それでは、プロローグを始めていきます。
プロローグ 高め合う二色の電撃
海の化身と言われる『カイオーガ』と大地の化身と言われる『グラードン』の戦いに関わる伝説などが伝わり、ポケモンの強さでは無く魅力を競い合う『ポケモンコンテスト』が盛んな地方、『ホウエン地方』。そんな『ホウエン地方』の中央に位置する『キンセツシティ』のポケモンセンターのバトルフィールドにて今まさにある人物達によるポケモンバトルが行われていた。
「よーし、ルビア! そのままガンガン攻めていこう!」
「プラプラ!」
「そしてアオト、サポートはいつも通り任せたよ!」
「はいはい、それじゃあ僕達はいつも通りサポートに徹していこうか、サフィール」
「マイマイ」
明るい赤色のポニーテールの少女とアオトと呼ばれた暗い青色のショートヘアの少年は、それぞれのポケモン達に声を掛けると、軽くアイコンタクトを交わしてからポケモン達へ指示を出した。
「サフィール、ルビアに『てだすけ』」
「マイ!」
「そしてルビアは、ライボルトに向かって『でんこうせっか』!」
「プラ!」
サフィールと名付けられた頬に『-』の模様が入った青色の耳とクリーム色の体のポケモン――マイナンは自分と同じような姿をしたルビアと名付けられたポケモン、プラスルの方へ体を向けると、体にグッと力を入れた。すると、サフィールの体からルビアへ向かってキラキラとした光が放たれ、その光を纏ったルビアは目にも留まらぬ速さで向かい側に立っているライボルトという名の青色のポケモンへ向かって突進していった。そして、ルビアがラクライの目の前まで迫ったその時、ライボルトのトレーナーである茶色の上着を羽織った白髭の老人はニヤリと妖しい笑みを浮かべた。
「……まあ、それが定石じゃからな。ライボルト、『でんこうせっか』を避けた後に『スピードスター』をお見舞いしてやれ!」
「ライ!」
ライボルトはルビアの『でんこうせっか』を軽々と跳び越える事で避けてみせると、バトルフィールドに響き渡るほどの遠吠えを上げながらルビア達へ向かって星の形の光線を放った。
「あ、やっば……! アオト、お願い!」
「……了解。サフィール、『ひかりのかべ』」
「マイマイ」
アオトの指示を受け、『スピードスター』が近付いてくるのをしっかりと確認しながらサフィールは『ひかりのかべ』を自分達の周りに張った。すると、『スピードスター』は次々と『ひかりのかべ』へぶつかっていったが、『ひかりのかべ』の効果によってその威力は軽減され、ルビア達がなんて事無い様子で再びライボルトへ向かって戦闘の態勢を取ると、ライボルトのトレーナーは大きな笑い声を上げた。
「わっははは! 『スピードスター』に対して『ひかりのかべ』で凌ぎきるというのはとても良い判断じゃ! じゃが、守ってばかりでは勝てんぞ、二人とも!」
「分かってますよ、テッセンさん! ねっ、アオト!」
「そうだね、アカリ。ここからどうにか挽回していこう」
「うん!」
アオトの言葉にアカリは大きく頷きながら答えた後、再びルビアへと技の指示を出し、アオトはそれに合わせる形でサフィールに指示を出した。そしてその後も様々な技の応酬が続き、両方のポケモン達の顔に疲れの色が見え始めたその時、「……うむ、ここまでとしよう」というテッセンの声でアカリとアオトは緊張が解けた様子で同時に息をつくと、自分達のポケモンが嬉しそうに走ってくるのを見ながらアカリがポツリと呟いた。
「はあ……今日もテッセンのポケモンを倒す事が出来なかったなぁ……」
「まあ、こればかりはしょうがないよ。新人トレーナーの僕達二人とジムリーダーのテッセンさんじゃそもそも経験や知識が違うんだからさ」
「それはそうだけど……でも、やっぱり悔しい物は悔しいよ……」
「……まあね。でも、だからこそこれからも全力で頑張っていくしかないよ。僕達の夢を叶えるには、もっともっと強くならないといけないからね」
「……そうだね」
