「マギアレコード」 Pueri et puellae magicis 作:ゆっくりff
~土曜日神浜市新西区公園北入り口~
約束の日の土曜日…場所は新西区公園北入り口。
集合時間になっても来ないももこに少し不安を覚えながら、雑談をはさんでかえでとレナが待っていた。
「ごめん!遅くなっちゃった。」
そういってももこは手を振りながらこちらに走ってきた。
いつもとは違う、ボーイッシュぽくてかわいらしい私服を着ていて、歳に比べて発育のいいその体が引き立ってるように見える。
「ももこが遅刻なんて珍し…くもないけど、どうかしたの?」
「ちょっと早く来て、怪しいものがないか回ってたんだよ」
「えっ?もう、そういうのは一緒にやってこそじゃないの?私たち何のために集まったのよ」
「ははは、ごめんごめん…それでかえで、決心はついた?」
「うん…大丈夫だよ」
そういってかえではこちらに顔を向けて笑顔を向ける。
やせ我慢をしているのはまるわかりだった。
「……うんじゃあ安心だな。
アタシたちも一緒にいるからさ…って言っても肝心のその人がまだ来てないみたいだけどね」
最初からご対面ではなく、いったん距離を置いてそのベンチにいる人を、遠くから観察しようというレナの案特に問題はないと考え、こうして3人で入り口からベンチを眺めている。
すでに指定された時刻となっているが、指定されたベンチにはまだ誰も来ていなかった。
「周りにも…人、あんまりいないよね?」
「自分から指定しておいて…本当におかしな人ね、その男って言うのは」
レナは不機嫌な顔になりながらあたりを見渡す。
老夫婦、親子、ユニフォームを着て走るお兄さん…其れらしき人物は見当たらない。
私たちはベンチを中心地にしてあたりをうろうろして探していた。
「どうする…?もし、相手が同じこと考えてたら…このまま平行線になるんじゃない?」
「かといって、こっちから出るのはなぁ……ん?あれ?」
「ど、どうしたのももこちゃん?」
「いやー…あのベンチ…なんか物置いてない?」
「えっ?」
見てみると確かにおいてある。
今まで私たちがいた場所からでは背が邪魔して見えなかったのだが、周りを回ってベンチの座の部分が見える場所に来るとそこにいろいろ置いてあるのがわかる。
「…もしかして…あれかな?」
「だとしたらずいぶん不用心ね。誰かに取られちゃうかもしれないのに」
「ずっと見てたけどその心配はいらないみたいね」
ベンチの近くの木陰から女性の声が聞こえてくる。
「や、やちよさん!」
髪から服まで、青を主体にした色合いで整えられた美しい女性やちよだ。
やちよに頼んだのは情報だけなので、まさかここまで来るとは思わなかった。
「おはよう3人とも」
「ど、どうしてここに…?」
「もちろんアタシが呼んだんだよ。こんな事例今までにないし、頼りになるだろう?」
「た、確かにそうだけど…」
と少し緊張しているのか体が強張るレナ。
かえでのほうもオロオロしている感じだ。
「とりあえず1時間くらい見ていたけど誰一人このベンチには近づかなかったわ。
ついでに言うと、私が来た時にはすでにそれが置いてあったわ」
「まじかー…ずいぶんと早いんだな…中身とか見た?」
「いえ、それはあなたたちがするべきことだと、私は思ったからやらなかったわよ」
「やるべきこと…?」
「メモを見ればわかると思うけれど」
「そっか…」
「…ごめんなさいね今日撮影があって向かわなきゃいけない場所があるの。」
「ああ、手間とらせちゃってごめん、ありがとやちよさん」
頑張ってね、とやちよは小さく手を振り公園を後にする。
やちよももこたちよりずっと長く魔法少女をやっていて、歳も19くらいだったか。
緊張しっぱなしだった体をほぐすために大きくため息をつく
「もう、手伝ってくれてるなら言ってくれてもよかったのに…というか相談だけじゃなかったのね…」
「ごめんごめん、でも頼もしいでしょ?」
「頼もしいけど!…はぁ、せめて心の準備がほしかった…」
「ははは…じゃあ、見てみようか」
「………」
そういってももこはベンチに近づく。
かえでもそれに合わせてゆっくりと頷き、恐る恐るベンチに近づく。
ベンチの上には二つほどの両手で抱えられそうな大きさの段ボールと、おそらくそれに合うであろう大き目の台車、そして2枚の紙が置いてあった。
紙は飛ばされないように石で挟んであってメモ帳くらいの小さい紙だった。
かえではそれを緊張した面持ちで手に取る、ゆっくりと開いて中を確認してみると…
「配達…?」
「えっ?」
「配達…?ってあの配達よね?」
レナとももこは同時に聞き返す。
「うん…ここに書いてある通りに段ボールの中身を一家1つ届けてほしいって」
「…なんかアルバイトみたいね…ほかに何か書いてないの?」
「えーと…住所と名前が書いてある紙と…地図は別紙って書いてある…」
「じゃあこのなかかなって…2人ともこれ…」
ももこは段ボールの中を開いてみんなに見せる。
そこに入っているのは子供向けのお菓子と、おもちゃをかわいく梱包したものが、いくつも入っていた。
段ボール1つに対して入っていないけど、2つもあるならそれなりの量になる。
40くらいだろうか?
