第1話
ーーここは何処だ?
意識が奥から引っ張り出されるようにして目が覚めて出た、最初の感想がこれだ。
そんな感想が出るのも無理はないと思う。
だって目の前には暗闇が広がっているのだから。上か下か、浮いているのか落ちているかも分からない。
とりあえず体を動かそうとするが、まるで金縛りにあったかの様に指先1つ動かすことが出来ない。
何故自分がこんな所に居るのかを思い出してみるも、上手く思い出せない。……だんだん不安になって来た。声を出そうとしても何故だか上手く声が出せないし、いつまで経っても明るくなる気配がない。このまま自分は死ぬのだろうか…。
すると突然、なんの前触れもなく光が差し込んで来た。目が焼けるかと思う位に強い光が広がっていき、光に呑み込まれそうになる。
呑み込まれそうになる瞬間に、思い出した。
全部ではないが、思い出した。
自分の名前も、性別も、年齢も、家族も、
そして…
俺の名前は
ーーああ、思い出せるさ
一面が赤く染まり、俺はーー
そこで俺の意識は光に呑み込まれた。
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ふと、目に光が入り込んで目が覚めた。
目を開けると眼前に広がるのは暗闇なんかではなく、鮮やかな紅葉にまみれた木と、木に少し隠れて見え辛いが青い空が見えた。
少し冷たい風が吹き、季節は秋頃だと感じる。
指先に力を入れてみる。今度はしっかりと動いた。そのまま手を開いたり閉じたりして、両手両足に力を込めて立ち上がる。そのまま体に異常が無いかを確認する為に、肩を回したり、屈伸をしたりした。
「…何処にも異常は無さそうだな」
そう声に出た。急に声が出たから少しだけ驚いた…まあさっきまで声も出ていなかったから仕方ない。
次は服装を確認した。
黒のブレザーを着ていて、中には白のポロシャツを着ている。
ズボンは黒を基調とした赤と白のチェック柄である。…まあ世間で言う制服だ。ネクタイはしておらず、黒色のレザーベルトを付けている。
服装の確認を終えた後に、周りを見渡す。
やはり木ばっかりで他は何も見当たらない。
ここはどこなんだ?
とりあえず当てもなく歩く。地面には落ち葉や紅葉の葉が落ちており、見事な色合いになってまるで天然の絨毯みたいだ。そんなどうでもいいことを思いながら歩きながら今後の事や俺自身について考える。
まず俺のことについてだ。
確かに俺は死んだはずだ。それは確かだ。それなのに今このように考えることが出来たり、歩いたりすることが出来る。そして体のどこにも異常がある訳でもない。…考えても何も分からないため、ひとまずはこのくらいにしておいて今後について考えよう。
次に今後の事についてだ。
この場所がどこなのか、どうしてこのような場所にいるのかなど確認したい事が山ほどあるので、ひとまず人を探して情報を集めることが必要だと思う。この近くに町などがあればいいのだが、土地勘が全くなく、どの方向に行けば良いのかも分からず、歩くしかない。川などがあればそれを辿って行けば何か見つかるのではと思い、とりあえず川を探そうと決めた。
しばらく歩いているうちに日が暮れて来た。
かなり歩いたはずなのだが、何も見つからない。
何か分かった事と言えば、ここが山の中という事ぐらいか。
食べ物も探していたが、木の実すら全く見当たらなかった。このままだと餓死確定なので、何か食えるものが欲しい。
だが今日はもう日が暮れて来たので、寝れる所を探す。
すると、ちょうど良いくらいな大きさの洞窟というかスペースがあったので、そこを寝床に決めた。灯りが欲しいのだが、火が無いし試しに火をつけようと試みてみたがうまくいかずに、諦めて仕方なく寝ることにした。
こうしてよく分からない場所での1日目が終わった。
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2日目になって昼頃くらいか。
俺は全力で背後から迫ってくるモノから逃げていた。
10分前くらいか。
今日も歩いても歩いても紅葉の木しかなく、そろそろお腹と背中がくっついて気力と体力が風前の灯になった時、紅葉の葉を踏む音が聞こえた。人かと思い振り向いたら、そこには化け物がいた。
頭には鋭いツノが生えていて、顔が牛っぽく、体が虎とライオンを足して2で割ったような、なんとも形容しがたい四足歩行の化け物がいた。
「……」
「……」
そして5秒程見つめあって突然化け物が叫んだ後、こちらに向かって走って来た。
俺は思考を無理矢理再開させて、消えかけのロウソクみたいだった気力と体力を奮い立たせて全力で逃げた。
そして現在、俺は山の中を駆けている。
すぐに追いつかれると思ったのだが、俺は木と木の間を縫うように走って、化け物は邪魔な木を薙ぎ倒して迫ってくる。化け物が木に当たると若干遅くなるので、俺と化け物の差が埋まらずに済んでいる。
しかし、それももう限界だ。
こちらの体力が持たないのだ。
元々お腹が空いて力が入らない状態なうえ、10分以上全力疾走で走っているのだからそろそろヤバくなって来た。
