「マギアレコード」 Pueri et puellae magicis   作:ゆっくりff

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カズキ1

~裏路地~

 

秋の心地の良い夜風に身をゆだねながら

私たちはブロック塀に背中を預け腰を

下ろしている。手に入れたグリーフシード

を使いまわして、穢れを払い付近を少し

捜索して魔女、使い魔がほかにいないかを

確認。今しがたそれを終えて休憩を初めて

いたところだ。さすがにこのまま家に

帰ろうと思うほど元気は残っていない。

 

「ふう…」

 

スカートに汚れがついてしまうが、正直

今はそれもどうでもいい。今は早く座って

ゆっくりしたかった。眠気も襲ってきたが

さすがにこんな所で寝るわけにもいかない

 

「お疲れ様。コーヒー…飲めるか?」

 

一息ついたところでカズキさんが

人数分缶コーヒーを持って来てくれた。

温かく甘いコーヒーが疲れた体を

癒すような感覚を覚える。

 

「ふぅ…ありがとうございます」

 

「気にすんな」

 

そういってカズキさんも私の隣に座り

缶コーヒーを一息に飲み干す。

 

「ふう~、やっぱ体を動かした後は

甘いもんが欲しくなるな」

 

「あの…さっきの3、7、2、7って

波状攻撃の間隔で合ってますよね?

やちよさんとカズキさんと交互って

感じで」

 

それを聞いたカズキさんは驚いた顔

をして私を見た後、かみしめるように

笑い始めた。

 

「ちょ、ちょっと!どうして

笑うんですか!?」

 

「はははっ……ははは、いやー悪いね

もっと別のことを聞いてくるかと思った

んだが、まさか開口一番の質問が

それだとはね。まあ、お察しの通りだ

少ない秒数が俺、7秒がやちよの秒数だ」

 

そういっていまだに苦笑しているカズキ

さんは教えてくれた。

 

「別のことも聞きたいですけど…

それは後でもいいかなって思って」

 

いろはの目線にはもたれ掛かるように

して目を閉じている3人とそれを

介抱するやちよの姿があった。

 

「私だけ聞いても後でしっかり

伝えられる自信はないですし、

それに多分皆知りたがってるはずです

から先に聞くのはアンフェアかなって」

 

「そうか、ずいぶんと真面目というか

もうちょっと欲望に忠実になっても

いいと思うがな」

 

コンッコンッとリズムカルに缶で地面を

叩いて私の話に耳を傾けるカズキさん

こちらの視線には気が付かず、

夜空で一際目立つ月をぼーっと見ている

そんなカズキさんを改めて眺めてみる

 

黒いパーカーと、ひしゃげた弓に

中身が空っぽの矢筒、先ほどまでは

パーカーは開けていたため、ベルトに

備え付けられていたシースベルトを

見ることができた。刃渡りに大きそうな

ナイフを3本ほど所持していた気がする

まあ、今はチャックは閉めているため

確認はできないけれど…

男性にしては長いに分類するので

あろうか長髪の黒髪、細目が特徴の

若い男性…正直何歳か読めないけれど

やちよさんが君付けで呼んでいたため

やちよさんよりは年下なのかもしれない

下にはジーパンをはいていて、所々白い

く汚れが目立つ。

 

「…何か俺の顔についているか?」

 

じっと眺めているとどうやらカズキさん

に気づかれてしまったようだ。

 

「い、いえ!なんでもありません」

 

「?そうか、じゃあ俺はそろそろ戻る

とするかな」

 

「カズキ君、どうせなら私たちの家に

来ない?この子たちもあなたのことが

気になって今夜は眠れないと思うわ」

 

寝息を立てているフェリシア達をよそに

やちよさんが声をかけてきた。

知らない男性をいきなり家に入れるのは

私からしたら少し怖さもあるけれど、

やちよさんの知り合いみたいだし、

何よりあの家の家主はやちよさん。

さすがにそれに口出しするつもりはない

 

