「マギアレコード」 Pueri et puellae magicis   作:ゆっくりff

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続きですが、今回は少しばかり短めです。


調整屋と調停者2

~調整屋奥の部屋sideカズキ~

 

「ん…?」

 

体を揺らす、小さな手と名前を呼ぶ声に俺は目を

ゆっくりと瞼を開ける。開けた先には調整の魔術

を行うみたまが、優しく笑みを浮かべて話

かけてきた。

 

「ふふっ随分とぐっすり眠っていたみたい。

よっぽど疲れていたのね~」

 

「…ああ、そうみたいだな。久々によく眠れた

気がする」

 

ゆっくりと体を起こし、痛む体を動かしながら

左手の指輪を見つめる。ふむ…別段変わった

様子はない。身体能力も変わってない、試しに

捕食魔女も起動してみる。

 

「変わりなし…っと、一応注文通りにやって

くれたみたいだな」

 

「あら?信じてくれなかったの?お姉さん

寂しいわ~」

 

「信じてはいたぞ?じゃなきゃ寝れるわけない

だろう?」

 

そういうと彼女はそうね~…と表面上は肯定の

声をあげて、少しばかり目を細める

 

「嘘ばっかり…寝ていても、あなたの魔法は

機能を発揮するのね?」

 

「ほう…」

 

俺は素直に関心した。まさかばれていたとは

 

「かわいい猫よね~あれ。あなたの飼い猫?」

 

みたまは棚影からこちらを眺めていた、小さな

猫を指さす。

 

「いや、近くに住むノラネコだ。人間相手には

無理だが、魔女や小さい動物の無意識を少し

操れる。あの猫はたまたま、あそこの陰で一時間

ほど、休んでいただけだよ」

 

「私を凝視しながら…ね。ふふっ」

 

みたまは近寄って手を出すと猫はくるりと

背を向けて、小さな壁穴から外に出てしまった

 

「でも…それだけじゃあ、あの猫は見てる事しか

出来ないんじゃないの?」

 

「ああ、ただみたまはあの時の俺の言葉にかなり

動揺していたみたいだからな。注文以外のことを

するとは考えなかった。だからお前の手口の観察

だけさせてもらった…魔法ってのは、本当に

世界の理すら変えるからな」

 

さて…と彼は立ち上がり、今回の目的を果たそう

とする。が、彼女達に2度説明するのは面倒だ

 

「よし、じゃあ彼女達の所に戻ろうか。結果を

頼むよ」

 

「ええ、任せて頂戴…」

 

 

 

~調整屋~

 

 

「あ、カズキさんおかえりなさい」

 

「随分と遅かったわね。それだけの成果があった

のかしら?」

 

部屋の扉を開けると流石に1時間待たされている

せいか、少し暇そうにしているみかづき荘の住民

達が各々の暇つぶしを止めて、顔を上げる。

 

「さあ?説明が面倒だから、まだ聞いていない」

 

とカズキはみたまを見て言葉を続ける。やちよ

達もそれに倣って、みたまを見つめる。

見つめられた、みたまは少しだけ苦笑いを

したあとに、肩を竦めて

 

「ごめんなさいね。結論から言わせてもらう

けれど、分からないということが分かったわ。

あなたの言う通り、それはソウルジェムであって

ソウルジェムではない。私の魔法で調整は

残念だけれど無理だったわ」

 

「あ、そうなんですね…でも結構長かったです

よね?」

 

時間にして1時間さすがに暇を持て余していた

いろは達には興味深々に聞いてくる

 

「そうなのよね~、正しくは出来るんだけど、

出来ないのよ。魔法自体は発動するのだけれど、

その効果が適用されない…って所かしら」

 

「まあ、それが分かっただけでも収穫だろう。

少なくとも魔法が発動するということは

これはソウルジェムということだろう。

何も分からないよりかは全然ましということだ」

 

「でもさー!1時間もやったんだぜ?何か成果

はないのかよ?」

 

フェリシアは捲し立てるが、みたまは困った

ように笑顔を向けて、ないものはないのよねと

残念そうにフェリシアに返す。

 

「ちぇー…まあ、しかたがないか。なんか期待

したけど、しょうがないかぁ…」

 

