転生者達のせいで原作が完全崩壊した世界で   作:tiwaz8312

4 / 25
処女女神(真)が処女女神(経妊婦の駄女神)となった話


勘違いされてる女神の苦悩

 どうしてこうなったと‼️ と私は濁り死んだ目で、遥か遠くに視線を投げる。

 自身の神殿の中で、自分に仕える侍女逹にアレコレ世話を焼かれながら、本当にどうしてこうなったと心の中で頭を抱え、薦められるまま食べて飲む機械と化していた私は、吐き出そうになる溜め息をぐっと我慢する。

 ちょうど神代の時代が終わった辺りぐらいから、ここ聖域の子逹は過保護になった。何故か成ってしまった。

 ひたすら私の世話を焼いてくれる侍女逹の献身は、女神として嬉しくありがたいと確かに思うのだ。信者によっては「化身ならば・分霊ならば、相応にしろ。と言うかお願いですからして下さい。後生ですから」と、文句や苦情を口にする者逹と違い、聖域の子逹は心から私を大事にしてくれる。敬意と敬愛を捧げてくれる。

 神代の時代が終わり、人の世となった為に、本霊降臨ができなくなって、分霊か化身しか降ろせなくなり、使える権能が制限されてなお、聖域の子逹は私を大事にしてくれる。

 うん。大事にしてくれるのだ。溜め息一つで聖域を引っくり返す様な大騒動になる程に......

 だから、この子逹に見付からない様に――こっそりと化身を人の世に降ろし、目当てのスイーツを堪能して、今の人の世を心行く迄満喫して、顕現タイムリミットを迎えたら神域に帰るつもりだった。

 何しろ、人の世になった結果。神は本霊降臨してはならないと云う決まりが全神話の決議で決まっていて、化身や分霊を降ろす時は非常時のみ、もしくは人間に求められた時、そして使える権能は最低限度と決められている。

 つまり、求められてない上に非常時でも無いのに化身を人の世に降ろした私は......バレたら厳罰を受けてしまう。だから、偶然にも私を見つけた闘士に対して、つい咄嗟に口走ってしまったのだ――「日本の駒王町に、聖戦の予兆があります。早急に真実を調べ上げ、聖戦の芽を摘みなさい」と。

 それからが凄かった。私の嘘を聞いた闘士は顔色を変えた途端、「失礼します」と口にし、私を俵の様に肩に担ぎ、物凄い速さで聖域まで走った。

 途中にある川や谷を飛び越え、険しい悪路も何のその、不眠不休で走り続け、聖域に辿り着いたのだ。辿り着いてしまったのだ……

 聖域に着いてすぐに、私は自分の神殿に放り込まれ、私が降臨しない限りは聖域に居ないはずの聖闘少女(セインティア)達がすぐに現れて、「ご家族は何処におられるのかお教えください」とか「どこで生活を為さっておられたのですか」とか質問攻めにされた私は、もう駄目だ~ お終いだ~ 嘘吐いたから罰が更にきつくなる~ と思いながら虚ろな目で、親については私は化身だから「親も兄弟もいない」と返し、どこで生活していたかについては、神域から地上のお金を持ってくるのを忘れてしまい女神でありながら「野宿しながら無銭飲食してました」とは口が裂けても言えず、「わからない」と返し、次々と投げかけられる質問を死んだ目でひたすら答えた。

 質問が終わったのか、聖闘少女筆頭改め侍女長カティアが笑顔で私をお姫様抱っこし、バラの花びらが浮かぶ浴場に連れて行くと「御身を清めさせていただきます」その一言を告げたカティア達は、野宿生活でバッチくなっていた服を剥ぎ取り、私を洗い始めた。

 自分の事は自分でできるように旦那兼初代教皇に仕込まれている私が、「自分で出来るから」と言うと、カティア達が物凄く悲しそうな顔で口々に「お願いします。私達に御身のお世話をさせてください」と頭を深々と下げてくる。

 そして、カティア達に全身をコレでもかと磨き上げられ、清潔で可憐な服を着せられて、現教皇カノン君に引き合わされ、カノン君から「闘士300名を現在確認できた情報を元に、駒王町を主とした不穏と思われる地に派遣し、必要な情報を収集後、適切な聖闘士を送ります」と言われてしまい。今更、うそぴ~ん! なんて言えなくなった私の目がますます濁り死に、あれ? これヤバくない? ヘタをしなくても神々からの罰だけじゃなくて、旦那にも怒られない? と心の中で頭を抱え冒頭に至る。

 

 昔は――神代の時代は本当に良かったと、一生懸命、私の世話を甲斐甲斐しくしてくれるカティア達を死んだ目で見ながら、つくづくそう思った。

 特に、旦那であり初代教皇バランの時代は本当に良かった。

 出会いは本当に意味不明で最悪だったけれど、「女神アテナ!? マジで女神アテナ!? 星矢なの!? 星矢なの!? マジで? だから俺はコスモに目覚めたの? なら聖域は? 聖闘士達は?」等と、意味の分からな事をいきなり叫びながら質問をしてきたり。

