転生者達のせいで原作が完全崩壊した世界で   作:tiwaz8312

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Qなんでゼクラムさんこうなったん?

A「悪魔が人間を奴隷にするなら人間が悪魔を奴隷にしても良いよね」幼女を見ながら
 「ねずみ講知らんのか――いくら儲けられるかな?」
 「投資詐欺知らんのか――チャンスだ」
 「せっかくの知識・外交チートだし......冥界の一部をぶんどって見るか」
とか言って行動した転生者の相手を頑張ってしてたら「人間なんてラクショー」とナメプして全身の毛を毟られた貴族達の尻拭いまでやる事になり、ボロボロに成ってる処に、転生者四郎君の「悪魔も人間も好き勝手にやりすぎだし、妥協点探して共存しない?」との甘い囁きに飛び乗って最後は
四郎「色々あって覚悟完了」(悪魔殺害開始)
ゼクラム「お前に何が有ったし!?」
等々があってこうなりました


偉大なる大王と後を継ぐ者

 聖書に属する冥界のとある屋敷の中で、現魔王サーゼクス・ルシファーに全てを押し付けて楽隠居を決め込んでいるゼクラム・バアルは、机を挟んだ対面の椅子に勝手に座って、粗野で品性を全く感じられない所作でせんべいをバリバリ齧りながら、勝手に持ち込んで常備させているmy湯飲みに、我が物顔で侍女を顎で使い淹れさせた緑茶をゴクゴク飲んでいる白髪だらけの人間の老人、葉隠雄三郎に対して、深い深い溜め息を吐いた。

「雄三郎よ。もう少し品性を持て、お前の孫娘の散が、お前の様になったらどうするつもりだ? それに、覚悟の教育にも悪影響だろう」

 ゼクラムはそう言いながら、あの愛らしい二人の子供逹が、目の前の品性欠片も無い男の様に振る舞う姿を想像してその身を震わせた。

 「あ~大丈夫だろ。清十郎は俺と違ってお行儀の良い生真面目な奴だしなぁ」

 次期葉隠棟梁であり、生真面目な自身の息子を脳裏に浮かべながら、塩せんべい片手に「ほんと、誰に似たんだか」と言いつつ、雄三郎はもう片手に持っている湯飲みを口にする。

「きっと、いや、確実に嫁の教育のお陰だろう。清子にせいぜい感謝することだな」

 何も言わずに空になった湯飲みを侍女に差し出し、無言で緑茶を催促する雄三郎に、ゼクラムは呆れ返り、手に持っているティーカップに口をつけて舌を濡らしながら『頼むからこうは成ってくれるな』と、雄三郎の孫逹に心から願う。

 せんべいを堪能し終えた雄三郎は、爪楊枝を取り出して歯の間に詰まったせんべいカスをほじりつつ、長い付き合いのゼクラムにどう切り出すべきか少しだけ考えて面倒になり、そのまま人払いもさせずにゼクラムにぶん投げる事にした。

「クレーリアだっけか? 色んな情報知っちまって、恋人共々殺そうとしたの。んで、失敗してギリシャの聖域に匿われてる」

 いきなりとんでもない事を話し始めた雄三郎に、ゼクラムが口に含んでいた紅茶を吐き出して、目の前のスコーンを台無しにしてしまうと同時に、侍女は無言でなおかつ慣れた手付きで、ゼクラムの口や周りに散った紅茶を拭き取りスコーンを取り替える。

「きっ、貴様はどうしてそんなに配慮に欠けるのだ!? 組織の長としての最低限の思考ぐらいしろ!」

 目の前で、キョトンといかにも"あれ? 俺何か不味い事をしたっけか?"と聞こえてきそうな態度の雄三郎に、ゼクラムは怒りをグッと我慢し、敵でありながら、余りの不出来さに組織の長としての心得を幾度と無く説いたにも関わらずに、全く理解していない雄三郎に頭を抱えそうになる。

「その様な話は最低限、人払いをしてからするものだ。貴様は何度言えば理解できるのだ......」

 目の前の老人が、若くして対人外防衛組織・葉隠の棟梁になってからも、敵として情けなさ過ぎる為に仕方なしに教育をしているにも関わらず、まっっったく成長の兆しが見えない雄三郎に、頭痛を覚えながらもゼクラムは言葉を続ける。

