転生者達のせいで原作が完全崩壊した世界で 作:tiwaz8312
嘗て、正義の拳。弱者の怒りの代行者。そう詠われながらも、長い長い時の流れに歪み、誰かの大切なモノを奪い。破壊する拳と成った――北斗と南斗を終わらさせた漢。
北斗の棟梁と成る為に、尊敬する養父であり師父をその手にかけた。
北斗の棟梁と成った漢は、志を同じくする南斗の棟梁と成った漢――唯一無二の親友と対峙する。
これが最後と酌み交わした酒と一言二言交わした言葉を胸に、哀しみを背負った二人の漢が殺し合う。
どうか、これが、最後と成ってくれ。そう祈り。願い。涙を堪えて、悲願である北斗と南斗の歴史を終らせる為に。
悲しい決闘に勝利してしまった北斗の漢は、秘孔を用いて北斗と南斗の技を封じた。
そして、哀しみと憎しみにまみれた二つの歴史を閉じた、北斗最後の伝承者は――生きる屍と成った。
北斗と南斗を終らせる。その為だけに生きていた漢は、生きる屍と成り、何度も自ら命を絶とうとした。しかし、亡き親友が残した「生きろ」の言葉がそれを阻む。
ただ、惰性で生きていた漢の目に、偶然とあるアニメが飛び込んで来た。それは夢と希望の物語。
その物語に、漢は、ただただ涙を流した。
己に、彼女達の様な不思議な力があれば、
己が、彼女達の様に、愚直な迄に真っ直ぐに生きる意志が有ったならば、
亡き父と、今でも嘗ての様に茶を飲めたのだろうか?
今生の別れの酒ではなく、今でも親友と酌み交わせたのだろうか?
そう思えば想うほど、考えれば考えるほど、溢れ出る涙は流れ続ける。
漢は、強く強く想った。彼女達の様に成りたいと、彼女達の様に生きたいと。
そして、北斗最後の伝承者は
時は流れ――人の独り立ちを認めた神々が、人の子の月面到達に拍手喝采し祝い酒でベレンベレンに酔っぱらったり。月面到達したと思えば、火星到達成功や木星探査成功に驚愕しながら拍手喝采し、二日酔いどころか、一週酔いするぐらいドンチャン騒ぎで飲みまくった。
酒飲み宴会のネタに困らないそんな時代。
そんな時代で、魔法少女の相互扶助組織"プリティ・キューティー・アライブ"略してプリキュアに所属していない魔法少女を探して、フランスのとある田舎町に訪れたセラフォルーは、「こーゆー所に居たりするから、大変なのよねー」と呟きながら散策している町外れの林の中で、うつ伏せに倒れた10歳ぐらいの少年を発見し、「えっ? うぇえ?」と女性が発してはいけない奇声を発した後、うつ伏せに倒れた少年が幻ではない事を認識して「ふぅわぁぁぁ!?」と更なる奇声を上げながら、全力疾走で行き倒れた少年に駆け寄る。
「う、う......お腹......すいたぁ......」
うつ伏せに倒れたままそう呟き、雑草を口に運ぼうとしている少年に、セラフォルーは「なにやってんの! きみぃぃ!?」と大声で叫んだ。
自分の昼御飯――ヴァルキリー作のサンドイッチをガツガツと食べながら、紅茶の入った水筒をゴクゴク飲んでいる少年を観察したセラフォルーは、少年に気が付かれないように小さな魔方陣を展開させる。
「ねえ、君。何歳なのかな? お父さんとお母さんは?」
そんな問い掛けに気が付かない程に、一心不乱にサンドイッチを食べている少年に苦笑しながら、どう見ても、どう考えても、絶対にまともな両親ではないと確信しているセラフォルーは、見える範囲だけでも傷だらけの体で、あっちこっち解れ、痛んでいるボロボロのジャージを身に付けている少年に、内心で『君の記憶を覗いちゃうけど、ごめんね』と謝りながら、虐待を受けている少年が虐待を認識していない可能性を考慮して、神々直伝の過去見の魔法を発動させた。
それは、なんと言っていいのか――女性と話した事が殆ど無い男の記憶だった。
幼稚園の頃は、男の友達と遊ぶのが楽しくて、女の子とは一言も会話をしていない。
小学校・中学校・高校は男子校。学校の先生に、女性が居れば良かったかも知れないが、一人も居なかった。
まともに会話した女性は母親のみで、近所のおばさんとかは一言二言の挨拶のみで、最長の言葉が、
そして、出来上がったのは――女性に物凄い奥手なシャイボーイ。
それでも、恋人とか奥さんとまでは高望みしないから、女友達ぐらいはと頑張った結果。
結婚詐欺に引っ掛かり全財産を失い。それでもと、上を向いて頑張っている処を、痴漢冤罪で職すら失う始末。
女性不信や女性恐怖症に成っても可笑しくない状況で、歯を食い縛り頑張っていた男は――自分を陥れ痴漢に仕立てあげた女子高生が、柄の悪い複数の男性に暴行を受ける寸前の光景を目撃して、その女子高生を助け出し逃がす事に成功し、その結果――命を落とした。
この時点で、セラフォルーの涙腺は崩壊していた。
涙をドバドバ流しながら「酷い......酷すぎぃぃ! こんなのあんまりよぉぉ」とか、「なんで、そこから、女の子が改心して、こうジレジレのラブラブでピュアピュアな恋の物語が始まる展開じゃないのよ! やり直し、やり直しを要求する! この子が何をしたと言うのよ!」と叫びだしたセラフォルーに、サンドイッチを無心に食べていた少年がビックとして、訳の分からない事を叫び出したセラフォルーに「えっと、サンドイッチ、食べ過ぎちゃいました?」と恐る恐るそう言うと、セラフォルーはすぐさま「良いの! 全部食べて良いから! 足りなかったらお姉さんがご飯奢ってあげるからっ」と力説し、「え、でも」と戸惑っている少年に、涙をゴシゴシと拭いながら「食べなさい。お腹一杯になるまで食べなさいっ」と強く言い聞かせる。
