それでは、配信第1回をどうぞ。
ナデシコ達『ツインフローラ』の『ヤマト地方』でのリーグ優勝を目指す配信旅が決定した翌日、ナデシコは自室で身支度を調えた後、サクラと共に配信旅の事について話し合っていた。
「うーん……一応、昨日の内に『ヤマト地方』の事については軽く調べてみたけど、やっぱり問題はどんなポケモンを捕まえていくかだよね……」
「ブイ……」
「一応、『ヤマト地方』のポケモンリーグの優勝が目標だから、手持ちポケモンのタイプはばらけていた方が良いと思うけど、社長の事だから旅の最中も機会があればライブをしてほしいなんて言うだろうから、ライブのパフォーマンスの事も加味しないといけないし……はあ、一体どうしたら良いのかな……?」
ナデシコが少し暗い表情で溜息をつき、そんなナデシコの事をサクラが心配そうに見つめていたその時、「……ブイ!」とサクラが何かを思いついたような声を上げると、ナデシコは不思議そうな表情でサクラに話し掛けた。
「サクラ、どうかしたの?」
「ブイ、ブイブイ!」
そして、サクラが鳴き声を上げながら机の上に置かれたパソコンを前足で指すと、ナデシコは「……あ、なるほどね!」とサクラの考えを理解した様子で両手をポンとならし、ニコリと笑いながらサクラの頭を優しく撫で始めた。
「『レインボー』のホームページにはファンの人達との交流を目的にした掲示板があるから、それを使ってファンの人達にオススメのポケモンを訊いてみる。サクラ、ナイスアイデアだよ」
「イッブイ!」
「……まあ、それを書き込むにはまずはヤグルマさんにも相談をする必要があるけど、たぶんヤグルマさんも良いって言ってくれるよね」
「ブイ!」
「よし……そうと決まれば、早速『レインボー』に行って、この事を訊いてみなくちゃ! 行こう、サクラ!」
「ブッブイ!」
そして、部屋の隅に置かれたポールスタンドに掛けられている小さな桜色のリュックサックと若草色のキャスケットを取り、それらを身に着けた後、ナデシコはサクラを連れて部屋を出ていった。
数分後、『レインボー』に着いたナデシコが事務所のドアをゆっくりと開けると、中ではマネージャー兼旅の同行者であるヤグルマと社長のクロガネが楽しそうに何かを話しており、そのいつも通りの事務所の光景にナデシコは安心感を覚えながら二人に向かって声を掛けた。
「ヤグルマさん、クロガネ社長、おはようございます」
「ブッブイ」
「……あ、ナデシコさんにサクラ、おはようございます」
「うむ、おはよう! 今日はいつもより早い出勤だが、もしや配信旅の事について何か訊きたい事があるのかね?」
「あ、はい。実は配信旅の手持ちポケモンの事で少し相談したい事があるんです」
「手持ちポケモンか……たしかにポケモンリーグの優勝とこれからのライブのパフォーマンスの事を考えると、どのポケモンでも良いというわけじゃないからな……」
「はい、それでなんですけど……それを事務所のホームページにある交流掲示板に相談してみたいんです。もちろん、そこでオススメしてもらったポケモンと必ず出会えるわけではないですけど、それでも参考にはなると思うんです」
「なるほど……それにしても、よくそんな案を思いつきましたね」
ヤグルマが感心した様子で言う中、ナデシコはサクラを静かに抱き抱えると、ニコリと笑いながらそれに答えた。
「実は……これはサクラの案なんです」
「サクラの……?」
「はい、どうしたら良いかなと思っていた時、サクラがパソコンを指し示して教えてくれたんです」
「なるほど……」
「トレーナーの悩みをポケモンが解決する……うむ、ナデシコ君達はやはりとても良い関係性だな!」
「ふふ、はい。それで、交流掲示板に書き込んで相談をする件はどうでしょうか?」
「私は賛成です。前に一度、『ツインフローラ』のファンの皆さんと会う機会があったのですが、皆さんとても良い方々ばかりだったので、今回の件も安心して相談をする事が出来ると思います」