「はあ…これを代わりに配達してほしいってこと?」
「あっこれ小学生低学年を対象にしたボランティア清掃のお礼って書いてある。」
かえでは読み進めていくうちにこの配達の目的が記されている所を発見した。
「へー…そんなのが、まあ私たちじゃ付き合いないからわかんないか…」
「ますます意味わかんないわね…グリーフシードを渡した人はいったいかえでに
何させたいのかしら?」
「でも、こんなことでよかったじゃん。」
「大金よこせとか言われても、渡せないし」
とももこは少しだけ笑いながら言った。
「うん…それでこれ、私たちだけで配って大丈夫なのかな…?こう言うのって大人がやるんでしょ?」
「これが高度ないたずらだったら、さすがにびっくりだよ…おもちゃは新品、お菓子の消費期限は当分先…」
と、うんうんと考えていると、ほんの少しだけ、ささやき声が聞こえてくるのがわかる。
ちょっとささやいてすぐ公園の中に入る感じだが、内容があの段ボールなので、間違いなくこっちのことを見ていっているのだろう。
10時ともなれば、気の早い子供を遊ばせに家族とかがやってきたり、カップルが待ち合わせるのにちょうどいい時間だ。
これからも人が増えてくると考えると目立つ前に早く決めたほうがよさそうだ。
「ど、どうしようこれ…」
とはいえすぐには決められない。
オドオドしているかえでをよそにももこはとりあえずここまでの情報から一度はやってみるのもありなのでは?と考えた。
「うーん…………よし、とりあえず一軒回ってみよう。
それでそこの人の反応を見て決める…どう?」
「いいかもだけど………って私また変身使うのは勘弁よ!」
レナは固有能力として変身能力を持っている。
かなりの高精度で、他人そっくりに化けることができるのだ。
これまでもいろんな大人になって、さまざまな場面で活躍してきた。
とはいえ絶対にばれないというわけではない。
変身しているこっちもいつばれるか、内心ひやひやしているのだ。
好き好んで やりたいとはとても思わない。
今回の場合、怪しまれないのはボランティアを仕切った大人に化けるのが一番怪しまれないだろう。
こう言った訪問に知らない女子高生1人と女子中学生2人が訪問しても怪しまれるだけだ。
「大丈夫だよレナちゃん…お手伝いっていえば、怪しまれないと思うし…」
「まあ、あたしたちなら最悪逃げることも可能だからな」
「別に逃げる必要はないと思うんだけど…」
彼女たちはその後、視線を感じながら手早く準備をして、幸いにももこの親戚の家の住所を見つけたことから、とりあえずここからと決め、配達を始めるのであった…
☆
土曜日のおおよそ11時くらい、場所は新西区住宅地、用事がある人は大体出かけ終えたところだろうか。
休日ではあるが、人通りは少ない。
レナ達は交代しながら台車を押し、段ボールを運んでいる。
「それで…ももこの親戚ってどんな人なの?」
レナは台車を押しながらももこの親戚について聞いてみる。
ももこが知り合いだから向かうという話になってはいるが、それでももし相手が高圧的な態度をとる人間だったら、知り合いであろうと意味が亡くなってしまう。
「どんな…って言われても普通の年老いたおばあちゃんが住んでいるだけだよ。あったのも中学生の時だから向こうが覚えているかわからないけど…」
「でも突然訪問して大丈夫かな?」
「普通の訪問ならともかく、今は配達だからなぁ…大丈夫だろ!」
見えてきたよ、とももこが指さすその先には昔ながらの一軒家というべきか、古い家屋が姿を現した。
かなりの月日がたっているのだろう、外装に少し傷が目立つ。
瓦屋根に縁側と大きな庭に小さな池、今はもう見ることのほうが難しくなってきた昔の家。
実はこの神浜市で結構見ることができる。
かえではインターホンを鳴らして、段ボールの中から包みを1つ取り出す。
