転生者達のせいで原作が完全崩壊した世界で   作:tiwaz8312

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悪魔に転生した転生者「は? センスと魔力量に左右される? 魔力を想像力で行使して、火とか起こしたりすんの?」

原作モブ悪魔「せやで、だから、センスと魔力無いとツラタンwww」

悪魔に転生した転生者「バカじゃね? 少数のスゲー奴より。沢山のソコソコ使える奴の方が強いだろ? 戦争は数てドズルの兄貴も言ってたろ。よし。俺が研究して、技術体系作ったろ。知識チート舐めんなww」

その結果、魔力をそのまま使う悪魔は、ほぼ居ません。
ソコソコの魔力を持っていて、勉強すれば、誰でも使える"魔法"が存在しているからです。



リアス・グレモリーの華麗な日常

 リアス・グレモリーの朝は早い。

 4時前に自然と目が覚め、全裸にTシャツの扇情的な姿のリアスは、モソモソとベッドから起き上がると、おもむろに身に付けているTシャツの匂いを嗅いで、僅かに顔をしかめた。

「もう、匂いが無くなってるわね......洗ってから、新しいのに交換しないと」

 一誠に黙ってこっそりと借りているTシャツの匂いが、すっかり自分の匂いになってしまった事に落胆しながら、リアスはパソコンに向かうと電源を入れて、椅子に腰掛けた。

 淀み無い動きで、一誠と書かれたフォルダを開くと"着替え(学校)" "着替え(家)" "見て聞く" "動画" "音声"と書かれたアイコンから、見て聞くをダブルクリックする。

 ディスプレイには、誰も居ない浴室。誰も居ない脱衣場。誰も居ない玄関。そして――ベッドで誰かが眠っている部屋が映し出される。

 リアスは慣れた手つきで、誰かの寝ている部屋の映像をクリックすると視点が切り替わり、計7回の視点切り替えで異常が無い(京子が居ない)事を確認すると、安堵の息を吐く。

「邪魔者は無し。と」

 そう呟いたリアスは、カメラを再度切り替えてベッドで寝ている一誠の寝顔を画面一杯に映し、その弛んだ寝顔にクスクスと楽しそうに笑う。

「気持ち良さそうに寝てるわね。どんな夢を見ているのかしら?」

 画面に映っている一誠の頬を、ツンツンと人差し指でつつき、『画面が邪魔ね。早く一緒のベッドで寝たいわ』と思いながら「可愛い寝顔」と満足気に呟いた。

 30分程、ジッと一誠の寝顔を堪能したリアスは、あーあー と小さく声を出して喉の調子を整えると、パチリと目を覚ました一誠に微笑みながら「おはよう。イッセー」と蕩ける様な声で画面越しに嬉しそうに挨拶の言葉を口にした。

 画面の中の一誠が起き上がると同時に、カメラの視点を切り替えて、一誠の上半身が映る様にズーム調整をすると、背伸びをしながら大きな欠伸をした一誠に、「あら、眠たいの? もう。夜遅くまでエッチなゲームをしてるからよ」と届くはずの無い声を掛けた。

 スピーカーから一誠の「ねみぃ」と声が聞こえ、画面の中の一誠が眠たそうに目を擦ると、「ダメよ、イッセー。そんな風に目を擦ったりしたら」と優しい口調で画面の中の一誠に話し掛ける。

「ほら、日課のランニング。今日も走るんでしょう? 早くしないと」

 録画の準備万端のリアスが、何度も見ている一誠の着替えシーンを、今か今かと待ち受けていると、一誠が起き上がり、それと同時にリアスがカメラの視点を切り替え、幾度と無く飲み込んだ唾を飲み込むと同時に録画ボタンを押し、一誠の部屋に内緒で置かせて貰った計8台のカメラが様々な角度から、一誠の着替えを録画し始める。

「小さい頃に読んだ小説には、好きな人を遠くから見てるだけで幸せになれると書いて有ったけど......本当ね」

 寝ている時に来ていたTシャツと短パンを脱ぎ、トランクス姿になった一誠を、うっとりとした表情で見ているリアスは言葉を続ける。

「だって、こんなにも離れてるのに、こんなに幸せなんですもの」

 着替え終えてジャージ姿になった一誠に、リアスは幸せそうに微笑む。

「もう。イッセーたら、脱ぎ散らかしたらダメよ。仕方ないわね......良いわ。私が片付けて上げる」

 この時間帯なら、京子が起きていない事を熟知しているリアスは、部屋を出て行く一誠に「行ってらっしゃい。本当は玄関で見送りたかったけど......ごめんなさいね。イッセー」と声を掛ける。