「それじゃ、その、いただきます」
なんとなく、全部食べないと解放されない事を悟り、やべーのに捕まったと後悔している少年は、とても美味しいサンドイッチと紅茶だけを慰めに、モソモソと食事を再開する。
数々の魔法少女と出会い交流があり、虐待されている子供を何人も見てきたセラフォルーは、ビクビクと恐る恐るサンドイッチを食べている少年の姿に、『この子。絶対、虐待されてる! 前世の記憶のせいで、不気味がられたり、周りに馴染めなかったりして、苛められたり虐待されてるパターンねっ!』と確信し、気合いを入れて少年の過去の続きを覗く。
死して魂と成った男は、男を憐れに思った神にその魂を掬われて、所謂転生特典を得て、別世界に転生する事になる。
男が特典に選んだのは、"ニコポ"や"ナデポ"と云われる強制魅了系でもなければ、莫大な富でもなく、俺tueee系の武力でもなく、妹と大切な存在を護れるだけの力だった。
血の繋がった肉親なら、普通に話して接する事ができる。
万が一、大切な家族が暴漢とかに襲われても、護れるだけの力が欲しい。
そう願った男に、転生を司る異界の神が泣き。
セラフォルーも泣いた。
サンドイッチを食べる自分の直ぐ傍で、「なんて健気なの」とか「こんな良い子がなんで......なんでよ......」とか、涙を流しながら呟くセラフォルーにドン引きしながら、少年は『どうしよう......やべーのに捕まった......お父さん。お母さん。助けて......妹よ。お兄ちゃんはもうダメかもしんない......苛めに負けず、強く強く生きるんだぞ。ジャンヌがどうとか云う中二病を治せば、お前は素直で可愛い女の子なんだから、すぐに友達できて、ボッチ卒業できるからな。お兄ちゃん、あの世でお前の事をちゃんと見てるからなっ』と心の中で呟きながら、怯えた目でモソモソとサンドイッチを食べ続けた。
そして、男は転生し少年に成った。
優しい両親と幼い子供のありふれた日常の光景。
肉体年齢に精神が引っ張られ、少し大人びた子供の範疇に収まった少年の日常生活。
いつ虐待が始まるのかと警戒しながら、少年の過去を覗いているセラフォルーは、ゴクリと唾を飲む。
そんな真剣な表情と、泣いたせいで赤く充血した目で自分を見ているセラフォルーに、少年は『襲われる!? この人、ガチショタなのかっ!? ヤバいっ、ここは人が滅多に来ない場所。神様に貰った力の修行場所に丁度良いと思ってたのに......こんな形で裏目に出るなんてっ、お父さん。お母さん。助けて、マジで助けて』と心の中で必死に両親に助けを求め、そんな少年の内心を知らないセラフォルーがゴクリと唾を飲むと、思わず「ひっ」と小さな悲鳴を上げてしまう。
小さく短い悲鳴を上げた少年に、セラフォルーはハッとして、赤く充血した目をそのままに、優しく微笑む。
「大丈夫。怖い人が来ても、お姉さんがやっつけてあげるから......安心して、お姉さんは優しいお姉さんだから」
充血した目で微笑み、警戒を解きほぐそうとしているセラフォルーは――少年からしたら、どう見てもガチショタで、獲物を捕捉し油断させ捕獲して補食しようとしているヤベーお姉さんであり。
そんなセラフォルーに怯えてビクビクとしている少年は――セラフォルーからしたら、空腹で行き倒れていた事実と、傷だらけの体とズタボロのジャージが相まって、ろくに食事をさせて貰えない。無数の擦り傷と打撲傷は虐待痕。ズタボロのジャージは新しい服を買って貰えない証拠。どう見ても、どう考えても、酷い虐待を受け。心に傷を負い。周りが信じられなくなった可哀想な少年だった。
「お姉さんが守ってあげるからっ。助けてあげるからねっ」
充血した目と優しい笑みで、そんな訳の分からない事を言うセラフォルーに、少年は恐怖しか感じなかった。
凄惨な虐待の光景を警戒し緊張して、唾をゴクリと飲む度に、少年をビクビクとさせながら、セラフォルーは過去視を継続する。
念願の妹が生まれて、嬉しそうに笑いながら赤ちゃんに話し掛けている少年を、両親が優しい目で見ている光景。
自分の指をキュッと握る赤ちゃんに、感極まって泣いてしまった少年に、側に居た母親が何事かと慌ててる光景。
父親に教わりながら釣り上げた三年サイズの鱚を、自慢気に誇らしげに、父親に見せている少年。
ありふれた、でも、温かく優しい光景。
そんな仲の良い家族の光景に、セラフォルーはハッとして自分の勘違いを恥じ入り、心の中で少年の両親に謝りつつ『これは......虐待しているのは親じゃなくて、周りのパターン! しかも、この子をこんなになるまで痛め付ける事ができて、親御さんに新しい服を買い与えない様に圧力を掛けられて――犯人は、この町の有力者ね! おのれ......こんなに幸せそうな家庭を壊そうなんて......ゆ る ざ ん』と、今まで経験した虐待ケースの中でも最悪のパターンの一つに、セラフォルーは怒りに燃えた。
ビクビクとしながらモソモソとサンドイッチを食べつつ、なんとか隙を見て逃げ出そうとしている少年を他所に、セラフォルーは過去視を続けて、犯人特定に心血を注ぐ。
妹が言葉を喋れる様になって、自分はジャンヌ・ダルクの転生体で、自分の家族は他に居ると言い出し、両親と一緒になって頭を抱えたり。
家族で信仰している宗教は間違ってる。それは、正しい主の教えではないと怒ったり。
