アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

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改訂版 矢澤姉妹との飲み会編

 そろそろ三月の足音が聞こえそうか、

 などという二月は二週目。

 受験戦争を無事に通過できなかった子も、通過できた子も、

 どうか元気でいて欲しい、元気があれば何でもできる。

 何でもできれば道は開ける。

 

 ニコの妹であるここあちゃんからの誘いに応じ、

 矢澤にことの飲み会に赴く。

 まだまだ厚着の欠かせない季節であり、

 着ぶくれを重ねていると、高校時代のファッションリーダーはという評は、

 まるで見当違いな意見だったようにも思える。

 そんな要素は見る影もないと周囲の面々からは評判であるし、

 南ことりからは直接、センスが無いならマネだけしていれば良いのに――

 そんなお小言を頂くことがある。

 

 確かにファッションリーダーのマネをすればそれなりに見栄えのする姿に、

 というのは分かるものの、あえて自己主張を入れたいお年ごろ。

 そのあえてで評価を転落させてしまうのだから、

 素直に真似をしておけということりの評は何ら間違ってない、泣ける。

 

 UTXの芸能科は普通科と一線を画し、

 ありとあらゆる華やかな才能を持った人間の集結地、

 だと私は思ってたんだけど。

 その内情を知る綺羅ツバサとしては、

 意外と普通、たいしたことないのもいる――だそうで。

 

 そんな現場では現在矢澤にこであるとか、

 統堂英玲奈がアイドルや芸能人になることを夢見た少女たちを指導。

 夢を叶える人もいれば夢破れる人も多くいるのが現実で、

 現実に即してフォローできるニコや英玲奈の評判が高い。

 夢破れた失敗例として私のことを言うらしいけれど、

 まだ人生失敗に終わったわけではない、そうなる可能性が高いのは承知。

 

 誰々の名言なる本が存在し、

 多くはアスリートであるとか、芸能人であるとか、

 はたまた偉人であるとか、歴史上の人物であるとか――

 その中に先述の綺羅ツバサの名言なるものも含まれており、

 UTXに入ってくるくらいだから彼女に憧れて――

 という人間も多いらしく。

 そんなアイドル候補生にはそいつのことを忘れさせるのが至難の業で、

 何が言いたいのかと言うと、

 ツバサみたいな生活をしてツバサみたいになれるのは綺羅ツバサだけであり、

 私が仮にイチローみたいな生活をして、イチロー思考をしたところで、

 イチローのバッタモンが完成するか、凡人のままでいるしかない。

 とても残念なことに現実はそういうふうに出来ている。

 

 高望みをしたところで失敗するだけなので、とりあえず寝ておけばいい。

 希望を抱くからこそ失敗する、そこそこであればいい。

 私の台詞を亜里沙に聞かれれば、

 お前はそこそこどころか底辺ぶっちしているだろ――

 手厳しい妹はいつも事実に気がついてしまう。

 図星を突かれたところで人間は開き直るか、

 はたまた逆上する他ない、逆上などしようものならば、

 私に死亡フラグが立つ、懸命な私は開き直る他ない。

 

 

 UTXの芸能科に所属する生徒は意外と殺伐としていない。

 そんなコト言って、本当はカミソリを仕込んだ手紙の送り合いとかしてんでしょ?

 なんてことを英玲奈やツバサに言ってみたら、

 μ'sも実はそんなことをしていたからそんなことを言っているのか?

 と冷めた目で言われ、非を認めた私は土下座した。

 なお、その後一部の生徒はそんなことをしていると認めたため、

 土下座させたかっただけかよ! プリプリ怒ったら、

 ごめんごめん、土下座が世界一似合うわと褒められたのでいい気分になった。

 

 

 学生を指導していると、休日すら出勤ということが珍しくなく、

 そのために矢澤にこはお酒の付き合いが稀。

 BiBiで三人揃って飲む機会が少ないのは、

 西木野真姫が酒癖が悪い点と、ニコが忙しい点が挙げられる。

 前者がほぼ理由のすべてだと私は知っているけれど、

 懸命な私は西木野真姫に真実を告げられてはいない、ごめん真姫。

 