どうにかして逃げ切るか、あの化け物を殺さないと…
後者は武器も何も無い状態かつ木をあんな簡単に薙ぎ払っていく化け物をどうやって殺せというのだろう。現実的に考えて不可能だ。
かといって前者も体力的に走れるのは、もって2〜3分なのでこちらも厳しい。
そうこうしてるうちに、木が少ない場所まで来てしまいだんだんと差が縮まってくる。しかし、目の前にかなり大きな岩ーーおそらく四方10メートルぐらいの岩ーーが進路を塞いでいる。
もうダメかと思ったが、不意に思いついた。
俺はそのまま岩に向かって走る。化け物も岩と挟み撃ちが出来ると思ったのか、速度を上げて俺に突進してくる。
化け物との距離が近くなる。
そのままぶつかると思った直前に、俺は横に思いっきり飛んだ。
化け物は止まることが出来ずに、そのまま岩に直撃した。
俺は飛んだ先が紅葉の上だったおかげでほぼ無傷だったが、あの化け物はどうなっただろう。
雷が落ちたかと思うぐらい派手な音を立ててぶつかったので、頭が潰れてくれていたら良いのだけど…
改めて化け物と岩を見てみると、化け物はまだまだ元気そうだった。しかし、岩に直撃した際にツノが岩に突き刺って身動きが取れない状態となっていた。
俺は何かトドメが刺さるものを探した。
ここで殺しておけば食料が手に入るからである。
…これを食うには抵抗があるが、見た目牛っぽいし、ぶっちゃけお腹が空いているので腹に入れば何でもいい。
その時、手に何かを握る感触があった。
ふと手を見てみると、そこには刃渡り15センチ程のナイフがあった。
びっくりした。
急に手にナイフがあれば、誰でも驚くだろう。
でも、今はちょうど良い。
よりにもよってなぜナイフかは知らないが、これでトドメをさせる上に解体することも出来る。まさに都合が良い。
化け物も暴れ始めたので、とりあえず首の辺りを思いっきり切った。
化け物の首から勢いよく血が噴き出る。
噴水のように血が出て、辺り一帯が鉄の錆びた匂いで満たされる。
化け物は狂ったように岩にツノが刺さったまま暴れていたが、やがて大人しくなり、そのまま体を地面に叩きつけて、2度3度体を痙攣させて、死んだ。
体が脱力し、その場に座り込んだ。
疲れもあるし、何よりお腹が減りすぎて力が入らないのである。
ふと、手の中にある血だらけのナイフを眺めた。
一体どうやってこのナイフは手の中に現れたんだ?
この化け物は一体なんなんだ?
そして、ここはどこなんだ?
俺がいた場所ではこんな化け物は本の中にしかいないと思っていた。
だが、目の前の化け物は現実に存在している。
こんなモノがいる場所なんてあったのか?
…考える事が多過ぎる。今日1日で様々な事がありすぎて頭がパンクしそうだ。とりあえず、周りを見渡し少しこのまま放置しても多分問題ないことを確認して今日の寝床を探すためにその場を後にした。
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俺は今、川の近くにあった小さな洞穴でさっきの化け物を焼いて食べている。偶然にも化け物を殺した所からさほど離れていない場所に小さな川が流れていた。しかも、その近くに雨風が凌げる場所があったので、相当俺は幸運の持ち主なのだろう。火も昨日起こせなかったのに、今日は起こせたのだから昨日までの運の悪さがチャラになった。
川にたどり着いて、肉を洗い、血で汚れてしまったブレザーも洗い、俺自身も水で体を洗った。まあそんなこんなで肉も焼けて水もあるし、久しぶりに落ち着けたと思う。
焼き上がった肉を食べてみると、中々美味しかった。
あの見た目だからゲテモノ覚悟で食ったら意外にも、鶏肉のような味がした。ますますあの化け物の事が分からなくなった。
だが、肉を食べていたら急に体に異変が起きた。
(なんで鶏肉に近い味がするんだ?って体が熱く…!?)
体全体が燃え上がるように熱くなり、体の中で
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……一体どのくらい時間が経ったのだろう。
1分かもしれないし1時間かもしれない。
当本人からすれば、無限にも感じたあのおぞましい感覚。
やがてその感覚が消え去り、何事も無かったかの様に体は正常を取り戻した。
俺は見れる範囲で急いで体を見た。
そしたら驚く事に、怪我をした部分が綺麗さっぱり治っているのだ。
木の枝の切り傷も、トゲが刺さった様な傷も、全部消えるように治っているのだ。
「………どうなってんだ、本当に」
この日から
半分が人間
半分が
『半人半妖』となった。
どうも皆様はじめまして。
カマンベールチーズというものです。
初めて投稿させて頂きますので、誤字・脱字等があると思われます。
それ以外でも構いませんので、何かあればコメントして頂きたいと思います。
何卒よろしくお願い申し上げます。
※追記・修正いたしました。
物語に問題は無いと思われる範囲での修正なので、安心してご覧ください。