アラサーニートエリちとキャリアウーマン亜里沙   作:桜川凛

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鹿角理亞ルート 16

 現在虹ヶ咲学園前。

 UTXみたいにビルなのか高校なのか分からない外観をしている高校を観ても、

 ああ、そんなものなのかな? と思った私。

 過去にオトノキが流行らなくて生徒数が減少した時でさえ、

 ここにはここなりの良いところがたくさんあるし! と思ってた。

 オシャレで清潔感のある、目を引く外観をした虹ヶ咲学園を見上げながら、

 もしかしたら近い未来にオトノキも繰り返し廃校の危機を迎えるのかも知れない。

 なんて考えた。

 そりゃあ、自身の出身の場所を貶めるようなことは考えたくないけど、

 流行には流行りも廃りも当然のように存在する。

 未来にオトノキみたいな場所が、むしろ新鮮さを持って捉えられ、

 私の想像など風の前の塵のように吹き飛ばしてくれる可能性はあるけれど。

 

「増築を何度も繰り返しているUTXよりも立派ですね……」

 

 ちなみに隣にいるのは優木せつ菜ちゃん。

 ツバサを中心としたメンバーから全身全霊を込めた報復を与えられ、

 腕があらぬ方向に曲がっていたような気もするけれど――

 20秒位で復活を果たし、

 失礼なことをしたので私が絵里さんをエスコートします! と宣言。

 当然周囲の女性たちは反対もしたし、何いってんだみたいな態度を取られたけど。

 強固な意志で説得に耳を傾けず、最終的にはエマちゃんが

 ツバサと真姫にアンチエイジングの方法を尋ね、

 若い若いとおだてられた二人は私を見捨て4人でお茶に行ってしまった。

 ちなみに和木さんも一緒、彼女は私と真姫を引き離したくて工作に走ったし。

 

「あまり絵里に近づかないことです」

 

 エヴァちゃんはせつ菜ちゃんを最大限警戒中。

 ちなみに中にいる雪姫ちゃんも、きしゃーきしゃー言いながら威嚇してる。

 小動物が必死になって抵抗しているみたいでとても可愛らしいけれど、

 聞こえているのが私だけというのが難点、ブイチューバーな感じで放送したら、

 さぞかし人気を集めるに違いない、女子小学生が威嚇してみたとかで。

 輝夜月とかキズナアイレベルで有名になってしまうかも。

 絢瀬絵里がデビューした暁には吹き替えはのじゃロリおじさんでお願いします――

 

 校内の中に入れないかも知れないと思ったけど、

 一部スクールアイドルがイベントをしているとかで自由に入場することができた。

 挙動が怪しいであるとか、見た目が怪しいである人間はいないので安心。

 自分が年甲斐もなく美少女二人引き連れてるアラサーであるという事実は棚に上げる。

 

「耳に届く声がするわね」

「絵里も聞こえた?」

 

 エヴァちゃんと一緒にあたりをキョロキョロと見回す。

 大きい声を張り上げているわけでも、

 特徴的な声をしているわけでもなく。

 雑踏の中でも特別輝きを放って――耳に入るから、輝きとは違うんだけども。

 しかし声はすれども姿は見えず。

 人が多いせいで誰が出している声だかわからないし、

 チラシを配っていると思しき少女はそこら中にいるので特定することができない。

 

「あの人じゃないですか?」

 

 1メートル以内に近づくなとあらゆる女性から厳命されても、

 エヴァちゃんの絶対零度の怒りに触れてもなおどこ吹く風。

 UTXナンバーワンアイドル(自称)の優木せつ菜ちゃんは私に距離を近づけてくる。

 あえて文字にするなら「コァァァァァ!?」みたいな声を出す雪姫ちゃんの喉が心配。

 

「彼女もスクールアイドルなのかしら?」

「確かにアイドルがビラ配りをするのはよくあることです」

 

 せつ菜ちゃんと私との間に割り込むようにしてエヴァちゃんが乱入。

 彼女は左腕を絡め取るようにしたり、せつ菜ちゃんを警戒したりとすごく忙しそう。

 もっと私にせつ菜ちゃんを邪険に扱って欲しいみたいだけど、 

 どうにもそういう事ができない、真面目で融通のきかない一面が自分を彷彿とさせるのかも知れない。

 