「うむ、私も掲示板の件は賛成だ。後は書き込みの件だが……」
「あ、それは私達がやりたいです。やっぱり、ファンの皆さんに訊く以上は、本人が訊くべきだと思うので」
「分かった。それでは、それについては君達に一任しよう」
「ありがとうございます、クロガネ社長!」
「イッブイ!」
「はっはっは、どういたしまして! では諸君、今日も一日元気に頑張っていこう!」
「「はい!」」
「ブイ!」
事務所内にナデシコ達の元気の良い声が響き渡った後、ヤグルマとクロガネがそれぞれの仕事に取り掛かりだし、それを見たナデシコ達が早速掲示板への書き込みを始めようとしたその時、突然「あ……ナデシコさん、ちょっと良いですか?」とヤグルマが仕事の手を止めてナデシコに声を掛けた。
「はい、何ですか?」
「お昼休みの後、少しお時間を頂きたいんですが、よろしいですか?」
「はい、もちろん良いですけど……どうかしたんですか?」
「いえ、旅に出る前にナデシコさん達にポケモンバトルについて色々知ってもらおうと思っているのですが、ナデシコさんとサクラはポケモンバトルの経験がまだあまり無いんでしたよね?」
「あ、はい……私は小さい頃にトレーナーズスクールに通っていたので、少しだけならポケモンバトルをした事がありますけど、サクラはまだバトルをした事が無いですね」
ナデシコの返答にヤグルマは「そうですか……」と軽く俯きながら呟くと、しばらく考え込んだ後に「……まあ、アイツなら大丈夫だよな」と独り言ちてからナデシコの方へ向き直った。
「……分かりました。それでは、本日は現在のナデシコさん達の強さを測るために一度私とバトルをしてみましょう」
「私達がヤグルマさんとですか……!?」
「ブイ!?」
「はい。テストなどで知識を試すだけでも良いですが、やはり実戦でないと分からない事もあると思いますから。なので、お昼休みの後にポケモンバトルをしてみようと思うのですが、ナデシコさん達はそれでも構いませんか?」
「あ、はい……大丈夫です」
「ブイ……」
「分かりました」
ナデシコ達の返事に頷くと、ヤグルマは静かに椅子から立ち上がってからクロガネに声を掛けた。
「クロガネ社長、すみませんが少しだけ外に出て来ます」
「うむ、分かった。気をつけて行ってきてくれたまえ」
「はい」
そして、ヤグルマが嬉しそうな笑みを浮かべながら事務所を出ていった後、ナデシコは少し不思議そうな表情でクロガネに話し掛けた。
「クロガネ社長、ヤグルマさんはどこへ行ったんですか?」
「……ん? ああ、恐らくだが彼の仲間達の元だよ」
「仲間……ですか?」
「ブイ?」
「まあ、正確に言うならば彼が旅をしていた頃の手持ちポケモン達のところだな。ナデシコ君、ヤグルマ君のポケモンの中で君が知っているのはたしかドダイトスのランドだけだったかな?」
「あ、はい……」
「前にも言ったが、彼はかつてこの『シンオウ地方』を旅していたトレーナーで、シンオウリーグにも出場していた程の実力者だ。だが、何度も挑戦しても優勝を飾るまでには至らず、その内に自分の腕では優勝をする事が出来ないと思うようになった結果、もういい加減旅を止めて自分のポケモン達と静かに暮らせる場所を探そうという気になったそうだ。そして、その準備のためにランド以外のポケモン達を知り合いの育て屋のところに一度預け、その旨を親御さん達に伝えるために故郷であるこの『ソノオタウン』に帰ってきたところで私達と出会ったと前に言っていたよ」
「そうだったんですね……」
「まあ、真偽の程は分からないが、出ていく時の彼の顔を見るに恐らく私の予想は合っていると思うよ。あそこまで嬉しそうな顔をしている彼を見るのは、『ツインフローラ』の初ライブが決まった時やファンとの交流会から帰ってきた時以来だからね。そこから考えるに、今の彼にとってはかつて旅をしていた頃のポケモン達と同じくらい『ツインフローラ』という存在は大切な物になっているのかもしれないねぇ……」
