それでも彼は惰眠を貪る   作:夜無鷹

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前回から一週間。
前書きに精進、精進とか書きましたが、気のせいです。
気のせいという事にしといてください。


第八訓 あだ名って無理に考えなくてもいいと思うんだ

今日も今日とて仕事がない。

いつもの様に事務所兼居間のテーブルを囲み、各々(くつろ)いでいた。

が。

 

「俺が買い溜めていた大量のチョコが姿を消した。食べた奴は手ェ挙げろ。四分の三殺しで許してやる」

 

怒り心頭の阿呆が一人。甘味で怒れるのは銀時しかいない。

 

「四分の三って、ほとんど死んでんじゃないスか。っていうか、いい加減にしないとホント糖尿になりますよ」

 

茶を啜り、生活習慣病を危惧する新八。

趣味、嗜好は人それぞれ好きな物を楽しめばいいが、行き過ぎるのはどうだろう。

 

「もう手遅れだ。再三言っても聞かん。ならいっそのことチョコの沼で溺れて死ね。それが本望だろ」

「チョコの沼だと動けねェだろーが。イチゴ牛乳にしろコノヤロー」

「いや、論点そこじゃないでしょ」

 

新八と同じく茶を啜る黒瀬。

甘味がどうのこうのという話は、真摯に受け止めないほど散々聞き飽きた。

よって、予備軍だろうが既になっていようが、知らぬ存ぜぬ勝手に死ねというスタイルである。

 

「またも狙われた大使館。連続爆破テロ、凶行続く………物騒な世の中アルな〜」

 

新聞を開き、記事を読んだ神楽が感慨深く言う。

しかしそれよりも気になる事が一点。

鼻血が垂れ流しである。

すかさず銀時が神楽の顔を掴む。

 

「幸せそーに鼻血垂らしやがって。美味かったか、俺のチョコは」

「チョコ食べて鼻血なんて、そんなベタな〜」

 

と、ほぼ犯人確定である神楽がとぼけたとき、外で何かが壊れる盛大な物音がした。

何事かと四人が外に出ると、一階の"スナックお登勢"の前に野次馬が集まっており、ちょっとした騒動になっていた。

二階から下を覗き込むと、

 

「事故か………」

 

店に突っ込み横転したバイクの傍に、乗っていたであろう人が倒れていた。

 

「くらああああ‼人の店に何してくれとんじゃァァ‼死ぬ覚悟できてんだろーな‼」

 

怒声を上げたのは"スナックお登勢"の経営者、お登勢。

事故を起こした運転者の胸倉を掴み、今にも殴り掛からんばかりだった。

 

「ス、スンマセン………昨日からあまり寝てなかったもんで………」

「よっしゃ!今永遠に眠らしたらァァ‼」

「お登勢さん待って!怪我人にそんな!」

 

店を壊された恨みのままに拳を振り上げたお登勢を、急いで駆け付けた新八が止める。

 

「常日頃ろくに寝れとらん奴の前で言いやがるか………一発殴っていい?」

「いや待ってって言ったでしょ!便乗しないでください!」

 

黒瀬は人命救助よりストレス発散を優先しようとする。

当然、新八に止められたが。

四人は倒れている男の傍に寄り、新八が容態を診る。

 

「こりゃひどいや………神楽ちゃん、救急車呼んで」

「救急車ァァァァァ‼」

 

新八に言われ、神楽は全力で叫んだ。

辺り一帯に響き渡るほどの大声で。

 

「誰がそんな原始的な呼び方しろっつったよ」

「あー頭イッタイんだけど……どんな声帯しとるんだこのチャイナ娘」

 

叫んだところで救急車が来るはずもなく、神楽がただ無知とボケをさらしただけ。

とりあえず男の様子は新八と神楽が見ておくとして、銀時は散らばった届け物を拾い上げる。

大量の手紙だ。

どうやら男は飛脚であったらしい。

 

「これを……俺の代わりに、届けてください………お願い」

 

そう言って飛脚が取り出したのは小包。

 

「大事な届け物らしくて……届け損なったら俺、クビになっちゃうかも……お願いしまっ……」

 

