「マギアレコード」 Pueri et puellae magicis 作:ゆっくりff
戦闘で描写しやすそうなキャラクターを選んでいます。
主人公が男性だよと謳っているくせに、まだ全然出てきませんが
もう少しですので…
~魔女の結界~
「これは…」
「平地が少ないわね、また珍しい魔女を引いたみたいね」
いろははあっけとられたように目の前の光景を眺めている。
やちよを平静を装ってはいるが、これから起こる戦い
のことを考えると、この地形はあまりいいとは言えない。
あたり一面には凹凸の激しい突起物が広がっていて、
デコボコしていて岩を連装させる。魔法少女の脚力
ならばこれだけデコボコしていれば登るのは
苦労しないだろう。
「すっげーなぁ…これぶっ壊したほうがいいじゃねーのか?」
「そうね、その隙があるのなら、それもよかったかも
しれないわね。」
頭に?を浮かべるフェリシラを他所に、やちよはあたりを
軽く見渡し、目を細める。
(いる…!)
姿を見ることができないが、魔女がすぐ近くにいることだけは
分かる。なぜと言われれば勘としか言いようがないのだが、
それでも7年の戦闘経験がさっきからうるさいくらいに
警告をしている。緊張でにじみ出る汗によって槍が滑らない
ように注意を払ってギュッと握りしめる。
やちよの抱いている危機感を感じ取ったのか、ほかの4人は
即座に背中合わせになり360度すべてを見渡せるように
警戒態勢に入る。
(どこ…あの影…?それともそっち?)
こう、障害物が多いとどこもかしこも怪しく見えてくる。
相手がどんな攻撃を行ってくるかわからない以上、
先制攻撃だけは譲りたくない。足並みをそろえて
ゆっくりと足を動かしていく。
「ッ!師匠!上!」
この静寂を破ったのは鶴乃の叫び声だった。全員が無警戒
だった上に存在する魔女に真っ先に反応して、手に持っている
扇に炎を宿してぶん投げる。意思を持っているように
周りながら上に佇んでいる魔女に攻撃を仕掛ける。
魔女はその攻撃を触手のようなもので弾き飛ばして
下に飛んで着地する。それなりに重量があるのだろうか、
着地した衝撃で足を取られる。
砂煙があたりを覆って、魔女の姿を覆い隠す。
「いろは!下がりなさい!」
「フェリシラちゃん!」
砂煙で前が見えない状態だが、魔女はお構いなしに攻撃を
仕掛けてきた。狙いは甘いが数が多い6本飛んできた。
そのうちの2本が運悪くこちらに猛スピードで向かってくる。
反応できないフェリシラをさなが守り、
防御性能のないいろはのため、やちよが槍で攻撃をいなす。
「重ッ!?」
遠目で判断していたため魔女の攻撃力を見誤っていた。
近くで見て初めて分かったが、この魔女体が岩のようなもので
出来ている。なるほど、それなら重いのがわかる。
相手が狙いを定めず行った攻撃だったので今回は何とか
逸らしきることに成功したが次はどうなるか…
隣をちらっと見てみると、さなは割と平気そうな顔をして
その触手を受け止めていた。さすが、盾を使ってるだけ
受け止める力…足腰や腕の力は私より高い。
「やちよさん!」
少し痺れた手を握ったりして状態を確認する。
大丈夫…すぐに良くなるだろう、それより…
「大丈夫よいろは、そんなことより目の前に集中しなさい
もうすぐ…ご対面よ」
晴れた煙の先には体調おおよそ6、7Mくらいの大きさで
8本の大きな触手をウネウネとうねらせ、
クラーケンを彷彿とさせるその姿は体中が岩石の
ようなもので覆われていた。その触手が近くの
突起物をまるで見せつけるかのように振り下ろす。
足場や盾にできるかなと考えていたその突起物が
あっさりと壊されて、自分の考えが浅はかだったと
思い知らされる。
「いきます!」
先制攻撃をとられたが気を取り直して、まずは様子見。
魔力で作られた矢を続けざまに発射する。
「深入りはだめよ、まずは相手を見極めて」
「ふふーん、まっかせて!」
やちよと鶴乃もいろはの射撃に合わせて、
遅れてフェリシラも突撃を開始する。