しばらくすると人当たりのよさそうなおばさんが戸を開けて出てきた。
「こんにちは…えーとどういった御用かしら?」
「あ…えーと…こ、これを!」
かえでは大した話もせず持っていた包みを頭を下げながらおばさんに渡す。
当然といえば当然だがおばさんも何のことかわからずに困惑しているようだ。
「えーと…きゅ、急にどうしちゃったの?」
「あ…その、これお礼です!お礼!」
「ははは…かえで緊張しすぎだよ」
ももこはかえでの頭に手を置いておばさんに話しかける。
「おばさん久しぶり元気にしてた?」
「あらあら~ももこちゃんじゃないまたまた大きくなったわね~もう高校生になったんでしょう?どうどう?彼氏の一人や二人で来たんじゃないの?」
とおばさんはももこを覚えていたようでほかの二人に目もくれずマシンガントークを始めてしまった。
ももこのほうも、ろくな回答を出せてないで愛想笑いをしているだけだがそれでも満足なのだろうか。
おばさんの話は止まることはなかった。
「お、おばさん!そろそろ本題入ってもいいかな?」
止まらない話をいいタイミングで遮った
ももこは後ろの二人を紹介しようと、手を引っ張ってきた。
「とりあえずこの二人がレナとかえでって言って、私の友人」
「こ、こんにちはです…」
「こんにちは…」
どっちかと言うと人見知りの激しい二人はおずおずといった様子で静かに挨拶をする。
おばさんはそれでも満面の笑みを浮かべて
「なるほど~レナちゃんにかえでちゃんね!それで本題ってなんのことかしら?」
「はい、これ清掃ボランティア参加のお礼の品なんですけれど…」
ようやく落ち着いてきたかえでは持っていた包みをおばさんに渡す。
おばさんは一瞬首をかしげてうーんとうなるが、
「あ!この前の清掃活動のことね!しょうくーんようやく来たわよ!」
おばさんは包みを受け取ってから家に向かって誰かを呼ぶように声を上げる。
しばらくするとドタトダと足音を立てながら一人の男の子が玄関から飛び出してきた。
「おばあちゃーんなにー?」
「しょう君この前町をきれいにしてくれたでしょ?その時のお礼でお菓子を貰ったのよ」
「ほんとう!?わーい!」
しょう君と呼ばれた男の子ははそう言いながらおばさんからもらった包みを大事そうに抱えた。
「ほらしょうくん。喜ぶのはいいけど先に言うことがあるでしょ?」
「うん!…おねえーさんたちがもってきてくれたの?」
「えっ!?う、うんそうだよ」
少しびっくりして引きつった声を上げたかえでだが、しょうはかえでたちに近づいてその頭を下げた後に満面の笑みを浮かべながら
「おねえさん!ありがとう!」
と感謝の言葉を述べた。
かえでは照れ臭そうに笑いながらどういたしましてと、目線を合わせて微笑んだ。
☆
その後の配達はあっさりと終わった。
1回目の訪問でこの配達が偽物ではないとわかり、かえでたちは包みを民家に届けて回った。
ボランティアに参加した人たちは皆いい人たちばっかりで、配達の手伝いをしている私たちにお菓子とかジュースをふるまってくれた。
「なんか…こういうの久しぶりな気がする。」
しみじみといった感じでかえでは声を漏らす。
「こういうの?」
貰ったジュースを飲みながらももこはそのつぶやきに応じる。
日はすでに落ちかけていてあたりをオレンジ色に染めあげる。
メモに書いてあった配達後の行動は同じ場所に、台車を返してほしいとのことだ。
それで支払いは終了…
「なんていうのかな?…うまく言葉にできないんだけど、純粋な好意…かな?」
「なんだよ~私のこれは純粋な好意じゃないのかよ~?」
口を尖らせたももこが肩に手をまわしながら頭をなで始めた。
セットした髪があっという間に乱れる
「これは明らかに違うでしょ~」
「はははごめんごめん…でなんだっけ?」
「もう…純粋な好意だよ。やっぱり魔法少女相手だと、どうしても裏とか考えちゃうでしょ?
