NEWガンダムブレイカー ~イナズマ戦線~   作:WILLΛ

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03話「始まりのビルド」

 

 天使のように純粋で無垢な見た目の、幼い女の子。

 壊れてしまったガンダムのプラモを拾い上げ、自身の手で優しく修復してくれた女の子だ。

 

 それだけじゃない。

 ガンプラバトルでも、ひらりひらりと宙を舞う0ガンダムの姿は、さながら翼をはためかせる天使のようで美しかった。見るものを魅了する、崇高な美しさだ。

 

 自分がガンプラに触ってみたいというきっかけとなったのだった。

 

 

 その女の子が今。

 自分たちの目の前で新しいガンプラの箱を手にこちらを見つめている。

 

 

「……」

 少女はじっと、フルアーマーガンダム(サンダーボルト)のプラモデルの箱を見つめている。

 

「えっと」

 

「その子にするの?」

 

 少女は首をかしげて聴いてくる。

 

「あ、ああ」

 思いがけない質問に少し返答が遅れるが、即座に姿勢を整える。

 

「こいつとなら、やれると思って」

 

 きっと、この機体となら楽しくやれる。

 自分の頭上を駆け巡った、まさしくサンダーボルトのように鋭い電撃。体全体に巡り失踪したイナズマ。

 

 今まで感じたことのない感覚だった。

 

 こんなドキドキ。ときめくようなワクワク。

 彼が16年生きた人生の中で、感じたこともない予感だった。

 

 

「そう」

 少女は箱を両手で、ぬいぐるみを抱きしめるように持っている。

 

「きっと、その子も喜ぶと思う」

 以前にもみた、無垢で柔らかな笑顔。

 

 ああ、その顔だ。

 その顔を見たから……この子に導かれたから。

 

 自分はガンプラの世界に足を踏み入れてみようと決心をつけられたんだ。

 

 

「なぁ、体の方はもう大丈夫なのかよ?」

 

「あっ、そういえば」

 

 ショウタに言われて思い出した。

 

 そうだ。この子は昨日行われた、ルール無用の3対1のデスマッチに勝利するも、突然頭痛と吐き気に襲われて具合を悪くしたのだ。

 

 それだけじゃなく胸も苦しいようだった。数分経ったら、本人は平気だと立ち上がったが……念のためにと保健室に連れていき、ひとまずは安静にと数時間ぐらいベッドで休ませることになった。

 

 見た感じ元気そうだが大丈夫なのだろうか?

 

 

「平気。ありがとう」

 ヒカリとショウタの疑問には大丈夫だと答える。

 

「……ごめんなさい。迷惑をかけて」

 

「「あっ、いやいやそんな迷惑なんて」」

 思わず2人同時に同じことを言ってしまった。

 多趣味と無趣味、ハイテンションとローテンション。性格も温度差も全く違う2人であるのだが、彼らは小学生時代からの付き合いだ。

 

 息があったから、どこかで波長があったから成り行きで友達になったのである。

 付き合いも長いせいか2人はどこか似通っている場所がある。

 

 慌てながら と 冷静に 。

 2人とも温度差は全く違うものの、セリフは一字一句間違えることはなかった。

 

「ふふっ」

 少女は笑みを浮かべる。

 

「二人とも、すごく優しい」

 

「いや……」

 

「そうそう、へへっ」

 

頬をカリカリと掻く2人に微笑むと、今度はその表情に陰りを落とした。

そしてぽつりぽつりと事情を説明する。

 

「私、昔から体がよくなくて……頭を使ったり、運動したりすると、ああやって具合が悪くなるの」

ガンプラを使ったバトルは遊びではある。

が、多大な精神力を必要とし、展開をよむために頭を使うことも多々ある。そして、集中を維持するためには体力もいる。

遊びでありながらも大いに体力を使うため、その競技は一種のスポーツと言われているのだ。

 

 この少女が普段からおとなしめなのは体が弱いという理由があった。

 

「でも、どうして俺を助けて」

 だとしたら、何故バトルに乱入してまで自分を助けてくれたのか。

 

「どうして、ガンプラを。この世界に入ったの?」

 ガンプラビルダーは何も戦わせるだけの世界ではないが、この学園に入れば必然的にガンプラバトルには手を出すことにはなる。

 動かすことによってガンプラの魅力は数倍跳ね上がる。しかし、バトルに手を出すということは、ひ弱な自分の体に鞭を打ち付けることに他ならない。

 

 何故、その苦しみがある環境の学園を選んだのか。

 この少女のビルダーの腕の高さは、一目見て極上だとわかるもの。無理にこの学園に入らなくても、別の道でビルダーを目指すことも可能なはずである。

 

「好きだから」

 少女は答える。

 

「ガンダムが、好きだから」

 

 箱を抱きしめたまま答える。

 