敵の刺突をよけて槍を一突き。鈍い音
とともに軽く火花が飛び散り攻撃がはじかれる。
「硬いわね…」
まあ、予想通り。この岩石は防御にも攻撃にも使える
ということだ。しかし、こちらとて対抗手段がないわけ
ではない。
「おらあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
遅れて突撃したフェリシラがやちよに攻撃するため
に伸ばしてきた触手をハンマーでたたきつける。
様子見だというのに、大ジャンプからの急降下。
まさに必殺の一撃と言えるような強烈な一撃。
「--------------」
まるで怒ったような声をあげてフェリシラに複数の
触手を放つ。フェリシラは回避するそぶりを見せず
真っ向から触手に立ち向かう。右、左、右、左…
ハンマーをめちゃくちゃに振り回しながら、
逸らすのではなく力で押し返す。
「よっ…ほっ」
鶴乃は私同様攻撃が決定打にならないようで
回避に専念している。トレードマークの扇は
敵の弱点を探るかのように器用に宙を舞っていた。
火花を散らしながら燃え上がった扇が敵の四肢を襲う。
しかしやはり決定打にはならない、硬い岩石に阻まれて
大したダメージになっていない。
「いろはさん!」
「うん!合わせるよ」
左手のクロスボウから光の矢が発射され、
さなの持つ盾が両扉のように開いて虚空から錨のようなものが
勢いよく飛び出す。いろは達に伸びていた触手は
錨にぶつかり、止まったところに矢が直撃する。
先ほどは突撃をしていて確認をする暇がなかったが
物理攻撃が利きにくい以上次に思いつく有効手段は
魔法による攻撃、つまりいろはの矢だ。
彼女の矢は100%魔法によって構成されたもの、それゆえに
効果のない敵は存在しない。今現状部位を気にせず有効打
を与えられるため、こちらの切り札と言えるだろう。
しかしもちろん弱点もある。連射が利かないことだ。
撃つたびに2秒ほどのチャージが必要となる。
(これなら…倒しきれるかしら?)
威力は確かに強いが避けられないわけではない。
いろはが攻撃に集中できるように陣形を整えれば
倒すのにさほど苦労しないだろう。
そう…1体だけならば。
「わあああぁぁぁぁぁ!?」
「つるッ!」
鶴乃と言い終わる前に、弾丸のごとく飛んできた鶴乃の体を
全身で受け止めてしまいやちよと一緒にもつれるように転がる。
「うっ…クッ…」
意識は…失っていない私は早急に状況を確認する。
自分の体は、大丈夫痛みはするけど怪我はしてない。
「鶴乃起きなさい!大丈夫?」
「痛たた…だ、だいじょうぶ…だよ。」
ソウルジェムの魔力を使用して鶴乃の傷は即座に回復する。
しかし回復量と比例してソウルジェムには穢れがたまる。
おそらく不意打ちだったのか、攻撃をまともに食らった
鶴乃のソウルジェムは予期せぬ穢れに汚染されていた。
「はぁ…はぁ…よし!」
ゆっくりと起き上がって、頬を両手でたたいて
意識を覚醒させ、地面に落下していた扇を手元に呼ぶ。
「師匠…」
「わかっているわ。姿が見えなくて油断していたけれど、
一番最初に言ってたわね。…今回の敵は2体って」
ほかの3人は必死でクラーケンを止めてくれている。
チラッと確認してみると、フェリシラが猛攻を
仕掛けることで敵の触手の攻撃の大半を
フェリシラがひきつけ残りをさなが抑えつつ、
いろはは牽制に専念することでフェリシラの
生存率を上げている。時間稼ぎには
有効な戦術といえるだろう。さすがはいろは、
だいぶ戦いにも慣れてきたみたいだ。
これなら大丈夫だろうと私は目の前の敵に集中する。
「いつ見ても魔女の見た目になれそうもないわね…」
2体目は巨人だった。人体の2倍くらいあるその巨体
は神浜でよく見るうさぎのぬいぐるみとは違い、
細長い体に所どころ線が垂れている。
まるで切れたマリオネットを彷彿とさせる魔女だ。
カタカタと音を立てながら首を360度回転させ
こちらを見ながらけらけら笑っている。
「鶴乃…あなたはクラーケンのほうに行きなさい。」