 なお、μ'sで飲むとなった際にはこの時間までと制限して、

 絡んでくる人(赤い人)の世話は私に全て押し付けられる。

 感謝しているらしいけど、感謝しているなら手伝って欲しい。

 

 矢澤家が現在家族揃って暮らすマンションは凛が暮らす場所よりもセキュリティが厳しい。

 そんなネタをツバサに提供した際、

 わかった、ドローン送るから飛ばして! と絢瀬絵里は特に意味もなくドローンを入手。

 これを売っぱらえばそれなりに金銭面で裕福になろうが、

 そうなれば苛烈な報復を受けることは間違いない。

 

 ドローンを飛ばす箇所というのは重要施設でもない限り制限はない――

 か、どうかは私の知ったことではないけど。

 雲を突き抜けそうな高層の建物を見るに、東京にはそこかしこにそんな建物が並び、

 ドローンのひとつやふたつ飛ばしたところで構いやしないだろう――

 

「これってたしか、電池か何かで動くのよね?」

 

 誰に聞くわけでもなく、持っているドローンに問いかけてみる。

 これでどこかから、もちろん! とか返答があっても困るけれど、

 相手は機械の体の持ち主なので、絢瀬さんとの交流はなされなかったものの、

 それなりに機会相手ではマウントが取れる、無機物なら私は無敵。

 反論しない相手ならマウントが取れる、私は強い。

 

「おー……浮かんだ浮かんだ」

 

 一通り試行錯誤を繰り返した末、ドローンは上手いこと浮かんでくれる。 

 ハエの羽音みたいな、真姫が聞いたらバイブがこんな音しそうとか言うだろうけれど、

 残念ながら試したことはない、たぶん真姫も。

 

「なんとなくかもめが翔んだ日を思い出すわ」

 

 別に私がおばさんだからそういうことを考えるのではなく、

 大体の人は何かを飛ばすと考えた時にかもめが翔んだ日を思い出すものである。

 

 そのとき、

 先ほどまで飛んでいたドローンのかけらが私の視界に降り注いだ。

 何か起こったのか、まったくもって理解ができなかった。

 どこかから狙撃をされ、

 ドローンが破壊されたことに気づいた私は頭を守ってガクガクと震え始めた。

 撃たないで頂きたい

 私のことは撃たないで頂きたい――

 

 怯え、すくみ、震え始めた私を嘲笑うような声――

 ではなく心配するような声が耳に届いた。

 大丈夫ですか? 気分でも悪いんですか?

 ドローンのように破壊されてしまう――なんて思った私を

 ひどく心配するであるように女の子は私の肩を掴みガクガクと震わせ始めた。

 その酔っ払いに相対するような対応に関しては是非があると思うが、

 私に対しては一定の効果があったように思える。

 自分自身冷静になった心持ちで肩を揺さぶらしてた女の子を眺めてみると、

 長い黒髪は腰の辺りまで、

 多少化粧が厚いのは気になるではあるけれど、

 美少女と言ってもいい外見をしている。

 私なんぞが他人の外見に関して是非を問うのは許されないかもしれないけれども、

 なんとなくニコとは似ていない部分がある気がした。

 

 彼女の正体は一発でわかった。

 ニコとは似ていないと言ったけれども彼女の名前は矢澤こころさん。

 矢澤にこの正真正銘の妹の一人である。

 先日会った矢澤ここあさんの姉にあたり

 現在は女性向けキャバクラの店員として活躍していると言う。

 

 女性に人気があるそう言われると私は苦笑せざるを得ない。

 自分自身がかつて大変女性から人気があり、

 音ノ木坂学院では女性とから多くのバレンタインチョコをもらった経験もある。

 ――あるのだけれども嬉しいかと言われるとそうでもなかった。

  そう言うと自慢ではないかと思われるかもしれないけれども、 実際自慢である。

 私自身がかつてもてはやされた過去を自慢しているのである。

 元来自慢できるコトが少ない私は自慢したい時は自慢したいものである。

 正直に言えばまったくく自慢にならないし、

 現在進行形で赤い巻き毛のお嬢様から熱烈な愛情を向けられてる当人としては

 女性からモテることに関して嬉しいかと言われるとそうでもない。

 異性から愛情を向けられることに関して望まないわけでもないけれども、

 今まで経験がなかった以上そういうことに関しては高望みはやめようと思っている。

 人間できないことはできないものであり、できることに関してはできるものであるけれども。

 仮にできることが少ない私はできることをいっぱいやろうと思うのである。

 まったくもって自慢にはならないのだけれども。

 

