久々の更新ですね。
そのうえ、少々短いという………。
太陽が憎らしくなるカンカン照りのある夏の日。
万事屋には銀時、新八、神楽の姿が無く、扇風機を真正面に置きソファで熟睡している黒瀬一人しかいなかった。
蝉が鳴き、苛々するほど蒸し暑いなか眠れるとは、なかなかに睡眠に対する執着が強いらしい。
しかしだからと言って、ずっと寝ていられるわけじゃない。
事務机にある電話が鳴り出したのだ。
最初の内は無視を決め込んでいた黒瀬だったが、どれだけ待っても鳴り止まないため仕方なく電話に出る事にした。
「……はい。金ならねェぞ、ざまぁみろ」
電話相手を振り込め詐欺かお登勢と想定して出た言葉だろう。はたまた寝ぼけているのか。
何はともあれ、電話相手は困惑必至である。
と、思ったのだが。
『何言ってんですかィ、黒の旦那ァ』
「えーと……誰だ?」
頭の回転の悪さと寝起きが相まって、知り合いのような話し方をする相手が一体誰なのか判断できない。
『あらら、分からねーとはひでぇや。沖田総悟でさァ』
「……あー、
『実はかくかくしかじかでして……』
欠伸しながら沖田の話を流し聞きしつつ、ソファに掛けてあった着流しを羽織る。
外出せざるを得ない何かしらかの用事だろうなと、予想した上での準備だ。
『ちょっくら、今から屯所に来てくだせェ』
「……はい?」
意図が読めない沖田の言葉に、黒瀬はただ目を
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炎天下の外を歩き真選組屯所へ着いた黒瀬は、そのまま庭の方へと通された。
呼び出した張本人である沖田に案内された先には、呼び出されたことに納得のいく理由があった。
「どこに行ったんかと思えば……見事な逆さ吊りだな。滑稽だよ三馬鹿」
腕を組み軽蔑の色を宿す半眼の黒瀬の正面に、縄でグルグル巻きにされ木に逆さ吊りにされている銀時と新八、神楽がいたのだ。
彼らの向かいにある縁側には、三人を捕獲したであろう土方と近藤が座っていた。
しかし、実際に逆さ吊りにしたのは沖田の仕業なのだろう。手慣れている感が否めない。
「生憎、てめーらみてーのに関わってるほど暇じゃねーんだ。さっさとアイツら連れて消えろや」
「呼んどいてそりゃねェだろ。来てやっただけ有難いと思え」
「テメーなんざ、頼まれても俺は呼ばねェ」
「そう言ってやるな、トシ」
近藤に
言われなくとも、そんな事は百も承知。
実際、万事屋に電話をかけてきたのは沖田であり、この呼び出しが逆さ吊りの刑に処されている三人の身元引き受けだけではなく、土方に対するちょっとした嫌がらせというのが本当の用件としか思えない。
それはさて置き。
「ところでさァ、何でアイツらあんな格好してんだ?」
「おや、知らねーんですかィ?じゃあ、使えねー土方さんに代わり俺が説明しまさァ」
吊るされた三人の状況や具合悪そうに「下ろして」と言う懇願の言葉よりも、真選組に来た理由と服装を疑問に思っていた黒瀬。
普段の服装ではなく、ただただ如何わしいとしか思えない珍妙な服装。
沖田の「使えない」発言に、後ろでどうのこうのと土方が抗議しているが当の沖田は気にせず、銀時に炭酸飲料をかけながら淡々と説明する。
いつものように仕事の無かった彼らが、夏だからという理由でオバケ退治を請け負うと街でふれ回っていたところ、真選組監察ジミーこと山崎に連れられて屯所に来たという。どうやら、祓い屋をイメージしたコスプレもとい変装だったようだ。結局バレて現在に至ったとのこと。
「あのー……もうそろそろ下ろしてくれませんか……?」
「もう駄目アル……頭パーンってなるヨ……」
「いい加減にしろよてめーら!この流れさっきもやったろーが!さっさと下ろせ腐れポリ公コラァァ‼︎」
自業自得にも関わらず、妙に強気で逆ギレをかます銀時。
黒瀬が到着する以前に下ろすよう訴えたようだが、サド王子沖田のせいか不機嫌な土方のせいか訴えは聞き入れられなかったらしい。