「ちなみにせつ菜ちゃん、見た目からしてバストサイズはどう?」

「82センチと識別しました」

「この離れた距離で胸のサイズにだけ優れた洞察力を発揮するのはどうなんですか」

 

 先ほどおっぱいに関して熱く語ってくれたので、

 冗談半分で大きさとかカップは分かるのって問いかけてみたら、

 分かりますよ? と何気ない調子で答えられてしまい一同驚愕。

 言葉を聞いた全員が全員エマちゃんのバストに着目し、

 当人でさえ「あ、ネタにされたな?」みたいな感じで諦めた表情を浮かべ、

 せつ菜ちゃんに解説を求めた。

 ――92センチという規格外のサイズだったけれど、

 今の彼女はμ'sであった時代の園田海未と同じ年齢だっていうことを認識し、

 エマちゃんが大きいのか海未が普通であったのか。

 とりあえず彼女には知られないように努力しようと思う、何があっても。

 

「気になる、絵里?」

「なんだか目を離せないわね、動悸かしら」

「そこは恋であったほうが自然だと思います」

 

 小ボケにクールにツッコミを入れるせつ菜ちゃん。

 でもなぜか、恋という単語にエヴァちゃんも雪姫ちゃんも敏感に反応、

 敵意の視線が激しく高まり、まあまあと二人をなだめながら目を引く彼女の元へと向かった。

 

「スクールアイドル”いざ鎌倉”ライブしまーす!」

 

 ガクッと来た。

 μ'sであるとか、A-RISEというのが一般的なスクールアイドルの名前である、

 なんて断定はしないけれど。

 何故お台場にある虹ヶ咲学園のアイドルの名前が”いざ鎌倉”であるのか、

 どうしてそんな名前にしようと思ったのか、確かにインパクトはあるけど。

 しかしながらチラシを配る彼女がいくら努力をしようとも、

 受け取ってくれる人は少なく、手に持っている紙は減る様子が見えない。

 

「彼女がグループのセンターに居るなら観ても良いかも」

「絵里の中で高評価だね」

「Dですね」

「そこは解説は求めてないのよ」

 

 ――真面目なところがきっとネタ方面に走りがちなんだと思う。

 

 

 大人しそう――という私の第一印象がどれほど正確であったか。

 エマちゃんにも同様の感想を抱いているので、

 人間は見た目通りの性格をしていることは少ないのかもしれない。

 自分の直感が鈍いという想像は棚に上げる。

  

 上原歩夢さんはチラシ配りの手を止めて、

 金髪と銀髪と黒髪という妙な三人組をみやり、

 ニッコリと微笑んでみせた。

 自分に興味を持たれたことをいち早く認識し、

 自身の味方であると把握した模様――私にはおおよそできない芸当。

 その時点でただのおとなしい少女ではなさそうと思ったけれど、

 彼女の才能の優れている部分はなんとなく伝わったではあるので、

 歩夢さんが”いざ鎌倉”の一員であることを信じつつ声を掛けてみる。

 

「え? ああ、私はただのお手伝いです」

 

 しょんぼり。

 私が露骨にがっかりしてみせたのが功を奏したのか、

 歩夢さんは虹ヶ咲のアイドルのアピールポイントを挙げてくれるけど、

 その表現に怪訝な表情を見せたのはUTXのトップ(自称)なせつ菜ちゃん。

 

「メンバーは中で待機ですか?」

 

 同じスクールアイドルとしてのライバル意識かと思いきや、

 咎を責めるみたいな真剣な面持ちで、

 なんとなく目を引く凛とした顔つきなので、

 首を傾げながら、何故同性の子にここまで興味が惹かれるのかな? なんて考えた。

 美少女さ具合で語るなら、ここにいるエヴァちゃんであったり

 元気に仕事中の理亞ちゃんもそう、不承不承ツバサも挙げておく。

 近づかれるとほかの可愛い子には感じないような、

 動悸息切れ悲しくないのに涙が出ちゃう――ウキウキ恋煩い。

 そんな訳はなかろうと思う、たぶん。

 

「いえ、あまり知名度のないグループが

 自身でビラ配りもせずに待機しているという光景が

 妙なものに映ったので」

 

 私も違和感を覚えていることではあったのだけど、

 確かにもともと部活動であるスクールアイドルだけあって、

 よほど有名なトップでもないかぎり事前準備や作業は自分たちも行う。

 A-RISEもUTXのプロモーションとしてアイドルである以上は

 トップがファンと距離を近づけてはいけないという建前もあって、

 当人いわく「結構偉そうにふんぞり返っていた」らしい。

 UTXも一度落ち目を迎えたのが大きかったのか、

 アイドルとしてファンから愛される存在を意識した結果、

 現トップのせつ菜ちゃんも例外なく、力仕事を中心にこき使われているみたい。

 周りが女の子ばかりだっていうのは何? あなたもその女の子なのでは?