自分をジャンヌ・ダルクと思い込んで、色々とやらかした結果、友達が一人も居なくて、苛めの対象と成った妹を守る為に頑張った結果、少年も友達が居なくなったり。
手の付けられない妹に、どうしたらいいのか分からず、ノイローゼ気味に成った両親に、少年の秘密――自分は転生者で、本当の子供では無いかもしれないけど、両親の事を本当の親だと思っている。と打ち明けて、妹を見捨てないでくれと、泣きながら懇願し、その告白に両親が、普通の子供では無い事は気付いていた。例え、お前達がどんな存在であろうと、お前達は自分達の子供だと抱き締められて、号泣する少年。
そして、その光景を覗き見て、苦悩する妹。
そんな家族の交流を見て、少年虐待犯に更なる怒りに燃え上がりながら、沢山あったサンドイッチを食べ終わりそうな少年に焦り、倍速で過去視を始めたセラフォルーは、少しずつ首を傾げ始める。
どんなに時間を進めても、虐待が始まらないのだ。
少しずつ、家族に打ち解けていく妹と、それを受け入れる家族の交流に、心が温かくなるのを感じつつ、どんどん時間を進めていき――少年が傷だらけで、ボロボロのジャージを着て、空腹で倒れていた理由に行き着き、セラフォルーは叫んだ。「虐待されてない! と言うか、君なにしてんの!? 体を酷似しすぎ! いくら強くなりたいからって無茶しすぎだからっ!」と。
突然のセラフォルーの叫びに、「ヒッイィ」と声を上げた少年に、過去視で見た優しい両親と徐々に中二病が収まり始めても未だにボッチで苛めを受けている妹を心配させている少年に、セラフォルーはクドクドとお説教を開始する。
「あのねぇ......君、まだ10歳でしょ? 映画で見たからって、木に吊るした小さい丸太を避ける練習とか、そこそこ高い所から落ちて受け身の練習とか、木をサンドバックに殴ったり蹴ったりしたらダメでしょ? 君が大怪我をしなかったのは、運が良かっただけだからね? 頑丈な体に産んでくれた御両親に感謝しないとダメだよ? あと、朝御飯と昼御飯を抜かないの。体が成長してる途中なんだから、ちゃんと三食食べなさい。分かった?」
いきなりクドクドとお説教を開始したセラフォルーに、目を白黒させながら少年は、口にしていない自分の年齢や両親や妹にも秘密にしていた特訓を知っている事から「え、ストーカー? ぇ、俺、ガチショタにストーキングされてたの?」と思わず呟いてしまう。
「だ・れ・が、ガチショタでストーカーよ! 失礼ね! 君がズタボロで行き倒れてたから、心配して、魔法で過去を覗いただけでしょ! まったくもう!」
プンプンと怒っているセラフォルーは、暫くしてから「あっ」と声を上げる。
「魔法? 過去を覗いた?」
神様転生しておきながら、魔法云々のファンタジーを信じてない少年は、地面に座り込んだ状態で器用にズッサッと後退り、すくりと立ち上がると......セラフォルーに深々と頭を下げて「サンドイッチと紅茶ありがとうございました」とお礼を口にすると、自然な動作で背を向けて歩み去ろうとする。
「待ちなさい」
立ち去ろうとする少年の右手をガッチリと掴む。
「お姉さんの話は終わって無いし、君はまた無茶するだろうし、観念してお姉さんの話を聞きなさい」
捕まれた手を引き剥がそうとしながら、「離せよ! ストーカーでガチショタで魔法とか言い出す奴に、襲われてたまるかっ」と必死になっている少年に、セラフォルーは溜め息を付いた。
「お姉さんは、ガチショタでもストーカーでも無いから。後、神様転生してるのに魔法を否定しないの」
"神様転生"その言葉に少年は固まる。
「神様転生て......お姉さん。なに言ってるの? 僕、よく分からないや」
誤魔化そうとしている少年に、セラフォルーはニッカリと温かく優しい笑みを浮かべた。
「良かったね? 前世でも今世でも、家族以外の女性とこんなに話した事ないもんね? しかも、家族以外の女性に触れて貰ったのは、これが初めてだもんね? 良かったね? 嬉しい?」
両親にも妹にも話していない秘密を言い当てた、生暖かく優しい笑みのヤベーお姉さんに、少年は「なっ、なんで......」と呟いてしまう。
「あ、サンドイッチ。私じゃないけど、女性の手作りだからね。やったね! 前世と今世のお母さん以外の女性の手作りだよ! 良かったね?」
その生暖かく優しい言葉に、少年はガクリと肩を落とし、俯いてしまう。
「まだ、色々と有るけど......言って欲しい? それとも、お姉さんの話を聞く気になったかな?」
暴露されたくない事を、次々に口にされた少年は、逃げるのを諦めて、俯いたまま地面に座り込む。
「もう、止めてください。ガチショタとかストーカーとか言ったのは謝りますから......本当に止めてください......」
肉体年齢に引っ張られて、精神も年相応に成っている少年は、エグエグと泣きながらセラフォルーに懇願し、それを見たセラフォルーは、やり過ぎたと思いつつ、小さい子を泣き止ませる必殺技を繰り出す。
掴んでいた手を離し、泣き出した少年の頭が胸に当たる様に体勢を調節して、セラフォルーは少年を優しく抱き締める。
「ごめんね。おねーさん。言い過ぎちゃったね。ごめんね」
自分の心音に合わせて、抱き締めている少年の背を優しく、トントンと叩いたり撫で始める。
「お姉さん。君が心配なのよ。でも、言い過ぎちゃったね。ごめんね」