 一誠が部屋から居なくなると、録画を止めたリアスはパソコンの側に置いていた紙バッグを手に取り、即座に一誠の部屋に転移して念の為に認識阻害の魔法を展開する。

 

 転移を終えて、グルリと周りを見渡したリアスは、望み通りに一誠の部屋に着いた事を確認すると、大きく深呼吸をして、肺の中に部屋の空気を取り込んだ。

「京子が起きるのは5時半。イッセーが帰ってくるのは6時。今の時間は5時前」

 確認する様にそう呟いたリアスは、チラチラと一誠がさっきまで横になっていたベッドを見る。

「少し、横になりたい気分だし。でも、京子は鋭いから匂いで気付かれるかも......」

 そう言いながらも、ふらふらと一誠のベッドに吸い寄せられた全裸+一誠のTシャツ姿のリアスは、『香水とか付けてないし。体臭を魔力で消せば大丈夫よね』等と考えながら、紙バッグを床に置くと、魔力で体臭を消してモソモソと一誠のベッドに入り込む。

 一誠が使っていた枕に顔を埋め、クンクンと残り香を堪能して、一誠の体温が僅に感じられるベッドから、その温もりを全身で甘受するリアスは、『まるで、イッセーに包まれてるみたい』と幸せで蕩けそうな表情を浮かべる。

 10分ほど堪能したリアスは、いそいそとベッドを抜け出してから、ベットに自分の髪とかが落ちていないか確認した後、紙バッグから洗濯した――大分前にこっそりと借りたTシャツと短パン。そして枕カバーを取り出すと、ちゃんと同じモノなのか最終確認をして、全く同じモノだと確信する。

「よし。大丈夫ね。これで、また借りられるわ」

 満足気に、うんうんと頷いたリアスは、そそくさと枕カバーを取り替えて、脱ぎ散らかしてある一誠の服を丁寧に折り畳み、枕カバーと折り畳んだ服を紙バッグに入れる。

 望みのモノを手に入れられてホクホク顔のリアスは、洗濯した一誠の服をベッドに掛けた。

「本当はちゃんと畳んでおきたいけど......京子にバレるといけないし。本当、邪魔ね」

 忌々しい恋敵を、なんとか排除できないかと何度か計画を練ったが、リアスは一度も実行に移さなかった。

 洗脳・暴漢をけしかける・事故に見せ掛けて排除するなども考えたが、一誠にバレて嫌われたくないから実行できない。

 なにより、駒王町でそんな事をすれば、裏世界最大のガラパゴスと呼ばれている駒王町に支部を置く。"葉隠" "亀仙流 "流派東方不敗" "風魔・甲賀忍軍" "ヤイバ流剣術" "プリキュア" "飛天御剣流" "陰陽連"等が確実に動き、リアスは碌な抵抗もできずに叩き潰される。

 駒王町を統治・運営しているリアスだからこそ、駒王町の頭の可笑しい戦力を良く理解していた。

 それらの理由に加え、リアスが京子排除に動かない最大の理由――それは、同じ男に惚れた女の意地。

 なんらかの方法で京子を排除すると云う事は、"正攻法では京子に勝てない"と認めると云う事。

 それだけは絶対に認められないリアスは、京子とは真正面から戦って勝つ。そう決めていたからだ。

「はぁ......なんとかして、一誠を眷属にできないかしら。そうすれば、色々と動き易くなるのに」

 そろそろ京子が起きる時間である事を、部屋の時計で知ったリアスが自室に帰ろうとしたその時、『そう云えば、あのハウツー本に、好きな人の下着は良い匂いがするて、書いてあったわね』と余計な事を思いだし、そわそわし始める。

「一枚。一枚だけ、借りて行きましょう」

 自分にそう言い聞かせて、一誠のタンスからトランクスを1枚取り出したリアスは、ソッと紙バッグに収め、忘れ物(自分の痕跡)が無い事を再度確認したリアスは、自分の部屋に転移する。