ヤグルマが出ていった事務所の入り口を見ながらクロガネは少し嬉しそうな様子で呟いたが、すぐに気持ちを切り替えた様子でナデシコ達に声を掛けた。
「さて、この話はとりあえずおしまいにして、私達は私達が出来る事をしよう」
「はい、分かりました!」
「イッブイ!」
ナデシコ達の返事に満足げにクロガネが頷き、再び自分の仕事に取り掛かり始めた後、ナデシコ達は自分達用に用意された机へと向かい、その上に置かれたパソコンの電源を入れてから、メモ用紙と筆記用具を用意した。そして、手慣れた様子で『レインボー』のホームページを開くと、画面上にはその名前の通り、七色で彩られたホームページが映し出された。
「さて……それじゃあ早速交流チャットに──って、あれ……これって……?」
ナデシコの目に映った物、それは『可憐な花々の虹色ライブアドベンチャー』と書かれた小さなバナーだった。そして、ナデシコがそれをクリックすると、画面にはそれぞれの名前の花をモチーフにした衣装を纏ったナデシコ達の画像や旅をする『ヤマト地方』の紹介、配信旅の目的などが表示された。
「社長達、こんなページまで作ってくれてたんだね……」
「ブイ……ブイ、イッブイ」
「……うん、そうだよね。ここまで応援してもらってるんだもん。社長とヤグルマさんの期待には絶対に応えないとだよね!」
「ブッブイ!」
「よぉーし……それじゃあファンの皆さんから意見を貰うために交流チャットにアクセスしに行こう!」
「ブイ!」
サクラと笑い合った後、ナデシコはホームページのトップページへ戻り、ホームページ内にある交流チャットのリンクをクリックし、画面に『フローラ交流チャット』という名前とそれにログインをしているメンバーの名前、IDとパスワードを打ち込むスペースが表示されると、ナデシコは慣れた様子でアクセスするためのIDとパスワードを入力した。すると、『ナデシコさんがログインしました』というメッセージが表示され、ナデシコはやる気に満ちた様子でファン達への問いかけの文章を打ち始めた。
『皆さん、おはようございます。『ツインフローラ』のナデシコです。突然なのですが、皆さんに一つ質問をしてもよろしいでしょうか?』
すると、画面上にナデシコが書き込んだ内容に対するファンからの返事が瞬時に表示された。
『ナデシコさん、おはようございます! 僕達で良ければ全力で答えさせてもらいますよ!』
『いつも『ツインフローラ』に元気を貰っている分、答えられる限り答えさせてもらうぜ!』
『ナデシコさん、サクラさん、どうぞ遠慮無く質問をなさって下さい』
「皆さん……ふふっ、こう言ってもらえるなんて私達は本当に幸せ者だね、サクラ」
「ブイ!」
『皆さん、ありがとうございます。それで質問なのですが、皆さんは私達がポケモンリーグの優勝を目指して『ヤマト地方』を旅する事はもうご存じでしょうか?』
『もちろん!』
『という事は……質問の内容もそれに関する事で良いのかな?』
『はい。旅の目的はポケモンリーグの優勝と優勝記念ライブをする事ではあるんですが、優勝記念ライブやこれからのライブのパフォーマンスの事も考えたら、どんなポケモンを捕まえていったら良いのかなってちょっと迷ってしまったんです……』
『ああ、なるほど……』
『たしかにそこは問題ですね……』
『はい……なので、もしも皆さんが『ヤマト地方』に棲息しているポケモンについて何かご存じであれば、オススメのポケモンをお伺いしたいんです。もちろん、オススメして頂いたポケモンを必ず捕まえられるわけではないですが、配信旅……『可憐な花々の虹色ライブアドベンチャー』をする上で、下調べなどの参考にしたいんです。どうかよろしくお願いします』
『『ヤマト地方』に棲息しているポケモンかぁ……あの地方にはたしか300種類くらいのポケモンがいるから、そこから絞るとなるとなぁ……』
『そうですよね……』
