アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

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(※) 飲み会編 エピローグ 02

「鹿角理亞さんに亜里沙?」

「げっ! あなた……いないって聞いていたのに……!」

 

 げ、とは随分なご挨拶。

 亜里沙に肩を貸している状態だったので、長話は無用。

 とりあえず酩酊してそれどころでは無さそうな彼女を海未が部屋まで運ぶ。

 

「なんで亜里沙と一緒にいるの……と聞きたいところではあるけど、お礼をいうのが先ね」

「別に構わないわ。ところで」

「なあに?」

「あのエロゲーのヒロインぽい人はだれ? もしかしてあなたの彼女?」

 

 たしかに黒髪ロングはそういうゲームのヒロインで必ず出演しているって聞くけど……。

 

「昔μ'sで一緒だった子よ、というかあなたも真姫が言ってた」

「すっごい似てるのよ! ほら! これ見て! 上から二番目!」

 

 スマホを顔面に向けられる、かなり近い。

 

「プリワーは同人で累計2万本を売り上げた超名作で! しかも同人時代のスタッフが集まって商業化!

 PCエロゲー不調と呼ばれる時代の中10万本を売り上げた……!」

「ダイヤモンドプリンセスワークス? 確かに海未にそっくりね、というか……」

 

 ヒロインがみんなμ'sのメンバーにしか見えないんだけど……。

 というか、成人向けゲームってことはやっぱりこの子達脱いじゃうのよね?

 しかも主人公とエッチなことを……

 

「わ、私もいるのね」

「ヒロインとサブヒロイン合わせて9名! 全員にエッチシーンあり! 捨てシーン無し!」

「近いわ理亞さん」

「おまけのファンディスクでは3Pとレズシーン追加! お得! さあ! 買うの! 買わないの!」

 

 

 鹿角理亞さんのテレフォンショッピングが始まってからしばらく、海未が戻ってきた。

 

「何の話をしているのです?」

「ああ見えてエッチな下着をつけているんです!」

「は、ハラショー……」

「本当に何の話をしているんですか……」

 

 海未が言うには、亜里沙の調子はそれほど悪くないらしく。

 仕事で多少疲れているだけではないかとのことだった。

 

「ただ、目が腫れていますね、泣き腫らした後のようにも見えます」

「あの子は仕事が楽しい楽しいって言っていたわ、高校時代にバイトを始めてから何度ともなく聞いた

 今の仕事がその延長線上にあるのなら、恐らく仕事で泣くってことはないんだと思う」

「ということは、家族絡みですか……」

「その、亜里沙さんの両親ってどんな方なんです?」

 

 難しい表情をしたままで海未がポツリと呟き、理亞さんがそれに準じた。

 

「そうね……一言で言うなら……俗物?」

「バッサリですね、絵里」

「家庭よりもメンツが大事で、プライドが高くて、メンタル弱くて、人の言うことを聞かない

 そのくせ文句ばかり言って、対案も改善策も出さなくて……あ、ごめんなさい、ちょっと言い過ぎたわ」

「亜里沙さん……やっぱり苦労しているんだ……」

 

 私は?

 

「その、一度職場に亜里沙さんのご両親が来たそうなんです」

「聞いたことが無いから、絶縁された後か……」

「先輩が言っていました。両親が帰られた後、ずっと先輩プロ……いえ、先輩社員に頭を下げてたって」

「ありえるわね、おおかた亜里沙を褒めつつ、自分の有能さをアピールでもしてたんでしょう」

 

 

「仕事はできる人みたいよ? コネもあるし」

「しかしそれは、父親と母親としての価値とは何の関係もない」

「それがわからない人なのよ、悲しいことに」

 

 3人の間に何とも言えない空気が流れる。

 

「まあ、今日はとりあえず泊まっていく? 布団はあるみたいだし」

「ああ、それならば、理亞さんでしたか一緒の部屋で寝ましょう」

「ええ!? そ、そんな……光栄です! 本当に一緒でいいんですか!?」

 

 理亞さんの海未への好感度が私と大違いな件。

 海未をモデルにしたと思われる詩衣ちゃんルートは、

 二年前のエロゲーシナリオ部門で金賞を受賞したらしい。

 ちょっと興味が湧いてきた、今度ツバサにも聞いてみよう。

 

 恥ずかしいからエッチなシーンは飛ばすけどね!

 

「そっか、じゃあお風呂を沸かして」

「では私は、飲料水でも買ってきましょう、コンビニまで行ってきます」

「一人で平気ですか? 私もお付き合いしますよ?」

「こう見えて腕っ節には自信があります、ご心配なく」

 

 海未に断られ、ちょっと残念そうにしていた理亞さんだったけど

 すぐに何かを思いついたのか、くすくすと怪しい笑みを浮かべ始めた。

 

「絢瀬絵里!」

 

 呼び捨てだ!