「え?いや、正直ありがたいがいいのか

そこで寝てるやつらに聞かなくて?」

 

「うーん…一緒に住んでいる以上一言

有ってもいいと思うけれど、私の家だし」

 

大丈夫じゃない?とやちよは微笑みながら

首をかしげる。

 

「良くはないと思うが…まあ、いいか」

 

 

~道中sideいろは~

 

 

一旦休憩をはさんで私たち6人は

みかづき荘を目指して歩いている。

今日は皆で買い物をした帰りだったため

戦闘後の疲れた体で、大きな荷物を

持ち運ばなければならなかった。

 

「すみませんカズキさん、荷物たくさん

持ってもらっちゃって…」

 

「なに、気にすんな。少しばかし厄介に

なるわけだからな。」

 

もっとも、こうしてカズキさんが重そう

な荷物を引き受けてくれたため、

そんなに重いとは感じていない。

現在状況を説明してくれるということで

やちよさんたちがフェリシアちゃんたち

と一緒に先を歩いていて、その後方に

私とカズキさんがいる状態。

 

「あの…カズキさんってやちよさんと

長いんですか?」

 

「ん?後でまとめて聞くんじゃなかった

のか?」

 

「あ、……そうですね、すみません」

 

そういうと彼は肩を竦めて

苦笑を浮かべる

 

「もうちょっと欲望に素直になれって

言っただろ?ちょっと意地悪しただけだ」

 

「え?もう…」

 

「はははっ悪かったな。えーとそれで

やちよとは…もう7年になるな」

 

7年といえば…

 

「やちよさんが魔法少女をやってきた

年月と一緒?」

 

「正解、あいつが魔法少女として活動を

始めたときに出会った。それから定期的

に連絡をして、共闘したりしてた。」

 

「でも…私もやちよさんと会ってもう

結構…と言っても1年は立ってない

ですけど長くチーム組んでますけど…」

 

彼女からそういう人物がいるという話は

一度たりとも聞かなかった。

 

「正直に言えば俺は近いうちあいつは

死ぬと思っていた」

 

「え?」

 

そういうとカズキさんは先に歩いている

やちよさんを見つめる。その目は

先ほどまで浮かべていた優しい

目つきから一転。判断しにくい表情

を浮かべていた。黒髪に紛れて

はっきりと見えない横顔には

目を細めて、前を歩くやちよさんに

向けられていた。

 

「あいつの過去は?」

 

「そういわれて、思い当たる節は

いくつかあります…」

 

「そうか、もう話していたんだな。

じゃあわかるだろ?あいつは一度チーム

メンバーを失った。」

 

そう、やちよさんは高校生の頃

組んでいたチームメンバーの内2人を

失ってしまったのだ。その時にこの世界

の魔法少女が背負っている運命と、

人とは違う、魔法少女の仕組みについて

完全に理解してしまったのだ。

 

「その後あいつはおそらくあんたたちと

合うまでの間ずっと1人で戦い続けて

きた。いや、孤独というほうが正しいな。

誰の助けも受け付けないで、文字通り

1人で…この世界はそんな戦い方で

生き残れるほど甘くない。」

 

そういってカズキさんは私にすまんな

と言って葉巻を取り出した。

手早く火をつけると一呼吸おいて

話を続けてくれた

 

「武器の手入れ?誰かと戦闘の練習?