ナデシコからの書き込みにファン達が少し困ったような反応をしていたその時、『……あ』とファンの一人が何かを思いついたような書き込みをしたかと思うと、そのファンからの書き込みが続けて画面に表示された。
『たしかなんですが……『ヤマト地方』にはアシマリが棲息していると前に聞いた事があります』
『アシマリ……たしか『アローラ地方』の初心者用ポケモンの一匹だったよな、
『はい。アシマリにステージ上でダンスをさせるのは少し工夫が必要かもしれませんが、最終進化系のアシレーヌは画になるビジュアルですし、水/フェアリータイプという事で、相性の面でも優れていますから良いんじゃないかと思うんです』
『なるほど……貴重なご意見をありがとうございます、シードさん』
『いえいえ』
『けど、それなら今度はダンスが得意そうなポケモンが欲しくなるけど、それに該当しそうなポケモンって何がいるのかな……?』
ファンの一人からそんな疑問が上がったその時、画面に『オウルさんがログインしました』というメッセージが表示され、そのメッセージにナデシコは嬉しそうな笑みを浮かべた。
「あ、オウルさんだ……! ここ最近、チャットでもライブでも見掛けなかったから、何かあったのかと思ってスゴく心配してたんだよね……」
「イーブイ!」
「ふふ、サクラもオウルさんの事は好きだから嬉しいよね。さて……それじゃあオウルさんにも意見を訊いてみようかな?」
そして、ナデシコは嬉しそうな笑みを浮かべたまま再び書き込みを始めた。
『オウルさん、お久しぶりです!』
『はい、お久しぶりです、ナデシコさん。皆さんもお久しぶりです』
『久しぶり、オウル』
『最近、チャットにもライブにも顔出してなかったけど、何かあったのか?』
『あ、はい……実は最近、私が住んでいる地方での一人旅を始めてまして、それでライブはもちろんの事、チャットにも中々顔を出せずにいたのです。本当に申し訳ありませんでした』
『いえ、それなら仕方ないですよ。旅、楽しんできて下さいね』
『……はい、ありがとうございます。ところで……ログを読んできたのですが、今はナデシコさん達が『ヤマト地方』で旅をする上でオススメのポケモンを探しているところだったんですよね?』
『はい。オウルさんはどんなポケモンが良いと思いますか?』
『そうですね……あ、そういえば……』
『ん、何か良いポケモンでもいたのかい?』
『はい。ただ……噂として聞いた程度なので、信憑性はあまり無いのですが、どうやら『ヤマト地方』でメロエッタを見掛けた人がいるみたいなのです』
『メロエッタって……『イッシュ地方』の伝説のポケモンだよな……』
『はい、その通りです。ノーマル/エスパータイプの『ボイスフォルム』と『いにしえのうた』によってフォルムチェンジをしたノーマル/格闘タイプの『ステップフォルム』、この二つを持つメロエッタならナデシコさん達の旅でもライブでも大活躍してくれると思います。ただ……先程も言ったようにあくまでも噂程度なので、本当にいるのかすら分かりませんが……』
『いえ、それでも私にとっては本当に貴重な情報です。オウルさん、本当にありがとうございます!』
『あ、いえ……ナデシコさんのお役に立てたようでなによりです。ナデシコさん、配信旅頑張って下さいね。私も応援しています』
『はい、ありがとうございます!』
オウルからの激励に答えた後、ナデシコは用意したメモ用紙にここまで上がったポケモン達の名前を書いた。そして、再び画面に目を向けると、ファン達と色々な会話をしながら次々とオススメのポケモンを訊いていき、メモ用紙が5枚ほど書いた字で真っ黒になった頃、後ろから肩を軽く2回ほど叩かれた感触でナデシコはハッとし、ゆっくりと後ろを振り返った。すると、そこには手に青い弁当箱を持ちながら苦笑いを浮かべているヤグルマの姿があった。
「……あ、ヤグルマさん。お帰りなさいです」
「はい、ただ今戻りました。ファンの皆さんとの交流が楽しいのはわかりますが、少し休憩しませんか?」
「え……?」
ヤグルマの言葉を聞いて壁掛けタイプの時計に視線を向けると、時計の針は12時を差していた。