「フェリシアあんまりみたまを困らせちゃだめよ

カズキ君もそこまで気にしてないみたいだし…

そうね、気持ちがなんか覚めちゃったみたいだし

気分転換に、何かおいしいものでも食べる?」

 

「お!いいね師匠!もうお腹空いちゃったし、

さっそく行こう♪」

 

そんな感じでみかづき荘の皆は、みたまにお礼

を言って、帰ろうとする。

 

「あ、ちょっと待ってくれ、みたまに話たい事

があるんだ。先に行っててくれないか?」

 

「そう?じゃあ、外で待ってるから?」

 

やちよ達はそういいながら、調整屋を後にする

 

 

~調整屋sideカズキ

 

 

みたまはやちよ達を手を振って見送り、俺は

横目で出ていくのを静かに待った。完全に姿

が見えなくなったところで、みたまが少し息を

吐き出すと、こちらを向いて聞いてくる。

 

「さて…それで私にいったい、何の用かしら~」

 

「……………」

 

「…カズキくッ!?」

 

みたまは流石にポーカーフェイスを維持すること

ができず、少し離れた所からでもわかるくらいに

冷や汗をかいているのがわかる。

 

「悪いなみたま。少しばかり付き合ってもらう」

 

俺は懐から取り出した、とあるもの突きつけ

ながら話を続ける。

 

「それ…拳銃よね?」

 

「ああ、SAA…別名ピースメーカーだ」

 

彼は鼻で笑うと滑稽だろう?とSAAを軽く回す

 

「そう…ね、カズキ君さっき調停者って言葉

すごい嫌ってたものね…」

 

「ああ、ただ武器を調達してくれる奴が俺の

活動を聞いて、役に立つだろうとこいつを

くれたんだ。まったく何の嫌味かと思ったよ。

しかも、役に立つのがまた腹が立つ」

 

さて、と改めて、俺はリングハンマーを落とす。

極限まで軽量化を求めたそれは親指で簡単に

落とすことができる。

 

「俺が聞きたいことはただ1つ。……みたな?」

 

「どういう事…?」

 

「…俺は、魔法の種類やある程度の法則は理解

しているつもりだ。何せ今までに何百種類という

莫大な数を触ってきたからな。みたま、お前の

魔法はあらかじめ対象が決まっているみたいだな

ソウルジェムと言う…調整が働くか、働かないか

すぐに理解できるはずだ。」

 

俺はゆっくりとみたまの周りを回り始める。

威圧の意味合いも込めて、声のトーンを落とし、

足音を立ててゆっくりと…

 

「お前も言っていたよな?発動はできる…ただ、

効果が出てこない…と。」

 

「ええ、そうね…」

 

「1時間…長いよな?」

 

「………」

 

みたまの指先が震えているのがわかる。が彼女

は口は開こうとはしなかった。

 

「ふっ…賢明だな。今ならまだしらを切れる

からな。」

 

さて、どうやって口を割るか。まあとりあえずは

正攻法で行こうと俺は考えたをまとめてみたまに

話始める。

 

「ソウルジェムの調整…だったか。口で言うのは

簡単だが、俺はその魔法、はっきり言って

世界最強の能力だと思っている。ソウルジェムは

その人そのものだ。お前がその気になれば、

身体能力から魔法といった戦いに必要な能力は

もちろん、記憶、心情、神経…その人のありと

あらゆる事を「調整」できるはずだ。」

 

憶測だがな、と俺は付け加える。しかし、

これだけでは俺が銃を向ける理由がないと思った

のか、みたまはまだ納得がいかないような顔を

している。

 

「やちよの会話、覚えているか?」

 

「か、会話?」

 

「いろはが体重の話をしていただろう?みたまに

見られた…と。だが、俺が確認した中であの部屋

に体重計はない。そもそも調整に体重計は必要

ない、だろう?それとみたまの覗き癖…俺の

推測が正しいのならば…見れるんだろう?

