文才皆無ですが皆様が楽しんでいただければ幸いです。
「運命の切札をつかみ取れ!」
【臨海学校:前編】
楯無と祐のデート明けの月曜日、今日から三日間臨海学校が行われる。
因みに祐は臨海学校のことを知らなかったため、指輪を買って夕方頃になって楯無から初めて聞いたので慌てて水着を買いに行った。
そして今一年生全員は臨海学校の旅館に向けてバスに乗っている。
(……眠っ……)
バスの最前席の窓際で祐は欠伸をしながら外を見ていた。その眠そうにしている理由は生徒会の仕事であった。生徒会は楯無、祐、虚の三人のみのため、二人がいなくなると虚への負担になるため、デートから帰ってきてから生徒会の仕事を可能な限りこなした。それにより二人の就寝時間は、臨海学校の準備も含んで深夜の一時となった。
しかも出発時間が七時と早く、朝食や集合場所に行く時間を差し引いて、睡眠時間は約五時間位しかなかった。
(俺も寝た方が良いかもな……)
祐は横に顔を向ける。
「……スー……スー……」
祐の肩に頭を乗せつつ祐の左腕に抱き付きながら楯無は規則正しい寝息をたてながら寝ている。
ちなみに楯無の右手は祐の左手と恋人繋ぎをしている。
(あぁ、もう限界だ。俺も寝よう……)
今の祐は睡魔が圧倒的に強く、重い瞼を閉じてあっさりと眠りについた。
そして、その寝たあとに祐は無意識に楯無の方に寄り掛かり、楯無の頭に祐は頭を重ねた。
そしてそれを女子全員が羨ましそうに見ていたのを、当の本人達は知るよしもなかった。
◇
「まもなく目的地に到着しまーす。皆さんちゃんと席についてくださーい!」
山田先生の声が聞こえた。もうすぐ到着するのか。
「……あぁ……」
まだ少し眠いけど、二度寝して千冬さんに叩かれる訳にはいかない。
「……スー……スー……」
肩付近から寝息が聞こえてきたから見てみたら、カナはまだ寝ていた。
「カナ。もうじき着くってさ」
カナの肩を軽く揺すりながら声をかける。
「……ん〜、……もう少し……」
「気持ちは解るけど、もうじき着くから」
「……じゃあ着いたら起こして〜」
「いや、起きてくれよ」
結局カナは到着するまで起きなかった……。
五分も経たない内にバスは目的地である旅館に到着。四台のバスからIS学園一年生が出てきて整列する。
「それでは、ここが今日から三日間お世話になる花月荘だ。全員、従業員の仕事を増やさないように注意しろ」
「「「「宜しくお願いしまーす」」」」
千冬さんの言葉の後、全員で挨拶をする。
「はい、こちらこそ。今年の一年生も元気があってよろしいですね」
この旅館には毎年お世話になっているらしく、着物姿の女将さんが丁寧にお辞儀をした。
「あら、こちらが噂の……?」
ふと、女将さんと目があった。
「えっと、神碕 祐です。三日間お世話になります。」
「ご丁寧にどうも清洲 景子です」
俺がお辞儀して挨拶をしたら女将さんも丁寧なお辞儀をした。その動きは気品のあるもので、さすが女将さんだ。
「しっかりしてそうな子ですね」
挨拶が終わり女将さんが千冬さんにそう尋ねる。
「少し手を焼かされていますがね」
そりゃ、学園や街とかでアンデッドが出た時とかの後処理が学園側がするはめになるから否定は出来ない。
「また今年は一人男子がいるせいで浴場分けが難しくなってしまって申し訳ありません」
「いえいえ、そんなことはありませんよ」
俺一人のせいで申し訳ないとは思うけど、俺のせいにされても微妙に困るな。
「それじゃあ皆さん、お部屋にどうぞ。海に行かれる方は別館の方で着替えられるようになっていますから、そちらをご利用なさってくださいな。場所が解らなければいつでも従業員に訊いてください」
一同、「はーい」と返事をするとすぐさま旅館の中へ向かう。海に行くにしてもまずは荷物を置いてからってことだろう。
「神碕、更識、ついてこい。お前『たち』の部屋はこっちだ」
俺とカナが千冬さんに呼ばれ、ついていく。っていうか今『たち』って言ったけど、ひょっとしてカナ。また生徒会長権限を使ったの?
ついでに言うと後ろから凄い女子の視線を感じるんだけど……。
俺とカナは千冬さんの後をついて旅館の中を歩いているが、未だに部屋に辿り着かない。
「ここだ」
そろそろ千冬さんに訊こうと思ったら辿り着いたようだ。しかし、ドアっと言うか襖に張られた紙に『教員室』と書かれている。
「最初は他の生徒と同じ場所にしようと話がでたが、それだと絶対に就寝時間を無視した女子が押しかけるだろうとということになってな」
そういえば中学の修学旅行の時、他クラスの男子が就寝時間を無視して部屋を出ていたのがバレて一晩中正座させられたって話があったような…………。
「結果、私たち教師側にすることになった。これなら女子もおいそれとは近づかないだろう」
「それはまあ、そうでしょうね……」
さすがに喜んで教員室の側に近づく人はいないだろう。
「そして、ここがお前たちの部屋だ」
そしてその襖の張り紙には案の定。『神碕 祐』、『更識 楯無』と書かれていた。
「ゆっくん、『神碕』って書いてある部分、『更識』に変えちゃおっか♪」
カナの手にはいつの間にか黒の油性マジックが握られている。
「今この状況下でそういうボケをかますのは止めてくれないかな」
凄く疲れるから。
そんなこんなでようやく部屋の中に入った。部屋は広々とした間取りで、外側の壁が一面窓になっている。そこから見える風景は海がばっちり見渡せる。
「さて、今日は一日自由時間だし、荷物を置いて早く泳ぎに行こうよ。ゆっくん」
そう、初日は終日自由時間。せっかくの海だから楽しまなければ損だ。
「そうだな。行くか」
俺は水着とタオル、それと替えの下着を入れたリュックサックを取り出す。カナも同様に水着が入っているであろう荷物を出し、着替えるために別館へと向かう。
「さあさあ、早く行こう」
別館に到着し、カナが俺の背中を押して奥に向かおうとする。けど……。
「……カナはどこで着替えるつもり?」
「? もちろんこの先の更衣室でだけど?」
「いや、何『当たり前じゃん』みたいな顔で言ってるの!? カナは女子更衣室でここ!! 奥は男子更衣室で俺だけ!!」
別館に到着して更衣室前にいる。今いるのは女子更衣室で、男子更衣室は女子更衣室の奥にあるから必然的に前を通ることになる。
「え〜〜。別に一緒で良いじゃん。私はゆっくんと一緒で全然構わないよ」
だけどカナは女子更衣室に入ろうとせず俺と一緒に着替えようとしている。
「良くないから言ってるんだよ!!」
「ぶー、解ったよ。……ゆっくんのヘタレ……」
カナは不満たらたらで女子更衣室に入っていく。……そして最後の部分、小声だったが聞こえた。
「ヘタレ呼ばわりかよ……」
俺は女子更衣室前からさっさと退散して奥にある男子更衣室に向かった。
ご意見・ご感想お待ちしています。
また、皆様は
・原作の様に少し奥手な楯無
・今作の恥じらいほぼゼロのグイグイ攻める楯無
どちらからが良いですか?