「はぁ!? 聖域も無しで聖闘士も居ない!? 何やってんだよアンタは! やべぇ、このままじゃマジで地上が滅ぶ!! ほら、行くぞ。は? どこに? 聖域作りと聖闘士をかき集めにだよ!!」

 そう言って、呆気に取られている私の手を取り、「地上の平和の為なんだよ! 邪魔すんじゃねぇ!」と叫びながら、私の神官達を不思議な力"コスモ"で薙ぎ払い、神殿の周りしか知らなかった私を外に連れ出した。

 連れ出したのだからちゃんと私の面倒を見ろと文句を言うと、「無理、そんな余裕無し。つーか、女神だろうが何だろうが、自分の面倒ぐらい自分で見ろよ……この駄女神がっ!!」等と暴言が飛んでくる始末だった。

 今思い出してもあの暴言は無いと思う。まぁ、確かに路銀を賭博で全部消し飛ばしたり、酒代で使い切ったりした事もあるけど、あの暴言は無いと本当に思うのだ。だって私は女神だし。今や地上の守護神なんて呼ばれてる女神様だし。

 バランとの旅の途中でニケと出会い。私の素晴らしさに感銘を受けて屈服し、そのままニケが私の眷属神になった事も良い思い出だ。

 決して、私をバカにしてきたニケにブチギレ、私がニケの服を剥ぎ「服を返して欲しかったら眷属神になりなさい。それとも? 全裸のままでゼウスかポセイドンの前に放り投げて欲しい?」なんて言ってないし、脅していない。いないったらいない。なにせ私は、知恵・戦術・技芸・医術・音楽。そして、愛と平和を司る処女神だし。バランが「俺の中のアテナ像が、粉々に砕け散って、風に乗って翔んでったんですが」なんて言ってないのだ。

 まぁ、今では処女神(二児の母)だったりするが。コスモなんて不思議パワーが、セブンセンシズとか云う理不尽パワーにいつの間にか成っていたバランが血迷って、美しく麗しく聡明で魅力が溢れる私に襲い掛かっても、碌な抵抗もできずに好き勝手にされて、子供を二人産んだとしても仕方の無い事だったのだ。

 決して絶対に、分かり易く露骨な誘いを悉く無視され業を煮やした私が、女神の権能をフル活用してバランを押し倒し、「処女神がそんな事したらダメだろ!?」とか「他の女に! 特にニケに取られるぐらいなら私のモノにするに決まってんでしょ!!」なんてやり取りは無かった。絶対に無かったのだ。

 それから本当に色々と有った。私とバランが愛し合った事を知ったゼウスに、「処女神だろうがお前は! なに人間の男を襲って、子供産んでんだよぉぉぉぉ」と咎められ、私が「私は女神。つまり女なの! と言うか。誰が旦那を他の女に譲るかっっっ!! バランは永遠に私のもんだ!!」と大喧嘩し、私とバランの真実の愛を認めさせる為に、愛する旦那様であるバランが、大神ゼウスの唯一の神官戦士にして、神聖衣・"マジンカイザー"を身に纏うセルスと戦う事になった時は、彼の妻として、ニケに「ゼウスが、これでもかと自分の権能を注ぎ込んで生み出した神聖衣に負けない神聖衣を生み出しなさい。出来なかったら、全裸でゼウスとポセイドンの前で……後は分かるわよね?」と優しくお願いし、ニケは自身の権能を可能な限り注ぎ込んだ神聖衣"アイギス"を生み出したのだ。決してニケが名付けた名がニーケーだったから即座に変えたとか、そんな話はない。

 あと、神聖衣制作にかこつけてバランを誘惑したニケは、何があろうと絶対に未来永劫許さない。絶対にだ。

 そんなこんなで始まった神聖衣を纏った二人の激突は凄まじいモノだった。大地が割れ海が裂ける程の激しい闘いだった。まぁ、私の愛する旦那様バランが当然勝った。もっとも、大地の女神ガイアと海の神ポセイドンから物凄い苦情が来たけれど。

 他にも、食べるに困った人々をバランが見棄てられずに、「大丈夫だ! 安心しろ! 俺が居る。俺は女神アテナに認められた聖闘士なんだからな」と大嘘と啖呵を吐き、彼等を食べさせる為に必死に狩猟や採取をして、そんなバランを頼って人が集まり、ついに、この聖域の原型が出来上がったり。

 いつの間にか書かれて広まっていた、人間が私達オリンポスの神々を面白おかしく書いた嘘と捏造だらけのギリシャ神話物語にブチギレたポセイドンが、「俺は確かに女にだらしなくて、酒に弱いせいで色んな女に手を出したけど! ここまで愚図でもゲスでもないんだ! 川の数=子供の数だぁ!? ただ身寄りの無い孤児の面倒を見るように神官逹に言っただけだろうがぁ! ああ、やってやんよ。地上の全てを津波で洗い流してやる」と言い出し暴れだした為、バラン率いる聖闘士逹がポセイドンを叩きのめし落ち着かせたのも今では良い思い出だ。

