではないかと踏んで、
依頼をしに来た。調整のほうはしなくてもいい
というか、いまのバランスが崩れるから出来ても
しないでくれ」
「私の能力で、これが何なのかを…?でも、
結果が出るとは限らないわよ。それでも…?」
「ああ、頼めるか?」
「そう…分かったわ~任せて頂戴」
そういって彼女は先にいろは達の調整をすませる
と言い、彼女たちを順番に奥の部屋に呼ぶ。
手順を見てみたいと思ったが、まあどうせ、
自分がやるときに見れるはずだし、あまり
ガッツいて、信用を失う必要もない。ならば
大人しく待っているのがいいだろう。
~調整屋sideカズキ~
他人の調整を待っている間は、基本的に部屋で
待機、順番を待つことになるらしい。
流石にプライバシーの問題とかで、互いの同意
がなければ、一緒に調整を受けることはしない
らしい。今は鶴乃、やちよ、いろはが調整を
受けてもらっている。さなとフェリシアは
すでに終えてこちらの部屋で、羽を伸ばしている
しかし…
「調整というのはずいぶんと早く終わるもの
なのだな。」
さなは読んでいた本から目を上げて、肯定する
「はい、マギアみたいな大技を調整する時は
それなりに時間がかかるみたいですけど、
身体能力を少しいじったり、よく使う魔法とか
少し調整するくらいでしたら、すぐ終わるみたい
ですよ」
「ちなみに調整ってのは何をやるんだ…?」
「えーと…基本的にみたまさんがソウルジェムに
触れたり、私たちに触れたりして…行動としては
そんな感じです。でも、それでどうして調整
出来るのかは…すみません、わからないです…」
「まあ、そこは魔法だからな。それだけで、説明
が付く。」
近くの自販機で買ってきた、温かいコーヒーを
口にしながら、少し肌寒さを覚えて身を
震わせる。さすがに廃墟とだけあって、保温
効果は全くと言っていいほどない。と言うか
マジで寒い。
「でも、よくあいつ因果…だっけ?なんか言って
たよな?因果が変化って…あれ何の意味なんだ?
今までずっと聞いてたけど俺、わかんねーよ」
「ああ、えっと因果って言うのは…えっと…」
フェリシアの質問にさなが答えようとするが、
さなも答えに困っているようだ。
まあ、無理もない。日常に使うような言葉
じゃない。
「因果というのは、原因と結果と言う意味だ。
例えばいいことをすればいいことが帰ってくる
善因善果。悪い事をすれば悪いことが帰ってくる
悪因悪果、これならわかるだろう?
そんな感じでその起こった出来事には相応の
原因…理由があるってことだ。」
「あー…でもさ、それじゃあ因果が変化って
なんだよ?」
彼女の疑問に俺は頭を悩ませるように呻る。
「そうだな…彼女がどういった理由でそう言った
かは、彼女にしかわからないが、例えばだ」
と俺は指を立てて事柄に見立てる。
「ここにフェリシアが魔女にやられるという未来
があるとする。そのフェリシアが魔女に負ける
結果の原因がフェリシアが弱かったらからとする
ここまではいいな?じゃあ次にそういう未来が
あるという前提で話すとして、ここで戦う前に
みたまから調整を受けたらその魔女に勝つ
事が出来たとする。これだけで、お前の
因果は変わったと言えるだろう。お前が魔女に
負けるのがお前が弱いからという原因を変化
させたことで魔女に負けるという、結果も
また変わった…とそういうことだ」
「んん…?つまりみたまは、未来がわかるのか?