 能力の低さは折り紙つきで、

 よく妹からはなぜ能力を生かせないのかと言われるけれども、

 能力が低いからこそ活用できないのである。

 元から活かせる能力がたくさんあるのならば私はニートなんざやっていないし、

 μ'sのみんなからなんでそんなに能力を活用できないのか不備を問われるいわれはない。

 私にとって認められない部分はたくさんあり、

 本来ならば胸を張ってみんなの前に立ちたいではあるんだけれども

 能力の低さでそれを許されないと思っている。

 学生の時分にはどのようなことも許されたかもしれないけれども

 前面に立って全てを受け止めるには私のメンタルはあまりにも脆すぎたと思う。

 

 こころさんの黒髪はつやつやで使っているシャンプーの匂いなのか妙に鼻に香りが残る気がした。

 鼻に残ると言っても臭気に似た不愉快なものではなく

 なんとなく印象に残るような品質の良い香りがした。

 私もシャンプーとかの銘柄には明るくないけれども、

 身なりはきちんとしなさいというおばあさまの教えもあるし、

 亜里沙自身もその教えを守って私にはできるだけ良いものを使うように願っている部分がある。

 彼女自身のクセであるのか身なりから人を問いかけることはできるとのことで、

 私自身がニートにふさわしい外見はしているかと言うとたいそう疑問ではあるけれども

 それでも一応は人前に出られる外見をしているとは思う。

 

 こころさんがココにいるということは彼女はオフであり、

 今日の飲み会には彼女も付き合ってくれるものと思われた。

 胸が大きく肩の辺りにぎゅーっと押しつけられてしまうと、

 大変緊張してしまうと言うか銀座の一等地にある女の子向けキャバクラの店員さんが

 そういうことをするといつも仕事の上でそういうことをしているのかな――

 とも考えてしまう私実はお金を取るバイブルであるとも思わなくもない。

 黒髪はつやつやで着ているものも上質で、でも外見の印象としては幼い時に出会った

 こころさんの印象を残していて私はなんだか複雑な心持ちがした。

 矢澤にこの妹であると言われればそうですねと思うのだけれども、

 もしかしたら何も知らない人間からすれば彼女は矢澤にこの姉であるともいう人もいるかもしれない。

 

「絵里お姉さま大丈夫ですか? 随分と震えていらっしゃるようでしたが、

 あらこの機械のかけらは何でしょう?」

「ここでドローンを飛ばしていたの試しにやってみたらって言われたものだから」

「それは大変なことをなさいましたね、

 ここは特にセキュリティの厳しい場所でよく人が侵入してきたりするらしいですから、

 絵里お姉さまにもしものことがあれば姉に叱られます」

 

 いいのよいいのよとこころさんに言いながら震えの止まった体を立ち上がらせ、

 私はこころさんを伴って高層マンション内に入場した。

 

 中は清潔に保たれていて掃除も行き届いているように思われた。

 私の住んでるマンションとは雲泥の差であるけれども、

 そのマンションの家賃ですら妹のすねかじりをしているので

 私自身が何も言えないような気がした。

 たまに私自身が掃除をしているけれども、

 それがどれほどの効果があるものかはわからない。

 ボランティアの範疇であるしお金が欲しいとも思わないけれども、

 せめてその効果が実証できるほど高い能力を持っていたかったとは思った。

 

 マンション内のエレベーターは音が静かで

 私の住んでいるマンションのエレベーターとは同じエレベーターであると言うのが失礼な心持ちがした。

 私自身が胸を張って誰かの仕事の出来不出来を決めることなど、

 もしかしたら許されないかもしれないけれども。

 私にだって文句の一つを言う権利くらいはあると思う。

 たまに荷物を持ったまま停止するエレベーターなど本当に役に立たないから、

 なんとか改修して欲しいものだと思う。

 私自身が迷惑しなくても妹の亜里沙が迷惑するのであれば私は断固として不備を宣言したい。

 その主張が残念ながら一度たりとも認められたことはないので、

 私の人権など風の前の塵に同じなのだと思う。

 

 風吹けば飛ぶ。

 今まで人権があるものとして扱われてきたので、

 そのような対応をされてもむべなるかなと思わなくもない。

 

 こころさんを伴って入った矢澤家の一室は

 大変豪華なインテリアやに綺麗な内装に包まれていた。

 私がその価値判断をすることはできない(なんなのかわからない)ので、

 高価な置物とかがいっぱいあると言えばいいのだろうか?