「俺は一応、コイツら引き取りに来た立場だからなァ。ただし、天パはいらねェ。サンドバッグにでもすればいい」
「この後に及んで何言ってんだ黒瀬コノヤロー‼︎銀さんの頭が爆発しちゃうよ⁉︎いいのかてめー‼︎」
「すでに爆発してんだろ。あ、違ェわ。そういう髪型だったな」
「ハイ今、全国の天パの皆さん敵に回しましたァ‼︎知らねーからな!謝るなら今のうちだぞコノヤロー‼︎」
逆さ
しかし、銀時と黒瀬が不毛な言い争いをしている最中、傍観していた土方が
結局、蓑虫三人は逆さ吊りの刑から解放され、一人ケラケラ笑っていた黒瀬は仕返しとばかりに、銀時から一発拳骨をもらうのだった。
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一つの冗談かと思って、本気にしていなかった屯所内での幽霊騒動。
しかし、精神的ダメージを与える程度には被害が出ているらしく、現に近藤が
土方にとっては部外者に知られたくない失態である。
「情けねーよ。まさか、幽霊騒ぎ如きで隊がここまで乱れちまうたァ」
土方はタバコをくわえたまま苦々しく言う。
普段の真選組については知らないが、それでも妙に人が少なかったのは幽霊騒ぎで寝込んでいる隊員が多いからだったらしい。
寝込むほど強烈な幽霊だったのだろうか。
「こっちもどう出ればいいのか、皆目見当もつかねェ」
たかが幽霊、されど幽霊。
聞けばただの笑い話にしかならないジョークの一つだが、当事者からしてみればそうもいかない。
頭を悩ませる事態にまで発展しているのだから、尚更だ。
だが、その弱みを見逃さず、うざったらしく突くプロが約一名……銀時だ。
「え?何?幽霊なんて信じてるの。痛い痛い痛いよ〜お母さ〜ん、ここに頭怪我してる人がいるよ〜」
「お前、いつか殺してやるからな」
左腕を押さえ馬鹿にした言葉を並べ立てる銀時に、土方は青筋を浮かべて軽い殺意を口にした。
そこへ、心当たりがあるのか沖田が問う。
「まさか、土方さんも見たんですかィ?赤い着物の女」
「わからねェ……だが、妙なモンの気配は感じた。ありゃ多分、人間じゃねェ」
至極真面目な返答に、しかし奴らは幽霊という点で突っかかる。
「痛い痛い痛い痛い痛いよ〜お父さ〜ん!」
「絆創膏持ってきてェェ‼︎人一人包み込めるくらいの!」
「おめーら打ち合わせでもしたのか‼︎」
並んで左腕を押さえ、土方を馬鹿にすることに置いて妙に息ピッタリな銀時と沖田。性根が似ているのだろうか。
誰が見ても軽く殺意が湧くこと請け合いだ。
「赤い着物の女か……確か、そんな怪談ありましたね」
二人が土方の神経を逆撫でしている傍で、新八が思い出したように言った。
「怪談?ただの戯言じゃねェんか?」
「あれ?黒瀬さんは知らないんですね。僕の通ってた寺子屋で一時流行ったんですよ」
聞いたのが随分前だからなのか、新八は記憶にあるうろ覚えな怪談の内容を語り始める。
曰く、授業の終わった放課後。夕暮れ時に生徒が帰宅せず寺子屋で遊んでいると、誰もいないはずの教室に現れるというもの。赤い着物の女に出くわし、興味本位で何をしているのか尋ねると………。
「ぎゃあああああああ‼︎」
語りの最中、神楽同伴でトイレに行った近藤の悲鳴が屯所中に響き渡る。
怪談話の途中というタイミングもあって瞬時にこの場にいた全員が、屯所内のトイレへと向かう。
そこにはすでに、近藤の悲鳴から異常を感じ取った神楽が、トイレの個室の前でドアを叩き声を掛けていた。
発している言葉と迷わずトイレに入った神楽について色々と心配になるが、それよりも一向に出てくる気配のない近藤の安否が気になる。
神楽を退かせ、土方がドアを蹴破る。
こじ開けた扉の向こうには、予想外の光景があった。
「……何でそーなるの?」
「犬◯家……?」
洋式便器内に頭を突っ込み三点頭立しているような、情けない近藤の姿があった。
何がどうなってこんな格好になっているのか、皆目見当もつかない彼らはただ困惑するのみだった。