グズッた子供や泣き止まない子供を、泣き止ませ落ち着かせて、寝付けない子供を寝付かせる――プリキュアのお母さん。ヘスティア神の必殺技を身に付けたセラフォルーの対子供用必殺技"ヨシヨシ"が少年に炸裂した。
「君の力に成りたいの。分かってくれる?」
セラフォルーの胸の感触と聴こえてくる心音。そして、優しく背をトントン叩かれ撫でられている少年は、いつの間にか泣き止みウトウトし始めてしまう。
「大丈夫。お姉さんに任せなさい。お姉さんがぜーんぶ解決してあげるから」
心地好い感覚と優しい声色。それらに屈服してしまった少年は、何も考えられないままに、セラフォルーの言葉に頷いてしまった。
「ほ ん と う に、お姉さんに、ぜーんぶ任せてくれるのね?」
ウトウトしながら頷く少年に、セラフォルーは『小さい子が相手なら、こんなものよ』とドヤ顔をしながら、計画通りと笑みを浮かべる。
「まず、自己紹介からね。君の名前と妹ちゃんの名前を教えてくれる?」
優しく語り掛けてくる声に、少年は「ジョージ。妹はジャネット」と眠たそうな声で返事をしてしまう。
「そっか~ ジョージ君とジャネットちゃんか~ 良い名前だね」
そんなセラフォルーの言葉に、ウトウトしている少年は小さく頷く。
「私は、セラフォルー・シトリー。種族は悪魔で、魔法少女よ。よろしくね? セラちゃんとかセラお姉さんて呼んでね?」
眠気に侵され、はっきりしない頭で、「セラお姉さん。魔法少女で悪魔......」と呟いた少年ジョージは、よく分からないヤベーのに抱き付かれてる事を認識し、抱擁から抜け出そうと足掻くが、頭に当たる、ふにっとした感触に体を強張らせる。
「も~ おいたしちゃダメだぞ☆」
自分から逃げ出そうとして、胸の感触に固まったジョージの初心な反応に、本当に女性に免疫が無いんだな~ と考えながら、セラフォルーはクスクスと笑ってしまう。
「クソ。離せよ! 見た目は子供でも、あんたが言ったように、中身は成熟した男なんだからなっ」
そんなジョージの言葉に、セラフォルーは一瞬キョトンとして、「あ~ 成る程ねぇ~ あの無茶苦茶な修行擬きの原因はそれか~」と呟いた。
深々と大きな溜め息を付いたセラフォルーは、抱き締めているジョージの両肩を両手で掴むと、グッとジョージを自分の体から引き離し、真っ直ぐにジョージの目を見据える。
「あのね。ジョージ君。君、精神が肉体に引っ張られてる自覚ある?」
突然、真剣な表情で自分の目を真っ直ぐに見て来たセラフォルーの言葉に、ジョージは首を傾げる事しかできない。
「あのね? 成熟した男性は、小さい子達と一緒に、ヒーローごっこに熱中しないし、探検ごっこや冒険ごっこに我を忘れて、夢中にならないの」
身に覚え在りすぎる事実に、ジョージがビッシリと擬音が聞こえて来そうな程に固まる。
そんなジョージに『あ~ やっぱり、自覚無かったんだ、この子』と内心で呆れつつ、セラフォルーが最後の止めとして、「後ね、気になる女の子の……」と言いかけた途端、「自覚した。今自覚したから、やめろぉぉぉぉ! 俺はロリコンじゃねぇぇぇぇぇ!」とセラフォルーの手を振り払い、逆にセラフォルーの両肩を掴んでガクガクとセラフォルーを揺らしながら、「ちがうっ。別にカサンドルちゃん。可愛いな。とか思ってないから。思ったとしても、妹的なナニかだからっ」と必死になっているジョージに、セラフォルーは「自覚できてないじゃない」と嘆息した。
「あのね、君。自分がどれだけ歪で危険な状態か理解しないとダメだよ。君は今世を受け入れていながら、前世の感覚で生きてるの。解るかな? 君は今、10歳の子供なのに大人の感覚で生きてるの。子供の体を大人の感覚で、できるはずが無いのに、これもできる。あれもできる。て、子供の未成熟な体を酷使してる」
真剣な表情で語り掛けてくるセラフォルーの言葉を、ジョージはセラフォルーを揺らすのを止めて、黙って聞く。
「未成熟な体でそんな事をすれば、必ず体に深刻な障害を負う事になる。御両親や妹ちゃんを悲しませたいの? ちゃんと見ていれば、なんて後悔させたいの?」
そのセラフォルーの言葉に覚えのあるジョージは言葉に詰まる。妹の虐めに、高学年どころか、中学生や高校生が出てきて更に酷い事に為っている現状を、一人でなんとかしようとしているジョージに、突き刺さる。
「あんたに、何が解るんだよ!? 俺が頑張らないといけないんだ! 今、無茶しなくて、いつするんだよ!?」
振り絞る叫びに、セラフォルーは覚えが有りすぎる叫びに、悶絶したくなるがグッと我慢する。
「一人で、できる事なんてたかが知れてるの。どんなに凄い天才でも、一人で月面到達できない様に、一人じゃ、できる事なんて極僅かなのよ」
両親に心配掛けたく無くて、妹を守りたくて、必死に頑張ってきた少年の叫びを、セラフォルーは嘗て両断された様に断ち切る。
「周りに力に成ってくれる人が居ないなら、お姉さんを頼りなさい。君の目の前のお姉さんは、悪魔で魔法少女のスーパーガールなお姉さんなんだから」
悪魔とか魔法少女とか、突っ込みたい処が多々あっても、ジョージは藁にもすがる思いで助けを口にする。自分ではどうする事もできない現実に、両親をこれ以上、心配させたくない一心で。
「本当に、助けてくれるのか?」
その様々な思いの篭った助けを求める声に、セラフォルーは満面の笑みを浮かべ、悪魔の――漆黒の翼を広げながら断言する。
「プリティ・キューティー・アライブ。会長。セラフォルー・シトリーに、任せなさい。なんたって、お姉さんは魔法少女なんだから☆」