そんなものでもいい。この世界は

1人で生きて行くことはできない。

だからやちよは近い内に死ぬと

思っていた。でも…あいつはいい仲間

に巡り会えたようだな」

 

カズキさんは私を見据える

 

「はい、私がやちよさんの助けに

なれるかなんてわかんないですけど…

それでも、私はやちよさんの支えに

少しでもなればいいなって」

 

「なれたらいいじゃないさ。

もうなってるんだよ。あいつが今も

ああやって生きているのが証拠だ」

 

私は当時のことは話で聞いただけなので

カズキさんとやちよさんの間に何が

あったのかは、分からない。

でも先ほどのカズキさんの目、諦めた

かのような、濁った目。

彼は本当に、やちよさんが死ぬと思って

いたのだろうか。

 

「人1人ができることは少ない。

だから出来ないことをそれぞれ

チームメンバーで補うことで、

魔法少女たちはこの穢れた世界で

理不尽な世の中で、戦い続けることが

できる。」

 

そういう意味ではこのチームは最高の

チームと呼ぶのにふさわしい。と彼は

言ってくれる。

 

「お互いがお互いを補い合い、自身の

役割を完璧に把握している。

そして何より、強敵との闘いで培われた

経験値は精神的、物理的に君たちを

より強固に結びつけてくれる。」

 

「私たちの事…知っているんですか?」

 

まるで見てきたかのようなそのセリフに

私は困惑する。白い煙が夜空を彷徨い

虚空に消える。彼は苦笑しながら

まさか、と笑う

 

「俺があんた達を知ったのは今日が

初めてだ。でもあれだけ見事な戦いを

見ればよく分かる。」

 

「そういうものなんですね…

あ、見えてきました。あれが私たちの

御家みかづき荘です。あ、でも初めて

じゃないんですよね?」

 

「いや、やちよの家に来るのは初めてだ

基本的に彼女とは外で会っていたから

しかし、大きな家だな」

 

私たちだけが済むには少しばかり大きい

この家には今現在5人の魔法少女が

住んでいる。正確には鶴野は実家暮らし

のため、寝泊りしているのは4人だが

毎日のように来ているため、彼女も

ここを第2の家とみているようだ。

 

玄関の前には先を歩いていたやちよさん

達が私たちを待っていた。

 

 

~みかづき荘リビングsideいろは~

 

「たっだいま~!」

 

「こら!鶴野。ソファーにダイブする

前に荷物分けるのを手伝いなさい。

フェリシアも!」

 

「え~魔女相手に疲れた~」

 

鶴野たちが初めにだらけて、あとの

私たちが荷物を分ける。みかづき荘で

よく見る光景。日常というものだ。

 

「今日…これが見られなくなる可能性が

あったんですね。」

 

「うん、でも仕方ないことだよ。

私たちは戦い続けなくちゃいけないから

でも、よかったよ」

 

魔女との闘いは私たちにとって当たり前

だけれど、さすがに今回の戦いは

応えたようだ。皆疲労がたまっている。

それを見かねたカズキさんは

 

「やっぱり日を改めたほうが

いいじゃないか?皆疲れているだろ?」

 

「いーや!大丈夫だ!それより早く

教えろよ!」

 

「そうそう!師匠の昔馴染みなんでしょ

私も早く聞きたい!」

 

「…そんな楽しい話じゃないぞ?」

 

期待に胸をふくらませる鶴野達に若干の

困惑の表情をみせるカズキさん。

まあ、確かに楽しい話ではないと思う

けれど実は正直私も楽しみしている

だって…やちよさんがあれだけ信頼を

寄せている相手なのだから、どういった

人物なのか非常に興味がある。

 

「いろは~!こっち手伝ってちょうだい

多分長くなると思うからコーヒーでも

入れようと思って」

 

「あ、はーい」

 

 

 

 

チームの記念に皆で買いそろえた

マグカップに温かいコーヒーを入れて

配る。カズキさんには前まで使っていた

コップでコーヒーを渡す。

 

「わざわざすまんな」

 

息を吹きかけて適度に冷ましてから

味わうように飲み込む。

 

「うん悪くない。いいコーヒーだな。

…さて、とりあえず、何から話せばいい

んだ?正直こっちとしてはあまり言う

事はないから質問に答える形でいこうと

思う」

 

その言葉に私たち4人はうーんと唸る

これはあれだ。聞きたいことが

たくさんあるのにどれから聞けばいいか

分からないやつだ。

 

「じゃあ…私からいいですか?」

 

そう、おずおずと手を挙げたのは、

意外にもさなだった。引っ込み思案で

こういう時あまり前に出ない子だった

けれど…変われるものだと感心する

 

「その…あなたの正体は何ですか?