学校でも、なんか居心地悪かったりで、最近根本的なところで人を信じ切れていないのかなって…」
「………」
心当たりがあるのかレナは口を慎む。
最近の1件だとマギウスなんかいい例だろう。自分達を救うために甘い声をかけて、その目的のために一般人に対しての容赦が一切ない。
あの組織、裏を読めなければその甘い言葉に惑わされて道を踏み外す…とレナ達はもちろんやちよさんたちもかんがえている。
「でも、あの人たちは違う。ただそこにあるのは純粋な感謝の気持ちだけ…特に子供とか…可愛かったよね?」
「そうだな~なんていうか癒されたな」
「まあ、否定はしないわ…」
レナが素直じゃないのはいつものこと、2人ともかえでが思っていたことを思ってくれてるみたいだった。
もちろん、これはただの思い込み。
こっちが一方的にそう思ってるだけで、実際はそうじゃないのかもしれない。
それでも、あの笑顔は頭に焼き付いている。
目を合わせて、全身で喜びを表し、しっかりとお礼も忘れない。
そんな子供たちを見ていると、こっちも気分がよくなってくる。
「セラピーって言うんだっけ?私たちも知らないうちにいろいろためていたのかもしれないね」
「突き止めるつもりがますます謎になっただけね」
「なにが?」
「忘れたとか言わないでしょうね?これ送り付けた人のことよ!」
「あっ」
レナはかえでが受け取っていった請求書なる紙を見せている。
途中で途中で回るのが楽しくなってすっかり忘れていた。
そう言われると確かに謎めいてくる。
金銭は要求しないで、ボランティアの手伝いをさせる。
回った民家からも情報を聞こうとしたけれど全員心当たりがないという。
貴重なグリーフシードの代金にしてはずいぶんと安すぎるし、これをさせたところで向こうのメリットは全然ないように思える。
そんなにこの仕事をしたくないのだろうか?だとすれば引き受けなければいい話だ。
ボランティアなのだから誰か別の人がやってくれるだろうに。
そして極めつけに…
「……本当にこの人何がしたかったのかえでに請求書送り付けた人…」
「わっかんねーな…でもおいしそうだね」
朝台車が置いてあったベンチには今は小さな袋2つ置いてあった。
1つはスーパーでよく見るレジ袋にお茶が入っている。
そしてもう一つはとある団子屋の名前が書いてあった。
なかには数種類の団子が入っていてどれもこれもおいしそうだ。
というかこの団子屋、この町で1,2を争うほどの有名店のようだ。
休日なら人が並ぶくらい混むと言われている。
一度は食べてみたいなーと思いつつ、朝から並ぶ人たちを見ると並ぶ気力が失せるし、平日の学校帰りにはすでになくなる。
メモ用紙も添えられてあって開いてみると、お疲れ様、皆で食べてくださいと書いてあった。
「このお団子…ゴクリ…」
「って向こうは私たちのこと完全に把握してたみたいだね」
ももこはやれやれと頭を抱える
「どうして?」
「お茶は3つ、団子は6つ…偶然とは思えないな」
「確かに、くるってわかってたのか、それとも配達のところを見られてたのか…まあ後者よね」
「…これ変なもの入ってないよね?」
「ちょっと…やめてよ。考えないようにして食べようと思ってたのに…」
確かに目的も果たしたし、こんな怪しいものには手を付けずに、さっさと立ち去るのが賢明な判断と言えるだろう。
それでも、目の前にあるのは前々から食べてみたいと思っていた有名店の団子。
謎の人物についてはまだ全然わからないけど、少なくとも悪い人ではないと思う。
眺めていたら徐々に思考は欲に傾く。
「じゃあ…あんまり遅くなると夜ごはん食べられなくなっちゃうし、食べちゃおうよ」
「そうね、レナも歩きっぱなしで疲れたし!」
「ははは、じゃあいただきます」
私たちはベンチに座って、団子を広げることにした。
出来立てを提供する店ではあるが、買ってから時間がたっているためか、生暖かい。
それでも程よい硬さの団子に甘い味付けの濃厚なしょうゆが口いっぱいに広がる。
さすがは有名店これはなかなかの絶品だった。
「これ、すごいおいしいわね!」
「うん……これなら朝並んで買う理由もうなずけるな」
朝に存在した緊張感はいったい何処へいったのか2人は談笑をしながらあっという間に団子を平らげる。
かえでも夕日によってその雰囲気を変えたきれいな公園を見て、その優しい風に身を震わせながら団子に舌鼓をうつ。
