転生者達のせいで原作が完全崩壊した世界で   作:tiwaz8312

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転生者のやらかし其の一


北欧の悪神

 北欧の悪神は、ただ見ていた。

 この世の全ての人類の人生と言う名の旅路を。

 切っ掛けは、一人の取るに足らない人間の戯言だった。それこそ何処にでも転がっている何の才能もない、平々凡々な人間の身の程知らずな愚かな戯言。

「貴方様は旅人を見守る神。ならば、自分の人生と言う旅を見守って欲しい」

 それを聞いた悪神は、愚か者の戯言を嘲笑いながら、「ならば、その取るに足りない生で私を楽しませて魅せろ。そうすれば、お前の人生と言う旅路を見守ってやろう」そう言うと、愚か者に様々な不幸を苦難を与え、苦しみ絶望する様を嘲笑い見続けた。

 そして、十分に楽しんだ悪神は、最後の恨み言ぐらいは聞いてやろうと、死する間際の愚か者の前に降り立つ。

「ああ、**様。願いを聞き届けて下さったのですね。私の人生は辛く苦しいモノだった。ですが、幸せも確かに有りました。その上、貴方様に看取って頂けるなんて、私以上に幸せな人生を送った者は居ないでしょう」

 それは、純粋な感謝と信仰。

 だからこそ、悪神はそれを否定した。自分がその不幸と苦難を絶望を与えたのだと。自分が楽しむソレだけの為に、お前の人生を滅茶苦茶にしたのだと。

 それでも、愚か者は感謝の言葉と気持ちを、悪神に返した。

「確かに、私の人生は苦難と絶望の連続でした。ですが、無駄ではなかった。無価値でもなかった。辛く苦しい事ばかりだったけど、英雄と呼ばれる存在になれた! かつての生と違い、意味が有ったんだ! 誰かに喜ばれ尊敬される人生だった!」

 確かに愚か者は幸せな時期もあった。そうでなければ絶望が苦しみが色褪せてしまうから。

 英雄と呼ばれるに相応しい偉業も確かに成し遂げた。しかし、それは悪神が用意した絶望・困難を、運よく乗り越えた結果に過ぎない。

 悪神には理解出来なかった。辛く苦しい事ばかりの人生を有り難がる愚か者が。

 極僅かな幸せと圧倒的な不幸。それなのに心からの感謝と信仰を捧げられる愚か者が、ほんの僅かにも理解できなかった。

 だからこそ、悪神はその真意を知る為に、他の人間の人生を見守った。

 辛く苦しい事ばかりの人生を看取った。

 人で云う吐き気を催す邪悪を看取った。

 幸福に溢れる旅路を看取った。

 他者に惜しまれ悔やまれる者を看取った。

 誰にも認知されず、ひっそりと旅路を終えた者を看取った。

 希望や喜びなど無く、苦しみと絶望だけの旅路を看取った。

 ありとあらゆる旅路を見続けた。

 そして、「お前の人生と旅路を見ていたぞ」と告げると感謝と信仰を捧げられた。

「見守ってくださり、有難うございます」

「ああ、私の人生は無価値でも無意味でも無かった」

「神よ。有難うございます」

「最低最悪の人生だった。でも、最後の最後で――ほんの少しの救いがあったなんて」

 誰もが、加護も祝福を与えずに、見ていただけの神に感謝と信仰を捧げた。

 だからこそ、悪神は理解した。幾百・幾千・幾万の旅路を見守り看取って、漸く理解できた。

 人は、神の加護や慈悲など必要としていないと、人に必要なのは、自分の旅路をただ見守るだけの存在なのだと。

 己の旅路が、どれだけ無価値で無意味でも、絶望と困難に満ちたモノだとしても、幸せなんて無くて不幸で不遇なモノだとしても、その旅路を見守り最後を看取る存在さえ在れば、人は勝手に自らを救われたと思い込む愚か者なのだと。

 そう理解した悪神は見守り続けた。

 見守るだけで、加護も祝福も与えずに、ただその旅路を見守り看取り続けた。

 

 そう"悪魔の駒"という不条理でふざけたものが誕生するまで、悪神は人の旅路を見守り愛し続けた。

 

 

 部下の報告書を読み終わると同時に、悪神はその報告書を握り潰した。

 近年、悪魔の駒で悪魔に転生する人間が増えたと云う報告書だった。

 人と人の旅路の交差した結果、旅路が終わったなら納得できた。それもまた人の旅路なのだと。

 自然災害ならば理解できた。それもまた旅路の終わりなのだと。

 人と人外の両者が納得の上なら仕方ないと思えた、それもまた旅路の終わりなのだから。

 しかし――理不尽に力ずくで無理やり、人外にされたならば……人としての旅路を終わらせたならば、これ程許しがたい事はない。

 人間の人生と言う名の旅路は、人外の一方的な理屈によって歪められて良いほど、軽くもなければ、粗末なモノではないのだから。

「ああ、人の子らよ、旅人逹よ。我が子らよ」

 悪神と呼ばれ、旅人の守護神と呼ばれた神は、神でありながら祈り願う。

「どうか、願ってくれ! 祈ってくれ!」

 結果的に終末の日(ラグナロク)を起こす事になったとしても、この身が完全に滅んだとしても、どうか自分に祈り願って欲しい。

「人に仇なす人外凡てを滅ぼせと!!」

 神々が好き勝手やりたい放題できた神代の時代が、「親が何時までもでしゃばるな」と、英雄王を始めとした人間逹の手によって終わってしまったが故に、北欧の悪神にして旅人を見守る神は、神でありながら人間に対して祈り願い乞う「どうか神様。私を助けてください」と、ただその一言、神に対する人間の許可を得るために。

 北欧の悪神にして空を旅する神"ロキ"は、人間に対して、祈り。願い。乞い続ける。

 




転生者がやらかし、色々考えすぎて脛らせたロキ様て良くない?
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