アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

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(※) 亜里沙ルート プロローグ 07

「いまマルはハニワプロじゃないんですけど、その系列の会社に入ってマネージャーをしています。

 仕事が取れない仕事が取れないって嘆いてばかりいるのでちょっと心配ですが、まあ、まだまだ新人ですしね」

「善子さんは、ルビィちゃんに憧れてこの世界に入ったの?」

「憧れもあります、羨ましいとも思ってます、でも、私はこの世界で自分の為すべきことを見つけたかった」

 

 為すべきこと……か。

 ニート生活が長かった(今でもニートみたいなものだけど)私も時折、

 自分が生まれてきた理由みたいなものを想像して眠れなくなることがたまにあった。

 為すべきことを見つけたいから、知らない世界に入るというのはどれだけ勇気のいる行為だったか。

 

「レッスンも、実はルビィとやってるから大丈夫だと、そう思ってたんです」

「そうなの」

「スクールアイドルでそこそこまで行ったし、ルビィと同じ程度には動けるし

 ここでは理亞に次いで踊りも歌もできるかなって思ってたんですけど

 でも、きょう澤村さんに会って、実力差を痛感しました」

「いや、待って、私はそんな御大層なものじゃ」

「私たちに足りないものを教えてくれそうな、そんな気がするんです。だから前も洗わせてください」

 

 そういう下心は、ちょっと控えたほうが良いんじゃないかしら……?

 足りないというのは実は胸の話であって、実力とかそういうものじゃないってオチ?

 

 善子さんと一緒に浴槽に入り、しばらく会話してみると

 いろんな事がわかってきました。

 基本ここにいるみんなは吹き溜まりに集まった落ちこぼれ扱いをされているみたいだけど

 本当は誰よりもアイドルをしたくてたまらない子ばかりで。

 でも、今の私にはそんな彼女たちの熱意に応えられるほど優秀な教師じゃない。

 そもそも、人に教えられるような知識は殆ど持っていない。

 

 

 お風呂から上がってから、しばらく部屋でのんびりしていると

 ツバサからLINEが来た。

 

TSUBASA:なんだか面白いことになってるそうじゃないの、私の誘いを断ったくせに

エリー:どれだけ地獄耳なのよ、本当にあなたって地獄の底まで追いかけてきそうね

TSUBASA:エリーにはそれだけの勝ちがあると思うわ、まあ、それはともかく

エリー:ともかく?

TSUBASA:私にできることなら、できる限り協力するわ。へっぽこ先生さん?

 

 あれ? この部屋の何処かに盗聴器でも仕掛けてるんじゃないよね?

 背筋が凍るような想いを感じながらも、話を続けた。

 

TSUBASA:なるほど、レッスンか……私もアドバイスはできるけど、専門知識はないわね

エリー:まあ、ツバサのアドバイスなら、雛も親鳥になるわよ。

TSUBASA:あんまり褒められてる気がしないけど、それなら、英玲奈とかにこさんとかを頼ると良いんじゃない?

エリー:ああ、確かに。二人はUTXでスクールアイドルを教えているんだものね

 

 検討もしていなかっただけに、自分の視野の狭さにちょっとだけ自己嫌悪。

 

TSUBASA:英玲奈にアポを取るんなら、私が付き合ってあげてもいいわ!

エリー:あなた暇なの? というか体よく英玲奈と付き合ってお酒飲みたいだけなんじゃ

TSUBASA:ふふ、そうとも言うわね。おっと、マネージャーが怖い目をして睨んでる、んじゃ!

 

 ツバサは相変わらず忙しそう。

 アイドルに復帰してからというもの、ほとんど毎日彼女の姿を見かけている。

 トーク番組ではすっかり毒舌キャラを確立してしまったし、オンラインゲームが趣味というのも暴露して

 もうなんていうか、おっさん系アイドル筆頭株になってしまった。

 それを彼女が望んだのかどうかまでは知らないけど……まあ、ストレスが溜まったら、一緒にお酒でも飲もう。

 

 

 にこにとりあえず、教えを請いたいというメールを送ってから

 翌日に走ろうと思っているランニングコースをグーグルマップでにらめっこしていると

 ドアがコンコンと叩かれたと同時に開き、赤ら顔の理亞さんが入ってきた。

 

「池田ァ!」

「違う、私は澤村」

「ふん、どっちでもいいじゃない、偽名なんだから。暇ならちょっと付き合いなさいよ」

「ヒマじゃないんだけど、今メール待ちなんだけど」

「バラすわよ?」

 

 何をと問いかける必要もない。

 一つため息を付いて、彼女についていく。

 

