「マギアレコード」 Pueri et puellae magicis 作:ゆっくりff
~sideカズキ裏路地~
「みふゆ、まさかあのお前がやちよと敵対
しているとは思わなかったぞ。あれだけべったり
だったのにな」
と俺は肩を竦めて、目の前にいる少女を見据える
すると彼女も、同じように肩を竦めて、
「はい、私も正直びっくりしています。でも
仕方がないことだと思っています。これが私達
の運命だったのですから…」
「運命だと…?」
悲しそうな眼をしたみふゆがうっすらと微笑んで
言葉を続ける。
「カズキさんには分からないかもしれません。
私達に課せられた宿命を」
その言葉から俺はいくつかの推測を立てる。
誤情報などを危惧して、みかづき荘の連中から、
不用意な事は聞かなかったため、今までマギウス
という連中の言う、解放が何なのか
分からなかった。目的を聞けば返ってくるのは
解放の言葉だけ。これだけでも想像はできるが
確信はできない。ただ、みふゆの性格や言葉
そして…やちよの変貌ぶりが起こったあの事件
の事を考えると…
「なるほど、お前の言う宿命は魔女化、の事か
そして解放というのは…その宿命から逃れられる
何らかの方法…だな?」
「!?な、なぜカズキさんがその事を?かなえと
メルの死にはあなたは立ち会っていないので
しょう!?」
「そうだな立ち会ってはいない。後にやちよと
一悶着あって、その時に聞いた。」
解放…なるほど確かに魅力的な話だ。魔女化の
運命を背負っている彼女達にとって、解放が
達成されれば、訪れる死の恐怖から逃れられる
事ができるということになる。
「それと、ついでに言わせてもらうと俺は魔女化
については、10年前からすでに知っていた」
「し、知っていた…?」
みふゆは、目を見開き、肩を震わせている。
そばに控えていた、ローブの少女達も、こちらに
たいして更に敵意を見せ始めた。
「ど、どうして黙っていたんですか!私達の事
どうして!知っていたら、もしかしたらどうにか
なったかもしれないじゃないですか!やっちゃん
だってあんなに悲しい思いをしなかったかも
しれないのに!あの二人だって…死ななかった
かもしれない…のに…わ、私…だって…
なんで…どうして…」
裏切られたというように、目に涙を浮かべながら
言葉を捲し立てる
「…なんて伝えればいいと思う?」
「え?」
「なんて伝えればいいと思うと聞いたんだ」
「そ、それは…」
みふゆは顔をそらす。
「昔の事だ。俺はそのことを正直に話して周った
事がある。当然と言えば当然だが、誰一人として
信じる人はいなかった。自分が都合のいいように
解釈して、誰しもが自分を人間と変わらないと、
化け物にはならないと…だが、当然彼女たちは
魔女になる。そして…こうやって偉そうに言って
周る俺は、魔女化の危険性が一切ない」
みふゆはさらに顔をしかめる。みふゆは
勉強はできないが、頭は回る。理解している
はずだ。
「俺が言った所でいいことは何一つない。
だから…まあ、知った人間のケアをする方が、
救う分にはやりやすい。」
「そう…ですね…確かにそうかもしれません…
でも…私には…」
彼女の言いたいことは分かるが、正直どうしよう
もない事だった
「それについては悪かった…が理解してくれ。
俺の体は1つしかないし、世界中に魔法少女は
何千といる。ずっとお前たちを見ているという
訳にはいかない」
さて…と俺はこの話を区切るようにわざと大きな
声を上げる。このままだとみふゆはこの話を
永遠と繰り返しそうな感じがしたからだ。
「さて、みふゆ…俺にいったい何のようだ?