「好きなものを自分で作って、自分で動かしたい……そんな理由じゃおかしい?」

 

 

 

 

「いや、おかしくはないな」

 ショウタは答える。

 

「情熱的になっても仕方ないよな! 好きなものなら!」

 ガンプラビルダーとしての世界。興味を持って、その世界に足を踏み入れた男。

 情熱的になれるものを見つけた彼にはその回答にはおかしいものなど何一つないと断言した。

 

「好きなもの……情熱……」

 好きなもの、というよりも趣味という存在そのものに興味がなかった消極的な彼。

 情熱なんて言葉とは程遠い世界を独り歩きしていた彼にはまだわからない感情かもしれない。

 

 だからこそ、彼女の返答に少しばかり疑問を持ってしまう自分がおかしいのだろうかと疑問を浮かべてしまっていた。

 まだ、この世界に足を踏みいれてみただけの彼には。

 

「お前もいずれわかるさ」

 迷いを見せる彼の顔を察していたのか、ショウタは肩をたたく。

 

「お前もきっと、情熱的になれる。保障してやるよ」

 

 ヒカリのあの目の輝き。今まで見せたことのない表情。

 ショウタは確信していた。

 

 

 きっと、彼は変わる。

 この世界で彼は情熱を胸に宿すことになると。

 

 

「なぁ、今からガンプラ作るなら一緒に作らねぇか? こいつも今から新しく作るところだから、一緒に教えてほしいんだよ」

 あの修理技術の手慣れている感じ、そして戦闘で披露した自作の0ガンダムの出来。

 すべてにおいて無駄のない完璧さ。自分もそれなりにビルダーとしての技術はこの一念で磨いてきたつもりだが、彼女のビルダーとしての腕は脱帽もの。

 

 プロレベルの彼女も手を貸してくれるなら百人力だ。

 ショウタは是非とも一緒に作ってほしいとお願いする。彼女のビルダーとしての技術もこの目で盗んでおきたいものだ。

 

 

「うん、いいよ」

 快く少女はオーケーを出してくれた。

 

「えっと」

 

「ツキヨ」

 少女はヒカリたちの体面に座り答える。

 

「アマナ ツキヨ。よろしく」

 少女が手を差し出してくる。

 

 ……握手ということだろうか。

 

「あ、うん……」

 戸惑いながらもヒカリはその手をつかむ。

 本当に小さな手だ。自分と同じ高校生とは思えないくらいに儚げで。

 

 温かい。

 彼女の小さな手は、心が温まるようだった。

 

 

「わからないことがあったら、なんでも質問して」

 

「……君、年齢いくつ?」

 早速質問をした。

 

「ガンプラ関係ないやないかい!」

 ハリセン片手にショウタの豪快なツッコミが返ってきた。

 いや、そのハリセンはどこから取り出したのだ。SDガンダムのギャグ路線並に突然のハリセン登場には一同も戸惑いを見せつつある。

 

 

「12歳」

 ツキヨは快く質問に答えた。

 

「「え?」」

 二人は固まった。

 

「私、飛び級で学園に入ったから……」

 なんということだ。

 見た目が明らかに幼いと思ったからそういう体質の人なのかと思ったら……本当に年下だったとは。年齢的にはまだ小学6年生くらいの年頃である。

 

 何より衝撃的だったのは、12歳にしてあの技術を持っていること。

 ショウタはしみじみ思う。

 

 世界は広い。

 世界にはいろんな人たちがいるんだなと。

 

「ふぅん。ありがと」

 

「リアクションうすっ!?」

 

 まあ、もしかしたらと思って質問したのだから当然と言えば当然かも。

 それに何に対してもリアクションが薄いのは昔からだ。ヒカリは恐らく内側ではそれなりに驚いているのかもしれないけど、それを表に出すことは少し苦手なのかもしれない。

 

 その証拠に自分と一緒に口をそろえて驚いているような声を上げたし。

 やっぱり温度差があるせいか、それに気づく人は少なかっただろうけど。

 

「それじゃぁ、作っていこうかな」

 たくさんのパーツを広げ、いよいよ組み立てに入る。

 ビルダー経験者である2人の教えを受けつつ、しっかりと自分好みのフルアーマーガンダムを作っていこう。

 

「んっ」

 パーツを広げた際、テーブルの上に少し積もっていたであろう埃が彼の鼻の中へ。

 

 思わずクシャミをしてしまう。

 口で抑えたため迷惑にはならなかったが、彼なりには豪快なクシャミであった。

 

 おかげで鼻水が少し飛び出してしまう。

 

「ショウタ……ティッシュ頂戴」

 

「そこ、『ティッシュくれよ』って言えば完璧だったな」

 

「え、何が」

 

「いや、なんでも」

 

 このネタは見てる人にしかわからない。

 指摘をするのも次回にしよう。今はHGフルアーマーガンダムを作ることが先決だ。といっても、フルアーマーを外した素体の方を作るのが優先であるが。

 