 自室に戻ったリアスは、機敏な動きで服等が入った紙バッグをポリ袋に入れると密封して、本棚から、表紙に"恋愛初心者必読!!" "恋愛の達人が恋愛初心者に送る恋愛のノウハウ!?" "これで愛しの彼の情報を手に入れろ!" "これで貴女も立派なクンカー"と書かれたジョーク本を取り出し、ペラペラとページを捲る。

 目当てのページを見つけたリアスは、真剣な表情で書かれている内容を読み、「100均に、真空パックって売ってたかしら?」と呟く。

 リアスが真剣に読んでいたページには、"手に入れた好きな人の下着を小さな紙袋に入れて、匂いを堪能しよう" "保存するときは真空パックに入れて、日の当たらない涼しい場所で保管します。絶対に脱臭剤等を入れてはいけません" "必読。匂いを堪能する為の作法"と書かれていた。

「無臭で通気性の良い紙袋......どこに売ってるのかしら?」

 眉間に皺を寄せながら、むぅ。と唸ったリアスは、取り敢えず近辺の店を全て回る事を決めて、手に持っていた――リアスが頼りにし鵜呑みにしている"恋愛ハウツー本"を本棚に戻し、偶然を装ってランニング帰りの一誠に会う為に、お揃いのジャージに着替えてから家を出る。

 軽いランニングでポイントに到着すると、休憩を装いながら一誠を待っていたリアスは、視界に近付いてくる一誠の姿を確認すると、気付いてない振りを開始する。

「リアス先輩。おはようございます」

「おはよう。イッセー。相変わらず朝早いのね」

「早く起きる習慣が付いただけですよ」

「あら、習慣に成る程、毎日起きられる事は凄い事よ?」

 二言三言、言葉を交わして走り去る一誠を見送ったリアスは、『イッセーから話し掛けられた』と幸せな気持ちで急いで帰宅する。

 

 帰宅したリアスはジャージ姿のままで、すぐに自室のパソコンの前に座ると一誠の部屋のカメラから玄関のカメラに切り替える。

 ジッと待っていたリアスは、玄関が開き一誠が「ただいま」と言った瞬間、即座に「お帰りなさい。イッセー」と画面越しに返す。

 一誠が靴を脱ぎ、家に上がるのを見届けたリアスは即座にカメラを脱衣場に切り替えると、録画の準備を終わらせた。

 脱衣場の扉が開き、着替えを持った一誠が入って来ると、リアスはゴクリと唾を飲み込む。

 脱いだジャージと肌着。そしてトランクスが、洗濯機に投げ込まれる光景に、「ああ......」と悲しげな声を上げながら、全裸になった一誠の全身をチラチラと満遍なくチラ見したリアスは、「やっぱり、小さい頃に見た、お父様のより大きい......ちゃんと受け入れられるのかしら......今から不安だわ」とある部分を更にチラ見しながら呟く。

 浴室に一誠が入ると同時に、カメラを浴室に切り替えたリアスは、一誠がシャワーを浴び始めると同時に、録画を開始する。

 一誠が立ったまま髪を洗い始めると、リアスは「こう云うのを、きっと、艶かしい。て表現するのね」そう言いながら、ほふ。と溜め息を付く。

 汗を流し終えた一誠が脱衣場に上がると同時に、浴室の録画を止め、カメラを再び脱衣場に切り替える。

 録画を続けている脱衣場で、体を拭き、制服を着ている一誠をチラチラと見ながら堪能したリアスは、脱衣場を出て行く一誠を見送ると、録画を止めてパソコンの前を離れる。

「はぁ......早く、イッセーと一緒に、お風呂に入れる様になりたい......」

 溜め息混じりにそう呟いたリアスは、制服とバスタオルを片手に浴室に向かった。

 