 ニコはそういうものをが好きではないという話ではあるので、

 こころさんかここあさんの私物が置き場がなくてたまたまそこに置いている

 ――という可能性もある。

 私自身が酔っ払ってこの豪奢な内装を壊さないように気をつけたいとは思う。

 そのように訴えるとフラグかよとニコに突っ込まれてしまうかもしれないけど、

 彼女は私のために買い物に出てくれているということなので、

 帰ってきたらちょっと手伝ってみようかとも思う。

 白い壁や清掃の行き届いた家の中にぽつんと立っていると、

 これが金の匂いかと思った。

 妹の亜里沙もたまに金の匂いがすることがあるけれども、

 私自身が発したことがないにおいでもあるニートだし。

 こころさんは着替えてくるということだったので、

 どこかからの帰りもしくは職場からの帰りである可能性もあった。

 彼女はもしかしたら出かけてきたとしか言わない可能性もあるけれども察するのが大人であると思う。

 

 こころさんは私を歓迎するとも言うであるみたいに

 それが仕事着なのと思わずツッコミを入れてしまいそうなくらい。

 露出度の高い谷間を露出した何とも言えない格好をしていた。

 ケバいといえばそれまで、色気があるとも表現ができるかもしれない。

 彼女はいったい銀座でいくらもらっているのだろうか

 そんなことが疑問に思えてしまうくらい夜の華なこころさんを見てそんな印象を受けた。

 

 ニート相手にドレスアップを重ねたこころさんには大変申し訳ないけれども、

 お金は亜里沙から頂いた部分しかない。

 彼女は相手に対してお酒を一杯飲めるかどうかも分からない予算を考えつつ。

 過剰分は後日妹の亜里沙にこれだけのことをしたのでお金をくださいと宣言してほしい。

 姉はどこか内浦の海にでもダイヤさんに沈められてる可能性がある。

 

「絵里お姉さまは女性から大変モテたという話を姉から聞きました」

「にこも女生徒から可愛がられていたわ」

「それは愛玩動物的な反応で、

 確かにニコお姉さまも可愛らしく美しい方ではありますけれども、

 絵里お姉さまとはまたベクトルの違った美しさです」

「褒めてくれて嬉しいけれども私ぐらいの外見の人なら銀座にたくさんいるんじゃないの?」

「絵里お姉さまほど綺麗な方はこの世に存在しないと言っても過言ではないでしょう」

 

 こころさんは私の機嫌でも取ってくれるみたいにおべっかを使ってくれるけれども、

 私自身そのように扱われるような立派なことはしていない。

 お金だって払える自信がない。

 今日は矢澤家の飲み会だからお金は大丈夫ですよとこころさんは言うのだけれども、

 すごく高価な接待を受けている心持がするので少しばかり私は緊張をし始めた。

 

 提供されるお酒は普段私は飲んでいるお酒とはランクが違う気がするし、

 口当たりがよく飲み過ぎてしまえば酔ってしまうだろうなと思った。

 ここで過度に酔ってしまえば豪奢の内装が私自身によって破壊され、

 後日妹に損害賠償請求を要求されてしまうかもしれない。

 そんなことになれば妹によって東京湾にでも沈められてる可能性があるので、

 代金はできれば妹に直接要求して欲しいものである。

 そういうことになれば私の人権がなくなってしまうので、

 私自身は応対できないかもしれないけれども

 こころさんやニコにはよろしく言って欲しいものである。

 天高く見守っているので。

 