 

「ツキヨはガイアか」

 ツキヨが持っていたガンプラはHGガイアガンダムであった。

 機動戦士ガンダムSEED DESTINYに登場するモビルスーツ。人型のモビルスーツ形態はビームライフルにビームサーベルのみとシンプルなものだけであるが、この機体の大きな特徴と言えば……やはり、犬のようなモビルアーマー形態が存在する事であろう。

 

 人から獣の姿になるというのは当時発想としては面白いとショウタも思ったものである。

 

「どうしてガイアに?」

 

「……犬が好きだから」

 女の子らしい。

 可愛いものが大好きということか。

 

「ラゴゥとかバクゥじゃなくていいのか?」

 

「……この子がいい」

 少女はガイアガンダムのパッケージを見てつぶやく。

 

「この子じゃないと……あの子をつけられないから」

 

「ん?」

 そのセリフには何の意味があったのか。

 彼は首をかしげていた。

 

「ああ、そうそうヒカリ」

 言い忘れていたことがあった。

 

「フルアーマーガンダムの素体を作るのはいいが、ただそれだけだとオリジナリティがないからさ、何かパーツをつけてみたらどうだ?」

 ここの体験コーナーには、ほかのビルダーがここを使用した際に不要と判断したパーツが一か所にまとめられてある。

 

 これはジャンクパーツとして常にそこに置かれてあり、使いたい人がいるのならご自由にというサービスである。

 

「……これ」

 彼は何も考えずにフィーリングで機体を取り出した。

 

「……おお、お前やっぱり良い感性してるな」

 取り出したパーツ。

 それは自分の好きな作品の一つだったために、好感のある反応を見せた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 数時間後。

 ツクヨやショウタのアドバイスを得ながら作り上げた新しいガンプラ。

 

 それがようやく完成した。

 

「できた」

 

 フルアーマーガンダムの素体。

左腕にはフルアーマーガンダムが使用する、シールド付きの2連ビームライフル。動かしやすいように少し小型化されている。

腰には右手で持つためのビームサーベルがマウントされている。

 

そこに原作と同じようにフレキシブルアームで接続されたシールドを、右肩のみに。あまり邪魔にならないようにシールドは小型化されている。シールドの内側にはフルアーマーガンダムの右腕に装備されている、5連装のロケットランチャーが内蔵されている。

 

それ以外にも牽制用のアサルトマシンガンがシールドの内側にマウントされている。どちらかといえば、このシールドはジェスタに近いものがあるだろうか。

火薬庫のようなシールドである。

 

 何よりこの機体で特徴的なのは……背中のフルバーニアン。

 彼が取り出したのは、試作1号機が宇宙で使用した、大型バーニアのフルバーニアンだ。ヒカリのガンプラに違和感がないように、少し形を変えて背中に装備されている。

 そのバーニアの形は、どこかトールギスのバーニアを思わせるような形状をしていた。

 

「おう、良い出来じゃねえか」

 大半は彼らの手伝いによって出来たものである。フルバーニアンとシールド武器に関してはショウタが手掛けたものになっている。

 

 しかし、素体を一から作ったのはヒカリだ。

 だからこそ、彼は目の前のガンプラに感動を覚える。

 

 ……これが自分だけのガンプラ。

 

「サンダーボルトガンダム」

 

「いや、だから違うって」

 名前が違うだろうとあれほど言っているのに。

 

 ……いや、むしろ彼専用のオリジナルガンダムなんだから、それを名称にするのはありかもしれない。

 よし、決定だ。ヒカリもその気のようだし、この機体の名前はサンダーボルトガンダムで決定。

 

「んじゃ、動かしてみるか?」

 ここなら邪魔も入ってこないはずである。

 体験コーナーで少しばかり触ってみるのはどうだと誘いに乗る。

 

「俺も機体を持ってきているからな」

 今日は彼にも体験させたいことが山ほどある。

 そのために、彼は学園で作った最高傑作のジムを見せたいとのことであった。

 

「ツキヨは?」

 

「先に行ってて」

 仕上げに少しだけ時間がかかるようだ。

 

 ……真っ白のガイア。

 ショウタはそのガイアの背中をちらっと見る。

 

「ああ、なるほど。そういうことか」

 彼女のセリフの意味が分かった気がした。

 

「んじゃ、行くか」

 2人は向かう。

 バトルシステム。といっても、今回は対戦相手の存在しないCPUを相手としたシミュレーションバトルだ。

 

 そこで基礎的な動きとこのバトルの楽しさを覚えてもらうことにする。

 

「……これからよろしく」

 もうすぐ始まるのだ。

 

 サンダーボルトガンダム。自分だけのガンダム。

 自分の人生を変えることになる、“最高に運命的なセッション”が始まろうとしていた。

 

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