アオトの言葉に答えながらアカリは足元にいたルビアを優しく抱き上げると、「お疲れさま」と微笑みかけた。この二人のトレーナー、アカリとアオトは『キンセツシティ』出身の双子の兄妹で、アカリが常に元気いっぱいな溌剌とした少女なのに対し、アオトは常に冷静な落ち着きのある少年、とその性格は全くの真逆だった。しかし、性格は真逆でも二人の息は常にピッタリであり、ケンカなども殆どした事が無い程、二人の仲はとても良好だった。そのため、パートナーポケモンであるルビア達を手に入れた際、お互いを相手にポケモンバトルをしたが、お互いの考えがすぐに分かってしまうために全く勝負が付かなかったため、二人はこれではバトルの特訓にならないと感じ、どうしたら良いかを話し合った。そして、その末に彼らが行き着いたのが一人のトレーナーがポケモンを二体同時に出したり、二人のトレーナーがタッグを組んで行ったりするバトル方式である『ダブルバトル』だった。ダブルバトルは主に上記の方法で行われるため、状況を見極めながら一人で二体のポケモンに指示を出したり、相方との息を合わせたりする必要があるなど一般的に行われている『シングルバトル』よりも『様々な意味』で難しいバトル方式と言えた。しかし、彼らにとってはそれは全く苦にはならず、『シングルバトル』よりも合っていると感じた事で、彼らはダブルバトルを専門としたトレーナーとなり、いつしか彼らの夢は最強のダブルバトルトレーナーになっていた。
そして、アカリとアオトがそれぞれのパートナーポケモンの事を労っていると、対戦相手を務めていたテッセンがライボルトを伴って彼らへと近づき、辺りに響き渡るほど大きな笑い声を上げた。
「わっはははは!! さっきの勝負はとても良い勝負だったぞ、二人とも! この前相手をした時よりも確実に成長しているようじゃし、お前達にプラスルとマイナンを勧めた甲斐があったという物じゃ」
「ありがとうございます、テッセンさん。でも、やっぱりテッセンさんのポケモンを倒すまではいかなかったですけどね……」
「はっはっは! そこは精進あるのみじゃぞ、アカリ! 最強のダブルバトルトレーナーを目指すのならば、まずは『トクサネシティ』のフウとランを倒す必要もあるしな!」
「……やっぱりそうですよね」
「うむ! だからこそ、これからも二人でしっかりと修行に励んでおけ。お前さん達の夢を叶えるためにもな!」
「「はい」」
テッセンの言葉に二人は同時に返事をした後、服のポケットから『オボンのみ』を取りだし、肩に乗せたそれぞれのパートナーポケモン達へと手渡した。そして、二匹が嬉しそうに『オボンのみ』を食べる様子を見ながらアカリはうーんと唸りながら顎に手を当てた。
「こうなると、やっぱり私達も旅に出た方が良いのかな……? 一応、私達も旅に出る事が出来る年齢なわけだし、旅の中で新しい戦術なんかも見つけた方がこれからのためになる気がしてきたんだよね……」
「旅か……それは良い考えだと思うけど、旅に出るためにはそれなりの準備が必要になるし、他の皆が旅立っていったタイミングで旅立たない事にしたのに、今更旅に出るっていうのもなんかアレじゃないかな……?」
「やっぱりそうだよね……でも、このままテッセンさんに手伝ってもらってばかりなのも何だか申し訳ないしね……」
「そうだよね……」
アカリとアオトが同時に小さな溜息をついていたその時、それを見ていたテッセンはニヤリと笑いながらアカリ達に話し掛けた。
「それなら……あえて別の地方に旅に出るというのはどうじゃ? 別の地方ならば、他の奴らには会う事も無いじゃろうし、他の地方のポケモンとも出会えるから、このホウエンにいるだけじゃ見つからん戦術も見つかるかもしれんぞ?」
「他の地方での旅……つまり、『カントー地方』とか『ジョウト地方』とかに行って旅をするって事ですよね?」
「そういう事じゃな。別の地方にしかおらんポケモンももちろんおるわけじゃし、もし本当にそうする気があるのならそうしてみるのも手じゃと思うぞ?」
「別の地方、か……私はアオトが一緒なら別の地方に行くのは問題無いけど、問題があるとすれば……」
「……母さん達の説得、か……。まあそうなると、この件についてはとりあえずそれをどうにかしてからになりそうだね」
「だね……はあ、母さん達の説得は絶対に苦労しそうだなぁ……」
「確かにね。まあ、どこの地方に何のために行きたいかが伝われば、母さん達ももしかしたら首を縦に振ってくれるかもしれないし、とりあえず頑張ってみようよ、アカリ」
「アオト……うん、そうだね。やる前から暗くなっててもしょうがないし、まずはやってみないとだよね!」
「うん。だけど、まずは旅をする地方を決めないとだね」
「あ……それもそっか。うーん……でも、どこが良いのかな……?」
アカリは顎に手を当てながらしばらく考えていたが、突然テッセンの方へ視線を向けると、小首を傾げながらテッセンに話し掛けた。
