愛とは理解することである   作:サモエド陸也

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日間ランキング1位ってどういう事ですか…(震え声)
な、何が望みなんですか?金か?貞操?
危うく心不全起こす所でした


個人的ママランキング2位登場

熱い。暑いではなく熱い。

まるで火に炙られる様な感覚に思わず目を開ける。

 

「何だここ…何処だ?俺は確かあの時……ッ、マシュ⁉︎」

 

辺りを見渡すが誰も居ない。

あの時の光景と同じく瓦礫と炎しか見当たらない。いや、違う。

 

「外…なのか…?いつの間に外に、いや、今はそんな事はどうでも良い。俺が無事ならば、マシュも何処かに居るかも知れん」

 

取り敢えず探索をしながら装備の確認をする。武器防具、バックパックの中身も無事な様だ。

 

「しかし、一体此処は何処なんだ?ビルの残骸があるって事は現代のどっかなんだろうが…」

 

手近な廃ビルのエントランスで休息をいれ一息付ける。何か無いかと探してみると、破れた週刊誌を見つける。

 

「日本語、って事はここは日本なのか…?日付は…はぁ⁉︎2004年だと⁉︎」

 

奥付を確認してみるとそこには10年以上前の日付が印刷されていた。

 

「あり得ん。タイムスリップでもしたというのか?だが2004年にこれだけの災害が起きた記憶なんぞ無いぞ…?」

 

どうにか記憶の底を漁り思い出そうとするがやはり記憶に無い。いくら10年も前の記憶とはいえ日付を信じるならばもう小学校に上がった後なのだ、何らかのニュースを必ず見た筈なのだが微塵も覚えがない。

 

「どうなってやがる…取り敢えず、これだけの火災が起きているのに此処まで誰とも遭遇しなかったという事は近隣の住民はとっくに避難しているに違いない。ならば長居は無用だ、早くマシュの手掛かりを見つけんと…」

 

そこまで口にしてからふと気付く。

自分は何故さもマシュが生きてて当然といった考えでいるのだ?彼女はあの時既に致命傷を負い、助からなかった筈だというのに。あのままならば生きてはいない筈なのだ。

そこで妙な事が起こる。今まで気付いてなかったが、自分の右手に赤い紋章の様な刺青から何故かマシュの気配のようなもの感じるのだ。

 

「これは、確か令呪、だったか?しかし何故俺に?いつか聞いた説明通りならばサーヴァントと契約する為に必要なものだったと記憶しているが…これの所為か?」

 

サーヴァントと呼ばれる英霊を使役する為のある種の魔術刻印。マスターの魔術回路と繋がることでサーヴァントに対する命令権を得る契約の証、それがこの令呪だ。

 

「しかし何故こんなものからマシュの感覚が…?」

 

何だか分からんが、これの感覚を信じるならば彼女は無事なのだ。ならば早く捜しださねば。もし奇跡的に助かっていたとしても、あれ程の重傷を負っていたのだからもしかしたら今尚危険な状態かも知れない。

 

「初めて出来た親しくなりたいと思った子なんだ…早く捜さないと」

 

ビルを抜け出し、炎の勢いが強い場所を避け移動していく。もしこの災害が地震などによるものならば、避難場所として選ばれるのは学校や役所などの大きく頑丈な建物だ。人が居ればこの状況の把握も容易になるに違いない。そう考えながら暫く移動すると、人影が建物の陰から見えた気がした。

 

「人影、か?丁度良い、この辺りの人間なら緊急の避難場所を知ってるかもしれん、おーい!待ってくれ!」

 

人影が見えたビルの角を曲がった所に、“それ”は、居た。

 

「…は?」

 

“それ”は、一言で言うなら人間の骨だった。

それならばまだいい。

しかしその人骨は、あろう事か二本足で確かに立っていたのだ。

しかも本来であれば動く事の出来ないそれは、ゆっくりとこちらを向き、眼球の無いその空虚な眼窩で、こちらを確かに認識している様に感じ受けられたのだ。

予想していなかった状況に混乱していると、そいつはこちらに向かって動き出したのだ。

あまりの出来事に動けずにいると、そいつはどうやって保持しているのか、手に持ったまるで石を削って出来た刀の様なものを振りかぶってきた。

 

