「マギアレコード」 Pueri et puellae magicis   作:ゆっくりff

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本当は2で終わらせる予定でしたが、少し長くなると思ったので、
今回と分けました。なので少し少な目です。


マギウスとの会合3

~廃墟sideみふゆ~

 

 

彼の首が、地面を転がる。文字通りバラバラに

なった彼の体から赤い液体が、まるで噴水の

ようにあふれ出る。嗅ぎなれない鉄さびの

ような匂いが鼻をくすぐり、自分のやった事を

嫌でも自覚させられる。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

やって…しまった。ついに私はこの手を血で

染め上げてしまった。しかもその血は私の

今でも、元の関係に戻りたいと望んでいる

親友やっちゃんの大切なパートナーであり、

親友でもあり、今は同居人であることも

知っている。そして…何より、数年という

長い年月一度だって他の男性に変わることも

なかった思い人でもある。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 

もちろんそれはやっちゃんだけではない。

今言った事はほとんど自分にも当てはまる。

それはつまり、私はこの手で思い人を殺した

と言うことになる。

 

「はは…ぁはは…」

 

どうして…こんな事になってしまったので

しょうか。先ほどまで殺意はなかった。

いや、殺したかった、それは間違いではない。

でも…私はどうしてそんな愚かな考えに

行きついてしまったのだろう。

それはくだらない独占欲のせいだ。

 

カズキ君は今みかづき荘を拠点にしている。

つまりやっちゃんと同じ家で暮らしていると言う

事。あの事件(友人の死)より前、カズキ君はあまり人目に

付くのを嫌っていたため、たまたま出会った

やっちゃんとその現場をたまたま目撃していた、

私が外でたまに会う…という関係だった。

深いかかわりもなく一緒に魔女を倒したり、

どこかおいしいケーキのお店で時間をつぶしたり

と、最初は本当にたまに会う友人くらいにしか

思っていなかった。しかし、彼のその妥協を

許さないはっきりとした性格、厳しいことを

言うけれど、なんだかんだ言って優しい行動理念

加えて、魔法少女と言う普通の男性ならまず

気が付けない秘密に深く関わっている。そして、

私達の立場的に普段甘える立場ではないの

だけれど、彼は違う。1年という歳の差を

全然感じさせない頼りになる彼に恋心を抱くのに

そう時間はかからなかった。

 

「あはは…っはは…」

 

そんな彼をどうしてここで?決まってる。

奪われたくなかったからだ。ここを出れば、

彼は間違いなくマギウスに殺される。私が殺害を

失敗したときの後詰を用意していると言っていた

のだから間違いない。ただでさえ魔法少女との

タイマンですら、なるべく避けたいと言っていた

彼に、大多数の魔法少女が束になって襲い

掛かってくるのだ。対処しきれるはずがない。

それに加えて、もしここで彼がいなくなれば、

もう二度と彼は私を見てくれないだろう。

みかづき荘につくのだから、私は敵…そして、

彼は敵に対して情けも容赦もない。それがたとえ

知り合いだったとしても、だ。

こうして、私は精神的に追い詰めらた。

引き留める勇気もなければ、理由もない。

説得もできないし、彼は私への興味を失った。

そして…私は誰にも彼を渡したくない。

だからと言って、取った行動が殺害?私は妙に

冷めた頭の中で、失笑した。

 

バカすぎる。アホすぎる。間抜けすぎる。

そしてダサすぎる。こんなくだらない独占欲の

ために、私は彼を殺したのか。いくら追い詰め

られたからと言って、こんな行動を起こしたのか

彼が見限る訳だ。私は今、本心で行動していない

マギウスの在り方に、翼の存在意義に、疑問を

持っても、もう後には戻れないと、その道を

進む。自分がやりたいと思っていないことを

やり続けて、どこかでおかしくなるのは

当たり前の事じゃないか。もう私は狂っている。

マギウスの事もマギウスの翼の事も、友人の死の

事も、やっちゃんの事も、カズキ君の事も、

いったい何が本心で、何がやりたい事なのか…

私にはもう分からなくなっていた。

 