大変デリケートで、絶対不可侵領域である…

記憶を。ならば俺は少しばかり保険を掛ける

必要がある。」

 

あたりをゆっくりと回っていた俺は、みたまの

前に止まった。瞬きの数が多く、あたりを

見渡す行為を我慢するかのように、体を

強張らせている。小刻みに足を動かし、

何とか距離を取ろうとしている。しかし、

彼女の口から出たのは、それでも弱みを

見せつけない、強気な言葉だった。

 

「だったら…どうするのかしら?」

 

「別に、話さないというのであればどうするの

つもりもない。」

 

「あ、あら…意外、ね。そんなあっさりと

引き下がっていいのかしら?」

 

「ああ、残念ながら俺には記憶に干渉する

魔法は存在しないからな。」

 

俺がそういうとみたまは、自分の体中を触り

深くため息をつく。

 

「はぁ……」

 

「流石に、この世界に入って半年じゃなぁ…

心理学で俺に勝てるわけないだろう?…それと

お前、安堵しすぎだ。これじゃあ記憶を

抜き取ったのが事実だと認めているもんだぞ」

 

「しかたないじゃないの…こんな経験初めて

ですもの」

 

みたまが認めたので、俺は銃を下ろして

ホルスターにしまう。みたまはその様子をじっと

見つめて、何かを悟ったように笑う。

 

「流石は、やちよが認めた男…って事かしらね~

このキャラを演じるのはまだまだということね

それとも…これが普通なのかしら?」

 

「普通だな。初めてなら仕方がないが…調整屋

という仕事を続けるつもりがあるならば、

こういった魔法少女も存在する。慣れておくこと

をお勧めするよ。」

 

そういって俺はここを後にしようとする。

 

「ちょっとまって頂戴1つだけ、聞かせて

貰えるかしら…?」

 

「ああ、やちよ達が待っている。手短に頼む」

 

ええ、とみたまは深呼吸をしてから今までで

一番の真剣な顔をして、

 

「あなたは…どうして、ここまで戦うことが

出来るの?」

 

「…………」

 

「あなたの記憶は、確かに見た。でもそれは、

あなたのここ数年の壮絶な戦いしか見れなかった

人間、であるあなたがどうして他人のために

そこまでできるか、私には到底理解できない。

五体満足で、正気を保っていられるのは奇跡よ…

そうまでして、あなたのやりたいことって…

「その問いには」」

 

俺はみたまの言葉を遮るようにして、

 

「答える口は持っていない。悪いな」

 

と、調整屋を後にした。

 

 

 

~調整屋sideみたま~

 

 

カズキ君との会話の後、私は作業に戻ることを

せず、ソファーに体を沈めて、大きくため息を

吐く。いい経験…だったかしら?少なくとも

短い魔法少女人生だったけれど、他人と触れ合い

そして、内に秘めた思いを見続けてきた私だった

けれど、あれほどまで内側が深い人間を見たこと

がなかった。

 

「調停者…カズキ君、ね」

 

おそらく調停者という立場の都合上、彼とは長い

付き合いになるんじゃないかなと思っている。

彼は、そのうちに秘められた思いで行動している

先の読めない人。これは、いつも私が魔法少女達

にやっている事。こちらの手の内を探らせず、

逆にこちらは相手の深くに入り込み、相手を

手玉に取る。もちろん、悪い事には使わない

こういう入り方で相手にずかずか入ることが

出来れば、悩んでいる人や、打ちひしがれた人に

とっては、特に立ち直らせるのに有効的に働く。

ミステリアス、何を考えているか分からないは、

それだけで不思議な魅力があるのだ。

…もっとも、私のように普段からそういう事を

やっている人が別の人にやられたときは、

どうしようもない敗北感と、力のなさを実感する

 

「得体のしれない恐怖と、私をしっかりと見て

くれているという安心感…受ける側に回って

初めてわかる事だということね…」

 

私は調整という魔法を利用して割と簡単に人の

深層に入りこむ事ができるけれど、おそらく彼は

違う。経験、観察といった実力のみで行っている

 

「すごいわね…」

 

素直にそう思った。そして同時に、こうも思った

 

「いったい何が彼をそうさせるのかしらね…?」

 

先ほどカズキ君にもした質問。残念ながら返答

を得られることはなかったが、でもそれでも、

問わずにはいられない。これからも私は彼の

実力を目の当たりにする機会が増えてくるだろう

その都度こう思うことは想像に難しくない。

 

「いつか…わかる日は来るのかしらね~…」

 

正直考えても分からないならば、機会を待つ

しかない。そういえば今日はこの後魔法少女の

調整を約束していた。時間的にはまだまだ時間

はある。お昼を食べてからここに戻ってくる

としよう…

 