「良いか? 相手の急所と為り得る話は、それとなく相手に人払いをさせてだな。情報を小出しにして相手を揺さぶり動揺を誘い、可能なら更なる情報を引き出し、己が有利になる様に行動するべきなのだ。分かったか?」

 それこそ雄三郎が赤ん坊の頃から、と云うよりも、彼の父親で前棟梁である十三郎に赤ん坊の彼を抱かされて、敵であるにも関わず「嫁さんと一日デートするから面倒よろしく」と、幾度と無く幼い雄三郎の面倒を押し付けられて、ちょくちょくと面倒を見るはめに為っていたゼクラムは、"えっ? 面倒だろそんなの"と言わんばかりの雄三郎に、如何してこうなったと本当に頭を抱えた。

「あ~小難しい話はお終いにしてだな。爺さん。クレーリアの騒動で外神の信者組織が暗躍してたのは知ってるだろ? まぁ、葉隠は完全に出遅れて殆ど後処理だけだったけどな」

 自分が話している最中に、ゼクラムの指示で下がった侍女に、『あ、緑茶を頼むんだった』と思いながら雄三郎は残り少ない緑茶を少し寂しげに見た。

「ほう。相変わらず、日本の風魔だか甲賀だかの情報機関は優秀だな。その様子では、此方が王の駒を理由に、二人の異種族間・敵対組織の愛を建前に殺害を企てたのは知っているようだな」

 今も昔も変わらずに、冥界の機密を持ち去る日本の情報機関の素晴らしさを羨ましく思いながら、雄三郎を相手に腹芸しても、まったく話が進まない事をよく知っているゼクラムは諦めた様に話に乗る。

「お前の知っての通りだ。アレは知っては為らない事を知った。それこそ聖書陣営と敵対する組織に知られるのは少々不味い情報だ。始末出来なかったのは痛手だが……ギリシャの聖域ならば問題あるまいよ。あそこは地上の平和とやらを絶対視し頑なに守ろうとしてる。こちらが一方的に不利に為るような事はしまいよ」

 薄く笑いながら紅茶を楽しむゼクラムに、雄三郎は白髪だらけの頭を乱暴に掻き、「あ~」と間の抜けた声を出す。

「爺さん側はそれでも良いかもしれんが、葉隠つーか、日本側としては、冥界側の不手際のせいで被った人的被害と物的被害とかその他諸々を賠償して欲しいんだよ。具体的な額はこんぐらい」

 そう言って雄三郎が投げて寄越した封書を受け取ったゼクラムは、中の書類に書かれている額に眼を見開く。

「待て、なんだこの額は、冥界の一年予算の5割近いではないか。大体、慣例として悪魔が日本側に与えた被害は日本が処理していたはずだ。それに、この件で日本に被害を与えたのは外神の信仰組織だろう」

 ワナワナと震えながらそう言うゼクラムに、雄三郎は済まなそうにしながら首を横に振る。

「何時もの被害ならそうしてたさ。なんだかんだ言っても、護りきれず阻止できなかった俺らが悪いんだからな。でもよ、今回は被害が酷すぎた。人的被害は、聖域の連中や出遅れた俺ん所と他の機関の頑張りで3人で収まった。でもな? 駒王町のライフラインの一部がズタボロで、霊脈を始めとした霊的なモンが連中の儀式で滅茶苦茶なんだよ。そして、原因は駒王町の管理者だろ?」

 そう言うと、一度言葉を切り「駒王町は日本の神々に頭を下げて借り受けた土地で、ちゃんと管理して大きな問題は起きないようにする。てのが契約の一つだし」と、雄三郎は言葉を続けた。

 その言葉を聞いたゼクラムはグッと言葉を詰まらせる。雄三郎の言う通り、駒王町は将来有望な年若く未熟な悪魔の領地管理能力と外交能力等を実地で鍛え上げる為に、悪魔側が日本神話側に頭を下げて借り受けている土地だからだ。

「日本側の言い分はわかる。しかしだな、原因はどうあれ、しでかしたのは外神の信仰組織だ。そちらに請求するのが筋ではないのか?」

 先の大戦で悪魔の総数が危険領域まで減り、税収が目も当てられない状態で、予算の5割も持っていかれては堪らないゼクラムは、楽隠居した身で何でこんな交渉しなくてはならないのかと思いつつ冥界の危機に立ち向かう。