「あの…みふゆさん」

 

しかし、こんなに悩んでいても、悔やんでいても

現実は容赦なく時間の針を進める。止まる事は

許されない。後悔をする時間もない。彼も

言っていた。非常識が止まれることは…ない

 

「……大丈夫です。皆さんは…」

 

「い、いえそうではなくて…彼を…」

 

「え?」

 

翼の仲間に言われて、私は彼が先ほどまで

倒れていた場所を見る。そこには…誰も

いなかった。

 

「え?」

 

もう一度私は素っ頓狂な声を上げた。

 

「みふゆさんが…その、笑っている間に、

彼の死体がまるで砂のようにサラサラと…」

 

バラバラにした死体はどこにもいない。

つい先ほどまで足元にあった。頭部もどこにも

見当たらない。あれだけ浴びた血を、鉄さびの

ような鼻を刺す臭いも、どこにもなかった。

あれは…不安定な精神が見せた、幻覚だったのだ

 

「……………」

 

いろいろ、思う所はあった。まず間違いなく

カズキ君は私を、私達を出し抜いたのだろう。

悔しさ…よりも今は安心感のほうが強かった。

先ほどあれだけ冷静に考えてたおかげでいくらか

精神を持ち直していた。だから、思い人が

死ななくて…よかったのだ。きっと彼は

マギウスの作った包囲網の外にいるはずだ。

とりあえず彼の危機は一応去ったということに

なる。肩の力が抜けて…私はへたり込んだ。

 

「よか…った…」

 

自分でやったくせに、私の目からは涙を流すのを

我慢することはできなかった。皆に見られまいと

顔を伏せて、声をあげずに泣く。仲間の死で

あれだけ、カズキ君を攻め立てたのに、その

カズキ君を殺そうとした。まさにこの姿は滑稽

だろう。指をさし、笑われても文句は言えない。

 

幸い、ここにいる人達はそういうことを

する人たちはいなかった…しかし、代わりに

私のポケットに入れいている携帯が音を立てて

震えだした。

 

「…今、ですか…」

 

もう少し、涙を拭いていたかった。気持ちの整理

をしたかったが、マギウスが痺れを切らしたの

かもしれない。状況を報告すべく、スマホを

開くと…

 

「えっ!?」

 

ディスプレイに表示された名前を見て、私は

危うくスマホを落としそうになった。その

ディスプレイには、彼、カズキ君の名前が

表示されていたのだ。この状況偶然のはずがない

彼は今のこの状況をすべて理解している。

理解して、私に電話を掛けているのだ。

私は震える手で、通話ボタンを押し、恐る恐る

耳に当てる

 

「お、つながった。よかったよお前まで電話番号

変えていたらどうしようかと思っていた」

 

「か、カズキ君…」

 

「どうだ?反応が消えたみたいだが…」

 

「いったい…どうやって」

 

答えてくれるとは思っていなかった、何せ彼は

手札を見せるのを極端に嫌う。味方にすらも

見せない徹底ぶりをして、敵に情報が漏れない

ようにする。数少ない勝ち筋を潰さないように

すると…しかし、予想に反して彼はあっさりと

種を明かしてくれた。

 

「コピーパペットって勝手に名付けた魔法だ。

他者の姿形を真似るだけのものなんだが、こいつ

のいい所は、行動はこっちが思考するだけで勝手

にやってくれることだ。しかも自動操作可能だ。

その場合はコピー元になった人物の思考に基づく

らしい。つまり、そっちの音を拾えて、かつ

スピーカーのようなものがあれば、その人に

なりすますこともできる。コピー対象が自身なら

なおさらだな。」

 

自分自身をコピーすれば文字通り、自分を2人に

することができるということか、まあ、コピー

先を完璧に擬態するには聞いてる限り

魔法の使用者が操作をしないと完璧な擬態は

出来ないみたい。いったいそれがなんの役に…

と考えたところで私は小さく笑う。

そうだ、現にこうして騙されているではないか。

デコイとして、非常に優秀な働きをしている。

魔法少女と直接対決を控えたい彼にとって、

コピーパペットはかなり有力な力だ。

 

「カズキ君どうして明かしてくれたんですか?