「あ、もうこんなに時間が経ってたんだ……」
「はい。なので、ここらで少し休憩にしましょう」
「わかりました。それじゃあその前に……」
そう言うと、ナデシコは画面に視線を戻し、ゆっくりと文章を打ち始めた。
『皆さん、本当にありがとうございます。皆さんから頂いたポケモンのアイデアは同行者であるマネージャーのヤグルマさんや社長にも見てもらい、話し合いをした上で、どのポケモンを捕まえる事にするかを決めようと思います』
『わかりました!』
『どのポケモンがナデシコちゃん達の仲間になるか今から楽しみにさせてもらうぜ!』
『そうですね。あ、そういえば……新しいポケモンが加わったら、ユニット名も『ツインフローラ』から変えるんですか?』
「ユニット名……ヤグルマさん、どうしましょうか?」
「そうですね……私の中では『ツインフローラ』自体は残し、他のポケモンと組んだ時だけ別のユニット名にするつもりでしたよ」
「なるほど……『今、ヤグルマさんから聞いたんですが、ヤグルマさんの中では『ツインフローラ』は私とサクラが組んだ時だけのユニットとして残し、他のポケモンと組んだ時だけ別のユニット名にする予定みたいです』」
『『ツインフローラ』は残るんですね……それは良かった』
『やっぱり、『ツインフローラ』は俺達にとっても特別だからな』
『そうですね。でも、他のポケモンと一緒に舞台の上で歌って踊るナデシコさんも今から楽しみです』
『そうですなぁ……』
『ふふ、『ツインフローラ』の事を特別と言って頂いてとても嬉しいです。それでは、キリも良いのでそろそろ一度落ちますね。皆さん、本当にありがとうございました』
それに対してファン達が様々な言葉を掛ける中、ナデシコはそれを見て嬉しそうな笑みを浮かべながらチャット画面を閉じ、そのままパソコンをシャットダウンすると、様々なポケモンの名前が書かれたメモをチラリと見た。
「それにしても……結構書いたよね、サクラ」
「ブイ……ブイ、ブッブイ?」
「ん? この中の何匹を採用するのかって?」
「ブイ」
「そうだね……ヤグルマさん、手持ちポケモンの最大数はたしか6体でしたよね?」
「ええ。ですが、中には捕まえたポケモンを知り合いに預かってもらったりして、時と場合によって手持ちポケモンを入れ替えるトレーナーもいるようですよ」
「そうなんですね。そうなると、私の場合は……」
「事務所に預けるのはちょっと難しいので、私の知り合いの育て屋に預かってもらいましょうか。彼なら信用出来ますし、彼も『ツインフローラ』のファンらしいので、喜んで預かってくれますよ」
「『ツインフローラ』のファン……もしかして、今までライブに来てくれてるファンの皆さんの内の誰かだったりしますか?」
「あ、いえ……ファンになったのはつい最近で、この前のライブの映像を私が見せたら、すっかりファンになったようです」
「なるほど……」
「まあ、預ける時が来たら、またこの話はするとして、今はお昼ご飯を食べながらどのポケモンを捕まえる事にするかを決めていきましょうか。クロガネ社長、よろしいですか?」
「うむ、もちろんだ」
「ありがとうございます。それでは、早速お昼ご飯にしましょうか」
「はい!」
「ブイ!」
「ああ」
ヤグルマの言葉に全員が揃って返事をした後、ナデシコ達は応接用に使われているガラス製のテーブルにそれぞれの昼食を置き、ソファーに静かに座ってから昼食を食べながら捕まえるポケモンの話し合いを始めた。
一時間後、別の紙にまとめられたポケモンの名前のリストを見て、クロガネは満足げに頷いた。
「……よし、それでは『ヤマト地方』で捕まえるのは、とりあえずこちらにまとめたポケモン達にしよう」
「はい!」
「ブッブイ!」
「わかりました」
「まあ、他にも現地で出会ったポケモンの中でこれだと思ったポケモンがいれば、仲間に加えてくれて構わない。多ければ多いほど、大変にはなってくるが、パフォーマンスの幅も広がるからな。そして、捕まえたポケモンが6体以上になった時は、ヤグルマ君の知り合いの育て屋に預かってもらう。それで良かったかな?」