 

「絵里さん、ちょっと喝入れてきます、喝」

「え、私連れて行ってくれないの?」

「絵里はこの人の好感度高いですね? 僭越ながら私も手伝います」

 

 ビラ配りをしている彼女一人、

 え、そんなことしますのん? みたいな表情を浮かべつつ、

 多少の疑問点はあるのか私たちを止めなかった。

 しかしながら、自分は巻き込まないでくださいという人間を

 やたら引っ張り込みたくなる習性を私もせつ菜ちゃんも持ち合わせていたので、

 この場で待機しようとした歩夢さんを引っ張り込むで連れて行く。

 目標は”いざ鎌倉”――いや、なんていうか、

 私たち武士か何かではないけど、ほんとう妙なグループ名よね?

 

 

 過去ちょっとスクールアイドルやってましたな私よりも、

 アイドルとして事務所に所属していて知名度もそれなりにあるエヴァちゃんよりも、

 学園が目標とするUTXのトップスクールアイドル(事実)な優木せつ菜ちゃんは

 思ったよりも歓迎されることとなった。

 が、彼女たちはせつ菜ちゃんを知っていても、

 当人が”いざ鎌倉”というグループを知っているかに関しては事実の把握が遅かった。

 インパクトが有り、確かに一度目にすれば忘れないような名前を持っていても、

 認知をされるかどうかは別問題、UTXに限らず目立つ名前のスクールアイドルなど腐るほどいるらしいし。

 

「東京でも有数のグループなんですね」

 

 ここまで来たのだから自分たちに興味を持ったのであろうという想像はある意味では正しい。

 それがポジティブな方面でないことを察するスキルが低いのは、

 別に彼女たちの責任じゃない、私もたぶん同じことをされたら一緒に頑張りましょう! 

 とか言って後からニコや真姫あたりに空気を読めって怒られると思うし。

 が、μ'sを昔のスクールアイドルくらいにしか知らなかったことと、

 先頭を切ってグループのするべき仕事に励んでいた歩夢さんに対する把握がなされなかったことは、

 すでにせつ菜ちゃんの憤慨ポイントを如実に高めてしまい。

 ついてきたはいいものの、何もすることがない。

 怒る彼女に引っ張られ同調してしまった手前、

 では後はなかよしこよしでごゆっくりと退場をすることもできず、

 自身の迂闊さを反省しながら歩夢さんに話しかけてみる。

 

「本当にスクールアイドルμ'sの絢瀬絵里さんなんですか?」

「一応同姓同名の可能性はあるけど……」

 

 ツバサや穂乃果あたりにも、

 μ's時代の絢瀬絵里といまの絢瀬絵里は別物疑惑があって、

 もっと賢くなかった? そんなにポンコツだった?

 みたいな扱いはされることもある。

 が、私みたいな人間が世の中に複数人いるとすれば、

 さぞかし周りに迷惑をかけるであろうので、

 まあ、たぶん、そういうことなんだろうとは思う。

 なお、スクールアイドルに関する知識がそれほどない歩夢さんでも、

 μ'sのことは結構有名な存在だったらしく。

 自身の高校のスクールアイドルが私たちを知らないという話は、

 驚きを持って迎えられた模様。

 なお過去に放送されたアニメにおいてμ'sを知らないとされた梨子ちゃんも、

 そんなわけ無いですの一言ともにその事実を否定してくれた。

 そりゃそうだ、横浜高校に通ってて松坂大輔知らないレベルだもんね?