 寝汗を流し制服に着替えたリアスは、一人には広すぎるリビングで、一人ポツンと食卓に着いて、玉子のサンドイッチ食べながら、目の前のコーヒーに視線を落としていた。

「私一人だけ、なら、ワンルームマンションで十分じゃない......駒王町の統治とか運用関係で来客は有るけど、一軒家じゃなくても良いじゃない......」

 最低限の見栄を張る為に――外交などの政治的な都合で前任同様に一軒家を与えられたリアスは、寂しさを紛らわせる為に、独り言を続ける。

「一人で、こんな所に居たら、寂しいに決まってるじゃない......だから、前任のクレーリアさんが恋人とギリシャに駆け落ちするのよ」

 現魔王である兄に教えられた"事実"を溢しながら、使用人の一人も付けられない程に窮している政府の財政に、リアスは寂しさを誤魔化す様に溜息を付いた。

「私も、イッセーとギリシャの聖域に駆け落ちしようかしら」

 2つの玉子サンドを食べ終わり、コーヒーをチビチビ飲んでいるリアスは、ボソリと本音を漏らしてしまう。「寂しい……イッセー。助けて」と。

 

 16歳に成るまで、セラフォルーショックの影響で学校には通わせて貰えず、実家で次期当主として勉強の日々。娯楽は、兄であるサーゼクスとその妻であり眷族でもあるグレイフィアが仕事の合間を縫って持って来てくれる小説や漫画。そして、両親と一緒に見るドラマと映画のみ。

 家族と出かける時は社交会が殆どで、仕事が忙しい両親と兄夫婦と純粋に遊びに行った事など2・3回程度。

 小さい頃はそれが不満だったが、12歳ぐらいには、絶望的な悪魔の現状を理解して仕方ないと受け入れた。

 何故なら、16歳に成るまでは、家族の誰かがすぐ側に居てくれたからだ。どんなに辛くて悲しくなっても、すぐに家族の誰かが駆けつけて側に居てくれた。一緒に居てくれた。だからこそ、リアスは友達が居なくても平気だった。

 しかし、16歳になったら、「将来有望だから」その言葉一つで実家を出され、右も左も分からない状態で駒王町の統治・運営を任せられた。

 最初の頃はまだ良かった。

 日本神話勢力に頭を下げて借り受けたにも関わらず、前任が駆け落ちして以降、統治者を寄越さずに「駒王町を任せられる人材が居ないので、そちらで管理・運営して下さい」の言葉で、悪魔を侮っていた日本神話勢力に、舐められてたまるかと、余計な事を考えずにガムシャラに頑張れた。

 駒王町の実力者達に、頭を下げて、協力を取り付けて。リアスと同じ様に「将来有望だから」の一言で、駒王町の統治・運営に駆り出された同年代・同性であるソーナ・シトリーに、どう接していいか分からずに業務的に接してしまったりと。

 最初の1年は、ひたすらに頑張るだけの日々――駒王町の実力者達や日本神話勢力と日本政府を相手に必死に実力を示し続けて、クタクタになって家に帰るとすぐに就寝する。そんな1年だからこそ、寂しい等と考える余裕なんて無かった。

 しかし、2年目に成るとある程度の余裕ができてしまった。時折、寂しいと感じてしまう様になってしまったのだ。自分のファンを自称する女子達が、友達と一緒に楽しそうにしている光景に、リアスは"羨ましい"と感じてしまうだけの余裕ができてしまった。

 幼い頃から勉強漬けで、どこからどこまでが知り合いで、どこからどこまでが友達なのかを、知識としても感覚でも知らないリアスは、似た様な生い立ちのソーナと友達に成ろうとするが、どうすれば良いのか分からなかった。

 ならばと、婚約者のライザーの眷属と友達に成ろうとするが、結局、どうすれば友達と云える関係に成れるのか分からずに、無駄に家とフェニックス病院を行き来するだけの結果に終わってしまう。

 そんな時だった。一つ下の一誠と出会ったのは。

 偶々。フェニックス病院で、「くそ。反応するな。ユーベルーナさんは恩人なんだぞ」と股間を押さえながら踞って居る制服姿の一誠に、体調が踞る程に悪いのかと心配して声を掛けたのが切っ掛けだった。

 それから、明るく元気で、良くも悪くも素直な一誠と少しずつ親しくなり、それまで感じていた孤独感が癒されるのをリアスは確かに感じた。

 一誠との関係が友達と云っても良いのでは。そう思ったリアスは、思いきって一誠に相談した。

 小さい頃から勉強の毎日で、友達の作り方が分からない。どうすればソーナ・シトリーと友達になれるか。と、

 そして、帰って来た一誠の答えは単純明快な「へ? いや、フツーに友達に成りたい。て言えば良いんじゃ」と云うモノだった。

 その言葉に驚きながら、リアスが「そんな事で、本当に友達になれるのかしら」と聞き返すと、「いや。友達て、難しく考える必要ないですよ。気の会う奴と一緒に遊んでたら、いつの間にか友達に成ってますし」と一誠が返し、「信じられないなら、俺と遊びに行きます? そうすれば、友達がどんなもんなのか分かると思いますし」と続けられた言葉に頷いて、リアスは生まれて初めて友達と初めてのゲームセンターや初めてのカラオケで遊んだ。