私は腰を落として、周囲に水の玉を生成しながら
声だけで鶴乃に命令する。
「ちょ!?さすがに1人は危険だよ!」
当然といえば当然だが、鶴乃は反論してくる。
仲間思いの彼女がこのような戦術を認めるわけが
なかった。でもここは説得しなければならない。
「いい?鶴乃、こっちのパペットはともかく
あのクラーケンは強敵よ。それでも4人もいれば
倒しきれる強さだと、私は思っているわ。」
「で、でも3人でも何とかなってるんじゃ…」
「ええ、でも攻めに転じてない時点でいつかは崩れるわ
2,3で別れても、どっちも守りで手一杯になる…
それならば1人が1体を足止めしているうちに、
もう片方が仕留めきる。」
パペットの強さがわからない以上私が一番重要に
なってくるが、それなりに戦闘力に自信はある。
足止め程度造作もない。
「んんん~~~~…分かった、よ。
でも絶対持ちこたえてよ?約束だからね!」
彼女はそう言って扇を握りしめて、クラーケンに
突撃していく、力になれなかったという
悔しさからなのか彼女の扇から炎があふれ出る。
「ふぅ・・・さて」
鶴乃が突撃したのを確認してから私は槍を
構えなおして魔法を発動する。体に巻き付くように
水が渦を巻く。凍てつく視線をパペットに向けると
槍を向けて静かにつぶやく
「鶴乃を痛みつけてくれたお礼はきっちり
させてもらうわよ…」
突きつけた槍を器用に回転させ、ゆっくりと
魔女に近づく。まるでそれに押されるかのように
パペット型の魔女は後ずさりをするが、それも一瞬
叫び声をあげて、体を振り回しながら、
やちよに遅いかかる。いくら怒っているとはいえ
感情に流されてはならない。
「はああっ!」
槍を握りしめて、やちよはパペットと一騎打ち
を始める。
~sideいろは~
フェリシラちゃんの猛攻によって8本あった触手のうち
3本を文字通り力任せでむしり取った。
潰したが正しいけど、ちょっと言葉には
表したくないから…
「いろはさん、こっちは少し余裕出てきました」
「うん、でもまだ油断しちゃダメだよ」
さなちゃんの言いたいことはわかる。やちよさんの
援護に回ったほうがいいという提案だろう。
でも私は横目でやちよさんを確認して
まだ行かなくてもいいって判断をした。
「やちよさんならまだ大丈夫だよ。それより早く
クラーケンを倒さないとッ!」
飛んできた触手をしゃがんで回避する。
少し休んでいたフェリシラがまた猛攻を開始
したので、私はやちよさんの様子を確認する。
パペットの軌道の読めない攻撃にやちよさんは
多少苦戦しつつも、水を使い強引に攻め立てる。
やちよさんはレナちゃんとは違い、水の力を
付与するだけでなく水そのものを使い、
場をかき乱す力を持っている。
「や、やちよさん!」
やちよさんに直撃するはずだった振り下ろしは
槍を突き刺して軌道をそらしつつ、
大量の流水をぶつけることによって回避しきる。
態勢の崩れたパペットに魔力を込めた重い一撃を
お見舞いする。闇雲に振るった巨大な手が
やちよさんをとらえて、バックステップで
一旦距離をとる。地面をこすりながら速度を落とし、
完全に止まったところで跳躍、水で刃を生成し
一斉に掃射して敵の行動を阻害。
そのまま重量に従い落下、槍はパペットに
深々と突き刺さる。
「さすが…」
相変わらずやちよさんの行動は私たちの中で
頭1つ抜けて高い。
敵の攻撃現在の攻撃、次の行動を予測し、
未来予知をしているのではないかと、
疑いたくなるほどの把握能力で、
最適な行動をとる。7年という長い年月を
掛けて磨き続けてきた魔法も相まって
凶悪な戦闘能力を誇る。
(やちよさんはパペットを抑えきれてるし、
クラーケンの方もあと触手は残り4本…)
浮かれるわけではないが、それでも戦況は
有利の方向に向かっているのは確か。
このまま攻めきれれば倒しきることが
出来る。そう楽観視していたのがまだまだ
いろはの未熟なところだろう。
この有利な戦況が絶妙なバランスのおかげ
で成り立っていると、見抜くことが