悪魔の翼とか魔法少女とか、どうでも良くなるぐらいに、自信に満ち溢れた、惚れ惚れとする笑顔に、ジョージは素直に頷いた。
漸く。目の前のヤベーお姉さんこと、セラフォルーが、本当に悪魔で魔法少女? である事を認識したジョージは黙ってセラフォルーのお説教を聞いていた。
「あ~ゆ~ 無茶苦茶な修行擬きはもうしたらダメよ。体を壊すだけで強くなんてなれないから、ジョージ君がしてたのは、一定の強さを身に付けた人が、限界を超える為にする苦行なんだから、体ができてない上に基礎ができてない君がしても、体を壊すだけ。分かった?」
自分の言葉に素直に頷くジョージに、セラフォルーは満足気に頷く。
「さて。それでは、ジョージ君に先生を紹介してあげよう」
ふふ~ん。とお姉さんぶっているセラフォルーの言葉に、ジョージは首を横に振る。
「えっと、神様から貰った力は"波動"て力で......教えられる人は居ないと思う」
申し訳なさそうなジョージの言葉に、セラフォルーが「大丈夫よ。過去視で見たけど、気みたいなモノぽいし。亀仙流とか流派東方不敗とかヤイバ流剣術とかアバン流殺法とか」と気を扱う流派を挙げていると、「亀仙流!? 東方不敗!? ヤイバてあの、かみなり斬り・せんぷう剣の!? アバン流殺法てあのアバンスラッシュの!?」とジョージが物凄く食い付き、あまりの食い付きにセラフォルーは「えっと、流石に、当代の武天老師様とかマスターアジア様とかムサシ様とかアバン先生に、直々に指導して貰うのは無理だからね? 流石に、おねーさんでも無理だからね?」そう慌ててジョージを宥める。
「すげぇ! 亀仙人とか本当に居るんだ!」
ジョージの前世の世界では、亀仙流等は架空の流派だと云う事を思い出したセラフォルーは、興奮しているジョージの頭をポンポンと叩く。
「夢を壊すようで悪いけど、君と同じ転生者らしいよ? 開祖の人達は。まぁ、君みたいなチート持ちじゃ無かったらしいけど」
自分以外に転生者は居ないと思い込んでいたジョージは、その言葉に目を大きく見開き、その反応に、セラフォルーは溜め息を付いた。
「あのねぇ......結構居るわよ? 異界からの転生者。もっとも、神々からしたら、人の子は人の子。そんな事はどうでも良い。らしいけど」
衝撃の事実に呆然としているジョージをそのままに、セラフォルーは言葉を続ける。
「魔法少女相互扶助組織の名前に、プリティ・キューティー・アライブ。略してプリキュアて名付けたのも、転生者の子だし。君みたいに前世の記憶がはっきりしていて、そのせいで虐待されてたりとか。神様転生でチート貰って、力に溺れて暴れ回って即座に叩き潰されたりとか。逆に、第二の人生だから、今度は後悔しないように必死に生きて、偉人に成ったりとか」
セラフォルーの説明に、ジョージは「マジか」と小さく呟く事しかできなかった。
「マジよ。特に虐待は悲惨よ......前世の記憶とかチート持ちだと、場所によっては人間扱いされなかったり。魔物・悪魔憑きて云われて殺されたりとかね」
もしかしたら、自分もそうなった可能性が脳裏に過ったジョージは、ブルリと恐怖で身を震わせる。
「ま、そんな子達を保護して廻るのも、お姉さんのお仕事なんだけどねー」
暗くなり始めた空気を断ち切る様に、明るくそう言ったセラフォルーを、ジョージは『このお姉さん、実は凄い人なんだ』と思いながら尊敬の眼差しで見つめた。
目の前のお姉さんが、最近、魔法少女達や保護した子供達に"頼りになるけど、基本的にダメお姉さん"扱いされているとは知らずに。
「それでは、ジョージ君の先生を紹介してあげよう☆ なんと! プリキュア日本支部局長よ☆」
まさか、魔法少女に師事して貰えると思っていなかったジョージは、年齢相応の少年の如く期待してしまった。
まともに話せたのはセラフォルー以外では肉親のみの、ウブな少年は、可愛らしい少女。もしくは、セラフォルーの様なお姉さんと親しくなれるチャンスに胸を踊らせてしまう。
「カモン☆ ミルたん☆」
その声と共に宙に描かれた魔法陣が出現すると同時に、淡い光を放ち始める。
純情な少年はドキドキとワクワクしていた。前世・今世の両方を合わせて初めて見る魔法と、自分の先生になる魔法少女とのこれからの時間に。
放たれた淡い光が辺りに満ちて、ゆっくりと消えていき、そこに現れたのは――ピッチピッチの白いゴスロリを身に纏った、ネコミミを装備した世紀末覇王だった。
「にょ!」
爽やかな笑顔で、右手のピースサインを横にして、ウインクしている右目を挟む様に持ってきて、左手に腰て当てて、膝を曲げ左足を左斜め方向に持ち上げ、あざといポーズを決めている。筋骨隆々のガチムキの漢。
身に付けている白いゴスロリは、ボディーラインが目を覆い背けたく為る程にはっきりと分かるぐらいピッチピッチで、豊満でミッチミッチとした胸が強調され、ゴツくて丸太の様なギリシャの彫刻を想わせる筋肉がミッチとした眩しい太股どころか、危険なデルタ地帯が見えるんじゃないかと心臓に悪いぐらいに程に短い裾。
その素晴らしい光景を目の当たりにしたジョージ少年は、その場に崩れ落ちた。
「どう見ても、北斗の拳の登場人物!! 世紀末覇王様のライバルポジとかに収まりそうな人だろ!? 確かに強そうだけど、強そうだけど!! なんで、魔法少女コスしてんだよ!?」
