それはアナハイム・エレクトロ二クスとエゥーゴによる全領域対応の可変MSを開発するための計画である。
これはそのテストパイロットを務めた一人の男が書いたレポートである。
本作はZ計画、およびそれに付随するMSについてテストパイロットの視点から見たレポート風の作品になっています。
説明などの部分はあやふやな記憶を元、独自解釈で書いているのでこれはどうなの?と思われる部分も多いと思いますがご了承ください。
答えは最後、あとがきで。
Z計画…アナハイム・エレクトロ二クス(以下AE)とエゥーゴによる共同MS開発計画。
エゥーゴのフラグシップ機足りうる強力な可変MSの開発を目的としている。
自分はそれにテストパイロットとして携わる事となった。
しかし、これは仕事とは別に個人的な趣味で書いていく。
MSA―099 リック・ディアス
Z計画に含めるかどうか微妙だが、AEとエゥーゴの初の共同開発であり、原点である事には間違いないので、ここに記す事にする。
本機は元々U.C0083に起こったデラーズフリートとの戦いによって連邦に不信感を持たれ発注が望めなかったAEが技術発展の為独自に開発を始めたという経緯を持っている。
開発陣に余裕があったのか、GPシリーズの開発陣が総出で設計する事になった。
本機の設計母体はガンダム試作2号機であるので、一部に共通点が見られる。
本機の最大の特徴といえば、装甲材質にガンダリウムγを使用している事だろう。
軽量かつ耐久性の高いこの装甲と当時の連邦のレベルから劣るとはいえムーバブルフレームを採用している事から、その見た目に反しての運動性を持っている。
そして、やはり地上戦でのホバー走行による機動性、踏破性の高さも目を見張るものがある。
センサー類も同時期の連邦の制式MSより性能が高い。ジムⅡから乗り換えた時の性能差には驚いたものだ。
このように性能面だけを見れば高性能な機体なのだが、生産性はジム系には劣る。
しかし、後述の機体よりは生産性と整備性の高さと、中々の性能により一部士官のパイロットに配備されることになった。
MSN―00100 百式
元はコードネームδガンダムの名前で作られていた可変MS。しかし、様々な問題点が浮かび上がったため再設計され、非可変機となった。
本機の特徴として金色の塗装が挙げられる。
これは、対ビーム兵器のコーティングである。といっても他のMSに比べるとマシといったレベルだが。
また、防御より回避を優先しているためと対ビームコーティングを最大限に生かすため、姿勢制御能力、運動性が高い調整がなされている。
これによる弊害で本機はシールドを装備せず、かなりピーキーな調整がされており、乗り手を選ぶ機体となっている。
自分もそれなりの腕だと自負しているが、それでもこのMSを使いこなせたという印象は持っていない。この機体のパイロットとなったエゥーゴのパイロット…クワトロ・バジーナ大尉には敬意を表する。
MSA―005 メタス
AEおよびエゥーゴ初の可変MS。
MA形態が宇宙戦を主としたものだったのでエゥーゴの要求する全領域での運用は満たせなかったものの、可変機としての一応の完成を見た。
以上の事から可変の実験機だけだったのだが、検証の結果実戦に耐えうることが判明し配備されることにもなった。
本機は性能的に特筆する点は特に無い。しかし、Z計画の目的である可変MSの開発に関して言えば多大な貢献があった事は間違いない。
RX―178 ガンダムMk-2
Z計画とは関係ないが、本機によってZ計画が進んだ事は間違いないので、記す事にする。
本機はAE製ではなく、連邦の開発局が開発したものである。
本機の最大の特徴はムーバブルフレームである。
これ以前のMSはどちらかというと基本構造(フレーム)よりも装甲優先の構造だったので、機体の可動域に限界があった。
ムーバブルフレームは基本構造と装甲や武装を分離させることでフレームの可動を最優先にできるような設計にし、その動きを阻害しないように可動によってフレームがスライドするようになった。
これにより運動性の大幅向上、メンテナンス性の向上がなされた。
