アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

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(※) 南ことりとの飲み会編 01

(南ことりとの飲み会編)

 

 池袋というとサンシャインシティと乙女ロードくらいしか知らなかったので、

 亜里沙の手助けも借りて事前にリサーチをすることにした。

 今回ことりと行くバーは、Bar Lilyというお店。

 さっそく検索を開始してみると、隣りにいる妹が声を上げる。

 

「すごいおしゃれな外装のバーね、姉さん、場違いじゃない」

「ことりが目を引きつけてくれるから平気よ……」

「600種類のお酒にお料理まで……うーん、うーん……」

「どうしたの亜里沙、お腹でも痛いの?」

「すごくお酒が好きな知り合いがいるから一緒に行こうかなと思って」

 

 私もお酒を結構飲む方だと思うけど、亜里沙は自分と同等かそれ以上だ。

 以前、4時間ほど付き合っていた海未が、もしかしたら男の人が見たら百年の恋も冷めるかもしれません

 などと言って、亜里沙を凹ませていたけど、特に酒量は変わることはなかった。

 

「まさか、知り合いって……男の人じゃないでしょうね!」

「男の人だったらどうするの?」

「……え?」

「仕事上男の人と飲むこともあるよ、それを邪魔する気?」

 

 あ、地雷踏んだ。

 

 

 亜里沙が男の人と女の人のどちらが好きなのか疑問だったけど、ひとまず出かけることにした。

 ちなみに彼女の機嫌は、もうすでに治っている。

 地雷を踏んだ後海未にLINEをして、なんとかして仲を取り持って欲しいと頼み込んだのだ。

 だから飲み会に出かける時に、珍しく亜里沙が見送りに来てくれたのである。

 

「姉さん、あまり飲みすぎないように、それからタクシーを利用することはないように」

「わ、わかってるわ、それからサインもちゃんと貰ってくるから……」

「おしゃれなバーで粗相をしたなんてこともないように、あと、深夜までには帰ってくるように」

「も、もちろん、パソコンは大事だもの」

「最悪、ことりさんに誘われて宅飲みをする場合は連絡をください」

 

 ん?

 いつもなら連絡するしない関係なく、絶対に帰ってこないとパソコンを破壊すると言われるのに。

 

「姉さんが帰ってこない時は、家に海未さんが来ます、いいですか、絶対に帰ってきてくださいね!」

 

 それはフリですか亜里沙……。

 もうすでにニヘらと表情が緩みまくっている妹を心配に思うも、口に出さない私って大人です。

 

 

 

 最寄りの駅まで歩いていると、ピコンとスマホが鳴る。

 μ'sのメンバーやA-RISEのみんなとLINEをする時は大抵深夜になるから、この時間帯に来るのは珍しい。

 誰からかと確認してみると、なんとツバサだった。

 

TSUBASA:最近ちょっとオンゲーの付き合い悪くない? 

エリー:イベントもないし、あと飲み会に誘われてるのよ

TSUBASA:また飲んでるの? さすがに飲み過ぎなんじゃないかと心配になるんだけど

エリー:家では……飲んでないから……

TSUBASA:三点リーダに悲痛な叫びを感じるけど、とにかくマスターがいないとギルドも回らないんだからね?

エリー:重々承知しています、なんか私を追い出そうとする動きもあるみたいだしね

TSUBASA:そいつらならもう潰した

 

 ぷわぷわーお!

 

エリー:ただ、ちょっと一ヶ月くらいログインできないかもしれないのよね

TSUBASA:彼氏でも出来た?

エリー:恋人との関係が一ヶ月しか保たないみたいな言い方やめて

エリー:両親が来るのよ……

TSUBASA:それは厄介ね、ってことはどこか放浪でもするの?

エリー:とりあえず海未には来てもいいと誘われているけど、悩み中

TSUBASA:ならウチに来なさいよ、パソコン3台あるからオンゲーやり放題よ?

エリー:3台て

 

 きっとA-RISEのメンバーでオンラインゲームをやりたくて買ったんだろうなあ……

 

 

 

TSUBASA:エリー料理できるんでしょ、いいわ、専属のシェフとして雇ってあげる

エリー:なら後2人くらいに声かけて、一週間ずつ泊まろうかしら

TSUBASA:エリち放浪記ね、そういえば今日は誰と飲むの?

