人は私を畏怖と憐憫と侮蔑と嘲笑をこめて「魔王」と呼ぶ   作:いにまに

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第02話 魔王の日常とこれから

「おい、なのは! 起きろっ! 目ぇ開けろっ!」

「ヴィータ…ちゃん…」

 横たわる私の顔に、彼女から冷たい…、ううん、暖かい水滴がポタポタと降り注ぐ。

「待ってろよ、今すぐ助けが来るからな。 それまで勝手にくたばるんじゃねぇぞ」

「わ、わた…し…は…」

 とっても眠いの! まだ寝てたいの! あと5分!

「おい! 救護班はどうした! さっさとこっちに来やがれ! こんちきしょー!」

 ちょっ! ヴィータちゃん!? なんで救護班呼ぶの!?

「なのは! 絶対助けてやるからな! だから死ぬんじゃねぇぞ!」

 えっ? なに? 起きないのは、なにか重病と勘違いされてる!?

「ヴィ…タ…ちゃ…」

「なのは!? 今は喋るな! 救護班! さっさと来いっつってんだ!」

 ヴィータちゃん、やめてっ! 大ごとにしないで!

「わ…た…」

「なのは! おい! なのは!」

 私はもう少し朝のまどろみを満喫したいだけなのに~。

「ちょ…と…、や…す…」

 ちょっとやり過ぎだよ。 いいもん! こうなったら意地でもあと5分寝てやる~。

「なのは? おい、なのは? 冗談だろ? なぁ、起きろよ? 目ぇ開けろよ? その冗談、笑えねぇよ。 笑えねぇ…笑えねぇっつってんだ! 起きろっ! 私が呼んでんだ! 返事しろっ! なのは! なのは! なのはーーーーーっ!!!」

 

「ああ、もう! ヴィータちゃん、うるさい!」

 ガバッと上半身を跳ね上げ、抗議の声を上げる。

「ほら、ちゃんと起きたよ、ヴィータちゃん! これでいいんでしょ! …って、あれっ?」

 さっきまでそばにいたヴィータちゃんが見当たらず、きょろきょろと辺りを見渡す。

 そして、だんだんと覚醒した頭が導き出した答えは…。

「また、寝ぼけちゃった…」

 それになんだか夢の中の私に、余裕が出てきてない?

 死んだときの記憶なんだから、うなされてもおかしくないはずなのに…。

 そんなことを思いながら、朝から部屋のベッドの上でうな垂れる私、高町なのは8歳。

 

 …顔洗ってこようっと。

 

 

「じゃあ、なのは。 最後に神速を使って恭也と組太刀をするから、出来るだけ目で追ってみなさい」

「うん! じゃなかった、はい、お父さん!」

 高町家の道場で、いつもの朝稽古の仕上げ。

 つくづく私の家族って異常だよね~。

 魔法で強化した視力で、やっと見える体捌きって何?

 それも型を知ってるから、なんとか追えるんだよ。

 ちなみに剣筋は、いくら頑張っても見えません。

「なのは。 剣筋は見るんじゃなくて読むんだよ。 だから今はいろんな型を見て、知って、覚えていくことが大事なんだよ」

 美由希お姉ちゃんが私の頭を撫でながら教えてくれます。

 はあ、美由希お姉ちゃんがあんなに強かったなんて知らなかったなぁ。

 前の時は、ドジで間抜けでノロマなお姉ちゃんにしか見えなかったのに。

「なのは? なんだかものすごーくあなたのほっぺたを抓りたくなったんだけど?」

 勘もこんなに鋭くなくて、むしろ鈍感…、痛い、痛い、美由希お姉ちゃん、いーたーいー!

 

 そんなこんなで、御神の技を修行中です。

 始めたきっかけは、体力を付けることと、近接格闘戦に強くなろうと思ったこと。

 家が剣術の道場してるからちょうどいいやとばかりにお父さんにお願いしたんだけど、こんな異常っぽい流派だとは知らなかったよ。

 ううん、異常なのは高町の血なのかな?

 前のときと同じように、お父さんが事故で大怪我しちゃって生死の境目をさまよってたことがあったんだけど、私が治癒魔法かけたらすぐに起き上がってきてビックリしちゃった。

 治癒魔法っていってもレイジングハートはいないし、もともと苦手な魔法だったから、ほとんど気休めみたいなもんだったんだよ?