仲間だった時もこうして話してくれること

少なかったと思いましたけど…」

 

「単純な話だ。これでお前は疑心暗鬼に陥る

目の前にいる人は本物なのか?そこにいるのは

味方なのか?とな。」

 

「確かに…そうですね」

 

これで私は安易に情報をしゃべれなくなって

しまった。知らなければよかったとも思うが、

それほどに強力なコピーパペット、それほど

回数制限がないとは考えられない。きっと

それなりの回数が定められているはずだ。

もしこの考えがあっているのなら、あまり

気にする必要はないかな。能力はコピー出来る

かもしれないが、記憶をコピー出来なければ、

対策はいくらでもある。

 

「あなたには…すべてばれてしまいましたね…

いえ、元から気が付いていた、ということ

でしょうか?」

 

「ああ、ただ、確証は得られなかった。みふゆが

やちよから離れる姿を想像できなかったからな。

でも、こうして現実を見せられたらいやでも

実感しちまうな。…そんなに救済がほしいか?」

 

私はゆっくりと目をつむり、思い起こしていく

親友との大切な日々を、好きな人との緊張した

会話の日々を、友人を失って、自暴自棄になった

日々を、あの日助けてくれた小さな存在と、

その道しるべを、そしてその頭に立ち、大きな

輪へと成長させた罪深く、迷い続けた日々を…

 

「はい、やはり私…いえ、私達には救済が必要

です。そのためにも、いくらカズキさんとはいえ

邪魔をするならば…」

 

「そうか、その決意だけは本物のようだな…

分かった何も言うまい。ただ、忘れるなよ。」

 

彼は声のトーンを下げて鋭い声で私に語りかける

その声には後悔はないか?本当にいいんだな?と

最終確認をしているようだと私は感じた

 

「俺は敵に大して容赦しない。明確な敵対を

見せた以上…悪いが次はないぞ?今回みたく、

話し合いだけでは済まさない。だまして悪いが…

と平然と背中を刺すかもしれない」

 

「覚悟の上…です。それにカズキ君が言っていた

ではありませんか。非常識の終わりは、それが

常識になるとき…きっと、達成して見せます」

 

「そうか…分かった。」

 

とカズキ君は電話を切るであろうトーンで話を

締めくくろうとする。それに私は待ったをかけた

例え敵になったとしても…どうしてもこれだけは

言いたかった。何様だと言われようと、感じて

しまったもの、言いたくなったものは仕方ない。

 

「カズキ君あなたが無事で…よかった…です」

 

電話の向こうから、深いため息のようなものが

聞こえる。

 

「それを言うのは少し早い気がするな」

 

「えっ?」

 

「みふゆ、お前…和服で笛持った魔法少女に

心当たりがあるか?おそらく双子の」

 

急にそんなことを言われて、困惑する。なぜ?

彼女たちは確か、今日は予定があると言って

この集まりには参加していなかったはずだ。

作戦の結構日だけは知っているけれど、

それだけで、あのカズキ君を補足しきれるとは

思えない。彼女たちは確かにいろいろな面で優秀

ではあるけれど、カズキ君のような実戦向けの

技術はそこまで高くないはずだ。しかし、問題は

そこではない。彼女たちがカズキ君に接触した

理由なんて、今現状1つしか考えられない。

 

「天音さん!」

 

しかし、残念ながらカズキ君は携帯を切る。

掛ける直しても当然応答せず、天音さん姉妹も

応答しない。心配だったが、位置が分からない

のに、どうにかすることなどできない。

私はただただ、祈ることしか出来なかった。

当然3人の生還を…

 

 

 

~屋上sideカズキ~

 

 