 

「私の中でμ'sってすごくて、小さいころ、すごい人がいるなーって」

 

 私たちが活躍をしているころ、

 上原歩夢さんは小学校入学したてみたいな事実を知り、

 ダメージを受けるアラサー(笑)

 東京でも東京扱いされない田舎出身だという彼女も、

 テレビや周囲の女の子たちの出す話題はμ'sとかA-RISEだったらしく、

 興味本位で誰を推してたの? って尋ねたらすごく困った表情を浮かべて、

 海未の名前を挙げてた。私はって聞いたら、

 それ以上はダメだって、エヴァちゃんと雪姫ちゃんに静止された。

 

「憧れるのと同時に、こうはなれないと諦める気持ちもありました。

 この学園に入ってから部活動や委員会のお手伝いを続けて、

 私は頑張っている人の応援をするのが好きなのかなって」

 

 私自身が断じるわけではないけど、

 身勝手と言わればそれまで。

 自分ができないから人のことを応援するという気持ちは、

 何も決して悪いものじゃない。

 みんながみんな自分が自分が! と自己主張と自分語りを始めれば

 交流とかあったものじゃないけれど。

 だからといって、自分ができないことを人任せにすることは、

 応援するという言葉に置き換えて良いものじゃない。

 ボランティアでもそうだけど、善意の行動に見返りを求めてしまうと、

 いいえぬ争いごとが始まってしまうことは多かったりもする。

 でも、善意を否定なんかできない。

 身勝手な要素があれど、見返りを求める部分があっても、

 気持ちの代替により応援するという行動にとどまっていても、

 友人であるならともかく、私なんぞが違うからやめよう? 

 なんてことは言えない、そもそも説得力がまるでない。

 

「勝手ではあるんですが、私けっこうグループに協力したつもりだったんです。

 ちょっと残念ですね……」

 

 歩夢さんはちょっと周囲が見えていないとするべきなのか、

 私が必要以上にせつ菜ちゃんの怒りっぷりを分かりきっているのか。

 建前上アイドルであるので、笑顔の仮面こそ貼り付けているけど

 声色には微妙に怒気が漏れて、先ほどから両手はグーになりっぱなし。

 裏方を蔑ろにすることはスクールアイドルにとってタブー中のタブー。

 一般生徒は善意の協力者であり、応援して貰えるのが当然などと思っていては、

 スクールアイドルとしては落第点。

 私が意外と裏方に回るケースがあったからではなく、 

 UTXのA-RISEを中心としたグループも見えないところでフォローはしていたし、

 ツン期全開の理亞ちゃんや、人の顔を記憶するのが苦手な聖良さんでさえ、

 自分たちを支えてくれる人がいたからと感謝の気持ちは絶えてない。

 歩夢さんのバストサイズを寸分違わず当ててみせ、

 ブラジャーのブランド(上手いこと言った)も見もしないのに把握していて、

 この人なんなんだと思うのは仕方ないにせよ、

 せつ菜ちゃんが歩夢さんのために怒り狂ってるのは感じて欲しいところ。

 

「え? 本当に私も参加しても良いんですか?」

 

 私もおそらく苦笑いを浮かべているけど、

 あまり表情を変えることがない(他人にそもそも興味がない)エヴァちゃんも、

 うわぁみたいな顔をしている(雪姫ちゃんは中でうわぁって言ってる)

 詳しいトークの経緯は伏すけど、

 イベントに自分を参加させててめえらのメンツを叩き潰すという意図そのままに、

 できるだけ相手から参加して欲しいとお願いされる形で会話を誘導してみせた。

 それに気がついているのは、私とエヴァちゃんと歩夢さんくらい。

 ようやくここに来て裏方に精を出していた自分をかばってこんなことをしていると気づいたみたいで、せつ菜ちゃんへの尊敬度が上がった模様。

 本来真面目で熱血なスクールアイドルなんですよ? 真面目ゆえにネタに走るだけで。

 

「あ、ソルゲ組の音源もあるんですか? すごいですね! 

 偶然にもここに絢瀬絵里さんがいるんですよ! 参加してもらえないかなあ……?」

 

 ちらっと私を見るせつ菜ちゃん。

 態度こそ申し訳なさそうに、できれば参加してほしいなあ? 

 と思っているようではあるけど、おそらく本心はついてきたんだから分かってますよね?