銀時に小包を手渡すと、飛脚は力尽きてしまった。

大事な届け物。ましてや頼まれたとなれば放っておくわけにはいかない。

四人は仕方無いと思い、小包の送り先へ向かうことにした。

 

 

■■■■■■■■■■

 

 

小包の宛先へ向かい辿り着いたのは、物々しくも荘厳な建物。周囲を高い塀に囲まれ、出入り口には見上げるほどの鉄柵ゲート。

戌威星大使館。

戌威族は地球に最初に来た異星人にして、江戸城に大砲をブチ込み無理矢理開国させたとんでもない奴等である。

 

「嫌なとこ来ちゃったなオイ」

「何で宛先がここなんか」

 

変に事を荒立てたくはない。

 

「こんなトコで何やってんだ。食われてーのか、ああ?」

 

どうしたものかと大使館を見ていると、ゲート警備の戌威族が威圧してきた。

 

「いや……僕ら届け物頼まれただけで……」

「オラ、神楽、早く渡………」

「チッチッチッ、おいでワンちゃん、酢昆布あげるヨ」

 

戌威族を普通の犬扱いしている神楽。

銀時はすかさず神楽の頭を軽く叩く。

 

「あのなァ、こういうのはちゃんと誠意をもって渡さんと」

 

黒瀬は神楽が落とした小包みを拾い上げ、怪訝な顔をしている警備員に差し出す。

 

「ドッグフードかも知れん。受け取れワン公」

「誠意の意味わかってます!?」

 

誠意の欠片もない言葉に新八は焦る。

しかし戌威族警備員は意に介していないのか、激怒する様子はなかった。

 

「そんなもん食うか」

 

少しの苛立ちを含ませ、黒瀬の小包を持った手を弾く。

その拍子に小包が舞い上がり、鉄柵の奥、大使館の敷地内に落ちた。

瞬間、小包が爆発した。

鉄柵は折れ曲がり壊れ、爆風により石片が飛び散る。

 

「何かよくわかんねーけど、するべき事はよくわかるよ………逃げろォォォ!!」

「待てェェ!!テロリストォォ!!」

 

脱兎の如く駆け出したが、咄嗟の判断で動いた戌威族警備員に捕まってしまう。

警備員に新八が掴まれ、新八は銀時を、銀時は黒瀬を、黒瀬は神楽を掴み、逃げと道連れが列車繋ぎのようになっていた。

 

「新八ィィィ!!てめっどーいうつもりだ離しやがれっ!!」

「嫌だ!!一人で捕まるのは!!」

「どういうつもりだ銀時!!俺に構わんで新八と一緒に逝け!!」

「私に構わず逝って三人とも!!」

「ふざけんな!!お前らも道連れだ!!」

 

お前がお前がと喚いている中、あれよあれよとワン公が沸いてくる。

捕まりたくない、捕まるなら道連れだと仲間割れをし、このままでは全員仲良く御用となってしまう。

その時、群れを成すワン公が騒ぎ出す。

錫杖を手に、笠を被った男がワン公の頭を足場にして軽快に跳んでくる。

仕上げとばかりに新八の手を掴んでいたワン公を踏み倒し、舞い降りた男は笠を脱いだ。

 

「逃げるぞ。銀時、黒瀬」

「おまっ………ヅラ小太郎か⁉︎」

「ウソっ⁉︎ヅラか‼︎」

「ヅラじゃない桂だァァァ‼︎」

 

綺麗に登場したはずだったが本名を呼ばれなかったヅラこと、桂小太郎。

桂はヅラ呼ばわりされた怒りに任せ、二人にアッパーカットを食らわせた。

 

「てっ………てめっ、久し振りに会ったのにアッパーカットはないんじゃないの!?」

「か、加減を、加減をしてくれん?頭に響く………」

「貴様ら!!そのニックネームで呼ぶのは止めろと、何度も言ったはずだ!!」

 

長年に渡り染み付いた癖というものは、いくら言ったところで治らない。

この場合、癖というよりは、半分からかいに似た何かを感じるわけだが。

 

「つーかお前、何でこんなところに………」

「話は後だ銀時。行くぞ‼︎」

 