「ッ、クソ!」

 

そこまで来て漸くこちらも放心から抜け出す。振り切られた剣を避ける際、感じられる風圧が、この異常事態が現実であると無理やりにでも認識させられる。

 

「なんだこいつは…?なんで現代日本の街中に骸骨の化け物が出るんだよ…!」

 

ぼやきながら装備していた武器を抜く。

資材課に要請して用意して貰ったサブマシンガンを、目の前の骸骨剣士に向かって人の形を一応はしているが、躊躇なく放つ。

が。

 

「あまり効いてる様には見えないな…対人用鈍器なんぞ重過ぎて装備候補から外してるっつーのによぉ!」

 

斥候には身軽さが求められる。それ故もっと威力のあるアサルトライフルや長物なんかは装備していなかったのが今回は間違いだったと言えた。また世界からの選択肢を間違えたかのような錯覚に陥るが、決してそれは間違いではない。ただこんな相手を想定しろと言う方が間違っているのだ。

敵の頭部が無くなるまで銃弾を叩き込むと、漸く相手が崩れ落ちる。

 

「ハァ、ハァッ…死んだか…?クソッ、マガジン1本分ぶっ放してやっと倒せるとかダメージレートどうなってんだよこいつ…残りは…後6本か」

 

どうやって稼働していたのか、今はバラバラになり動く気配すら無くなった骸骨を前に息を吐く。

しかし、繰り返すが世界とは残酷な面を容赦無く浴びせ掛ける事が多々有る。自分は本来ならば戦うべきでは無かったのだ。斥候の仕事とは敵の殲滅では無い、あくまで敵の有無。地形の把握などが己の仕事であった筈なのだ。己の分を履き違えた罰だとでも言われるかの如く、炎が、揺れた。

 

「ッ!しまった!」

 

炎の向こうから新たな人影が歩み出る。その数、5。

決して油断はしていなかった。だが自分はすぐにこの場を離れていなければならなかったのだ、敵は1体だけとは限らない。あれだけの戦闘音を出せば周囲の敵が誘き寄せられるのは当然の帰結と言える。しかも場所が悪い。道路の反対側は瓦礫で封鎖され、逃げようとすれば敵の真横をすり抜ければならないのだ。そしてそのまま、敵はまるでこちらを囲むかのようにこちらに近づいてくる。

 

「囲まれた⁉︎クソがッ、こいつらまさか知恵があるってのかよ!」

 

ジリジリと距離を詰めてくる敵を見やると全員が武器を手にしていた。今倒したばかりの骸骨と同じ剣持ちが2体、槍のような先端が鋭い長物を構えた奴も2体。

厄介なのが弓を構えた奴が離れた場所からこちらを狙っているのだ。もし敵とは反対の瓦礫の方向に逃げようとすれば、よじ登っている間にアレに背中を撃ち抜かれる事は容易に想像できる。

 

「逃してくれる、わけ無ぇよな…」

 

そう言っている間にも近接武器を持つ骸骨がこちらににじり寄ってくる。手持ちの武装で倒しきれる可能性は十分あるが、無傷で切り抜けられるという訳にはいかないだろう。加えて、こいつらが先程倒した骸骨と同じ程度の強さだというならば、手持ちの弾薬がほぼ尽きてしまう事になる。

逃げられる筈も無く、かといって戦っても勝ち負けに関わらず自分は無事では済まない。明確な詰み、とも言える絶望的な状況に思考は段々と黒い泥に呑まれる様に冷めていく。

 

(どうするどうする⁉︎敵の横をすり抜けるか?いやそれだとすれ違いざまに斬りつけられるかも知れないしあの弓持ちをどうにかしないと後ろから撃たれる!瓦礫の方向に…駄目だ、とてもじゃないがあの高さを撃たれる前に登り切るのは無理だ!クソッ、クソッ、クソッ!やっと生き残ってマシュも生きてるかも知れないのに、ここで終わりだっていうのかよ⁉︎こんな何処か知らない所で独りで化け物に殺されるのが俺の最後だと?ふざけるなよ!俺があの時悔いなんか無いって考えたからわざわざ生き返らせて独りで失意の内に死なせるってか⁉︎冗談じゃねぇ、折角生き返ったのにこんな所で殺されてたまるか!俺は死なねぇぞ!)