魔法少女、だと変ですけれど…

魔法少女なんですか?」

 

「まあ、最初の質問にしちゃ妥当な所

だろうな。俺が答える答えはNOだ」

「ここにいる全員魔法少女のシステムに

ついては周知のことなのだろう?」

 

「ええ、すでにみんなが知っているわ

知っていて、乗り越えている。」

 

「そうか…本当最近の魔法少女は強いな

ひと昔前はこの話を聞いた後の大惨事は

日常だったのに」

「っと、話が脱線した。すまんそれでだ

魔法少女は『いずれ魔女となる少女』と

言う意味でキュウベイが付けた名だ。

俺は少女でもないし、君たちには悪いが

いずれ魔女にもなることはない…と思う

だから俺は魔法少女ではない」

 

ソウルジェム…それは魔法少女の魂

そのもの。命の具現化。魔法少女にとって

肉体は魂で動かす道具に過ぎない。

ソウルジェムさえ無事ならば道具(肉体)がいくら

傷つこうが、壊れようが修復が可能。

しかし、ソウルジェムが壊れれば…?

それは死を意味する。

 

そしてソウルジェムには穢れがたまる。

負の感情に汚染された時、道具(肉体)を動かす時

魔法を使ったとき、その力を使った代償は

魂で支払わなければならない。

そして…穢れがたまりきったとき

そのソウルジェムは開花(魔女化)することとなる。

人々を襲う怪物として願いの代償を

支払うのだ。最もキュウベイ自身の目標

は魔女になった際のエネルギー吸収が

目的で、魔女になった時点で代償は

支払ったということになるけれど…

 

「俺にソウルジェムはないからな。

だから魔法少女ではない。」

 

「そうなんですね…でもならどうして

魔法を使っていたんですか?

魔法…ですよね?」

 

さなの疑問は最もだ。彼は何度も何度も

人知を超えた、魔法少女にとっては常識な

魔法を使っていた。つまり彼には何等かの力

を持っているはずだ。

 

「そうだなまずは…」

 

「なぁ、そんなことより先にお前のこと

なんていえばいいんだ?」

 

カズキが話を切り出す前にフェリシアが

名前を聞く。年上だというのに

なんというか聞き方に遠慮がない。

 

「あれ?名前知らなかったか?でも

いろはは言っていたはずだが…」

 

「えっと、あれ?やちよさん皆さんに

言ってなかったんでしたっけ?」

 

「言ってないわね。いろはがカズキ君の

名前言ってたからカズキ君が教えたのかと

思っていたわ。」

 

 

つまり、やちよはカズキがみんなに

教えたと、カズキはやちよが教えたと

思い込んでいていたようだ。

とはいえやちよがカズキと呼んでいた

のを聞いていた人は知っているはずだ

つまり気絶していたフェリシアと

さなは知らないというわけだ。

まあ、あの乱戦の中でそれを聞き分ける

というのも難しい話だ。鶴野も

覚えているか怪しい。

横目で見てみると下を出して笑っていた。

 

「そうか…じゃあ名乗らせてもらおうか」

 

と彼はコーヒーを一息で飲み干してから

 

「初めまして、だ。俺の名前はカズキ

グリ-フシードの販売、及び魔法少女同士

の争いなどの仲介を行っている。

よろしくな」

 

そういって彼はなんとも芝居がかった

仕草で深々とお辞儀をした

 




いかがだったでしょうか?説明はまだまだ続きます。
矛盾点とかでないように気を付けてはいますけれど
出るときは出てしまうので、そうなってしまったら
指摘とかくれるとありがたいです
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