淡い幻想を粉々に打ち砕かれた、少年の魂の叫びに、セラフォルーは「ミルたんは、神々に認められた。魔法少女だよ?」と驚愕の言葉を口にする。
「セラたん。何故、その少年は、北斗を知っている?」
漢らしい野太い声に、両手両膝を地に付けたまま顔を上げたジョージの両目に、先程まで辛うじて有った魔法少女? らしき雰囲気が霧散し、その背に巨大な龍神を幻視する程の闘気を全身から立ち昇らせているミルたんの姿が飛び込んでくると同時に、ジョージは一筋の涙を流し死を覚悟した。
「少年。答えろ。何故。隠匿されし暗殺拳。北斗を知っている?」
口から、コォォォと呼吸音が鳴り響き、白いゴスロリにネコミミの漢が、一歩。前に踏み出す。
「待って! その子は北斗でも南斗でもないからっ!」
慌ててミルたんとジョージの間に入ったセラフォルーに、ミルたんは怪訝そうな表情を浮かべる。
「ならば何故、北斗を知っている? 裏でさえ、知る者が限られている北斗を」
知る筈の無い事を知っているジョージを鋭い視線で睨み付けたミルたんは、その鋭い視線をそのままセラフォルーに向けた。
「ごめん。ミルたん……ちゃんと説明してから召喚するべきだったわ」
謝りながら確りと頭を下げたセラフォルーに、ミルたんは「むぅ……なにか、訳ありなのか?」そう唸りながら、ジョージに再び人が殺せそうな鋭い視線を向ける。
「その辺も含めて、ちゃんと説明するわ」
そんな二人のやり取りが耳に届かない程に怯えているジョージは、闘気を身に纏い、コォォォォと呼吸音をさせている筋骨隆々の漢の前に立ちはだかる、セラフォルーの背が途轍もなく頼もしく見えて、その背中に純白の天使の翼が生えているのを幻視してしまう。
ジョージが転生者であり、前世の記憶を明瞭に持っている事。ミルたんを呼んだのは、ジョージを鍛えて欲しい事。等を説明したセラフォルーに、ミルたんは「......成る程な。それで、北斗の事を知っていたのか......」と小さく呟いた。
遥か昔から続いた北斗と南斗の開祖も、転生者で有る事を知っていたミルたんは、目を瞑り天を仰ぐ。
「セラたん。約束する。少年に危害を加える様な真似はしないから、少し、話をさせてくれ」
纏っていた闘気を霧散させたミルたんは、辛そうな悲しげな目で、怯えているジョージを見据える。
「ミルたん......分かったわ。その代わり、魔法少女で在る事だけは忘れないで」
ミルたんの事情を知るセラフォルーは、悲痛を耐える様な表情で、そっとミルたんとジョージの間から身を引く。
何の事情も知らない上に、場の流れから完全に置いてきぼりを食らっているジョージは「えっ?」と声を上げる。
「ジョージ君。質問に答えて欲しい」
深い悲しみを湛えた目をしたミルたんに、突然の流れに戸惑っていたジョージは息を飲んだ。一体、どんな経験をしたら、そんな悲しい目をできるのか、ジョージには想像する事すらできなかった。
「君は、北斗と南斗の正しい教えを......伝承を知っているか?」
未だ四つん這いになっていたジョージを優しく立たせたミルたんの真摯な質問に、戸惑いながらもジョージは真剣に真面目に答えた。「分かりません」と。
天帝守護の拳。乱れた世を正す拳。救世の拳。そのどれもが違うと、思ったからだ。ジョージが知る北斗の拳と云う漫画なら正しくても、この現実の世界に存在する北斗と南斗の教えを伝承を知らないジョージは、そう答える事しかできなかった。
真剣に真面目に答えたジョージを真っ直ぐに見据えたミルたんは、「そうか......」と一言だけ口にすると、天を仰ぎ、左目から一筋の涙を流す。
「知らない......か。そうか」
嘗て、誰かの涙を拭い。誰かの笑顔を守った。法で裁けぬ巨悪を討つ――守護の拳。
口伝による伝承により、いつしか歪み、私利私欲にまみれ、地に落ち。血に穢れた――呪われた拳。
開祖が次代に託した、正しい教えを、正しい伝承を、託された想いを、二度と知る事ができないのだと、悟ったミルたんは、静かに涙を流した。
「ミルたん......」
セラフォルーの悲しげな声に、ミルたんは涙を拭う。
「大丈夫だにょ。ミルたんは――ミルたんだにょ」
さやわかで、どこか悲しげな笑みを浮かべるミルたんに、セラフォルーは短く「そう」と返し、ジョージはその笑みに息を飲む。
「ミルたんは魔法少女にょ。魔法少女は前を向いて歩き続けるにょ。だから、大丈夫だにょ」
そう言い切ったミルたんに、セラフォルーは無理に笑みを浮かべる。
「そうよ! 魔法少女は過去に囚われない! 夢と希望を信じて、前に進み続ける! それが、魔法少女よ!」
セラフォルーの言葉に、ミルたんは目を瞑り、拳を心臓の辺りに当てる。
「親父。そして、我が唯一無二の親友よ。見ていて欲しいにょ。ミルたんは、嘗て、北斗と南斗が、そうであった様に――誰かの涙を拭い。笑みを守れる。そんな魔法少女に必ず成ってみせるにょ」
亡き父と親友にそう誓ったミルたんを、背中から、セラフォルーが優しく抱き締める。
「ミルたんなら、成れるわ。だって、ミルたんは神々に認められた魔法少女だもの」
後ろから回された手に、ミルたんはそっと手を重ねる。
「セラたんのおかげだにょ。セラたんが、ミルたんを魔法少女にしてくれたおかげだにょ」
離れた二人が向き合い微笑み会う光景と、二人のやり取りを黙って見ていた――事情を全く知らない上に置いてきぼりを食らっているジョージは、『よく分からないけど、イイハナシダナー。で良いのか? これ』と心の中で呟いた。