 

 カティア達に世話を焼かれながら、目当てのスイーツを食べられない事を嘆きつつ、旦那と子供達との楽しい思い出に浸っていたら、ギリシャ神話名物の迷惑女神ヘラから連絡があったのだ。簡潔にまとめて言えば「今から私の大英雄候補が、貴方の御自慢の聖域攻略して貴方に会いに行くからよろしくね」と云うものだった

 それを聞いた私は『とうとう頭が逝かれたんだな』と思った。私が居る神殿は聖域の最奥で、聖域にはコスモに目覚めた5000以上の闘士と聖衣に選ばれた鋼鉄聖闘士(スチールセイント)64人・青銅聖闘士(ブロンズセイント)48人・白銀聖闘士(シルバーセイント)24人・黄金聖闘士(ゴールドセイント)12人。そして、神聖衣(ゴットクロス)に選ばれたカノン君が居るのだ。

 聖域の歴史の中で、初めて一切の欠員無しの鉄壁で強固な布陣を真正面から攻略するなら、それこそ、星となった大英雄ヘラクレスか私の旦那でも連れて来いと啖呵を切れる程の堅牢さなのだ。

 そんな訳で、余裕を持って「女神ヘラの試練により、英雄が私に会いに来ます。貴方達は彼を試してください。女神の化身たる私に会う資格が有るのかを」と、女神の化身ムーヴを披露できた。

 私の嘘を本気にし、有るはずも無い聖戦の芽を探し回っている闘士達に、申し訳ないなぁ~と思いつつ、この化身を作った時に設定した顕現タイムリミットが早く切れる事を心待ちにしていた。

 顕現タイムリミットさえ迎える事が出来れば、女神ムーヴを炸裂させつつ、なんかこう、ふわっと良い感じで誤魔化せばワンチャンあるはず等と思っていたら、いつの間にかガチもんの化け物が居た。

 えっ? ナニコレ? なんで神秘の多くが失われた人の世で、神代の時代準最強クラスの旦那に匹敵する人間が居るの? と言うか助けて旦那様! 貴方の妻がガチムキ巨大筋肉の塊に襲われそうなんですけど! と混乱し唖然としていたら、いつの間にか現れたカティアが、巨大筋肉がヘラの試練で私に会いに来た筋肉だと説明してくれた。

 その説明に、『人間てやっぱりトンデモ存在なんだな』と実感していると、ゴツゴツした手で私の頭を撫で撫ですると、筋肉は何も言わずに帰って行った。

 後からやって来たカノン君が、本当に聖域を正面突破され、黄金聖闘士含めた聖闘士全員が瞬殺。食い下がれたのがカノン君だけだったと、とても悔しそうに話していたので、インドを除く全神話の神々に「人の身で銀河を砕くな! 世界を滅ぼす気か!」と、怒られ禁じられた旦那最強最大絶技を教えて上げた。その事をゼウスに話したら、「ねぇ? 何してくれてんの? バカなの?」と言われたが、私は悪くない。

 

 神は居た。いや、私が女神様だった。

 何時もの如く、カティア逹に上げ膳据え膳な歓待を受けながら、限定スイーツ食べたいぉと思っていたら、カノン君が珍しく事前連絡無しでやって来ると、「聖戦の芽を摘みました」と言ってくれたのだ! 本当に嬉しい。また適当に言った事が今回も真実を言い当てたのだ。

 もっとも、その後に、カノン君がクトゥルフ神話の邪神を呼び出そうとした組織が暗躍していたと言った時は、女神ムーヴを全力で投げ捨てて怒鳴りそうになるのを、我慢するのが本当に大変だった。

 何せあの邪神は、顕現しただけで大惨事確定の迷惑極まりない存在であり、旦那がその命と引き換えに限界を超えた銀河すら砕く技を放って、漸く倒せたアザなんとかとヨグなんとかと云う大迷惑神逹を呼び出そうとするなんて! 本当にかの神話の信者逹は常識が無くて困る。

 まぁ、邪神降臨を阻止して教団壊滅出来たなら万々歳だ。流石、私を奉る聖域の子逹! 女神ムーヴ全開で誉めて上げよう!!

 本当は女神ムーヴなんて辞めて、頑張った皆を一人一人抱き締めて「良く頑張ったね! 偉いね」と全力で良い子良い子したいけど我慢する。私は地上の守護神アテナ様だし、威厳とか尊厳とか色々と頑張らないとね!

 

 そうだ、化身の顕現限界を迎えて神域に帰ったら、冥界に拉致かんき......じゃなかった、楽隠居している旦那に会いに行こう。そして、彼と私が作った聖域の皆の頑張りを教えてあげよう。きっと自分の事の様に喜ぶだろうから。




勘違いチート転生者とチョロ女神だとこうなる
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。