「はい。まだ確認は取っていませんが、恐らく彼なら喜んで預かってくれると思います」
「わかった。さて……そろそろ
「あれ……あ、私達とヤグルマさんの練習バトル!」
「ブイ!」
「ふふ……ナデシコさん、サクラ、準備は良いですか?」
「あ、えっと……実はまだ心の準備が出来てないというかなんというか……」
「ブイ……」
「ははっ、大丈夫ですよ。たぶん、心の準備が出来てないのは
「アイツ……もしかして、私達が戦う相手の事ですか?」
「ええ。アイツは『ツインフローラ』──特にサクラのファンですから、憧れのアイドルと戦うとあってスゴく緊張してましたよ」
「サクラのファン……ふふっ、良かったね、サクラ」
「ブイ!」
サクラが嬉しそうな鳴き声を上げる中、ヤグルマは笑みを浮かべてサクラを撫でながらナデシコ達に話し掛けた。
「どうやら、少しは緊張が解れたようですね。さて……それではそろそろ行きましょうか」
「行きましょうかって……あの、どこへ?」
「ポケモンセンターのバトルフィールドです。アイツらの修練のために『レインボー』にもいつかはバトルフィールドを作りたいんですが……その話はまたいつかする事にして、今はバトルフィールドに行く事にしましょうか」
「あ、はい……」
返事をしながらナデシコがヤグルマと共に静かに立ち上がると、それと同時にクロガネも立ち上がり、自分の机に近づいた。そして、机の引き出しからWebカメラを取り出し始めると、それを見たヤグルマは不思議そうに首を傾げた。
「クロガネ社長、そのカメラは……それに、ノートパソコンや椅子は何のために?」
「なに、せっかくの君達のポケモンバトルだからな。記録に残したくなるのは当然だろう?」
「えっ、記録に残すんですか!?」
「うむ、そうだが……嫌かね?」
「嫌ではないですけど……更に緊張するというか……」
「はっはっは! 人気になったらもっと色々な場面で撮られるようになるんだ。今の内から慣れておきたまえ!」
「は、はい……」
「ブイ……」
「では皆、早速行くとしようか!」
そのクロガネの言葉に全員が頷いた後、ナデシコ達は『レインボー』を出て、ポケモンセンターのバトルフィールドへと向かった。そして、バトルフィールドに着くと、クロガネが撮影の準備を始める中、ナデシコとヤグルマはそれぞれの位置に着き、バトルをする準備を始めた。
「すぅー……はぁ……うん、気持ちはすっかり落ち着いたかな。サクラは?」
「ブイ、ブイブッブイ!」
「うん、サクラも大丈夫みたいだね。ヤグルマさん、私達は準備OKです!」
「わかりました。クロガネ社長、私達はいつでもバトルを始められます」
「了解だ──よし、私も準備完了だ」
「わかりました。それでは、これより特訓バトルを開始します。使用ポケモンは一体、どちらかが先に戦闘不能になった時点でバトルは終了とします」
「わかりました!」
「ブイ……!」
ナデシコとサクラが同時に返事をすると、ヤグルマはそれに対して頷き、そのままクロガネの方へと顔を向けた。
「クロガネ社長、バトル開始の合図をして頂けますか?」
「うむ、もちろんだとも。では皆、準備は良いかな?」
「はい!」
「ブイ!」
「いつでも大丈夫です」
ナデシコ達の返事に頷くと、クロガネはカメラを回しながら大声を上げた。
「……では、バトル……スタート!」
配信第1回、いかがでしたでしょうか。次回はナデシコVSヤグルマのバトルで、ヤグルマが繰り出すポケモンは何か。これを想像しながら次回を待っていて頂けると幸いです。
そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けるととても嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。