 寄生虫や感染症等の展示会ではない。小説・漫画・ドラマ・映画で見た、小さい頃からリアスが憧れた、友達と普通に遊ぶ。それを一誠が叶えてくれた。

 生まれて初めて、友達と遊びに行く事に浮かれて、気合いの入りすぎたリアスの格好を見た一誠が、時折、「落ち着け。俺。姉貴に続いて、リアス先輩まで傷付けるのかよぉ」と呻いたりしてたが。

 駒王町の統治・運営について、実力者達やソーナと協力して問題点を洗いだし改善して、日本神話勢力と現魔王政権に報告をする毎日を送りながら、ソーナと友達に成ろうと話し掛けようとするが、「えっ? 普通にいや」と言われるのが怖くてなかなか言い出せなかったり。

 ライザー(医道バカ)に婚約者として、最新医療機械展示会や医学学会とかに連れて行かれたり。

 ファンの子と仲好くなろうと思い、話し掛けようと頑張るも、「イメージと違う。リアス先輩のファン辞めて、京子先輩か蒼那先輩のファンに成ります」と言われるのが怖くて話し掛けられなかったり。

 いつまで経っても、一誠以外に友達ができなくて、一誠に泣き付いて、一誠に「あー 大丈夫ですよ。リアス先輩。可愛いし美人だし。良い人だし。少しずつ頑張りましょう。友達て、無理に作るもんじゃないと思いますし」と励まして貰ったり。

 リアスが寂しさと孤独感に負けて、迷惑になると理解しながらも、深夜に電話をしても、安心できるまで一誠が話し相手に成ってくれた。

 リアスが精神的に疲れて居ると、一誠が遊びに誘い一緒に遊んでくれた。

 一誠が何度も相談に乗り、リアスの背を押したから、出会ってから3年目に漸く、ソーナと友達になれた。

 リアスは孤独感に苛まれる事は無くなったのだ。一誠のおかげで。

 リアスにとって、一誠は紛れもなく、自分を孤独から救ってくれた、ヒーローだった。

 

 コーヒーを飲み干し、朝食を終えたリアスは皿とコップを片付けると、自室に戻りパソコンの前に座ると、カメラを玄関に切り替え、ジッと待った。

 しばらくすると、制服姿で鞄を持った一誠と京子が姿を現し、玄関を出て行く一誠に「行ってらっしゃい。学校で会いましょう」そう言いながら、嬉しそうに一誠と一緒に学校に向かう京子を、リアスは羨ましそうに眺めていた。

 一誠とそのついでの京子を見送ったリアスは、パソコンの電源を落とし、鞄を手に取ると忘れ物がないか――特に、学校に内緒で置かせて貰っているカメラの操作に使うスマホを、ちゃんと持ったかを念入りに確認したリアスは、忘れ物が無い事をご確認し終えて、一人で学校に向かった。

 

 ご近所さんやファンの子達と挨拶を交わしながら、通学途中で偶然出会った、一誠が通っている道場の先生であり、駒王町の頭の可笑しい実力者の一人の初老の男性。柳川師範に、以前断られたにも関わらず、「道場の更衣室にカメラを置かせて下さい」と頭を下げるが「いや、駄目って言ったよね? まぁ、そう云うのに興味を持つ年頃なんだろうけど、駄目なものは駄目だよ」と再び断られて肩を落としながら、学校に辿り着いたリアスは教室の席に着くとすぐにスマホをいじくり、カメラの調子を確認する。

「邪魔な物とかは無し。と」

 カメラを遮る邪魔な物とか無い事を確認し終えたリアスは、午後に有る一誠の体育の授業を心待に、退屈な授業に備えた。

 

 

 退屈な授業を聞き流し、クラスメートの雑談に恋ばなが有れば必死に耳を澄まして聞き取り、話し掛けてくるクラスメートに、『友達に成ってくれないかしら......』と考えながら一言二言の会話をなんとかこなし。