 ほんの少し傷が塞がっただけ。

 常人ならまだ危篤レベルだって、検査したお医者さんが言ってたぐらい。

 私もビックリ、お医者さんもビックリ。

 そして家族は、魔法を使った私にビックリ。

 そんなみんなビックリの中、唯一冷静だったお父さんはあれよあれよという間に回復して退院しちゃった。

 お父さん曰く、意識さえあれば気を身体に巡らせて、傷を早く癒すことが出来るとか。

 …なに、その漫画みたいな技? 私の魔法が霞んで見えるよ…。

 

 あ、そうそう、お父さんの入院があっと言う間に終わったことで、私の目指していたハッピーエンドの一つが達成しました。

 目指したのは、家族がずっと幸せでいること。

 前にお父さんが入院してた時は、みんなものすごく苦労して大変だったから。

 だから今回はお父さんに早く治ってもらって、翠屋に復帰してもらうと思ってたんだけど…。

 魔法、一回使っただけで済んだのは予想外だったよ。

 本当なら意識が戻るまで何回も使うことになると思ってたし、前のときはずっと家で留守番しているだけだったから、寂しさが紛れてちょうどいいやって意気込んでいたのに…。

 ま、まあ、早いことに越したことはなかったし、これはこれで良かったんだよね、うん。

 あ、そうそう、翠屋の話題が出たついでに、現状をちょっと補足。

 実は前に話したアリサちゃんがおいたした件で、アリサちゃんちからかなりの無償融資を受けてるの。

 それも、お父さんやお母さんがコーヒーのブレンドや新しいスイーツの研究に没頭してても、翠屋が潰れることは決してないぐらいに。

 ぶっちゃけ、お客さんが一人も来なくても潰れません。

 でも、お父さんもお母さんもそれに甘えることなく、しっかり経営者してるけどね。

 

 さて、ハッピーエンドの一つって言ったように、あといくつか目指しているのが、私にはあります。

 まずはフェイトちゃんのこと。

 今度はプレシアさんに、意地でもフェイトちゃんのこと認めさせてみせるの!

 やっぱり一方通行の想いなんて寂しいよ。

 プレシアさんが虚数空間に旅立とうとも、捕まって投獄されようとも、その前にフェイトちゃんは私の娘だって言わせてみせるからね!

 出来れば今からでも時の庭園に行ってお話したいんだけど、レイジングハートがいないとプレシアさんに太刀打ちできないし、そのまえに転移すら出来ないのが残念。

 

 二つ目ははやてちゃんのこと。

 やっぱりリインフォースは助けたいな。

 それに、いまさらヴィータちゃんたちとは争いたくなし、はやてちゃんの足も速く治してあげたい。

 本当なら、今すぐ魔法の制御を教えてあげたいんだけどね。

 そうすれば、闇の書が原因の足の麻痺は治るし。

 でも、絶対に猫姉妹が邪魔してくるだろうなぁ。

 レイジングハートさえいれば、邪魔されずにお話しできるのに…。

 

 最後は、自分のことかな。

 とにかく早く管理局に就職して、誘われてた教導隊に行きたいの。

 そして新人をどんどん鍛えていって、魔導師の人員不足を少しでも解消したいの。

 だって前に私が撃墜されたのって、過剰労働で疲れてたせいなんだから!

 そのせいで居眠り飛行してたからガジェットに気付けなかった…、のは、少し自分の責任もあるかもしれないけど、人が増えれば無理な出動させられることもなくなるだろうし。

 そんなわけで、リンディさんが来た時点ですぐにでも入局させてもらいたいの。

 それも、こっちの学校の卒業なんて待たずに。

 …ふふふ、その為の布石はうってあるの。

 前の時はね、管理局に入ることを決めるまで家族に魔法のこと隠してたから、いざ打ち明けたら、説明と説得が大変で大変で…。

 おまけに地球の常識しかしらないから、高校卒業まで待てって言ってくるし。

 だからね、前回の失敗を踏まえて、今回は早いうちからバラしたんだ。

 ほら、地球には魔法なんてないでしょ?

 そんな中で私が不思議な力を使ったら、家族はみんな心配すると思うの。

 他の人と違う力をもつ私は、この世界で普通に生きていけるのかって。

 そこで管理世界のことを教えてあげれば、その世界こそが私の居るべき場所なんだって思うはず!

 って、考えてたんだけど、うちの家族もすずかちゃんも異常なのに、地球で生活してるんだよね…。

 今の私が使う肉体強化と治癒魔法、それに豆鉄砲(威力のないディバインシューター)ぐらいじゃ、説得力が…。

 レイジングハートがいれば、飛行魔法とか砲撃魔法とか使えて、度肝を抜けるのにっ!

 

 ああ、もう、ユーノ君! はやくレイジングハート連れてきて!

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