出来なかった。そう、それ故に少しでも
バランスが崩れれば崩壊するのは
あっという間。フェリシアが
防ぎきれなかった触手をさなが
防御しようといろはの前に立つ。
側に落ちてある消えていない触手の
残骸を見落として…
「きゃああ!?」
そう、普通魔女の欠損箇所は基本的に
治らないし、こうして残っていることもない。
たまにそういった回復に長けた魔女もいるが、
会うのはまれだ。この魔女が回復に長けた
魔女でないとするなら欠損箇所が残っている
理由はただ一つ攻撃手段としてだ。
さなの近くで膨張して触手ははじけ飛び、
残骸と爆風が彼女を襲う。
「さなちゃん!くぅうう!」
当然さなが防御しようとしていた触手は
容赦なくいろはを襲う。なんとか
左手のクロスボウを盾にして防ぎ切ったが、
それも長くはもたない。今の一撃で
左手がしびれてしまったのだ。
「いろは!」
「フェリシア!前前!」
鶴乃の警告むなしく、一瞬気を取られた
フェリシアは薙ぎ払いをもろに受け宙を舞う。
いち早く状況を察知した鶴乃が扇を使って
けん制しつつ、フェリシアを救出する。
「いろは!いったん下がって!」
「は、はい」
鶴乃も戦闘経験で言えばやちよには
劣るものの、かなり積んできている。
普段は元気を持て余したお転婆少女
ではあるが、いざ真面目に戦闘をする
となると、状況を瞬時に把握し、
動揺することなく、自分のこなすべき
事をこなす。
「二人ともまだ動ける?」
「私は大丈夫です。」
「す、すみませんもう少し…」
いろははクロスボウで防いだので、
ダメージはない。ただ盾の裏から不意打ち
されたさなはまだ痛むのか
体を強張らせている。撤退にすら
支障が出るというのだから相当の
ダメージをもらっているはずだ。
「そっか…なら私に任せて」
「な、なにいってるんですか?」
なにかを決意したかのように、扇を
握りしめて立ち上がる鶴乃。
何をするかなんてそんなの物
分かり切っているが聞かずにはいられない
「どう考えても人数不足に力不足、
ここは一度撤退するしかないよ。」
「それについては私も否定はしません。
問題は…」
「いろはちゃん」
鶴乃は肩にポンと手を置いて勇気付ける
ように笑顔を向ける。
「多少強くないと殿は務まらないよ。
それにいろはちゃんには傷ついた仲間を
癒すっていう大切な役割があるんだから」
言ってることは正しいだが、これは理屈で
説明できるものではない。鶴乃がこっちを
押さえるならパペットを抑えるのは誰か?
そんなもの決まっている
『そういうこと、いろは貴方たちだけでも
ここから逃げなさい。できれば援軍を
呼んでもらえるとより助かるわね』
届くはずのない声がいろはに届く。
魔法少女が使えるテレパシーだ。
やちよさんはいまパペットを抑えている。
普通の声は届かない。
「そんな・・・・・・」
鶴乃もすでに攻撃を再開、
負傷したフェリシアとさなを前に、
いろはは茫然としていた。
結果は分かり切っている、生存は絶望的。
そんなもの彼女たちも分かっているはずだ
分かっていて、残った。
死をも覚悟して私たちを逃してくれたのだ。
だれか・・・だれでもいい・・・
「誰か・・・たすけて・・・」
祈りが届いたのか分からない。
タイミングを見ていたのか分からない。
ただ一つ言えることがあるとすれば
その人のおかげで、いろはは大切な
仲間を失わずに済んだという事だけだ。
攻撃をかわし切れなかった鶴乃を
救ったのは1本の矢だ。鶴乃に攻撃
しようとしていた触手はその1本の矢を
受けたあと何かが裂けるような音とともに
キレイな断面をのこして斬れた。
魔女の上げる悲鳴をよそにいろはは
矢の向きからは放った位置を予想して
振り返る。とある高台にたたずんていたのは
黒いパーカーに大きな矢筒を背負った
少年…そうあの噂男性に
そっくりな男性だった。
いよいよ主人公の登場です。
世界観をぶち壊さないように注意しながら
いろは達とかかわらせていきたいと思っています。
感想評価等、していただけると嬉しいです。