最後の最後まで謎ではあったけれど、それでもこんな形で終わってよかった。
昨日から緊張しっぱなしだった肩がようやく降りて、眠気というわかりやすい形でかえでをおそう。
眠くならないように、2人の談笑に参加しながら帰路に付く。
「結局…きちんとお礼、言えなかったなぁ…」
☆
「ふうー…支払いの完了を確認しました。またご利用くださいねっと」
静まり返った夜の公園にパーカーを羽織った男が姿を現す。
入り口から3番目のベンチに置いてあった、台車に近づき、一緒にたたんでおいてある段ボールを見てつぶやく。
台車に張り付けてある小さな紙切れに気づき、摘まみ上げる。
可愛らしい字でありがとうございました。と書いてあった。
「別にお礼言われることはなにもしてねーけどな…ギブ&テイクだ」
頭を掻きながら勝手に切れ端に反応して、慣れた手つきで台車をかたずけ始める。
「さて…ここにきて1週間くらいか、活動しやすいように噂を広めたがあっという間に広がったな。
さすがは今ホットな神浜市。魔法少女の多さも1ってか」
2つの台車と空きの段ボールを抱えて、路肩に止まっているサイドカーに放り投げる。
バイクに寄りかかりポケットから茶色の小さい棒状のものを取り出す。葉巻だ。
左手でキャップが飛ばないように押さえつけながらフラットカッターで先端を切る。
ライターでゆっくりと周りをあぶっていき、白くなったところで道具をしまう。
「ふぅ……………これは、まだまだ慣れそうにねぇな」
訝しげに葉巻を眺めながら、スマホを片手にメモ帳を開く。
「この地に魔女が集結していることはほぼ確定。
そして原因は不明…キュウべえが言ってたことは本当だったのか、まああいつは聞けば答えてくれるからな……そして前に来た時よりも魔法少女に関しては知らない顔をかなり見かけるな…前回はほとんど顔を合せなかったという理由もあるが…」
その他魔法少女勢力や、魔女の活動場所、拠点にするのに最適な場所などをピックアップしていく。
白い煙を立ち昇らせながらそのフードに隠れた顔を月明かりが怪しく照らす。
「魔女、魔法少女の増加で思った以上に複雑に出来上がっているんだな…この神浜市は。
1週間、探りを入れて正解だったようだな。
やっぱりに彼女に接触するのが一番よさそうだ」
こちらとしてもむやみやたらと目立つつもりはさらさらない。
慎重に行動しなければあっという間に飲み込まれるだろう。
自由に行動してこそのこの商売だというのにそれでは意味がない。
それに、この町には別の町にない「なにか」がある。
それを解明していくうえでも顔を売りすぎて便利屋になり下がる事だけは避けるつもりだ。
それでいて知名度は稼ぐ、そうでなくてはここで自由にすら行動も
できないだろう。
だから、噂という形で広がるように仕向けた。
魔法少女という一般とは違う生活で身についた危機管理能力や状況を把握する
能力。それに年相応の好奇心。この2つがうまくマッチしてくれたおかげで、話題になりつつも持ち切りではなくなる。
おかげで滑り出しは順調といえるだろう。
「さて、彼女は元気でやっているだろうか?」
葉巻を片付けながら、さっきから震えっぱなしの電話を取り出す。
さすがにヘルメットをかぶりながらはできないので、それは置いておいて、エンジンをかけバンクにまたがり出発の準備をする
「もしもし?…ああ悪かったよ、出られなくて、少し考え事しててさ。……依頼か?もちろん構わねぇぞ。ここではグリーフシードがたくさん手に入りそうだ。」
続く言葉に彼は声をあげて笑いながら
「危険なのは重々承知の上だ。つうか、そんなのいまさらだろ、お得意様?……あーもう!わかったよ。
素直に受け取っておけばいいんだろ?心配させて悪いな」
サイドカーにある荷物を落ちないように固定して、軽くエンジンをふかす。
「んじゃ、後日また届けに行く。……お前本当に心配性だな。大丈夫だって、まかせておけよ。……ああじゃあな」
彼は電話を切り、ヘルメットをかぶって誰もいない静かな夜の街にバイクを走らせる。
信号に差し掛かり青に変わるのを待ちながらうっすら見える月を見る
「満月…か」
その大きな左手には彼の雰囲気に合わない大き目の指輪が付いていた。宝石が所々にはめ込まれたそれは、雲の切れ間から注がれる月明かりに照らされ、きれいに輝いて見えていた…
いかがだったでしょうか?
次回から本格的にみかづき荘のメンバーが活躍します!