 

「死んでたまるか!俺は生きる、誰にも俺を殺させやしねぇ‼︎俺を殺そうってんならテメェらから殺してやる」

 

皮肉と言うべきか、彼はこれまでの人生を何時でも終わっていい無意味な物であると考えていた。友と呼べる存在は居たが彼の苦悩は殆どが家に関する事であった。その為誰かに相談など出来る訳も無く、彼は生きるという事に空虚な考えしか抱かなくなっていたのだ。

体感的には一度死に、この様な異常な状況で更に命の危機に瀕する事で生への渇望を得たのだ。そこに誰かの為に生きる、といった考えが浮かばないあたり、悲しい渇望ではあるが。

 

「そこを退けぇぇぇぇッ‼︎」

 

傷を負う事を厭わずに敵に向かって突貫しようとしたその時、背後の瓦礫の上から新たな人影が飛び出る。

 

「ハジメさん!下がってください!」

 

乱入者は敵では無かった。それは、何処か騎士の様な印象を受ける防具に身を包み、大楯を構えたマシュであったのだ。

 

「マシュ⁉︎マシュなのか⁉︎どうしてここに、何だその格好⁉︎」

「はい!マシュ・キリエライトです!細かい事は後で説明します!今は敵の殲滅を最優先とします!」

「あ、ああ!わかった!援護する!先ずはあの弓の骸骨から片付けろ!前衛は俺が抑える!」

「はい!マシュ・キリエライト、突貫します!やあぁぁぁっ!」

 

身の丈を越える盾を構えながらも、それを意に介さず素早く敵に接近した彼女は、自分が先程あれだけ苦労した敵をその盾の一振りで粉砕する。

一瞬唖然とするが、マシュの方が脅威だとでも感じたのだろうか、彼女に向かって走り出した骸骨達を見て意識を戻し、銃弾を放つ。

倒せずとも銃弾を受ければ奴らは多少動きを止める。彼女を奴らに攻撃させない事が自分の今やるべき事だ。

まるで長年付き添った兵士の様に動く二人に、多少動けるとはいえ一撃で砕ける骸骨達が抵抗出来る事も無く、殲滅は完了した。

 

「ハジメさん!ご無事ですか⁉︎」

「ああ、奴らにやられる前にマシュが来てくれたから何とも無い。それよりマシュは大丈夫なのか?あの時確かに瓦礫に潰されてたのに何故どこも怪我してないんだ?その格好はどうしたんだ?」

「えっと、実はあの時にですね…」

「おーい、マシュー!待ってよー!置いてかないでー!」

「マシュ!貴女私達を放って急に走り出して何だと言うの⁉︎こんな素人と二人きりでもし私の身に何かあったらどうするつもりなの⁉︎」

「藤丸さん⁉︎それに所長まで!ご無事でしたか!」

「貴方、確か犬井候補生だったかしら?無事なもんですか!足元が急に爆発したと思ったら急にこんな所に放り出されて、カルデアとは未だに連絡が取れないし、この女はこの状況で能天気な事しか口にしないし、もう散々だわ‼︎」

「ちょっ、所長⁉︎能天気ってひどくないですか⁉︎あたしはただ場を和ませようとしただけで…あー!それよりもセンパイ!あたし言いましたよね⁉︎二人共無事に帰って来なきゃ怒るって!あの後あたし瓦礫に足取られて転んで頭ぶつけて気絶してもう大変だったんですからね⁉︎見てくださいよこのたんこぶ!」