こんなふうにコソコソ、前みたいに普通に
話しかけてくればいいじゃないか?」
「カズキ君…あなたはマギウスという組織を
知っていますか?」
ふむ…出方を伺ってみたが、彼女は隠し通す
つもりはないらしい。ならば接触の理由は
おそらく…
「ああ、ずっと待っていたぞ。そろそろ
接触してくる頃だと思っていた。」
「ッ!?狙っていた…のですか?」
「素性の分からない奴を知るすべとして、
1つ有効な手段がある。それは直接対面し、会話
をすることだ。まあ、あたりまえだな。
それに、気が付いてるか分からないが、俺を
観察しているのがバレバレだぞ。ただ、
何をしたいのか分からなかったから
少しだけ餌を撒いてみた。」
と俺はみふゆの脇のローブに身を囲った少女達を
見る。餌というのは自身に関する情報だ。
これだけ知っても確証は得られない。だけれど
その俺を知るうえで必要不可欠な情報。
確証を得るためにもどうにか近づいてくるはず…
「圧倒的な食いつきだったな。少なくとも一月
くらいはかかると思っていたが…」
ぐっと彼女達は、悔しそうに拳を握り閉める。
今にも食い掛りそうな雰囲気ではあるが、みふゆ
が手でそれを制する。
「分かりました…カズキ君そこまで分かっている
のでしたらもう、探りはなしです。ですが…
ここで話すのは少し抵抗があります。私に…
ついてきてもらってもいいですか?」
「ふむ…それは、お願いなのか?」
「…どうしてですか?」
俺はあたりを見渡しながら、一か所ずつ指を
指していく。嘘…と小さなつぶやきをローブの
少女から聞こえた気がした。
「このあたりは裏路地…見えないところに何人
か仕込んでいるな。俺がここから出られない
ように的確な配置、さすがだな~みふゆ」
「やはり…あなたにはかないませんね…」
彼女は首を振ると落胆したような、それでいて
どこか嬉しそうな声色で敗北を認める。
「まあ、いいだろう。連れていけ。」
「?いいのですか?」
「ここで魔法の無駄遣いをする必要もないからな
避けられる戦闘は極力避けておきたいんだ。
それに、俺もあんたと話がしたかったからな」
「分かりました。こちらです…」
と彼女は背を向けて反転。そのまま裏路地の
奥の方に進んでいく。付き添いの少女達も
こちらをチラチラと伺い少し警戒しながら
みふゆの後を追う。
「さて…吉が出るか凶がでるか」
マギウスへとつながる重大な情報源だ。
なるべく有利に事が運ぶようにしなくては…
と俺は葉巻を取り出し、火をつけてから彼女
達を追いかける葉巻の独特な香りを感じながら
俺は思考を巡らせていた。
~廃墟sideカズキ~
みふゆの先導によって連れてこられた場所は、
使い手のいなくなった、小さなビル一角だった。
ジャリジャリと崩れた石材を踏む音を聞きながら
中に入ってみると…中には数十人を超える少女
達が待ち構えていた。先ほどこちらを囲んでいた
人物だろうか?さすがにそれは分からない。
少女たちはそのほとんどが黒いローブを
身にまとい、数名が白いローブを身に着けている
全員がこちらをじっと見据えている。ローブを
深くかぶっているため、定かではないがその瞳
には少なくとも友好的な目には見えない。
「ずいぶんな出迎えだな。」
「すみません…まだ説明が不十分で、一応
一言添えておいたはずなんですけどね。」
丁度みふゆが部屋の中心に、四方八方から少女
達がこちらをにらむ立ち位置に立たされる。
なるほどまずは精神的にからか…
「さて、もう知っているようですけれど説明
させてください。私たちは今、解放を目指して
活動を続けています。解放とはあなたの想像
通り、魔女化になる運命から解放される…
それを意味しています。」
「想像通りだな。で、その解放とはいったい
どんな方法なんだ?」
「…………」
みふゆは途端に黙る。
「どうした?」
「残念ですが、詳しい説明は私にもできません。
それは私達を導いてくれるマギウスがやって
くれるのです。」
「マギウス?ここはマギウスじゃないのか?」
「いえ、私達はマギウスの翼です。文字通り
マギウス達の翼となって、解放のために
動いている組織です。」
なるほどな、そのマギウスとやらは随分と
人望があるようだ。人が何かをやると決めても
プロジェクトを立ち上げても、それを引っ張り
あげるリーダーが存在しなければ人々は
ついてこない。それがいかに魅力的な案だと
しても…だ。そして…
「なるほど、そのマギウスとやらは相当に優秀
のようだな。解放のため、解放のため、
そう言ってお前たちを使う。そのくせ解放の
やり方は分からないだと?はっ!笑える。
まるで詐欺の手本を見ているようだ。
いったいどうやって洗脳しているのか見てみたい
ものだな」
「なにをっ!」
怒りをあらわにした白いローブを羽織った少女
だったが反論を許す気はない。
「事実だろう?ならばお前は言えるのか?解放
とは何か?魔法少女とは何か?そもそも魔女化
とは何か?例えばだ…そのマギウスが騙している
…そう考えたことはないか?お前たちが解放の
ためにと奮闘している事がもしかしたら奴の
利益にしかならないかもしれないだろう?」
「うっ…」