後ろから気配を感じてチラリとそちらを

振り返ってみる。そこに立っていたのは2人の

少女だった。和を彷彿とさせる奇術師のような

衣装を羽織り、揺れる髪から片方がツインテール

もう片方がポニーテールだとわかる。

2人揃って横笛を手に持ち、胸元に赤い宝石…

ソウルジェムが納められている。

雰囲気、顔立ち、魔法少女としての衣装や武器

かなり似ている。多分ではあるが姉妹だろう。

俺は、天音さんというみふゆの声を聴いてから

電話を切る。

 

「さてと…みふゆから聞いた、天音と言う

みたいだな。俺に何か用か?」

 

正直しらじらしいと自分でも思った。この

タイミング、この場所、何をしに来たのかは

明確だ。

 

「お初にお目にかかります。カズキさん私は

天音月夜と申します。」

 

ポニーテールの少女が深々と頭を下げる。

一切の無駄のない、鮮麗されたその動作に

感心する。

 

「こんにちは。ウチは天音月咲よろしくね」

 

今度はツインテールの子が手を振る。まるで

友人としゃべるかのような砕けた口調に

明るい雰囲気、どちらも真逆の性格をしている

気がする…がやはりどこか似ている。

 

「姉妹か?」

 

「はい、そうでございます。私は姉、月咲ちゃん

が妹です。それで…何の用か…でしたよね?」

 

横笛を構えて、彼女たちは先ほどまで向けていた

敵意をより一層強めて、睨みつけてくる。

 

「みふゆさんに代わってあなたを…命を頂戴

します!」

 

「やめておけ、人殺しがどれだけ重荷になるか

本当にわかっているのか?もう二度と戻れなく

なるぞ」

 

「心配は無用だよ。それに今の状況じゃ、ただの

命乞いにしか聞こえないよ~!」

 

「「ね~♪」」

 

姉妹は顔を合わせてまるで人を見下している

かのような話し方をする。

 

「あなたの存在は解放を達成する上でアリナさん

が排除すべしと判断した人…しかし…みふゆさん

は少し辛そうでした。まあ、当然かもしれません

今どう思っているかは存じ上げませんが、旧友

を殺せ、など気持ちが乗らないのも仕方がない

事であります」

 

姉…月夜の言葉に月咲が続く。

 

「みふゆさんにはいっつもお世話になっているし

だったらここは代わりにやってあげないと!」

 

彼女達の言葉を聞き、このよろしくない状況に

少し冷や汗を流す。ここはビルの屋上。ここだけ

でなくこのあたりは今は無人なことを確認済みな

為、暴れても問題はない。しかし、あたりは

ちょっと強打すれば、即座に破壊されそうなほど

脆そうな柵に、障害物の何もない空間、さらには

所々床がめくれていて、足場がかなり悪くなって

いる。相手は魔法少女が2人…状況としては

絶望的だ。だからここは言葉で退けるのが無難

な所なのだが…

 

「まあ、待ちなよ。みふゆは今しがた俺が

生きててよかったと言っていたぜ、殺すのは

あいつの本位じゃないみたいだぞ?それにだ、

俺はお前たちの邪魔をする気はない。」

 

「ふふふ、嘘はよくないよカズキさん…あなた

の今までの行動はちゃーんと全部報告されてる

んだから」

 

「私達の解放のために…」

 

そのゆるぎない信頼の目に俺は説得をあきらめた

こういう手合いは説得するのがまず不可能だ。

何せ、それこそがすべてだと、それ事が唯一だと

本気でそう思っているからだ。

 

戦況は絶望的、しかし、引くことはできない。

己の願いを達成するために、他者を落とす、

罪深き少年少女の戦いが幕を開けた…

 

 

 

 




いかがでしたでしょうか?
戦闘シーンは最近書けていなかったんで、次回は気合で
この戦闘を仕上げたいと思います!







※定期
ネタを募集しています。
この魔法少女と絡ませてほしいとか
この魔法少女とのこんなシーンが見てみたい
カズキの使う魔法など、
一人で考えるのも楽しいですが、皆様の
発想はおそらく私にはないものですので
ぜひ、ご意見いただけると幸いです。
よろしくお願いします!

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