 

「PCはある? 今すぐインストールしてダイヤモンドプリンセスワークスをプレイしましょう!」

「ええ……? ソフトがないでしょ?」

「ダウンロード販売もしている! 買う! あなたに選択権はない……」

「せめてマウスをクリックする権利くらいはちょうだい……」

 

 

 プリワーをプレイし始めてしばらくしてから海未が帰宅。

 最初は拒否感を示していた彼女も、穂乃果やことり(を、モデルにしたヒロイン)が登場し始めたところで

 

「か、可愛いですね……この子達、こ、攻略? と言うのもできるんですか?」

「ひばりちゃんはできますよ、右側の子です」

「そ、そうですか……香乃ちゃんはできないですね、とても残念です」

「ファンディスクでできますよ」

「う……ですが、そこまで行くともう、戻れないような気がします」

 

 いやあ、このハマり具合だともう手遅れなんじゃないかしら……?

 

 プレイし始めてから4時間後、詩衣ちゃんルートの個別シナリオに入る。

 同人バージョンではもうこの時点で大抵のヒロインとエッチなことをしてしまっているそうだけど

 大作にすると意識したのかご褒美と呼ばれるシーンはない、一度詩衣ちゃんのお風呂シーンが出て

 海未が自身との胸の大きさの違いにへこんだ。

 

「来ます……!」

 

 理亞さんが何を言っているのかと思ったけど、そこからは本当に怒涛の展開だった。

 ぶっちゃけエッチなシーンよりもシナリオに没入し、感情移入し、お互いの顔が見られなくなるほど泣いた。

 

「うう……やっぱり人類の力で地球を救わなくては駄目です!」

 

 まさかこんなに奥が深いものだとは……エロゲー……侮りがたし……。

 

 

 お風呂がすっかり冷めてしまったので、もう一度沸かし直した後

 どうしても一緒に入りたいんです! と理亞さんが強引に海未を説得。

 先程のお風呂でのエッチシーンを覚えている海未は懸命に抵抗したものの、

 入らないとファンディスクのネタバレをすると言われ終戦。

 

「まあこれで海未がエロゲにハマることはないでしょうけど、少し考えが柔らかくなれば御の字ね」

 

 ダイヤモンドプリンセスワークスでは、私、にこ、真姫、ことり、海未が攻略ヒロインだった。

 つまりサブヒロインは、花陽、凛、希、穂乃果の4人。

 しかしながら、ヒロインはどの子も大変魅力的で9人の扱いに差はほとんどなかった。

 よほどμ'sに詳しい人物がプロデュースでもしているのか、ああ、海未ってばこういうこと言う!

 みたいな場面がチラホラとあったし、今度亜里沙にプレイでもさせてみようかしら?

 

「ね、姉さん……ど、どうして? 昨日は泊まりではなかったんですか?」

「ちょっと、ね。色々あって海未と帰ってきたの」

「……はい? 海未さんはどこに」

「いま理亞さんとお風呂」

「え? 理亞ちゃんがどうして?」

「ちゃんとお礼を言わなきゃだめよ、フラフラのあなたをここまで連れてきてくれたの」

 

 どうしての後に目が病んで、どうして理亞ちゃんが海未さんとお風呂に入ってるの!?

 とか言い出したら怖かった。

 そんなことがなくて本当に良かった。

 

「昨日は仕事から帰ってくる途中……そういえばツバ……」

「つば?」

「ええと、同僚の家に行ってお酒を……私、悪酔いを……」

 

 

 亜里沙が前日の記憶を思い出しているのか、ヘナヘナと床に腰を下ろし頭を両手で抑え凹んでいる。

 お酒が強い私たち姉妹が飲まれてしまうくらいだから、相当嫌なことがあったか、飲んだか、その両方か。

 

「電話しないと……とりあえずメンバーを確認して……」

「朝早いわ、10時以降にしなさい」

「それだと仕事が」

「今日は休みなさい」

「お、お姉ちゃんみたいにホイホイ休めないの!」

「今日は休みなさい、良いわね? 部屋から一歩でも出たら怒るから」

「……普通の社会人は、一日悪酔いしただけでは休めない」

「だったら復活しなさい亜里沙。そのへこたれた顔をよく拭いて、オフロに入って、ちゃんと――

 キャリアウーマンらしくしなさい」

 

 亜里沙はこちらを見ながら、ぱちぱちとまばたきしたあと。

 こくりと頷く。

 

「分かりました、姉さん……私は、キャリアウーマンですものね!」

「ええ」

「まったく、姉さんに叱られてしまうなんて、本当。困った妹です」

「普通の姉妹はそうなのよ……姉が妹に叱られるなんて早々……」

「お姉ちゃん、今日は時間を作れますか? お話しなければいけないことがあります」

「だいじょうぶ、安心して。理亞さんが勧めたゲームやってるし」

「ちゃんと寝てください、目のくまがすごいですよ」


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