悔しそうに顔をしかめ歯を食いしばる。やはり
どこか盲目的に信用していたのだろうか
「待ってくださいカズキ君それについては大丈夫
です。マギウスは私達に開放の一部を見せて
くれました。見ればきっとマギウスを
信用できるかと思います。」
そういうと彼女は自身のソウルジェムを取り出す
そのソウルジェムは真っ黒に染まり今にでも
魔女化してもおかしくなかった。
流石に驚いた。すぐにグリーフシードを
渡そうとするがみふゆはそれを制する。
そして光に包まれて、彼女は魔法少女と
しての姿を現す。
「正気か?みふゆ…その状態で魔法を使えば…」
「ええ、正気です。そして今から見せるのは
解放の一部でしかありません。しかとその目に
焼き付けてください。これがドッペルです!」
魔女化は避けられないか…そう思っていた俺の
予想は、あっさりと裏切られる。ソウルジェム
から何かが解放されたかと思うとみふゆの上半身
に変化が起こる。バッ!と広げたみふゆの両腕は
角…手…?のようなものに変化し上に上に
伸び始め、さまざまな模様をしたカーテンの
ようなものが、顔を上半身を覆うようにみふゆの
顔からあふれ出してくる。本来魔法少女として
の姿の時に首元に備えられるはずのソウルジェム
は顔ほどの大きさに巨大化。異形なカーテンの
塊の中央にその存在感を知らしめる。
「こ、これは…」
驚くのはそれだけではない。彼女の陰から
無数の鳥が出現する。鳥と思ったのはその面影
が似ているからというだけで羽ばたいて
いないし、そもそも生物ではない。まるで
お菓子を連想させるような、色とりどりな鳥が
突撃し近くに落ちていた廃材を粉砕していく。
一応ここにいる人たちのことを考慮してか、
床をぶち抜いたりはしていない。つまりあの攻撃
にはまだまだ、上があるということだ。
マギア…いやそれ以上に強い。
ひとしきり鳥を出し終えたのか、みふゆの体を
覆っていたカーテンは体に戻っていく。両腕が
変化した角のような物も、まるで時間が巻き戻る
ように元に戻っていく。手元にあるソウルジェム
も先ほどの穢れが嘘のように消えてなくなり、
元のきれいな宝石に戻っている。
「ふう…いかがでしたでしょうか?カズキ君
これが解放のほんの一部です。彼女達がくれたの
です。この町で私たちは決して魔女化しません」
「そう、か…これがお前たちをマギウスに
止めている魅惑の力ドッペル。確かにこれほどの
物を見せられては信頼できるのもわかる。」
「理解してもらえてうれしいです。…さて
では本題です。カズキ君私はあなたに協力して
欲しいんです。このマギウスに」
「協力だと?俺に仲間になってほしいとそういう
事か?」
「はい、私はあなたの力をよく理解しています。
私達のために力を貸していただけないでしょうか
この残酷な運命から、私達を助けてくれませんか
あなたとだったら…私っ!」
確かに、今まで幾度となく、俺は
見届けてきた。そして多くの命も救ってきた
しかし、それは自分でもそう表現しているように
ただの延命治療でしかない。根本的な解決には
なにもならないのだ。ここでのこの提案は
魅力的だ。もしかしたら長年できなかった。
事ができるかもしれない。だから俺の答えは
決まっていた。
「断る」
「えっ…?」
「聞こえなかったか?断るといった」
何を言われたのか分からない。みふゆは今
そういった顔をしていた。まさか断られるとは
思ってもいなかったのだろうか?
「ど、どうしてですか!?助けて…くれないん
ですか?あの時も言ってくれたじゃないですか!
私のやりたい事、協力してくれるって!」
その問いかけに首を横に振る。長年一緒に活動を
していたが、彼女は分かっていないようだった。
「ああ、そう言った。」
「だったらどうして…!?」
「決まっている。それがお前の選んだ道ではない
からだ。やりたいことではないからだ」
「えっ…?」
はぁ…とため息をついてから子供に言い聞かせる
ようにゆっくりと話しかける。
「確かにお前は、最初のころはこの道を自分で
選んだのかもしれない。心の底から救われたいと
だから協力したいと、本心で思ったのかも
しれない。だが、今のお前は何かに縛られている
お前のその行動に、すでにお前の気持ちは意思は
そこにない。あるのは成し遂げなければという、
使命感という名の束縛だ。」
みふゆは冷や汗をたらしながら、口をパクパク
させている。手を握り閉めながら何か言葉を
探っているようだった。
「それに…やはり俺はあいつらのやり方は
気に入らない。間違ってるとは言わないが、
それにしては一般人から魔法少女まで巻き込み
すぎだ。」
癇に障ったのだろうか、みふゆは少し怒りの
感情をあらわにした。キッ!とにらみつけて
強い口調で言葉を発する。
「カズキ君さすがに私も言いたくなります。
そんな言い方だとあなたが正しいみたいじゃ
ないですか!すべてを知ってるわけじゃないです
けれど、私も知っています。カズキ君だって…
障害となった魔法少女を手にかけてきたじゃ
ないですか…なのに私たちが間違っている
みたいな言い方…」
「はぁ…お前はいったい何を言っているんだ?