エリー:ことり

TSUBASA:南さんってお酒飲むのね……なんか、甘いジュースとかしか飲まなそうなイメージあるけど。

エリー:カクテルとかは嗜むみたいよ? 今日もなんかお洒落なバーに連れて行かれるし

TSUBASA:エリー通報されないでね

エリー:ニートというのはいるだけで通報されてしまうものなのかしら……

TSUBASA:おおっと、締切りの催促の電話が来た! ごめんエリー、仕事に戻る!

エリー:(今日も一日頑張るぞいのスタンプ)

 

 ツバサと会話していたら、電車がもうすぐやってくるところだったのでスマホを鞄にしまう。

 この時間帯なら余裕で座れるだろうと思っていたけど、どこかの駅で人身事故があったらしく満杯だった。

 こういうときニート……は関係ないけど、無理やり電車に乗るのに外聞もないから楽だ。

 もしもこれが凛とか、ことりとか、わりと社会に露出している人だとTwitterとかに写真を挙げられてしまうかもしれない。

 飛び膝蹴りをする勢いで身体を電車内に通し、ドアが閉まったのを確認して一息つく。

 ――これで確か、池袋まで30分くらいか、途中でいっぱい降りてくれないかしら。

 

 と、視線の先にどこかで見たようなツインテールが見えた。

 たしか彼女は――鹿角理亞さんとかいったはずだ。

 私よりも背が低い彼女は乗客に埋もれつつあって、かなり苦しそう。

 

 10分くらいすると乗客がちょっとだけ少なくなったので、移動をする。

 理亞さんはフラフラとしながら、乗客の多い方向に向かおうとしたので慌てて止める。

 

「だ……れかと思えば、ダメ……人間……絢瀬絵里……じゃない」

「あなた初対面の時もそうだったけど、私に何か恨みでもあるの?」

「あ、あります……! あなたのような人がいるから苦しむ人がいるんだ! ただでさえ仕事で忙しいのに!」

「ふうん?」

 

 仕事が忙しいというと凛あたりかな? 知らず知らずのうちに迷惑をかけている可能性は無きにしもあらずだけど……

 まあ、仮にμ'sのメンバーだったとすれば、私と海未以外は割と忙しいので誰でも当てはまるか。 

 

「理亞さん、どこまで行くの?」

「誰があなたなんかに……!」

「秋葉原に行った後と思わしき紙袋を両手に抱えてるから……そうね、次は乙女ロードかしら?」

「……わ、私の買い物ではありません! これは姉が!」

「お姉さんとの待ち合わせ? 乙女ロードで? ちょっとイメージ下がっちゃうわね」

「……すみません、全部私の買い物です」

 

 隠れ腐女子鹿角理亞さん誕生。

 

 

 

 北海道から上京してハニワプロというアイドル事務所に入った彼女たち姉妹が、一番最初に行ったのは秋葉原だったらしい。

 数あるアイドルグッズに目を輝かせるお姉さんの聖良さんと違って、理亞さんが注目したのは成人向けゲーム。

 まあ、あそこは堂々とエッチなゲームのポスターがビル全体に貼ってあったりするし、目に入るのは仕方ない。

 

「最初は……何だこれと思っていたんです、不健全だとも思いました」

「確かにね」

「でも、アリスソフトのゲームは違った……! すごく面白くて、やりこみ要素もすごくて……!」

「アリス? ずいぶんまた……」

 

 濃い方向に行っている。

 

「戦国ランスも大番長も面白くて……ハマりにハマって、気がついたら姉とデビューの時期がずれて」

「姉妹ユニットとしては致命的ね」

「気がついたら、同期はみんなデビューして……私一人候補生止まりで、さすがに焦って」

「それなら成人向けゲームをやめれば」

「あなたはそう言われて、オンラインゲームをやめられるんですか?」

 

 それはまあ……確かに、無理。

 

「燻っていて気がついたら、3年が過ぎていて……でもその時にルビィが入ってきて」

「ああ、あなた達ユニットだったわね、アンリアルとか言ったかしら」

 

 なんかポルノ雑誌とかでありそうな名前ね、とか言ったら怒られるだろうか。

 

「その時に出会ったプロデューサーは本当に敏腕で、感謝しか無いんです」

「なるほどねえ……そのプロデューサーのことは知らないけど、3年エロゲに燻ってる人間をデビューさせちゃうんだもの」

「え、エロ……成人向けゲームだけにハマってたわけじゃない……!」

 

 それは――二次元ならばなんでもいいと悟ったオタクの余罪の告白だった。

 彼女の名誉を考えて、その内容は伏しておく。


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