三十路ニートエリーチカの居酒屋飲み歩き日記   作:おうかわりん
<< 前の話 次の話 >>

102 / 108
鹿角理亞ルート 27

 秋葉原というとオタクの街という報道をされるケースがあり、

 アニメ系ショップであったり、メイド喫茶であったり、

 一昔前にはスクールアイドルのPVが流れていたりなんかした。

 秋葉原を一言で言い表すのは難しいではあるんだけども、あえてそうしろと言われれば”ごちゃごちゃ”である。

 東京というのは古くは江戸幕府があり、多くの出稼ぎ労働者の集結地でもあり、今は日本の中心でもある。

 日本各地から訪れた人たちが様々な文化を忘れないでいるためであるのか、東京というのは基本的にまとまりがない。誰も彼も江戸っ子を名乗っていて東京で店を構えてれば江戸っ子みたいな雰囲気も昨今ではある様子だけれども、三代に渡って江戸(東京)において軒を連ねないと江戸っ子とは呼ばない、そう言うと大抵の友人は「え?」みたいな顔をする、同調してくれるのは穂乃果と海未だけ。

 そんな文化の流刑地であるのか、最先端と評するべきなのか、そんな東京は秋葉原に自社ビルを目の前に、見上げるだけで首が痛くなりそうな大きい建物を眺めながら、理亞ちゃんが「すごく……大きいです……」と言った、エロゲー会社の前でその発言は控えて貰いたい。

 

 ヒナプロジェクトの中はエロゲー会社というよりも、女子に大人気清潔なオフィス! とでも、意識が高そうな経済雑誌で取り扱われそうである、空気清浄機数台、柑橘系植物数本、床はピカピカ、受付のお姉さん数名。

 東京に寝台特急で初めて訪れた学生みたいなお上りさん全開の態度でキョロキョロと周囲を見回し、元ニートと現役アイドルの組み合わせではハードルが高すぎんよ! とヒナに心の中で文句を言い、ヒナが見栄を張って別の会社を紹介してじつはほくそ笑んでいる可能性も捨てきれず、内心ガクガク震えながら思い切って挨拶してみた。

 すると、あ! 桜井綾乃だ! すごい! そのまんまだ! との歓声が受付のお姉さん(私よりも年下)の間で響き、当然その流れで隣りにいた理亞ちゃんにも視線が集まった。

 当然ダイプリ(の次作)に登場する鹿角理亞をモデルにした少女は、ツン期が強いころの彼女を模されており、注目される私を眺めながら、いいなあ私も出演したいなあと子どもみたいな純粋無垢な目をこちらに向け、話しかけられるのをそわそわと待ち構えている彼女に向かって、その中でもリーダー格と思しき種田さんが理亞ちゃんに向かって「川澄詩衣」さんじゃないですよね? と声をかけた。

 公式プロフィールで159cm76cmな園田海未と160cm85cmな川澄詩衣を一緒にするのは多少無理があるけれど、確かに理亞ちゃんを外から少しだけ見ると大和撫子の雰囲気はある。凛としていて芯の強い海未と真面目だけどどちらかというと柳みたいなメンタルな理亞ちゃんはお互いに全然違いますよというではあるんだけれども、ダイプリ(の次作)に登場する鹿角理亞と言う少女はお姉さま大好きのドシスコン。何故原案に忠実にしてしまったのかヒナには今度問いかけておくことにする。

 

 その場においては鹿角理亞だと白状できなかった私たちは、種田さんの案内のもと開発室に向かう。私が桜井綾乃でいる以上、理亞ちゃんも何かしらモデルのキャラが居るんだろうなあみたいに思われているんだけども、ダイプリというエロゲーにあるまじき主人公にデレない不人気キャラと彼女を一緒にしてしまうと色々問題がある。

 もし仮に、ダイプリの新作が出るとして、彼女が現実の鹿角理亞と同じようにマイナーチェンジを重ねれば、ご都合主義乙、不人気のテコ入れ乙と揶揄されるに違いない。

 

「絵里さん絵里さん、いいかげん教えてくださいって」

「他言は無用ということでいいですか? 理亞ちゃんもいい?」

「……え?」

 

 種田さんに口封じをするのと同時に、理亞ちゃんにもちゃんと正体を暴露していいのか許可を聞く。基本的に仕事ができて優秀だという彼女には今の会話できれいな理亞ちゃんをモデルにしたキャラが、ダイプリ唯一の失敗と表現されることもある鹿目乃亜であることを察した。

 主人公に対して徹頭徹尾デレず、その上性格はツン要素がかなり強い、その上姉さまを取ろうとすれば邪魔もしてくるという、人気になる要素がまるでないキャラクターである。いちおうお姉さまとの3Pシーンもあったそうではあるけれど、あまりに不人気だったせいで没になった経緯から、彼女がどういう扱いを受けているのか察してもらいたい。

 

「鹿角理亞さん?」

「はい、鹿角理亞です」

「SaintSnowの妹さん?」

「そうです、私が妹です」

「主にラップ担当している?」

「ラップだけじゃないですよ!?」

 

 誰に対しても辛辣であった過去や、

 不器用だけども真っ直ぐだったせいで人からの評価が奈落の底だったことも手伝い、

 今のように周囲に合わせてにっこり愛想笑いもできる彼女が、CVあやせうさぎ(綾乃と二役)の不人気ヒロインと合致するまで種田さんの中でかなり時間がかかった。

 

「え……てことは? お姉さま大好きっていうのも創作なんですか?」

「あ、それはダイプリ通りです」

「絵里先輩がそれを答える必要はなかったんじゃないですか?」

 

 困っているふうであったのでついつい助け舟を出してしまったけど、

 どうやらその助け舟が泥舟だったらしい、見事なツッコミで沈んでいく船と私こと絢瀬絵里――ぶくぶく。



※この小説はログインせずに感想を書き込むことが可能です。ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。