 昼御飯をオカルト部の部室で、友達のソーナと食べながら、"どうすれば、眷属候補達と親しい友達に成って、自分の眷属に成って貰えるか"を熱心に話し合い。二人揃って「友達を作るのって、難しい」と深い溜め息を付く。

「それでね。リアスに相談があるのだけど......その、気になる人が居て、匙て子なんだけど......」

「分かったわ。明日、とても頼りになる恋愛ハウツー本をプレゼントするわ」

「良いの?」

「実は、同じ本を三冊持ってるの。ほら、私達。恋愛未経験者じゃない? それに、友達にプレゼントとか、友達と恋ばなをするの憧れてるのよ」

「分かります。凄く分かります。まだリアスに話せる事は経験してないけど......絶対に恋ばなしましょう!」

「ええ! 絶対に恋ばなしましょう。後はジャネットだけなんだけど......あの子。無駄に理想が高いのよねぇ」

「ああ、ジャネットさんは......あのトンでもお兄さん基準でしたね......」

「大丈夫。多分。きっと。いつか。ジャネットも運命の人に出逢えるはずよ」

「その方が、ジャネットさんの基準を満たしている事を願いましょう......」

 等と、夢だった友達との雑談を楽しみながら昼食を食べ終わり、遂に待ちに待った時間が訪れる。

 

 気分が優れないと嘘を付き、心配してくれるクラスメートに申し訳ないと感じつつ、『友達に成って。て、言ったら友達に成ってくれるかしら......ああでも、「貴女はただのクラスメートよ?」なんて言われたら......私には、ソーナとジャネットが居るし、欲を掻いたらダメよね』等と考えながら、保健室に辿り着くと、保険医が居ない事を確認して、そそくさと備え付けられたベッドに潜り込む。

「本当にどうすれば、眷属に成ってくれるのかしら?」

 スマホで一誠の生着替えを録画と観賞をしながら、リアスは深い溜め息を付いた。

 他の勢力と戦争になれば、すぐに滅んでしまう悪魔の苦渋の救済手段――悪魔の駒。

 他の種族を転生させて悪魔にする力を持ち、同族の悪魔に使用しても、様々な能力強化に使える力を持つ。絶滅の危機を乗り越える為に産み出された。冥界の悪魔種の希望。

 全勢力に現魔王サーゼクスが必死に頭を下げて、使用の許可をもぎ取った。問題は多いが、それでも、冥界の悪魔種の存続の可能性の象徴。

 低迷の一途を辿る経済と、活力を失い始めている悪魔を盛り上げる為の"レーティングゲーム"に必要な道具。

 その悪魔の駒には様々な法律が定められていた。

 "同族及び他の種族に悪魔の駒を使用する場合、本人の同意が原則として必須"

 "同族及び他種族の未成年者に使用する場合は、本人及びその家族の同意が原則として必須"

 "他の勢力に所属する者に使用する場合は、その勢力のトップの許可と本人及び家族の同意が原則として必須"

 "悪魔の駒を使用し、眷属とした場合は速やかに、現政権に報告し、不備が無い事を証明しなくてはいけない"

 "悪魔の駒を使用し、眷属とした者の詳しいプロフィール及びその者の扱いを、厳密に詳細に書面に記入し現政権に届け出る事。変更が有る場合は同様に書面に記入し、現政権に届け出る事"

 "死者に対する使用は原則として全面禁止"

 等の様々な法律が取り決められていて、その法律を破れば、全財産没収及び死刑もしくは無期懲役。

 そして、その法律が、リアスとソーナに眷属候補は居ても、眷属が居ない理由だった。

「イッセーの同意を貰って、お義父様とお義母様。そして、京子の許可。どう考えても無理よね......」

 深い溜め息を付きながら、『どうせなら、悪魔の駒じゃなくて、人間の駒なら、すぐにイッセーの眷属に成れたのに......あ、でも、そうなったら......イッセーてエッチだから......』と妄想の世界にリアスは旅立つ。

 一誠の生着替えが終わると同時に無意識に録画を止めたリアスは、ベッドに身を任せながら、だらしない顔で、「ウフフフ。ダメよ。イッセー。子供達が起きちゃうじゃない」と独り言を呟き続ける。

