愛とは理解することである   作:サモエド陸也

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男が男の内面書けばそりゃホモ臭くもなりますよね?


出会いの結末は別れである

ボディプレート、前後共良し。

レガース、良し。

バックパックの中身、良し。

武器、メインサブ共に良し。

全部よしっ!

時間は…後20分くらいか。そろそろ向かった方が良さそうだな、早すぎても駄目だしギリ過ぎても駄目だ、変に目立つのは好ましくない。

 

あの後マスター候補達が集まり所長()のありがたい訓示が下された後、班員達との取り敢えず最低限のミーティングを先程済ませた今は装備のチェックが終わった所だ。

お国柄とでも言えばいいのだろうか、こういった集合時間に関しては日本人の血が10分前到着をしなくてはいけない気分にさせる。

目当てのコフィンルームに気持ち早歩きで向かっていると見覚えのあるピンクブロンドの頭とカルデア支給の魔術礼装を着ているが見覚えの無い女子が目に入る。

 

「おやドクター。もうすぐレイシフトの時間だというのに何故居住区に?それとそちらの女性は…」

「ああ、君は、えっと、犬井君か。いや、別にサボって空き部屋でうたた寝してたらレフからの通信で起こされて慌てて管制室に向かってるとかでは無くてね、天候不順で到着が遅れたこの子に道すがら説明しながら向かってた所なんだよ」

 

医療部門のトップが堂々とサボってんじゃねーよ、アンタ居ない時に非常事態が起きたらどうすんだ。

 

「あぁ、本日到着する予定だったという最後のマスター候補生ですか。先程の所長の演説の時に居なかったのですっかり忘れてました。

始めまして、私は犬井一。このフィニス・カルデアでマスター候補をさせて貰ってる、まあ貴女の同僚と言った者です」

「こちらこそ始めまして!あたしは藤丸立香です!今日からここでお世話になります!宜しくお願いしますね、センパイ!」

 

あ、駄目だ。この子俺が苦手なタイプのパーソナルスペースがめっちゃ狭い人だ。しかも多分所謂クラスの人気者といった感じの、一人でいる人を放っとかない面倒臭いタイプの良い人だ。あと声でけぇよ、2mも離れてないのになんでそんな軍隊式みたいなデカい挨拶かましてくるの?

 

「はい、恐らくドクターから説明は受けているとは思いますが、貴女は私が班長を務める班に入る事になっているので後で細かいルールというか行動概要を説明しますね。それとドクター、医療部門トップである貴方が居ないといざという時の判断を下せない立場の人達が困ります。休むなとは口が裂けても言いませんがせめてこういった重大事項の時くらいは…」

「あー、う、うん。そ、それよりもさそろそろ遅刻しそうだから早く向かわないかい?」

「?確かにもうすぐレイシフトですが、まだ時間に余裕はあるはずですが?」

「え?だって今もう16:58だよ?君も遅刻しそうだから急いでたんじゃないの?」

 

は?16:58?そんな筈は無い。だって俺の時計はまだ16:38を表示してるんだぞ、居住区とコフィンルームのある区画は離れてるから余裕を持って部屋を出たんだ。きっとドクターの時計がズレてるに違いない。

 

「あー、あたしの時計も16:58ってなってますね。いま59分になりましたけど」

「走りましょう!!」

 

馬鹿な馬鹿な馬鹿なっ!あり得ない‼︎さっきまで時間は合ってた筈なんだぞっ⁉︎なんで急に20分もズレるんだ⁉︎それよりも早く向かわないと!ウチの班は斥候班だから一番最初にレイシフトするんだぞ!もし予定時刻によりによって班長がばっくれるとか悪目立ちするにも程がある!ああ、畜生!時よ止まれ、お前は美しい!ああもう間に合わない‼︎

 

 

 

 

 

振動。

 

轟音。

 

もう駄目だと絶望しかけたその瞬間。足元を掬われる程の揺れと、耳が駄目になりそうな爆発音がカルデア全体を軋ませた。

 

「うぉ…っ、ぐっ…。ふ、藤丸さん、ドクター。無事ですかっ⁉︎」

「あ、あたしは、なんとか…耳キーンってしてますけど…」

「い、一体、何が……、ッ!管制室!こちらロマニ・アーキマン!謎の爆発が発生!そっちは平気か⁉︎管制室!応答せよ!」

 

ドクターが通信機に向かって吠え立てる。が、機械は砂嵐のような音を発するだけで返事は一向に帰ってこない。

 