「テッセンさん、どこかオススメの地方ってありますか?」
「オススメの地方か……さっき例として挙げていた『カントー地方』や『ジョウト地方』ももちろんオススメじゃが、かなり遠くになるが『シンオウ地方』も捨てがたい……」
「それに『イッシュ地方』や『カロス地方』、『アローラ地方』もありますよね」
「うむ……どの地方にもそれぞれ良いところがあるから、その中でも特にオススメの地方となると……」
軽く空を見上げながら考え込んでいたその時、「……おっ、そうじゃ!」と何かを思いついた様子で大声を上げたため、アカリ達は驚きから一斉にビクッと体を震わせた。
「テ、テッセンさん……流石にその音量はビックリしますって……」
「すまんすまん! お前さん達にちょうど良さそうな地方を思い出したもんで、思わず大声を上げてしまったわい」
「僕達にちょうど良さそうな地方……それってどこなんですか?」
「うむ、それはな……『ヤマト地方』じゃ!」
「「『ヤマト地方』……?」」
「プラ……?」
「マイ……?」
アカリ達とルビア達が同時に不思議そうな表情を浮かべる中、テッセンは「うむ」と大きく頷きながら『ヤマト地方』についての説明を始めた。
「『ヤマト地方』というのは、『シンオウ地方』から南に行ったところにある地方で、この地方にはおよそ400種のポケモンが生息しているといわれておる」
「およそ400種……でも、どうしてそんなに多くのポケモンが生息しているんですか?」
「そうじゃな……以前聞いたところによると、『ヤマト地方』には昔から腕試しや観光などで様々なから多くのトレーナー達が訪れているんじゃが、そういった者達の中でそれぞれの地方から連れてきたポケモン達を逃がす者達がおったらしく、そういったポケモン達が元々いたポケモン達の中で生き残り、次々と繁殖をしていった結果、今のような生態系になったらしい。そのため、この地方でしか見られないポケモンなどはおらんが、その分本来ならば他の地方でしか見られないポケモンとも出会える事から、今でも色々な目的で訪れる物は多いようじゃな」
「約400種のポケモン達が生息する地方、かぁ……! うん、何だか今からワクワクしてきたかも! ねっ、アオト!」
「確かにそうだけど……まだそこに行くとは決めたわけじゃ――」
「ううん、私的にはこの地方に行くのが良い気がする! アオトだってそう思うでしょ?」
「それは……そうだけど……」
「それに、この地方に行く事を決めたら、後は母さん達の説得をすれば良いわけでしょ? だったら、もう安心だよ。だって、アオトが一緒ならどんな問題だって立ち所に解決出来るから。ね?」
「アカリ……」
ワクワクした様子で目をキラキラとさせるアカリをアオトは半ば呆れ気味に見ていたが、やがて「……仕方ないか」と小さく笑いながら独り言ちると、アカリにニコリと微笑みかけた。
「分かったよ、アカリ。こうなったら僕も全力で協力するよ」
「ふふっ、ありがと。やっぱりアオトは頼りになるなぁ……♪」
「それはどうも」
嬉しそうなアカリに対してアオトは落ち着いて答えた後、テッセンの方へ視線を向け、丁寧に一礼をした。
「テッセンさん、『ヤマト地方』の事を教えて頂き本当にありがとうございます」
「はっはっは! これくらい気にする必要は無いぞ、アオト! 未来有望なトレーナー達の手助けをするのもジムリーダーの務めじゃからな。
……アカリ、アオト、旅を続けていくとお前達には様々な事が待っておる。しかし、どんな事が待っていようとも協力し合う事を忘れるでないぞ?」
「「はい!」」
アカリ達は同時に元気よく返事をした後、顔を見合わせながらニコリと笑い合った。
「アオト、最強のダブルバトルトレーナー目指してこれからも頑張っていこうね!」
「うん!」
微笑みながら固く握手を交わした後、アカリ達は晴れ渡る空の下でとても楽しそうな笑みを浮かべながら旅や両親の説得の件についての話し合いを始めた。
いかがでしたでしょうか。この章でメインとなるキャラは基本的にダブルバトルが専門になるので、他の章とは違ってバトルもダブルバトルが多くなると思いますが、分かりづらくならないように気をつけながら書いていくつもりですので、これからも応援の程よろしくお願いします。
そして最後に、今作品への感想や意見、評価などもお待ちしていますので、書いて頂けるととても嬉しいです。よろしくお願いします。
それでは、また次回。