 授業の終わりを知らせるチャイムの音に、我に返ったリアスは一誠の着替えを録画・観賞して、つまらない授業を受ける為に教室に戻る。

 

 全ての授業が終わり、放課後になると、オカルト部の部室入り、眷属候補である姫島朱乃と塔城白音を相手に、なんとか雑談をしながら、悪魔の仕事を体験&駒王町の統治・運営の手伝いをしてもらい、朱乃と白音を転生悪魔に成る事をそれぞれの保護者に納得して貰う方法を話し合っていた。

 と云うもの、朱乃と白音はリアスの眷属に成るのを了承してくれている。しかし―― 朱乃は母親が賛成しているが、バラキエルが「娘は人間と堕天使の橋渡しと云う大切な使命がある。悪魔に成ってはその使命が果たせなくなる」と反対し。

 白音の場合は両親と姉の黒音は賛成しているが、その両親の雇い主で、黒歌の主である悪魔が「モンスターとの戦いの最前線――開拓地である我が領から戦力の引き抜きとか、正気ですか? そんな妄言吐いてる暇があるなら、兄であるサーゼクス様に開拓費と防衛の為の人材とハンターズ・ギルドに払う費用を寄越す様に言って下さいませんかね? ああ、黒歌と白音の両親ならすぐにでも差し上げますよ? あのガチキチマッドとそのマッドの信者で宜しければ」と反対されているのだ。

 もう一人の眷属候補の木馬悠斗に至っては、本人が乗り気で、所属している組織のトップの許可を得ていても、養父であるバルパー・ガリレイが「イヤイヤ――悠斗が日本に行って、悪魔の眷属に成るなんて――お父さんは認めませんよ!! 絶対に認めません!! 悠斗はお父さんの側に居て、一緒に聖剣の研究をするんです! 錬金術で作られた紛い物や、聖剣とは名ばかりの神々等が作った偽物。神造兵器ではない。人々の祈りと願いによって産み出された本物の聖剣を作り出す研究をするんです!!」と猛反対をして、駒王町どころか日本に居ない始末。

 そんな散々な現状の結果。リアスの眷属は一人も居なかった。

 新たな顧客開拓と悪魔の業務を終らせたリアスは、眷属候補の朱乃と白音を見送り。そのまま、ソーナが一人で待つ生徒会室に向かう。

 生徒会室で紅茶を淹れて待っていたソーナと、日本神話勢力と現政権に渡す報告書を作成し、株やFXで稼いだお金の殆どを費やして雇った計二十人の風魔・甲賀忍者達の報告書を読み、不穏な動きが無いのを確認して、駒王町の頭の可笑しい実力者達や協力組織の要望・要請――

 "思いっきり戦いたいから、他の実力者達と他流試合して良い? もしかしたら、地形変わるかも知れないけど。 飛天御剣流師範・松本誠" 

 "暫く、異界を旅するから、後、よろしく。1.2年したら帰ってくるから。 ヤイバ流剣術師範・宮田裕一" 

 "ギアナ高地に修行に行ってくる。帰還は未定だ。 流派東方不敗師範・狭山友近" 

 "昨今の物価上昇等の影響で雇用費大幅値上げしました。今の金額では五人が限界です。 風魔棟梁" 

 "風魔同様に家も大幅値上げしました。今の金額では五人が限界です。 甲賀棟梁"

 "そろそろ、結界張り直しの時期です。同様の性能の結界をお求めの場合は、前回と同額で結構です。 陰陽連駒王町支部所長"

 それらの書類を見た、ソーナとリアスは、クシャリと書類を握り潰した。

「は? 雇用費値上げ? バカじゃないの? 本当は最低五十人の雇いたいのを、二十人にしてるのよ? 値上げは最近したばかりでしょう? また値上げするの? 商売舐めてるの? ただでさえ、バカみたいな値段なのに更に上げるの?」

 苦心してお金を稼ぎ、駒王町の統治・運営費に充てているリアスは、あんまりな要求に、怒りで震える。

「現政権に費用要求は無駄ですよ。先のクレーリア騒動の折りに、クトゥルフの信仰組織が暴れたお陰で、現政権にお金は有りませんから」

 リアス同様に、株やFX等で稼いだお金を駒王町の統治・運営費に充てているソーナは、深々と溜め息を付き、頭の可笑しい実力者達の要望に頭痛を覚えた。

「それより、この頭の可笑しい実力者の皆さんの要望。と云うよりも通達の処理が問題です。これ、宮田さんと狭山さんは、もう駒王町どころか日本に居ないでしょうね......そして、松本さんは、これ幸いとお二人の後を追ってますね。確実に」