 

 

 

~??????~

 

 

 

「くふふ~いよいよだね」

 

薄暗い部屋の中で、幼い女の子の声が響き渡る。

その可愛らしい声とは裏腹に、その雰囲気は

異様と呼べるもので、もしここに他の人がいれば

もしかしたら恐怖を感じるかもしれない。

 

「そうだね。準備はあらかた終わったし、

僕たちの計画もようやく本腰に入ったって所、

あとは、不安要素を取り除きつつ、この町の

僕たちに対立する魔法少女を…全員排除する」

 

その声に反応したのは、彼女よりも落ち着きを

感じさせるクールでそれでいて、幼さを感じ

させる優しい声。しかし、こちらも口から出る

言葉はおおよそ年齢にそぐわない物騒な言葉

 

「魔法少女もそうだけど、アリナ的には、

あの男のせいで、チョーベリーバットな感じ

なんですけど…」

 

彼女達よりかは幾分か年上のアリナと名乗った

女性は、不機嫌そうに話に入ってくる。

 

「僕もそれが気になっていたんだ。最近この町

で活動を活発にさせている謎の男性。いまだに

噂にとどまっている人も大勢いるけれど、存在

はほぼ確定。だから僕も調査してみたんだ」

 

「どんなの?」

 

「あんまり期待はしないでくれよ。残念だけれど

彼もなかなかに優秀みたいで、尻尾をつかむ

のができなかったんだ。でも、本気で攻めて

みたら彼はその尻尾を切り離した。おかげで、

彼が何者なのか、分かったんだよ。彼はただの

一般人。魔法が使えるだけのただの一般人だよ」

 

「はぁ!?じゃあアリナ達は今まで一般人に

邪魔されてたってわけ?サイアクなんですけど」

 

その言葉に彼女は首を振る。

 

「直接的な妨害は受けていないよ。そっちは

やちよ達の仕業だと思う。でも、間接的

精神的な意味で、放っておいたら彼はどんどん

魔法少女を引き込んでいくよ。だから早めに

手を打っておかないと、彼を倒すのはまた

難しくなっていく。」

 

「そっちは任せてたけどちゃんと手はあるの?

マギウスの翼へ魔法少女を引き込むのも、その男

をどうにかしないと、いずれ支障が出てくるかも

知れないじゃない」

 

幼き少女は、一般人という下等生物に邪魔を

されていたという事実に若干不機嫌になりながら

も頭を回転させる。

 

「うん任せておいて。まぐれで手に入った情報

だけれど、とっておきの秘策を用意したんだ」

 

そういいながら彼女は、スマホを取り出して

彼女達に見せる。そこには1人の部下からの

メールが書かれていて、それを見た2人は

まるで面白いおもちゃを見つけたかのような、

異様な笑みを浮かべた。

 

「あははは!アリナ的にこれ、チョー最高!」

 

「くふふ♪確かにそうね!これにしましょう」

 

薄暗い闇の中で彼女達の楽し気な笑い声が

響き渡る。その小さな体の内に秘められた狂気

が今、この町神浜を覆うことになる。

 

 

 

 

 

 

次回予告

 

 

 

久しぶり…ですね。

 

できれば会いたくありませんでした…

 

いえ、できればもう一度お会いしたかったです

 

お前にはあの時世話になったな。

 

お前のことも探していた。

 

まあ、それはどうでもいいか、久しぶりだな

 

 

 

 

みふゆ

 

 

 

次回

「マギウスとの会合」

 

 




読んでいただいてありがとうございました。
試しに次回予告を今回入れてみました。
まあ、これを見れば皆さんの方でも妄想
がはかどるかなと思って入れました
(私もよく他の人のssで展開を予想
してみたりしています)
次回は予告にもある通りマギウス達と
本格的にかかわることになります。
また、このままマギアレコード本編
第8章の話に入っていきますが
本編とは結末が変わっていきます、
それでは次回もお楽しみにしてください!

あ、それから、ネタを募集しています。
この魔法少女と絡ませてほしいとか
この魔法少女とのこんなシーンが見てみたい
カズキの使う魔法など、
一人で考えるのも楽しいですが、皆様の
発想はおそらく私にはないものですので
ぜひ、ご意見いただけると幸いです。
よろしくお願いします!
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