「わ、悪かった。そんな事になっていたんですか、それよりもそんな畳み掛けられたら混乱してしまいます。一体何があったか順序立てて一人ずつ説明して貰えないでしょうか?」

 

それから四人の持つ情報を繋ぎ合わせあの時カルデアで何が起き、今のこの状況になったかを推理した。

あの時の爆発は管制室とコフィンルームで起きた事。

藤丸は避難しようとしたところ瓦礫に頭をぶつけ気絶してしまいコフィンルームに閉じ込められたので巻き込まれてしまった事。

アンサモンプログラムによって自分達は恐らく今回調査しようとしてた特異点にレイシフトしてしまった事。

マシュは実はデミ・サーヴァントという英霊の魂を宿した存在で、今まではその英霊の力は発揮出来ないていたのだが、あの時死に瀕した際に宿る英霊から力を譲り受けた為無事であった事。

マシュが令呪の魔力を辿り藤丸と合流した後、敵に襲われていた所長を発見し三人で行動していた所に何故かもう一つの令呪の流れをマシュが感じ取り、恐らく味方なのではないか、もし味方ならば探して合流するべきなのではないか、魔力を辿ろうという事を話し合っていると強大な魔力を持つ敵からの狙撃を受けた事。

狙撃手に対して攻めあぐねていると何者かが狙撃手に向かって魔術を放ちこちらを援護してくれた事。

もしかしたら令呪を持つ者が味方してくれたのではないかという結論を出し、探索しているとマシュが急に走り出して自分を見つけて今の状況に至る。

今後はどうするべきかと所長に判断を仰ぐとカルデアとの通信を復旧させる為、レイラインと呼ばれるこの地の霊脈に陣を敷くべきとの指示を受ける。

霊脈探索の際に敵性サーヴァントから奇襲を受けた所、先程の狙撃手を撃退したサーヴァントであるサーヴァント・キャスターが味方をしてくれこれを撃破。所長が軽く漏らしかける。

キャスターが言うにはこの地の異常の原因は汚染された聖杯に依る聖杯戦争が発端であるとの事。

汚染された聖杯持つアーサー王が自分以外のサーヴァントを降し、味方に付けた事。所長が発狂しかける。

もしこの特異点が汚染された聖杯に端を発するものだとすればセイバーであるアーサー王を倒せばこの特異点は攻略でき、自分達はカルデアに帰れるかも知れないとの事。

 

そして現在霊脈が有ると言う協会の跡地にてマシュの盾を媒介にしてカルデアとの通信を試みている状況である。

 

『やっと繋がったか!こちらロマニ・アーキマン!聞こえますか⁉︎』

「ええ、聞こえているわ。こちらオルガマリー・アニムスフィア。それとマスター候補2名。現在特異点と思しき場所から通信しているわ

。カルデアの状況はどうなっているの?」

 

カルデアとの通信に出てきたのはドクターだった。彼が言うには現在カルデアは大混乱に陥っており、無事な人員で最上位の権限を持つ人間がドクターしか居ないという報告を受け所長が倒れかけるが、まだ死んでない人間が居ると報告を受けると何とか持ち堪え、治療よりも冷凍保存による延命措置を指示するとそこで座り込んでしまう。ボソボソとライノール顧問の名前を呟き始めたのでそっとしておく。

その後キャスターから戦力を増強した方が良いと提案を受け、この陣の上ならば新しく英霊を召喚出来るというドクターからの説明される。

現在のカルデアからの魔力供給によるリソースでは自分と藤丸が1回ずつしか召喚出来ないとの忠告を受け先ずは自分から召喚を試みる。

 

(なるべく話が通じる奴が来てくれると良いんだが…頼むぞ)

 

説明された術式の為の詠唱を行い、荒れ狂う魔力による光の奔流に思わず顔を庇う。

やがて光が収まり、そこに立っていた人物がこちらを見定め、発声する。

 

「サーヴァント・アサシン。マタ・ハリが通り名よ。宜しくね、マスター」

 

 

 




やっとママが出せました…
戦闘描写書くのすごく辛い…

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