 これは内緒なのですがとこころさんがニコの手帳を持ってきてくれた。

 仕事内容について問いかけたいことがあるみたい。

 私なんぞに答えられるとは思わないけれどもこころさんが私を信じてくれるのであれば、

 私は出来る限り協力をしたいとは思う。

 バレれば矢面に立ってニコからの罵倒を受けるつもりであるけど、

 たいして持ちやしないと思わないのだけれども、それでも役目は果たしたいと思う。

 シールドが持たない以上役目を果たしていないのではないかというツッコミは甘んじて受ける。

 

 ニコはUTXにて芸能科に通う生徒から絶大な支持を受けているという。

 過去にはその責任感からオトノキの生徒達と喧嘩別れをしたようなこともあったであるのだけれども、

 そのあたりの経緯に関しては希からもニコからも詳しく聞いたことがないので、

 ある程度知っているというスタンスではある。

 当時の記憶はあったりなかったりするので、

 私自身の脳みそが優秀ではない可能性はあるんだけれども、

 そういうことがあった程度のことくらいは覚えている。

 

 にこの手帳には生徒のクセであるとか、

 生徒がなすべき努力であるとか、

 その子達に対するアドバイスであるとかがたくさん書かれていた。

 彼女は字が下手だから文字を見せるのは恥ずかしいと言っていたけれども、

 流麗で読みやすい文字は彼女が仕事において優秀であると言っている気がした。

 よくニコは私を褒めてくれたりもするのだけれども、

 私自身もニコのことはしばしば褒め称えている。

 そんなに褒めるな恥ずかしいと言われることもあるけど、

 この手帳を見る限り過度な称賛ではないような気がした。

 

「こころさんこれはどういうことなの?」

「はい最近お姉さまは結果を残すことができないと

 周りの講師達から言われることがあるようです」

「たくさんの生徒を相手にしているものうまくいかないことだってたくさんあると思うわ」

「そうなのですがお姉さまは責任を感じて輝けなかった生徒のために

 自分はもっと他にできることがあったのではないかと悩んでおられるようなのです」

 

 こころさん自身も忙しい人であるし、ここあさんの作業が忙しい風であるので

 家には高校生男子である矢澤虎太郎君しかいない。

 矢澤虎太郎君は学生であるので、ニコの仕事に関してはあまりよくわからないではあるだろうし、

 アドバイスをするということが許される立場だと思っているかどうか疑わしい。

 歳も離れてることもあるしニコは矢澤家の太陽みたいな存在であるから、

 アドバイスというより優しく見守ることしかできないのだと思う。

 こころさんがこうして隠れてニコの仕事ぶりを私なんぞにアドバイスを求めてくるくらいだから。

 

 

「アドバイスというわけでもないけれども

 にこにはこんなに根を詰めて行ってもどうにもならないことはどうにもならない

 というのを言ってあげるといいと思う。

 私自身は今までどうにもならないことに関して挑戦し続けて

 こうして長い間をニートしているわけだけども、

 何て言うかねニコは私にとって妹みたいな存在なのよ

 彼女の方が年齢的には上にはなってしまうのだけれども、

 どうしても助けたい対象なの。

 それはμ'sのみんなもそうであるし、

 こころさんやここあさんもそう。

 雪穂ちゃんに亜里沙のこともそう

 私にとってはみんながみんな放っておけない人」

「絵里お姉さまは今も誰かを助けたいと思っているのですか?」

「助けられる可能性は低いかもしれないけど困っている人がいたら放っておけないのよ

 放っておいてしまって誰かが不幸になるくらいなら

 私自身が不幸になっても構わないと思うの。

 自己犠牲精神だと友人には言われるのだけれども

 自分の犠牲によって誰がが幸せになるのであればそれはそれで構わないと思う」

「なぜ絵里お姉さまはそのようなお考えに?」

「私は後悔していることがあるの後悔ってトラウマみたいなもので

 直そうと思ったり改善しようと思ったりしてもなかなか上手くいかないものであるじゃない?

 だからね自然と体が動いてしまうの誰かを助けるために一生懸命」

「やはりお姉さまのおっしゃる通り

 絵里姉さまは今もこうしてμ'sのセンターに立つべき」

「こころさん何か言った?」

「絵里お姉さまは立派な方だと姉がよく言っています」

「とても残念なことに立派な人はニートなんかしていないのよ?」

「ですが絵里お姉さま家での家事を担当しているのでしょう?