それってすげーじゃん!因果…?がわかるって
事はそういうことだろ?」
大きく息を吹いて、消えていく煙を見ながら
俺は小さく首を振る。みたまからすでに許可を
もらって俺は葉巻を吸っていた。
「そればかりはわからん。彼女に直接聞く必要
があるだろうな」
と言ったらフェリシアはそのまま興味を
失ったのか、会話を区切る。ただ俺はますます
彼女に対して興味がわいてきた。因果……
この言葉は予想以上にめんどくさい言葉だと
俺は思っている。これは簡単に言えば捉え方
によっていくらでも変えることが出来るからだ。
因果によって変化した未来…がそもそも因果に
よって決められた未来かもしれない…と答えの
ない問だ。この因果という言葉を使う奴は
たいてい頭のおかしくなった奴か、そういう
お年頃か…それ相応の経験をした。という事に
なると俺は考えている。
「八雲みたま…か」
と、じっと考えていると奥の部屋からの声が
徐々に大きくなってくる。首だけを振り向くと
奥への扉が開いて彼女たちが姿を現した。
「うう…」
「ほら、よしよし。大丈夫よ。体重が少し増えた
くらいで…」
「や、やちよさんにはわかんないんですよぉ~」
「あはは…じゃあいろはちゃん。しばらく中華
食べない?」
「うっ…普通ではありますけど、なんかクセに
なっちゃて…なのでまた…」
と何やら聞いてはいけないような話をしながら
戻ってきた。がっくりと肩を落としているいろは
をやちよがなだめて、申し訳なさそうな鶴乃
「だって…確かに最近運動してないかな…って
思ってましたけど…まさかみたまさんに見られる
なんて~」
「まあ、しょうがなくないけど、しょうがないわ
みたまの覗き癖は…あ、カズキ君。みたまが
呼んでいるわよ」
「………おう、じゃあ行ってくるわ」
葉巻を処理してから、少し反動をつけてソファー
から立ち上がる。さて、お手並み拝見とさせて
貰おうか…
奥の部屋は簡易的なベッドが備え付けられている
程度で、大した装飾はなかった。いや、家具
がないってだけで、一面青の装飾で室内は
彩られていた。みたまはベッドの横で俺の
事を舞っていたみたいで、俺を見つけると
笑顔をこちらに向けてくる。
「はい、いらっしゃ~い。改めまして、ようこそ
調整屋へ」
「さて…俺はどうすればいいんだ?」
「こっちのベッドに横になって頂戴。荷物とか
そっちのカゴにおいてね」
言われた通りに俺は荷物をカゴに入れる。
「あら…結構物騒なもの持っているのね?」
「当然だ。これくらいなければ魔女にすら
勝てん」
みたまは腰に巻いていたシースベルトを見て
ボソッとつぶやく。大型ナイフなだけに迫力
もそれなりだろう。
「…あ、ごめんなさいね。さ、どうぞ」
少し動揺していたみたまははっと我に返り、
ベッドを進めてくる。それに合わせて俺は
ベッドに横になる。簡易ベッドという感じだった
が、寝心地はなかなか悪くない。これなら
長い時間寝てもそこまで苦痛にはならないだろう
「そしたら、全身の力を抜いて楽にして
ちょうだい。後は私に任せて」
「そうか…とりあえず確認だ。このソウルジェムの
の正体に何かわかるようなことがあれば、それを
調べてもらいたい。調整のほうは、必要ない。」
「ええ、しっかりと確認したわ~
…じゃあ始めるわ。もし、眠くなったら
寝ちゃっても大丈夫だからね?」
そう言いながら彼女はゆっくりと回りを歩き
始める。やたらと静かに感じるこの廃墟に
この時期にしては強く感じる冷気を感じながら
コツ…コツ…と心地のいい靴が床をたたく音を
効いていると、少し眠気を感じてくる。
いけないな…と感じ眠気を払おうとするが、
「………………」
左手にそっと重ねられたくすぐったい感覚と
わずかに感じられる彼女の温かさにまあ…
最近は寝不足気味だったし、少しはいいか…と
彼はその眠気を受け入れた。
次回に続きます。調整の正確な描写はおそらくゲームにもなかったと思うので、完全に私の思い付きで構成されています。