俺が正しい?そんなわけないだろう?」
やり返したかったであろうみふゆはその言葉を
受けて体を固める。
「俺は、いや、俺たちはすでに常識から
外れている。どちらが正しいなど関係ない。
どちらも正しくないんだ。決して許される事の
ない非常識だ。ならばなぜそれをやめられないか
それは止めないからだ。その道こそが正しいと
本気で信じて、その道こそが自分の歩む出来道
だと信じてな。だから、俺からしたらお前は
非常識。そして、俺は正しい。」
それを聞いたみふゆは困ったようにため息を
吐き、まるで子供のようですね。と洩らす。
「自分の道を外れることが大人になるという事
ならば、俺は別に子供のままでも構わない。
俺の人生は俺だけのものだ、誰の指図も受けない
分かったか?俺はやりたくないからあんたには
協力できない。まあ、あんたが本心からそれを
成し遂げたいというのなら考えるが…」
「そう…ですか…」
そう言ったみふゆはそれっきり黙ってしまった
口だけでも本心だとでもいえば、もしかしたら
騙されるかもしれないというのに
「?なぜ言い返してこないんだ?」
「ふふっわかっているでしょう?私ごときが、
口先であなたに勝てるはずありません。きっと
全部見透かされてしまいます」
彼女はおそらく自分自身の事を理解している。
今のこの現状が、いかなるものかを。
間違いを認識するのは間違いを治すのにまず、
必要な事だが、彼女はそこで終わってしまった。
どうしようもできないではなく、やらなかった。
一歩踏み出す勇気のない人間を一々手を
貸していてはきりがない。たとえそれが、
7年間一緒にいた人間であろうとも…
そして、そうと決まればもはやここにいる理由
も存在しない。マギウスのことなど、突っ込めば
それなりに情報が得られるかもしれないが、
ここはすでに敵の本拠地、しかも周りの魔法少女
からは敵意むき出し。すべてが無駄という訳では
ないがほぼ収穫0。いやドッペルや、解放の事
が分かっただけで、十分な収穫だろうか。
背を向けて去ろうとしたところでみふゆが声を
掛けてくる。いや、掛けてくるではなく、呟く
といったほうが正しいだろう。
「いったい…いつになったら終わるんでしょうか
この道が正しいと間違いだと、証明されるのは、
いつになるんでしょうか…?」
そのまま聞かなかった事にしてもよかったが、
まあ、一応やちよの親友であり、こちらも世話に
なった。だから一言添えてやることにした。
当たり前の事を当たり前のように
「非常識に終わりはない。その非常識がなしとげ
られた時はそれが常識になるからな、非常識で
ある以上終わりは永遠に来ない。もし…終わりが
あるとすれば、常識に駆逐される時か、同じ
非常識がぶつかって負けた時くらいだろう」
そうして俺は廃墟を後にしようとする。
しかし、それはかなわなかった。何かが走って
来る音と魔法少女が変身する際に聞こえる音が
聞こえたからだ。急いで振り返って
見ようとするが、その視界は大きく揺れる。
目の前には地面が広がり、みふゆのはいている
靴が近くにある。顔を上にあげればスカートの
中でも見えるかもしれないが、その首は自分の
意思では動かすことができない。なぜなら
「アサルトパラノイア!」
みふゆのマギアにより、全身がズタボロに
切り裂かれて、その首は体と別れを告げる暇も
なく、切断されてしまったからだ。
いかがだったでしょうか?主人公突然の死!
マギアレコード本編では、やちよとみふゆにはそれぞれ好きな人が別にいますが、魔法少女という理由で一歩前に進めずにいます。が、ここでの話はそんな人はいなかった事になっています。そして魔法少女という理由で尻込みする理由もなくなっています。
後サブタイトル会合とかありますけど、そんな事なさそうですね。対面とかにでも
しておけばよかったと思う今日この頃です
※定期
ネタを募集しています。
この魔法少女と絡ませてほしいとか
この魔法少女とのこんなシーンが見てみたい
カズキの使う魔法など、
一人で考えるのも楽しいですが、皆様の
発想はおそらく私にはないものですので
ぜひ、ご意見いただけると幸いです。
よろしくお願いします!