ワン公の増援が次々と現れ、このままでは(らち)があかないと銀時達は状況に流されるままに桂と逃げ出した。

その一部始終を、見られているとも知らずに。

 

 

◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️◼️

 

 

どうにかワン公を撒いた銀時達は、桂の案内でホテルの一室に身を隠していた。

電源を入れたテレビにはバッチリと四人の姿が映し出されており、戌威星大使館を標的にしたテロの犯人として報道されていた。

 

「どーしよ、姉上に殺される………」

「テレビ出演。実家に電話しなきゃ」

 

ニュースを見て後々起こりうる惨事に怯える新八と、テロリストとしてのテレビ出演を楽天的に捉える神楽。

テレビを食い入るように観る二人の後ろで、銀時は呑気に寝転び、黒瀬は胡座をかきうたた寝していた。

諸々の不安はありつつも新八は、桂に会えた事は幸いだったと一先ず安堵し、二人を振り返る。

 

「それにしても、こんな状況の僕らを匿ってくれるなんて………銀さん、黒瀬さん知り合いなんですよね?一体どーゆー人なんですか?」

「んーテロリスト」

「指名手配爆弾魔」

「はイ⁉︎」

「そんな言い方は止せ」

 

襖が開かれ噂のテロリスト、桂が帯刀した男達を引き連れ入ってきた。

 

「この国を汚す害虫〝天人(あまんと)〟を討ち払い、もう一度侍の国を立て直す。我々が行うは、国を護るが為の攘夷だ」

「攘夷志士だって⁉︎」

「なんじゃそらヨ」

 

ただ何となく気になっただけであろう神楽は、質問しておきながら煎餅をバリバリと食べている。

 

攘夷とは、二十年前の天人襲来の際に起きた、外来人を排そうとする思想。

圧倒的な武力を振り(かざ)し、高圧的に開国を迫って来た天人に危機感を感じた侍達は、彼等を江戸から追い払おうと一斉蜂起した。

しかし、天人の強大な力に恐れをなした幕府は、侍達の奮闘を足蹴に天人と不平等な条約を締結。

幕府の中枢に入り権力を得た天人は、侍達から刀を奪い無力化した。

その後、主だった攘夷志士は大量粛清されたが、桂はその生き残りである。

 

「……どうやら、俺達ァ踊らされたらしいな」

「よくもまァ、くだらん事をしたモンだ」

「?」

 

銀時と黒瀬の言葉に、理解が追いついていない新八。

何に気付いたのか。

二人は同じ一点を見つめていた。

 

「なァ、オイ。飛脚の(あん)ちゃんよ」

 

銀時が呼びかけた先には、見覚えのある顔が。

スナックお登勢にバイクごと突っ込んだ、あの飛脚の姿があった。

 

「あっほんとネ‼︎あのゲジゲジ眉デジャヴ!」

「ちょっ……どーゆー事っスかゲジゲジさん‼︎」

 

飛脚は申し訳なさそうに目を逸らす。

理由はどうであれ、一般人を巻き込もうとする意図は理解し難い。

 

「最近のテロと言い、今回と言い……お前が何しようと知らんが、無関係な奴等巻き込むんじゃねェよ阿呆が」

 

細められた紫眼は鋭く、発せられた言葉は低く唸るように。

瞬時に察せるほどの怒りが、静かに溢れていた。

 

「……たとえ汚い手を使おうとも、手に入れたいものがあったのさ」

 

桂は腰に差した刀に手を掛け、二人に差し出す。

 

「………銀時、黒瀬。この腐った国を立て直す為、再び俺と共に剣をとらんか。《白夜叉》、《斬首龍》と恐れられたお前達の力……再び貸してくれ」

 




遅かった言い訳をば。
仕事から帰って睡魔が凄くてですね。二、三時間も起きてらんなくてですね。一週間ずっと帰宅してスヤァ状態だったわけですよ。まあ、寝ても寝ても起きてらんないという、どうすりゃあいいの?迷宮に入ってしまったわけで。
どうやってもクッソ眠いと職場でぼやくんです。眠気でちょいちょい意識飛ぶし。
一日がもうちょっと長かったらな………。


ということで次回、黒瀬について分かったり分からなかったり。
予定は未定。
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