 余計な事をしでかしたクレーリアの処罰として、ベリアル家を潰し全領地没収した処で穴埋めにすら成らないと即座に計算したゼクラムは、どうにかして賠償回避ないし減額に持ち込もうと言葉を続ける。

「それにだ、外神の信仰組織に踊らされた組織どもにも責任はあろう? 我ら悪魔だけの責任ではあるまい」

 ゼクラムは言葉を続け様とするが、雄三郎の無言の制止に口を閉じる。

「爺さんの言いたい事は俺も良くわかる。でもな、外神の信仰組織は聖域連中が壊滅させて請求しようがないし、なによりも、あんたらと敵対してる勢力の多くが聖書陣営のやらかしの結果なんだから、身から出た錆びだろ?」

 極めて当たり前な正論に、ゼクラムは一瞬押し黙る。

「清子の入れ知恵か」

 戦闘に特化し過ぎて、棟梁として色々と失格な雄三郎を永年支えている女性を思い出し、彼女が来てくれた方が交渉も駆け引きを楽しめるモノに成っただろうにと、ゼクラムは溜め息をついた。

「あー分かるか? 全部、嫁さんにそう言えと言われたんだ」

 余りにも出来の悪すぎる教え子に、再び頭痛を覚えたゼクラムはこめかみを揉み解しながら、雄三郎との交渉はこれ以上は無駄と諦め、取り敢えず現魔王サーゼクスに丸投げする事を決める。

「分かった......この話は、儂の方からサーゼクスに持っていこう。これ以上の交渉は無意味だろうしな」

 そう言いながら呼び鈴を鳴らし侍女を呼び、ゼクラムは無駄だと知りながらも不出来な教え子に説教と授業を開始するのだった。

 

 

 自分と母をバアル領の片隅に追いやっていながら、突然呼び出した祖父ゼクラムを睨み付け、サイラオーグ・バアルは母を庇う様うに立つ。

「面構えだけは一人前か」

その様子を、ゼクラムは不出来な孫の無作法に眉をしかめながらが鼻で嗤い、嘗て大王の地位に着き冥界の政治に関与していた者として、バアルの血族の一人として、まだ子供であろうとも孫サイラオーグにどうしても聞かなければならない事があった。

「サイラオーグよ。お前は何故、バアルの次期当主から外され、バアル領の片隅に母親共々、追い遣られたと思う?」

 この時、ほんの僅かだけゼクラムは期待していた。母親であるミスラが正しい教育を行い、己に新しい家を興す必要性その可能性を僅かにでも感じさせてくれる事を。

 先の大戦で悪魔の総数が激減し、有能な人材が必要最低限数すら確保できない状態の――滅亡の危機である悪魔の一助となる可能性を示してくれると。

「決まっているだろう!? 俺が滅びの魔力を、それどころか魔力を殆ど持って生まれ持たなかった。だから――」

 幼いサイラオーグの叫びを――余りにも的外れな答えに落胆し、上に立つ者として正しい教育を受けられなかった孫を哀れみ、母親と周りの言う事をそのまま鵜呑みにしてしまう短慮さに悲しみ、何が正しいのか自身で調べ考えなかった愚かな孫の言葉を、ゼクラムは遮り、ただ一言口にした「愚か者め」と。

 ただの建前でしかない理由に固執して、本当の理由を知ろうとしなかった愚か極まりない孫に、ゼクラムは深い溜息を吐いた。

「やはり、ミスラなどを嫁に取るのではなかったか......アヤツが珍しく我を表に出し、望んだから許したが......まともな教育の一つもできぬとはな」

 落胆と侮蔑を乗せたゼクラムの言葉を、毅然とした態度でミスラは愛する夫と子供の為にも否定する。

「私は、あの人の妻として、この子の母として、正しい教育をしています。この子には「魔力が足りないなら他の力を身に付けなさい」と諭し、そして、この子も正しく努力しています。例え今は認められなくとも、この子は必ず。誰もが認める悪魔になります」

 ミスラのその言葉に、サイラオーグは嬉しくなり笑みを浮かべて、母親の言葉に続く。

「俺は強くなる。バアルの当主になる。雄三郎が言っていた様に俺と似た境遇の悪魔逹に示すんだ。魔力が無くとも強くなれると! 上を目指す事はできると!」

 悪魔として正しく強さを求める立派な息子の宣言に、ミスラはバアル家の歪んだ教育とは違い、自分の教育が正しかった事を強く感じ、自慢の息子を誇り、笑みを浮かべてゼクラムに言葉を投げ掛ける。