「ジョージ君。ちゃんと答えてくれてありがとうにょ。お礼に、ミルたんがジョージ君を鍛えるにょ」
置いてきぼりを食らい、唖然としているジョージに、ミルたんは爽やかな笑みを浮かべる。
「北斗の技は教える事はできないけど、鍛える事はできるにょ」
てっきり、北斗の技を教えて貰えると思っていたジョージは落胆し肩を落とし、そんなジョージにミルたんは困った顔をしながら、ジョージの頭をゴツゴツとした大きな手で優しく撫でる。
「悲しみを背負うのはミルたんだけでいいにょ。ジョージ君まで、そんなモノを背負う必要はないにょ」
そう優しく諭すミルたんに、ジョージは強く強く思った。『きっと、道を踏み外す前は......凄く良い人だったんだろうなぁ。こうなる前のこの人に師事して欲しかった』と。そして、そんな人物をこんな風にした、優しい目で見守っている
「取り敢えず、その酷い怪我を治すにょ」
暢気に『怪我が治ってからかぁ~ まぁ、波動で治癒能力活性化させれば直ぐに治るんだけどなぁ』と思っていたジョージに、軽く足を広げて両手を突き出し中腰になったミルたんが、突然に「ヌゥゥゥ!」と唸り声をあげ始めるとミルたんの体から闘気が立ち昇り、ジョージが負っていた怪我が全て完治する。
突然の事に驚いているジョージに、「驚いた? ミルたんはプリキュア随一の回復魔法の使い手なのよ☆」とセラフォルーが何故かどや顔して、ミルたんが「そんな事、言われると恥ずかしいにょ」と巨体を捩らせ恥ずかしそうに照れた。
「魔法じゃなくて、気功とかそう云うのなんじゃ......」
ボソリとそう溢したジョージに、「魔法よ」 「魔法だにょ」と真顔の二人がそう言い切り、察したジョージが「あっ......はい。魔法です」と頷いた。
コッホン。とわざとらしい咳をしたセラフォルーは「後は御願いね。ミルたん☆」と転位の魔方陣を展開させて姿を消す。
「ジョージ君。まずは、ジョージ君の勘違いを正すにょ」
「勘違い?」
語尾と格好はアレだけど実は凄い人。ミルたんをそう認識しているジョージに、ミルたんはゆっくりと頷いた。
「守るだけの力に、特別な力はいらないにょ。大きな力は相応の悲しみを生むにょ。必要なのは、挫けない勇気と絶望を希望に変える機転にょ」
ゴスロリにネコミミじゃなければ、凄い説得力の有る言葉だったんだろうな。と朧気に考えながら、ジョージは素直に頷いた。
「過度の筋トレも厳禁にょ。体の成長に悪いにょ。柔軟性を保つストレッチは毎日するにょ」
つらつらと言葉を続けるミルたんに、『こうなる前のミルたんさんは、尊敬できる人だったのかもなぁ』と思いながら、コクコクと頷いたジョージは「分かりました」と口にした。
「そして、制御できない力は爆弾にょ。自分だけじゃなく、周りも悲しませ不幸にしてしまうにょ。村長さんに、波動の制御法を教えて貰うにょ」
そう言うと、ジョージに背を向けたミルたんは、中腰な成ると同時に両手を前に突き出し、コォォォと呼吸音を出しながら、右手を頭上に、左手を下に伸ばす。
「ヌゥゥゥ! ハァァァァア! ヌォォォォオォォ」
ミルたんの全身から凄まじい闘気が立ち昇り、上下に伸ばされた手が、ゆっくりと大きな円を画く様に動きは始め、その軌道に闘気が残留し大きな闘気の円が宙に浮かび、円の中の景色が陽炎の様に揺らめいた。
そんな理不尽な有り得ない光景に唖然としていたジョージに、振り返ったミルたんはニカッと笑う。
「今から行く所は、魔道具で遊ぶ格闘ゲーム"
一度、言葉を区切ったミルたんは真剣な表情で言葉を続ける。
「ゲームを元に作られた世界にょ。でも、そこに生きる人達は、ミルたん達と同じでちゃんと生きてるにょ。その事だけは、絶対に忘れないで欲しいにょ」
色んな事が有りすぎて処理仕切れていないジョージは、とにかく頷く。
「さっそく、豪鬼さんに挨拶に行くにょ」
頷いたジョージの手を、ミルたんが迷子に成らない様にと優しく握る。
「豪鬼? えっ、ストファイの豪鬼?」
処理落ちしながらも、前世・今世のmyキャラの名前に反応したジョージを、「目上の人を呼び捨てにしたらダメにょ」とミルたんが優しく言い聞かせ、纏まらない頭でジョージは頷く。
こうして、ジョージの苦難は始まる。
ミルたんに連れられて、初めて異界に足を踏み入れ、大好きで憧れた豪鬼に会って。
「初めまして、この村の村長をしている豪鬼です」
「初めまして、ジョージ・アレグリアです。よろしくお願いします」
思っていたのとなんか違うと思いながら、挨拶したジョージに、優しそうな強面のおじさん・豪鬼が「礼儀正しい子ですね」とミルたんに笑顔で話し掛け、ミルたんが「ジョージ君は良い子だにょ」と笑う。
部屋に通されて、ミルたんがジョージに波動の制御を教えて欲しいと頼むと、豪鬼はジョージの波動が"殺意の波動"に成り掛けていると指摘して、驚愕するミルたんと豪鬼がジョージの育成計画を練り上げ、ジョージが殺意の波動に呑まれない様に鍛える為に、神代の時代に流行った漫画"トリコ"のグルメ界を再現した異界や、同じく、神代に流行り今も様々な機種を代えながら続編が出ているゲーム"女神転生"がモチーフの異界を始めとした様々な異界に行く事が決定され、もはや思考が停止しているジョージが「神様達、やりたい放題かよ......」と呟いた。
