姉さんと間違われて役得だと思うのは間違っているだろうか 作:苺ノ恵
某サマーフェスの周回優先で投稿していく予定です。
それではどうぞ
「オラリオは今日も晴天です…と」
「…急にどないした、アリスたん?」
私の独白に主神であるロキが律義に疑問符を浮かべる。
「ここ数日雨が降ってないでしょ?洗濯物は乾くけど、作物まで乾いちゃったら堪らないって思って」
「アリスたんのいう作物って、ウチらの思い浮かべとるような代物(しろもん)と、ちょっとばかし違うような気がしとるんやけど気のせいやろうか?」
本日最後の報告書に、フィン名義でサインを施し決済用の棚に紙の束を置く。
ロキが二本目の
神聖語ではアイスティというらしいが、__紅茶は温かい飲み物だ__という固定概念の払い切れない某王族エルフがあまりこの飲み方を好まないためか、アイスティという単語はファミリア内でそこまで浸透していない。
レフィーヤはこれもありだと言ってくれているのでダメだというわけでは無いだろうが、まだまだ改良の余地があるようだ。因みにロキは__うへへ~、アリスたんの淹れてくれたお茶や~…はっ!!?もしかしてこれって…間接キッス!!!!?__と、変態的な手つきで容器を撫でまわしていたかと思えば、急に鼻息を荒くして切れ長の眼を目一杯広げ容器の縁を凝視し始めたので、何となく不快感を覚えた私はロキから容器を取り上げ中身を一気に飲み干し、新しい容器に注いだアイスティーをロキに渡した。
途端にこの世の終わりを見たかのような表情になったロキは、アイスティーをチロリと舐めたら直ぐに上機嫌となった。お気に召したようで何よりだ。お砂糖を奮発したのが良かったのかな?機嫌の直った主神の対面に腰を下ろし、今朝焼いておいたクッキーをお茶請けとして出す。
「確かに食用ではないものもあるけど、畑の半分は今ロキが口にしてるものを作ってるのよ?」
「…まあ、この味を出されたら文句も言えへんけど…ホームを爆破するのだけは勘弁してな?」
「それはその……ごめんなさい…」
「ただの葉っぱが実は危ないもんだと知った時はウチも心底驚いたけど…アリスたんは無茶する子やないし、善悪の判断がつくことはよう分かっとる。何より勉強してる時のアリスたんの顔は生き生きしとるからな。アリスたんはアリスたんの思ったようにすればええ。その方がウチも嬉しいしな」
「ロキ…ありがとう」
「__でなぁアリスたん?一つ相談なんやけど…このアイスティーにちっとばかしエール足らしたら最高にうまい飲み物になると思うんやけど…どうやろ?」
「別にやってもいいけど、それは皆が帰ってきた後の宴の席でね。…心配なのは分かるけどさ」
今回の遠征はきっと壮絶なものになっている。
これまでの未到達領域への攻略で、仲間を失わなかった試しがない。
イコルで私たちの存在を感じ取れるロキは、私たちの命が途切れたことを誰よりも早く察知する。…解ってしまう。
その心労は、たとえ神であってもお酒に縋らざるをえないほどの苦しみなのだろう。
自覚がなかったのか、あるいは分かっていたからこそ敢えて明るく振舞っていたのだろうか。少し何かを飲み込むような仕草をしたロキは、そっと容器を机に置くと立ち上がり、
「覚悟しとったことやけど…やっぱし、これだけは何度経験しても慣れんなぁ…。みんながみんな、フィンたちみたいに強いわけやない。その強い子たちにだって、どうしようもないことはある。…解っとったことなんやけどな」
私は何も答えない。
言ってもどうしようもないことだから。
例え自分が命を失っても納得はできると思う。
私たちは冒険者なのだから。
でも、自分が死ぬことで生きてる誰かを悲しませるのは、どうしようもないほどに哀しい。
それでも、私は、私たちは、冒険を辞めない。
だから強くなるしかない。
自分を、大切な人を、みんなを守るために。
私の心の独白を知ってか知らずか、ロキは私に背を向けたままそっと声を出す。
「ごめんな、アリスたん…。本当はアリスたんが一番__」
「ロキ」
大きな声を出したわけではない。
魔法を使ったわけでもない。
私の声はロキの声を遮り、辺りを静寂が覆う。
私は姉譲りの、しかし姉にはないどこか影を持った微笑を浮かべて主神に問う。
「紅茶、おかわりどう?」
「……うん。頂くわ」
窓から差し込む夕日が、執務室の家具を焼き、影を伸ばす。
室内に漂う香りは優しく鼻腔をくすぐり、ほどけては溶けていく。
私たちは、お互いが互いに言いたかったことを飲み込むかのように、そっと紅茶を傾けた。
まず一言__アリスって誰?
疑問は多々あるけどその答えは次回に。
因みに作者は定期的にシリアス書いてしまう症候群です。
日常回メインで書こうと思っていますが発作が出た時は悪しからず。