「…爆発音は向こうから聞こえて来ました…、ということは、もしかしたら管制室が爆発に巻き込まれたのかも知れませんね…」

「っ!君達はコフィンルームへ向かってくれ!僕はこのまま管制室へ向かい、全体の把握をした後救助者の捜索をする!」

「了解しました。気を付けて下さい。藤丸さん、立てますか?」

「は、はい!大丈夫です!早くその何とかって所に行きましょう!」

 

あれだけの揺れがあったのに誰も怪我しなかったのは奇跡だな。てっきり俺か彼女か足首でも挫いて動けなくなる展開かと思ったのだが。

 

 

「………酷い」

 

確かに、これは酷いとしか言い様が無いな。見渡す限り瓦礫の山と炎の嵐しか無い。

 

「誰かー!誰か居ませんかー⁉︎誰か無事な人ー!」

 

藤丸さんが声を上げながら生存者を探そうとしているが、この有様じゃ誰も生き残っちゃいないだろうな。おっと、瓦礫から腕がはみ出てるがこれは藤丸さんには見せられないな、埋めとこう。

 

『二人共、聞こえるかい⁉︎こちら管制室のロマニだ!聞こえたら応答してくれ!』

「ドクター、ご無事でしたか。犬井、藤丸共に無事です。今コフィンルームに着いたのですが、この有様では恐らく生存者が居るのは絶望的かと…、そちらの状況は?」

『こっちも似たようなもんさ、管制室も爆破されてそこら中もう滅茶苦茶だよ、それにどうやら主電源もダウンしているみたいなんだ。今は副電源でなんとか施設は維持出来ているけど、これが予備電源に切り替わると警戒装置が作動して各区域に隔壁が降りてしまい閉じ込められてしまうんだ。僕はこの後発電機の所に行って何とか出来ないか試してみる。二人はそこに閉じ込められない様に早く安全な場所へ避難するんだ!』

「了解しました。直ちに避難します」

 

管制室も落とされた上に主電源もだと?こりゃ事故じゃなくひょっとしたら誰かがテロった可能性が出て来たな。となるとグズグズしてられん、早く逃げないと。

 

「センパイ!来て下さい‼︎こっちに生きてる人が居ます!」

「何だと⁉︎すぐ行く‼︎」

 

この状況で生きてる奴が居たのか、避難するのに怪我人を連れて行ったら足手まといにしかならんが、見つけちまったものはしょうがない。

 

「藤丸さん!何処だ⁉︎」

「こっちです!」

 

ああ、そこに居たのか。これだけ動かれると余りに目を離さない方が良さそう…だ………

 

「センパイ!この子瓦礫に挟まれちゃってるんです!早く助けてあげないと!持ち上げるの手伝って下さい!」

 

ああ、そうだよな。

そういえばお前さんもマスター候補の一人だもんな。そりゃここにいるに決まってる。そりゃ爆発に巻き込まれるに決まってる。

何でこんな簡単な事に気付かなかった?

 

「キリエライト…さん…」

「う…あ…、ハジ、め、さん…?」

「喋らないで!今助けてあげるよ!センパイ早く‼︎」

 

駄目だ。その大きさの瓦礫じゃとても二人掛かりでは持ち上げられないし、何よりこの様子と出血量では、もう助かりようが無い。生きてるのが不思議なくらいだ。

 

「センパイ何してるんですか⁉︎早くしないとこの子死んじゃいますよ!さっさと手を貸して下さい‼︎」

「………駄目だ」

「ハァ⁉︎」

「このまま二人掛かりで救助しても共倒れになる。俺が彼女を救助するから、君は早く避難しろ」

「避難って…センパイとこの子置いてあたしだけ逃げろって言うんですか⁉︎嫌ですよ!それにセンパイ一人だけで出来るわけな…」

「大丈夫だ、俺には秘策がある。だから早く避難しろ、このままここで押し問答してたら3人共死ぬ。隔壁が降りる前に君だけでも逃げろ。これは班長としての命令だ」

「だから嫌ですって!それに何ですか秘策って⁉︎こんな時にふざけてる場合じゃ…」

「いいから早く逃げろ!じゃあハッキリ言おう、お前が居ても邪魔なだけだ!さっさと避難しろ!これだから女は強情で嫌なんだよ…!」

「なっ…このっ…、くっ、分かりました…。その代わり!絶対その子連れてセンパイも避難して下さいね!じゃないと怒りますからね‼︎」

 

……行ったか。

これで良い。これで彼女は無事に避難出来る。

後は…

 

「大丈夫か、キリエライトさん?」

「ハジメさん…どうして…?」

「さてな、自分でも良く分からん。何でお前さん置いて逃げなかったんだろうな…悪いな、秘策が有るとは言ったが、ありゃ嘘だ。本当はちゃんとした魔術の一つや二つ使えればこんな瓦礫どかしてやれるんだがな」