 駒王町のパワーバランスを担う三人が居なくなった現実に、リアスとソーナは深い溜め息を付いた。

「なにかあったら、柳川さんと葉隠とバラキエルさんを頼りましょう」

 そう纏め様としたリアスの言葉に、ソーナはゆっくりと首を横に振る。

「バラキエルさんは、今度。あの魔境・九州に単身赴任するそうです。朱乃さんが嬉しそうに言ってましたよ。聞いてないのですか?」

 朱乃から何も聞いていなかったリアスが、ビッシリと固まる。

「聞いていなかったんですね......その、頑張って下さい」

 ソーナの労りの言葉に、ショックから辛うじて復帰したリアスは「ええ。頑張って、仲良くなるわ......」と震える声で辛うじて返す。

 リアスとソーナは知らなかった。気付かなかった。朱乃は既にリアスを友人だと思っていて、姫島 朱乃(ドエス)の最近のお気に入りは、リアスのオロオロしている反応や涙目になっている顔だという事を。そして、次の標的としてソーナが狙われている事を。超箱入り娘2人は気付いていなかった。

「それで、結界の費用はどうします? 一応。私も積み立てていますが、正直前回の費用には全く届いていません」

 申し訳なさそうにそう言ったソーナに、リアスは「私もよ。まさか、忍者の人件費がここまで高沸騰するなんて思わなかったのよ……」と力無く答えた。

「取り合えず、結界のランクを落としましょう。最悪、不正規の侵入者が分かるだけでも良い訳だし」

 力無く発言したリアスに、ソーナは同意する。

 その後も、色々と話し合い。駒王町の運営方針を決めた二人は、「結局。世の中はお金なのね……」と深い深い溜息を吐いた。

 

 統治者としての仕事を終えたリアスは、初めてソーナと途中まで一緒に帰り。二人仲良く『ああ、私、今。友達と一緒に雑談しながら、帰ってる!?』と歓喜に打ち震え。

 別れ際に、自宅に誘おうが考えた二人は『お泊り会……さすがに、まだ、ハードルが高すぎよね』と、名残惜しそうにそれぞれの家に帰って行った。

 

 家に帰り着いたリアスは、すぐにシャワーを浴びて、疲れと汚れを洗い流し普段着に着替えると、"無臭で通気性の良い紙袋"と"真空パック"を求めて方々を彷徨い。何件もの店を訪れて漸く手に入れた紙袋と真空パックを、宝物の様に胸に抱いて帰宅する。

 

「好きな人の下着の匂いは、脳を蕩けさせる――そう書いて有ったけど」

 買って来た紙袋に内緒で借りた一誠のトランクスを入れたリアスは、恐る恐る、その紙袋に口と鼻を付けると、ハウツー本に書かれている内容を思い出しながら、ゆっくりと静かに深呼吸をする。

「あっは」

 フッと気が付くと、一誠の帰宅時間に成っている事に気が付いたリアスは、いそいそと一誠のトランクスを真空パックにしまい、自分のタンス――下着を仕舞っている引き出しに丁寧に収めると「最高なのは脱ぎ立て、だったわね」と呟いた。

 自室のパソコンを立ち上げ、玄関のカメラに一誠が映り。リアスは何時もの様に「お帰りなさい。イッセー」と口にした。

 その後は、脱衣所で制服を脱いでいる一誠を録画・堪能して、浴室で体を洗っている一誠を録画・チラ見して、脱衣所で、いつものTシャツと短パン姿に着替える一誠を録画・ガン見する。

 晩御飯を終えて、自室に戻った一誠が、パソコンを立ち上げエッチィゲームを始めると、カメラの視点を念入りに調整して、その光景を録画しながらチラ見する。

 そして、一誠がベットに横になると、リアスは毎日言っている言葉を口にする。

「おやすみなさい。イッセー」




その後、リアスからプレゼントを貰ったソーナちゃんは――立派なクンカーとなりました。

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