「ご覧の通りです。バアル家の教育を受けなくとも、この子は正しく育っています。雄三郎さんや亀仙流の方が、この子の為に心を砕いて下さっているのです」

 サイラオーグとミスラから出た雄三郎の名に、ゼクラムは"ああ――成る程、雄三郎に潰されたか"と得心し、貴族としての教育を受けていながら、敵の言葉を容易く信じ込んでしまった愚かな親子に酷い落胆を覚え。人間の話す耳障りの良い励ましの言葉に流され、人間にとって都合の良い操り人形にされ始めている愚かな親子に哀れみを抱き。統治者に仕え、他者の上に立つ者として必要不可欠な教育を、歪と断じ拒絶した母親によって、適切な教えと思想を学べなかったサイラオーグを、悪魔の総数を増やす種馬にしか使えないとゼクラムは判断する。

「悪魔とは強くなければならない。成程、確かに悪魔として正しいと言える」

 悪魔創世期より生き、初代ルシファーに仕え、何時しか"大いなる大王"と謳われた偉大な悪魔ゼクラム・バアルに、自身の教育を認められたと思ったミスラは驚き、サイラオーグは急に母を肯定したゼクラムに怪訝そうな表情を浮かべる。

「だがそれは、責任を義務を使命を背負わぬ者の場合だ。貴族……特にバアル家は違う、冥界と悪魔の為に尽くす責任が義務が使命がある」

 悪魔と敵対する勢力――特に人間は、次々に優れた人材を育て上げ、短い命で得た知識・経験・思想を次代に継承・昇華させ続けている。ある意味で理不尽極まりない種族に対抗するには人間以上に苛烈な教育を施し、次代に人間の狡猾さや理不尽さ恐ろしさ醜さ美しさを伝え理解させるしかない。

「滅びの魔力を持たない? 平均レベル魔力量を持たない? サイラオーグよ。本当に、その様な、些細な、どうでも良い理由で、当主継承の権利を剥奪されたと思っているのか……そんなモノが、統治者に仕え他者の上に立つ者に必要不可欠だと思ったのか?」

 血を流さない戦争である外交や政治に必要なのは魔力ではなく知識と経験。それが無ければ、冥界が悪魔が人間に蹂躙され嬲り者にされてしまう事を、現役時代に嫌と言うほど思い知らされたゼクラムは、己の息子に苛烈な教育を施し、次期当主であるマグダラン・バアルにも同様に理不尽で苛烈な教育を行っている。

「お前逹は、雄三郎を人間を、恐ろしくおぞましいモノだと思わずに、共に進めると思ってしまった。それこそが次期当主資格剥奪の理由であり、バアル領地の隅に追いやった理由だ」

 人間の本性を学びその身で知った息子は、己の我を圧し殺し感情や表情を表に出さない事で対応しようと足掻き、マグダランは雄三郎を知り"常に自然体で他者の心に忍び寄る恐ろしい存在"と評価した。しかし、ミスラとサイラオーグは雄三郎を何が有ろうと裏切らない頼りになる存在だと認識した。

「お待ちください。歴代の葉隠棟梁とバアル家は懇意にしているではないですか! 特に雄三郎さんは、幼い頃からゼクラム様の指導を受け育ったと聞いています! それなのに何故、その様な理由で、この子は次期当主の座を追われなければならないのですか!?」

 我が子を思う母の言葉と、人間を師と仰ぎ自分の往く道を示した雄三郎を尊敬しているサイラオーグの睨み付ける視線を、ゼクラムは鼻で嗤う。

「確かに儂は、赤子の頃の雄三郎をこの腕に抱いた事がある。前葉隠棟梁・十三郎に、幾度と無く幼いアヤツの面倒を押し付けられた事がある。何故か分かるか? ああ、儂を信じ我が子を託しても良いと思われていた等と言ってくれるなよ」

 ゼクラムの問いに、それ以外の答えが見つけられなかった親子は押し黙る。

「解らぬか? こんな簡単な事すら――儂を量ったのだ。日本側にとって利用するに足りるかどうか、我が子の命を使い推し量ったのだ。子を害する様ならば利用価値は無し。子を悪魔に利する様に導いたなら、警戒しソレを隙とし付け込めばよい。子をまともに扱うならば、そのまま情を育ませ利用する」