 理亞さんの部屋はカオスだった。

 床にはたくさんの積みゲー、壁という壁にはスクールアイドルとかアイドルのポスター。

 もちろんμ'sもいる。

 

「これ、のいぢ?」

「そうよ。ダイヤモンドプリンセスワークスのキャラを書いたポスター、しかも全キャラクター」

 

 私たちを書いたのかと思った……それくらい判断に困るというか、はっきりいって見分けがつかない。

 まあ、元のソフトからして自分たちそっくりだから訴えればなんか勝てそう。

 

「その、少しは片付けたほうが」

「あなたは嫁を片付けられるの?」

 

 嫁て。

 その嫁を床に置くぞんざいな扱いは……。

 

「じゃあ、一杯飲みなさい」

「まあ、飲むけど」

「それじゃあ、私のおすすめのエロゲーをプレイしなさい」

「早く寝たいんだけど」

「だめ」

 

 駄目かあ……。

 

 

「それで、あの子達の実力見たんでしょ、感想は?」

「かなりレベル高いんじゃないの?」

「ポテンシャルはね」

 

 理亞さんは4杯目のストロングゼロを飲みながら答える。

 ちなみにPCではAqoursをモデルにしたと思われる、ダイワーの続編の体験版が映っている。

 プレイ当初は解説のように冷静にプレイしていた理亞さんも、やがて興奮してきて

 絶対買う! 私たち出なくてもいいから買う! と言っていた。

 

「今のままでも、恐らく私のプロデューサーが付けば売れるわ、朱音の歌は聞いた?」

「なんであの子微妙に歌のセンスないの?」

「いいのよ、歌いたい歌を歌えるなんて今のうちしかないんだから」

 

 理亞さんは遠い目をしながら答える。

 

「エヴァちゃんはダンスすごかったし、朝日ちゃんもかなり良かった。善子さんもさすがね」

「ハニワプロの意向では、あの4人を組ませるつもりらしいけど、どうでしょうね」

「一日見た限りだけど、無理そう」

「うん、まあ、わかってる」

 

 相性が悪いとか、仲が悪いとか、そういう意味ではなく。

 単純に4人の個性が強すぎてグループとして破綻しそう。

 例えるならA-RISEが9人いる感じ。

 

「あのグループには残念ながらまとめ役がいないのよ、だからね、今はそれに適した人を探してる」

「ふうん? じゃあ、誰か新しい子が来るのね?」

「何言ってんのよ、5人目のメンバー」

「……はい?」

「どうなるかは知ったこっちゃないけど、仲良くなったあとに正体を明かして、結束を高めるシナリオらしいわ」

「ふふ、まるでダイヤモンドプリンセスワークスみたいね」

「あなたの人生みたいなクソゲー扱いしないで」

 

 ひどい。

 

 

「いや、流石に無理でしょ。ブランクあるし、何より年齢が」

「しょうがないでしょ、ハニワプロがあなたを気に入ってるんだもの」

「止めてよ」

「あなたは一社員が会社の方針に逆らったらどうなるか知らないの?」

 

 理亞さんの援護射撃は期待でき無さそう。

 

「じゃあ、あなたのプロデューサーはどう思ってるの?」

「あなたの意向に任せるそうよ、その時が来たら全力でサポートするって」

 

 逃げ場ないじゃん……。

 亜里沙め、姉を就職させようと思ったからってまさかアイドルにしようとは!

 というか、アイドルに就職するって一般的な表現かな?

 

「ふうん、そのプロデューサーも私を買っているのね」

「大好きだそうよ」

「会ったことのない方から大好きと言われてもちょっと怖いな……」

 

 なにゆえ私を知る人物は、私に対する評価がムダに高いのか。

 これが、なろう流のチート属性というものか? 異世界に転生でもするのか私、

 

「まあ、そのうち分かるからあえて言わないけど……あなたって本当にμ'sで賢かったの?」

「何故かネットではポンコツ扱いされるケースが多々あったわ、解せない」

「ニートで数年過ごしているんだから、その予想正しかったんじゃない?」

「いやでも、自分でも先輩禁止はいい案だと思うのよ」

「なんて言われたの?」

「序列も理解できないポンコツとか、なれ合い主義者とか……」

「ふうん、ま、μ'sには合っていたんじゃないの? でも、あなたがポンコツ扱いされるのは白塗りの」

「やめて! それは自分でもどうにかしてたと思ってるのよ!」

 

 にこが主に自分以外をパシャパシャとデジカメに撮っているから、何をしているのかと思ったら

 ブログのネタにするためだったという件がある。残念ながらそのブログ記事は数日後海未の抗議で消されたけど

 ネットにアップしたものがそう簡単に消えるわけもなく……


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