しかし、ムーバブルフレームも連邦が開発した当初だけでも6回設計変更があったが完成にはいたらず、運用試験中に墜落事故も起こしている。
最終的にはエゥーゴに奪取されAEでの研究の結果完成を見た。
本機は性能的には同時代の機体と比べても突出した点を持っている訳ではない。いわば、特長がないのが特徴である。しかし、汎用性の高さ、基本設計の優秀さ、操縦のしやすさによってMSの正式な訓練を受けたわけでもない人間がカタログスペック上で同等以上のMSと互角以上に戦えるほど優秀な機体である。
MSZ―006 Zガンダム
Z計画の集大成であり、到達点の機体。
これまでの上記の機体の運用データやガンダムMk-2のパイロットとなった少年のアイデアも加わった事で完成した機体でもある。
大気圏突入能力を持つウェブライダー(WR)形態への変形機構を持つ。
本機の最大の特徴は多用途な機体性能と兵装だろう。
WRへの変形によって、単独の大気圏突入能力持ち、文字通り場所を選ばず戦闘を行う事が出来る。
それだけでなく、兵装もWR時にはビームガンとなるビームサーベル、サーベル発生機能を持つ長銃身ビームライフル、複数種の弾頭を扱えるグレネードランチャーなど多目的に使用できるものが揃っている。
オプションの装備にはなるが、ハイパー・メガ・ランチャーに至ってはMS、WRどちらでも使用できるだけでなく、個別のジェネレーターやスラスターを持っているので単独での使用まで可能である。
しかし、ここまで高性能なのでハイコストな機体であり、操縦性、整備性は劣悪であり、位置付けはワンオフの試作機と変わらない。
本機は百式以上に乗り手を選ぶ機体である。素養のない人間にはその性能の半分も生かしきれないだろう。かくいう自分はこの機体に関わった人間の中では扱えた方だが、それでもまだこの機体に振り回されている。
この機体の専属のパイロットとはどれほどの凄腕なのか?一度会ってみたい。
「ふー、こんなものかな」
月のフォン・ブラウンにあるアナハイム本社の一室。そこで男は一息ついた。
仕事のレポート…などではなく、完全に個人の趣味の物である。
時刻はもう夕方、といっても宇宙なので、時間としてだけなのだが。
すると、外から通信が。
『コウ、一緒に夕飯でもどう?』
「分かったよ、ニナ。すぐ行く」
そう言って、男は部屋を後にした。
後に残ったパソコンには、彼の書いたレポートが表示されていた。
はい、最後の最後で誰か分かりましたね。『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』より主人公、コウ・ウラキです。
この作品の主人公にコウを選んだ理由として、
・テストパイロットに相応な腕、MSの知識を持っている
・アナハイム製ガンダムの操縦経験
・ティターンズに所属しておらず、良いイメージを持っていない
・階級が高くなく、取り消されたとはいえ軍法会議に掛けられたので割と簡単に出向させれそう
という理由で選びました。
一番最初のは、試作一号機、三号機で挙げた戦果と本編でニナの言った「乗るMSの性能を限界まで引き出せる」という言葉、MSへの観察眼の高さから。
二つ目のは言わずもがな、生きているパイロットで操縦経験のあるのが彼しかいないから。MSとの相性はあるか分からないけど、それでも、経験者の方が良いだろうと。
三つ目はティターンズに所属していないのは当たり前だが、ティターンズに悪いイメージを持っている人間でないと、機密的にまずいかなと。その点では連邦の体制に疑問を感じ黙秘を貫いたコウは現在の連邦を牛耳っているティターンズには良いイメージは持っていないだろうと思います。
最後のは、僕のイメージとして、階級の高い人間や腕の立つ人間ほどいろんなしがらみによって動かしにくいというイメージがあります。コウならその辺は問題なさそうですし。
読んでいる内に分かった方はどれくらいいらっしゃったでしょうか?多分結構いらっしゃるでしょうね。
ちなみにIGLOOは完全にネタです。でも、IGLOOって試作兵器のレポート的な一面もあるのでいいかなと思い使いました。
できれば、感想をくれると嬉しいです。
それでは、また別の作品でお会いしましょう。