 なのではないかと。

 年下の子を生贄に捧げてふんぞり返っているのは絢瀬絵里としても胸が痛いので、

 意気揚々と頷いてみると。

 

「え? μ'sが一昔前のスクールアイドルではないかって? あはは……」

 

 μ'sのことはさほど知らずとも、

 30近い年齢の年上のオバサンがまともに踊れるわけがないと思うのは当然。

 今もなおトップアイドルとして仕事をしているツバサみたいな人が別格で、

 アイドルの賞味期限はだいたい25歳くらい。

 だからこそセイントムーンの芸能活動の撤退もさほど引き留められなかったし、

 そのメンバーの妹である理亞ちゃんでさえ、アイドルグループの中ではかなり年上のメンバーである。

 ただ、私自身もアイドルグループのエス・ディー・エスの一員として理亞ちゃんの動きと遜色なく踊れていると思うし、

 一部ではババア無理すんなとネタにはされているけど、

 けっこう尊敬の念を持って観ている人は多いみたいですよ? 聞いた話だけど。

 

「えー、そんなコトないですってー」

 

 優木せつ菜ちゃんの参加は歓迎しても、 

 旧人類みたいな扱いの私や、私を貶されたことにより準備を始めたエヴァちゃんには来てほしくないらしい。

 スクールアイドルだけでイベントはやりましょう!

 みたいな提案をすれば問題は解決するのに、それをしないでいるのは、

 その事を考えていないのか、好意的に見ればせつ菜ちゃんの機嫌を損ねて

 話をなかったコトにされたくないのか。

 歩夢さんが一人、どちらに味方をすれば良いんだろうみたいな態度で困っているので、

 私は先ほどせつ菜ちゃんが言い放った下着のブランドが正解かどうか尋ねてみた。

 彼女は困った表情しながら、こういうところにお金はかけるべきだと言われて……

 と、正解であることを教えてくれたけど。

 ほんとう、露出してもない下着のブランドを当てるとかどういう眼力であるのか……。

 そして、私がちょっとスルーしている間にいざ鎌倉の面々を納得させて、

 絢瀬絵里、優木せつ菜、エヴァリーナという即席のソルゲ組のイベントの参加を決まらせるトーク術――今度教えてもらおうと私は思った。

 

 

 一同集まっての作戦会議。

 いざ鎌倉側と即席ソルゲ組に分かれ、

 事前準備という名目によりそれぞれが好き勝手に時間を過ごしていく中。

 虹ヶ咲学園の学生にありながらこちら側に引きずり込んでしまった歩夢さんには、

 本当に申し訳立たなくて仕方がないんだけども。

 ただ誰かの手伝いをするのが好きという言葉通り、

 どこぞから衣装を持ってきてアラサーという年齢にある私も

 パっと見どこかからやってきたスクールアイドルに見えなくもないくらいには、

 外見では整えられた様子。

 ――口を開くとボロが出るという忠告は聞かなかったことにする。

 

 もともとスクールアイドルで名を売ろうとしている高校だけあって、

 どこぞの分からないグループに乱入されようともイベントをこなせる程度には

 スタッフの皆様は優秀らしい。

 中にはμ'sと同時期に関東圏で活動をしていたというスクールアイドルの方もいて、

 夢みたいです! とあまりに褒め称えてくれるので、

 いまはツバサと同じ事務所で踊っていると言ったら、

 サインを貰ってきてくれませんか! と、先ほどよりも強い勢いで言われてしまい、

 歩夢さんを通じて彼女にはプレゼントが送られることとなった。

 その分私たちのステージでは頑張ってくれると言うので、

 是非にも私のために頑張っていただきたい、ツバサにサインをお願いしておくので。

 

 自分以外の人間がピチピチの10代のチャンネー(アラサー流の表現)であり、

 アラサーであることを隠しつつ、髪の毛をツインテールにして澤村英梨々とでも名乗ろうかと思ったけど、

 ツインテールはバストサイズをサバ読みするんですよね?

 と、反応に困る指摘を受けて諦める。

 ニコは顔が広いので、どこで絢瀬絵里が悪口を言ったか把握しそうなので、

 迂闊に3センチサバ読みをしたところでμ'sの中で一番下だという事実は、

 私の胸の中にとっておくことにする、容量は大きそうな気がする、見た目的に。 

 なお、川澄詩衣さんと名乗る方も凛の暴露により、

 四捨五入すると70になるらしい、あの、苦労しているからね? 胸の大きさでステータスは決まらないからね?