そして、ミルたんと豪鬼に、鍛錬は明日からと言われ、茫然自失のまま家に帰ると、ビシッとしたスーツ姿のセラフォルーとジャネットが食卓越しに両親と向かい合い、魔法少女に成る成らないで話し合いをしている光景に、ジョージは「もう、日常に帰してくれ......」と溢しながら、膝から崩れそうになるのを必死に堪えて、「大きくなったら黒歴史になるから止めろ」と両親と共に諦めさせようと頑張るも、映像とは云え、友達の居ないジャネットが同じ年頃の少女と見た事がない笑顔で遊んで居る光景と、セラフォルーの魔法少女活動の詳しい資料を交えた理路整然とした言葉。そして、なによりも、勉強や踊りを始めとした習い事が無料かつ教師が神々である事を知った両親はアッサリと魔法少女賛成派に回り、孤軍奮闘していたジョージは、可愛い妹の泣き落としで陥落。
この時、ジョージは知った。当たり前の日常が崩壊するのは一瞬なんだと。
それから、ミルたんと豪鬼に鍛えられ、修行と称して神々が作り出した様々な異界を渡り歩き。
14才に成ると、ミルたんと豪鬼に「そろそろ、実戦の時期」と言われ、紺の胴着と隈取の覆面と黒いマントと云う怪しげな格好で、窮地に追い込まれた魔法少女を助けに行かされたり、魔法少女と成った妹の窮地に、「助けに来た」と精一杯の低音イケボと必死に考えたカッコイイポーズでカッコつけるも、即座に「えっ、兄さん。何してるの? その不審者じみた格好はなに?」と見破られたり。
18才に成ったら、フッと「あれ? 俺。親しい女の人て、家族と魔法少女達を抜かしたら、セラフォルーだけ?」と気付き、このままでは前世と同じく魔法使い確定と焦るも、厳しい鍛錬と異界での修行と云う名の命懸けの冒険を乗り越える為に、"喰える時に喰えるだけ喰う"を実践しているデップリとした自分の体型を思い出したジョージは、天を仰ぎ、「これが......ミルたんの言う、悲しみなのかなぁ」と呟いた。
そして、更に月日は流れて、ジョージが20才に成ったある日。
妹と魔法少女達に美味しいと言われるのが嬉しくて、グルメ界の料理の師匠から教える事は何も無いと言われるまでに成長したジョージの手料理に、勝手に餌付けされていたセラフォルーから、溺愛する妹が塞ぎ込んでいる理由が、はぐれ悪魔を殺した事。そのはぐれ悪魔の女性は悪魔の駒関連の法を破った悪魔の被害者である事。塞ぎ込んでいる妹を元気付けて、心の傷を癒す為に、とある人物に会わせたいから、協力して欲しいと頼まれたジョージは、二つ返事で承諾し、二人分の朝食を完食したジャネットとセラフォルーを見送った後、拳を握り締めた。
「八つ当たりてのは......分かってるけど、取り敢えず。サーゼクスてのをぶん殴るか」
冥界の悪魔。その最高指導者を八つ当たりでぶん殴る事を決めたジョージは、豪鬼直伝の阿修羅閃空でその場から姿を消した。
サーゼクスの職務室を破壊し、死相が浮き出ている役人達が作り上げた書類を台無しにしながら、殺意の波動vs滅びの魔力が開始され、その激闘がいつの間にか、妹の可愛いさ談義に移り変わり、書類を台無しにされて怒り狂った役人達に現魔王と一緒に説教を受けて、サーゼクスとズッ友の誓いを立てたジョージは、処罰としてサーゼクスの居城で半年間の無報酬料理人として働く事が決定したが、当の本人は全く気にしていなかった。
何故なら、常識に囚われていたら、様々な異界を渡り歩く時点で命を落としていたし。なにより、ミルたんやMUGENの住人達と付き合う事などできないのだから。
その後、冥界殴り込み事件を知ったジャネットとセラフォルーに叱られたり、妹談義に華を咲かせているダメ兄達を他所に、兄に無理矢理連れて来られたリアスとジャネットが意気投合し友達になったり、ダメ兄・ダメ姉被害者の会をリアス・ジャネット・ソーナの三人で結成し、それを聞いたマグダランが、「俺もその会に入りたい......あ、次期当主の仕事と勉強が忙しすぎて無理かぁ~ あはははは」と泣き、居城に遊びに来たお見合いで仲良くなった幼女達にヨシヨシと慰められたり。と様々な事が起きながら――
"殴って解決するなら取り敢えずぶん殴れ"が座右の銘のジョージは、今日も今日とて、元気に拳を握り締める。
俗に言うタキシード仮面枠
北欧の悪神ことロキ様。
神代の時代は、普通に本霊降臨できたので、魔物や悪魔。クトゥルフの邪神やその眷属が相手なら、完全フル武装で本霊降臨。人間相手なら叱り飛ばしに本霊降臨してました。なお、現代では人間界以外での活動に成ってしまったもよう。
光の奴隷なコカビエルさん
神代から人の世に成っても普通に力が振るえる本作最強な堕天使。人(魔法少女)に害成す存在は悪即斬。人間相手なら、一度ぶん殴ってからお説教。
後、某運命シリーズにtsして無名の英雄の恋人設定されてたり。
ジョージ君
紺の胴着に隈取りのマスクに黒のマントで、豪波動拳・豪昇龍拳・竜巻斬空脚・阿修羅閃空・瞬獄殺・禊(みそぎ)等で頑張ってます。
セラフォルー等のプリキュアの幹部に、使い勝手の良い助っ人として認識されてしまっているもよう。
番外枠で、ロリコンキングことマグダラン
婚約者の幼女達の中に、魔法少女が居るから仕方ないね。
なお、幼女(婚約者)の一族によって、邪神への生け贄に捧げられる幼女(婚約者)を助け出した時、余所者は失せろとの言葉に「こいつは生け贄なんかじゃない! お前達の都合の良い玩具じゃないっ! こいつはーー俺の婚約者だっ!!」と発言したもよう。
ちなみに、北斗と南斗の開祖たる転生者は、モテたい。女性にちやほやされたい。と云う理由で頑張っていました。