 ゼクラムの口が告げられた答えに、サイラオーグはその人間の苛烈さと残酷さに眼を見開き、子を思う母親であるミスラは口に手を当て余りの惨さに言葉を失う。

「無論、それだけではない。代々の棟梁達が、我が子を儂に紹介するのは警告だ。初代葉隠棟梁・葉隠四郎の遺志と覚悟を引き継ぐ者――日本の民の守護者は決して途絶えはせぬ。と見せ付けておるのだ」

 嘗て友と呼び共に愚かな理想を追い求め、最後は絶望し悪魔の敵となった男を僅かに思い出し、記憶の底に沈めたゼクラムは、人間の策に嵌った親子を静かに見据える。

「人間に惹かれたお前達に、何を言っても無駄なのだろうな……どれほど人間の残酷さ恐ろしさを知っても『それでも』などと、考える様になったお前達には」

 人材が枯渇してしまい、有能な人材が謀殺されている現状と相手の甘さを利用する人間に感心しながら、ゼクラムは言葉を紡ぐ。

「人間とは、一般的に言われている様な略奪の対象でも、甘い戯言を吐きその通りに行動する者でも無い」

 現役時代に相手取っていた二癖も三癖もあり、僅かな隙から此方を喰らい貪る恐るべき敵を、一人づつ思い出し記憶の底に沈めながら、ゼクラムは言葉を続ける。

「人間と悪魔は、互いの隙を探し隙を見せた側が騙され。嬲られ。貪り喰われる――利用しあい。隙を探しあい。牽制しあう。――どれ程の時が流れようが、どれだけ時代が移ろおうとも、悪魔と人間は共に歩む事などできぬ敵なのだ」

 その様々な思いが込められたゼクラムの言葉に、ミスラは言葉を失い。サイラオーグはそれを否定したくてもできない自分に対して拳を握りしめる事しかできなかった。

 

 

 

 長年バアル家に仕えている者でも、深く信用され重用されている者以外では、バアル家現当主とゼクラム以外は知る者が居ない隠された一室――其処は数多くの湯飲み茶碗を保存する為だけの部屋。

 もう使われる事の無い湯飲み茶碗を保管するだけの部屋に、長年バアル家に仕えている見た目麗しい女悪魔が、最近になってもう使う事が無くなった湯飲み茶碗を、大切な宝物を扱う手付きで、湯飲みが納められている棚に静かに置く。

「本当に人間は短命ですね……百年も生きられないなんて」

 納められている湯飲みを使っていた者逹。その全てを覚えている彼女は、一番最初に置かれた湯飲みを優しい手付きで手に取る。それは主であるゼクラムの無二の友であり、共に人間と悪魔の共存を目指し、最も多くの悪魔を殺害した悪魔の敵・葉隠四郎が愛用していたモノ。

「長く生きても、優しかった貴方があれほど残酷に冷酷に......狂ってしまったのか理解できません。一体、何が其処まで貴方を傷つけ追い込み狂わせたのです?」

 答えなど返ってこない事を知りつつも、問い掛けた彼女は小さな溜め息を付き、元の場所にその湯飲みを納める。

 どうしても、自然と目が行ってしまう縁が少し欠けた湯飲みを、大切な宝物を扱う様な手付きで手に取り、悲しげな目でそれを見つめる。もう二度と会えない――彼女が唯一愛した男が使っていた湯飲みを、愛おしい者に触れる手付きで一撫でし、嘗て男が口を付けていた場所に静かに口を付けた。

「結局、私達はお互いの立場・種族間の問題で結ばれませんでしたが......ゼクラム様が仰る"人間と悪魔は共に歩めない"と言うお言葉に、私は未だ頷けずにいます」

 人間と悪魔の恋は自分逹を含め悲恋に終わる。それでも、彼女は未来永劫変わらずに敵同士等と思えなかった。

「もし、本当に人間と悪魔が敵対するだけの間柄なら......私と貴方は恋に落ち愛し合う事は無いのですから」

 彼女は夢想する。何時の日か様々な問題を乗り越えて、人間と悪魔が当たり前の様に恋をして愛し合う時代が来る事を。




結局どうなったの?
サイラオーグが亀仙流を習って、カメハメ波や舞空術や界王拳を習得して強くなった
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