 それは主婦みたいなものでニートと呼ぶのは間違っているのではないですか?」

 

 ニートである、そうではないでもただの言い争いになってしまうので、

 私はそのことに関しては会話を打ち切ることにした。

 普段からそのトーク術で大変お金を稼いでいらっしゃるこころさんには逆らえない部分はあるにせよ

 彼女もその辺りのことはわきまえてくれているので話題は無事転換された。

 

 今は虎太郎君に関して話を聞いている。

 近々受験生になるということでできれば年頃の男子に女の子を相手にしてほしいと願っているみたい。

 自分が同性ばかりを相手にしているからとも言うし

 虎太郎君は外見が男性というよりも女性に近くて、

 男の娘と言うべきであるので男性に走らず、

 ここあさんが好きなBL化するわけでもなく、異性相手に生きて欲しいと願っている。

 

 矢澤家の皆がまっとうに生きていないとも私は思わないけれども、

 こころさん自身にも多数のコンプレックスが存在するものではあるらしい。

 私なんぞにアドバイスができることがあるとすれば、

 私自身が反面教師になることくらいで。

 働いている皆からすれば私自身のアドバイスを聞く必要なんてないと思うのだけれども

 アドバイスを求められているならば

 指をさされて笑われる覚悟で色々言ってみることも悪くないかもしれない。

 

 そんなこんなで話を続けているとにこが帰ってきたみたいで、

 たくさんの荷物を抱えているといけないので

 私は玄関の方に歩きこころさんを伴い

 案の定たくさんの荷物に往生しているニコの手助けをすることにした。

 ニコは輝くような笑顔を見せて嬉しそうにし、

 一瞬素が出てしまったというであるみたいに表情を歪ませ、

 あんたって意外と使えるのねそんなふうに言った。

 こころさんから私を褒めていると聞いていたけど

 本当に褒めてくれているかどうかは疑わしい。

 私の見えない場所で私の悪口を言っている事の方が自然であるようにとも思えるし、

 悪口を言われる箇所は私にはたくさん存在しているものであるし。

 

 胸を張っていい人かと宣言するわけでもなく周囲からいい人だと言われるいわれもない。

 私自身聖人君子ではないので人からよく言われれば嬉しいし

 悪く言われればそれなりに悲しい。

 難しいではあるのだけれども私の正直な気持ちからすると

 褒められるよりも罵られてるほうが気分がいい。

 ドMというわけではなく人間それ相応の扱いを受けないと調子に乗ってしまうものであるし。

 

 飲み会の主催である矢澤にこばかりに料理を作らせてしまっては申し訳ないであるので

 私自身も多少手料理を振る舞うことにした。

 手つきがいいと褒めてくれるけれども、

 私以上にニコは相変わらずの料理上手であり感心する箇所はたくさん存在した。

 

 お酒が入って手付きが危なっかしいということもなかったし

 手料理やおいしい出来合いのものもありお酒の場所は大変盛り上がりを見せた。

 

「ニコそういえば虎太郎君は?」

「なに? 絵里も虎太郎狙っているの?」

 

 も?

 

「虎太郎はね結構μ'sのみんなから人気があるみたいよ?

 是非彼氏にするならこの人だみたいにね」

「言ってはなんだけれどそれは真姫以外の人?」

「真姫も含まれているのよ一応ね

 本心ではないだろうけど」

 

 多くの人が本心ではないということは私もわかっている。

 彼女が喜ぶのは自分自身を褒められることよりも

 自分の大切な注意の人が褒められることにあると思う。

 μ'sのみんなはその辺りのことがよく分かっていて、

 虎太郎君を彼氏にしたいと言ってるのだと思う。

 本当に彼氏にしたいと思っている子も、もしかしたらいるではあるかもしれないけれども。

 

「絵里はやりたいことが見つかった?」

「あんまりかな? 

 今は妹の世話、世話を焼かれているとは思うのだけど

 どうしてもね苦労している姿を見ていると自分が支えなければって思うのよ」

「お言葉ですが絵里お姉さま、

 亜里沙さんも独り立ちをなさる時ではないのですか」

「そうねあんまり姉である私が近くにいてもとは思うのよ

 私自身も彼女に依存している部分が複数存在する

 お金に関してもそうであるし

 生活に関してもそう

 今までたくさん支えられてきたでやるから、多少その恩返しをしたいではあるのよ?