「いえ…もう助からないのは、自分が良く分かってます…もう胸から下の感覚が、ありませんし…」

「そうか…」

「それより、ハジメさん。どうしてここに残ったのですか…?」

「言ったろ、自分でも良く分からんってな。だが、その、なんだ。ここで唯一親しくなった人間を見捨てて一人で死なせる程、俺は“人間”ってやつが出来ちゃいないらしい」

「そう、ですか……ふふっ」

「なんだよ、可笑しいか?」

「いえ、口調が…」

「口調?あっ…」

 

しまった…慌ててた所為で素が出ちまってたか。どうもさっき藤丸と口論した辺りから出てたみたいだな。

だが、もう最後だ。これくらい別に構いやしないだろう。

 

「そうだよ、この横柄な感じが俺の本来の喋り方だ。普段から敬語で話してる所為かガラの悪い感じに聞こえるらしいから男友達以外にゃ使わなかったんだが…クソッ、動揺してボロが出るとは俺も甘いな…」

「そんな事ないです、なんだかその方が、ハジメさんらしくて良いと思います…」

「そうか…他の連中には内緒にしてくれよ?」

「はい……、あ、それなら、ハジメさん…?ひとつ、お願いがあるのですが…」

「交換条件ってことか、なんだ?」

「はい…あの…よろしければ、名前で、呼んでいただけないでしょうか…?いつも私だけ、名前で呼ばせていただいてたのに、ハジメさんはずっと、私のことをキリエライトさんとしか、お呼びになりませんでしたので…」

 

なんだ、末期の願いが名前で呼んで欲しい、か。欲があるんだか無いんだかよく分からん奴だな。

 

「それくらいで良いならいくらでもいいさ、マシュ」

「あ…、やっと、ハジメさんに名前を言ってもらえました…ふふふっ、多分私がここでハジメさんに名前で呼んでもらった初めての人なんじゃ、ないでしょうか…?」

「そうだな、他の連中は親しくなる必要が無いと思ってたからな。マシュが初めてだよ」

「嬉しいです……あの、ハジメさん。もうひとつ、お願いが、あるのですが…」

「良いぞ、なんだ?」

 

今までこの子にはここで随分と世話になった。自分でも知らない内に、俺はこの子との会話を楽しみにしていた節がある。それがあったお陰で、俺はこの組織でなんとかやっていけてたのだから。

 

「えっと、今後は…私にはその口調で、会話してもらえますか…?」

「あー、まぁ、そうだな。分かった。ただし、フォウの奴もそこに入れてやってくれないか?」

「そうですね…考えてみれば、ハジメさんは、フォウさんとだけ、ずっと…」

「…マシュ?」

「………ハジメ、さん…さいご、に、もうひとつ、だけ…おねがい…して、も…いいです、か…?」

「何でも良いぞ。何だ?瓦礫はどかせんがそれ以外なら何でも聞いてやる」

「て、を…にぎってて…もらえ…ないでしょう、か…」

「それくらいで良いなら、喜んで」

 

俺も丁度誰かと手を繋ぎたいと思ってたところなんだ。

瓦礫が崩れ始める。

 

「………ハジメさん…」

「何だ?マシュ」

 

隔壁の降りる警報が聞こえる。

 

「ありがとう、ござい、ます…」

「こっちこそ、感謝してもしきれんくらいだ」

 

一人で死ぬ人生だと思ってたが、こんな良い奴と最後を共に出来るんだ。

未練はあっても、悔いは無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コフィン内マスターのバイタル 基準値に達していません。

レイシフト 定員に 達していません。

該当マスターを検索中………発見しました。

適応番号36 犬井一

適応番号48 藤丸立香 を マスターとして 再設定します。

アンサモンプログラム スタート。

霊子変換を開始します。

レイシフト開始まで3、2、1____。

全工程 完了。

ファーストオーダー 実証を 開始します。

 




ここまでお読みいただきありがとうございます。
皆さまに今後の内容についてお知らせがあります。
今後は鯖との関係を重点的に書いていきたいので今後の特異点攻略などの内容を省略する事があります。
ifのFGOのお話を楽しみにしていただいている読者の方には申し訳ありませんがここからは只ひたすらにオリ主を甘やかし、時にシリアスで試練を与えていくつもりです。
勿論物語の内容の描写を手抜きにするつもりはございません。あくまでテンポを重視した時にカットしなければ私の貧弱な脳味噌だといずれネタが尽きてしまう恐れがあるためです。
最後まで書いていくため努力は惜しみませんが、何卒ご理解の程をご了承賜りたく存じます。
皆様の感想や評価、お気に入りの数字が私の励みになります。
どうか最後までお付き合いいただければ幸いです。

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