 

「センターに立つのが私というのが不承不承ではありますが……」

 

 説得の際に目立つのは優木せつ菜であることを約束してしまったらしく、 

 ちょっと動きを合わせると称して3人で踊ってみたら、

 私しか見てないエヴァちゃんと、とりあえずやってみようの私と、

 そんな二人に振り回されるセンター(笑)の構図が誕生した。

 ちょっとびっくりしたんだけども、スクールアイドルのイベントにもかかわらず

 様々なゲストが入り乱れて2時間くらいのステージで、

 自分たちの出番まで1時間以上もあったりする。

 北は栃木、南は静岡から遠征しに来るスクールアイドルのほうが、

 虹ヶ咲学園のアイドルよりもレベルが高いのではないか疑惑があり、

 以前会った時にスクールアイドルをやってくれると約束したエマちゃんも、

 イメージと違うという理由でグループに所属せず、気のあった仲間と自由気ままに過ごしている様子から察するに、この高校はえっと……。

 が、スクールアイドルに逆風が吹いているという状況は、

 優木せつ菜ちゃんの熱血ポイントを刺激するらしく、 

 是が非でもスクールアイドルの底力を見せましょう! と、私にばっかり言ってる。

 確かに三人で着替えとなった際にも、お前はあっちいけと言わんばかりに

 せつ菜ちゃんを壁際に押しつけて潰そうとしたので、

 苦笑しながらダメでしょって優しく忠告したら、

 エヴァちゃんが渋々と言った調子で着替え始めたらせつ菜ちゃんのほうが退場した。

 肌を露出をするのがあまりということなので、そういった部分があるアイドルも素敵だとフォローしておいた。

 私もそう! とエヴァちゃんが負けずに主張したけど、下着まで脱いで着替えようとした彼女が露出するのが苦手とはこれいかに。

 しかし、エヴァちゃんとせつ菜ちゃんは肌の露出が最小限抑えられた

 クラシカルなスタイルにとどまっているのに、

 年上の私一人がやたら露出が激しいのはどういった経緯と思惑があってのこと?

 例えるなら私だけがNo brand girlsで、二人がLove wing bell(タキシード風)みたいな感じね?

 ちなみに誰かの指示で本当にNo bra girlなんだけども、あ、girlって年齢じゃないわ。

 

「即席ではありますが、グループ名はどうしましょう」

 

 もともと身体を動かすのが得意な面々だけあって、

 30分もすればお互いの動きを観察して合わせる程度のことはできるようになり、

 最初は笑っちゃうくらいバラバラな3人も、

 「え、何この人たち……」みたいなコメントを発した歩夢さんから察するに皆からの評価もうなぎのぼり(たぶん)

 せつ菜ちゃんもセンターとしてがんばりますと意気込みも新たにして貰ったので、

 なんとかある程度のパフォーマンスは披露できると思う。

 

「そうね……私は命名センスが無いから、エヴァちゃんは?」

「処女(おとめ)はお姉さま(ボク)に恋してるとか?」

 

 それはなんだか2に私の声っぽい人がいるゲームじゃない?

 何よりグループ名っぽい提案ではないので、エヴァちゃんには自重を促し、

 私も文句を言ってばかりでは難なので、少しは考えてみることにした。

 

「せつ菜ちゃんの好きなものって何?」

「おっぱ」

「それ以外で、あとボケに走らなくてもいいのよ?」

「いえ、実際好きなものは好きですから」

 

 相手に告白するのではないかっていうくらい、

 本当に真剣極まりない顔をしながら私はおっぱいが好きですと告白されても。

 先ほどから私達と一緒にいて、尊敬の視線を向けたり、何だこいつって目をしたり、

 上原歩夢さんが忙しいから、そこはせめて平均的にすごいなって目でいてほしいし。

 でも実際問題すごいのよ? 

 フツーのスクールアイドルは死角から飛んでくるエヴァちゃんの飛び膝蹴りを

 気配だけで察して避けて見せた上に、これは演出と言わんばかりに

 動きを止めなかったという姿。

 あまりに自然だから事前に打ち合わせたのかと思ったら、

 エヴァちゃんが本気で忌々しいものを見る目で睨みつけてたから察した。

 なので、女の子には暴力振るっちゃダメ、振るうなら私みたいなのにしなさいと言ったら、

 返事だけは高らかにわかった! と言ってくれたけど……。

 

「じゃあ……ALSTROEMERIAで」

「ログインボーナスで貰えそうだね?」

「350日ログインって大変ですよね、性能はがっかりですが」

 

 ちなみに花言葉は”未来への希望”

 私たちの未来が輝かしく明るいものになりますようにという意味を込めて。


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