 

 ――でもねなかなかうまくいかなくて、気合が入ると空回りしてしまうっていうか」

 

 私がそのように言ってみると二人は苦笑を持って応えてくれた。

 私自身が緊張すると思ってもアサッテの方向に行ってしまうのは、

 μ'sの誰しもが知っていること。

 私自身ももちろん知っている。

 だからといってなかなか改めることはできないし、

 改善できることがあるのであれば私は是非したいと思っている。

 

 とはいえなかなかできないからこそうまくいかないのであり、

 その方法はいろいろアドバイスを求めるではあるのだけれども

 やってみてもうまくいかないことばかり。

 友人であるツバサにはうまくいかないことを一生懸命やるな

 と言われてしまうのだけれど弱点は出来る限り補いたいものである。

 

 ニコが珍しくお酒を結構飲んでいる。

 彼女はお酒はそれなりに強いというし

 私もそれなりに強いであると思っていたけど、

 こころさんが驚くくらい彼女の肩の力は抜けていて、

 それが私の手柄であるとは言えないけれども

 なんとなく本心をさらけ出してくれた気がして私は嬉しい心持ちがした。

 

「まあ絵里には絵里のペースがあるから

 あまり無理に就職は進めないけれども

 もしコーチがしたいっていうのであれば私の後釜として紹介してくれてもいいのよ?」

「あなたの後釜なんて荷が重いの

 あのねニコは人に何かを教えるっていうのが転職であると思うの

 あなたのアドバイスは私のためになっているし

 ニコは人に関わっている時間っていうのが一番輝いているように思うわ」

「ありがとうなかなかねうまくいかないこともある。

 それは絢瀬絵里も矢澤にこも同じ

 矢澤こころも矢澤ここあもそうであるかもしれない。

 でもねうまくいかない時間っていうのはその人にとって必要な時間ではあるのよ

 人生うまくいってばかりな人が何もかも本当にうまくいってるかって言うと

 たいそう疑問ではあるしね?

 

 亜里沙ちゃんは相変わらず忙しそう?」

 

 私自身が亜里沙の生活を振り返ってみていつも働いているなという印象しか受けない。

 それほどに彼女は働きづめであり苦労しているかと言うとそうである可能性が高い。

 だけども彼女はいつも楽しそうにしている。

 私自身を罵倒する時もそうであるし、

 仕事に行く時もそう。

 もしも彼女が困っていたら私は亜里沙の意思を尊重しないでも

 仕事場に乗り込んで上司の一人ぐらいぶん殴ってやっても構わない心持ちだ。

 シスコンと言われればそうであるしそうじゃないと宣言しても説得力がまるでないと思う。

 

「ところで絵里そろそろオチをつけてくれてもいいのよ?

 そこの花瓶の一つでもも酔っ払って割ってくれれば私は喜んであなたを罵倒できる」

「あいにくだけどニコ

 私があの花瓶を叩き割ってみなさい?

 おそらく次の日に亜里沙の手で私の頭がかち割られてしまうわ」

「否定できないところが姉の辛さであるわね」

「可愛い妹だとは思うのよでも時々すごく可愛くない瞬間があると思わない?」

「絵里お姉さまその発言亜里沙さんの前でなさらないことを勧めます

 きっと恐ろしく思い悩むであるでしょうから」

「私にとってはどんな亜里沙も可愛い妹であるのに、

 そう思わないのは姉にとって不幸なことと思わない? ニコ」

「絵里あなた発言最近英玲奈に似てきたと思うわ」

「私は英玲奈ほどシスコンではないと思うのだけれど」

「いいえあなたは英玲奈と同じぐらいシスコンよ」

 

 私はお酒を一口含み、口の中で転がし、

 多少を解せない想いは抱えつつ

 次に訪れるであろうA-RISEとの飲み会では羽目を外さないように願った。

 願ったと言っても私自身がなすべきことであるからそうしようと思ったというのが適切であるかもしれない。

 


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