姉さんと間違われて役得だと思うのは間違っているだろうか   作:苺ノ恵

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後悔はしてない

きっと、しちゃいけないんだ…

それではどうぞ


おもかげのなか

 

 

 

 私は姉さんみたいに強くない。

 

 いや、そう言って何度か団員のみんなから__嫌みか!!__と言われたがそういう意図で言ったわけじゃない。

 

 刃を合わせれば嫌でも分かる。

 

 同じレベルなのにどうしてこんなにも重い一撃をあんなにも早く打ち込めるんだと思った。

 

 私も護身用兼近接用にナイフを装備しているが、正直剣を握った姉には怖くて近づけない。

 

 私には精々離れたところからナイフをチビチビと嫌がらせのように投げることしかできない、冒険よりも研究のほうが大好きな陰険女だ…。

 

 どうしてわざわざ危険を冒してまで敵に近づいて、武器で攻撃しないといけないのだろうか?

 

 私はずっと疑問だった。

 

 私たち冒険者はずっとモンスターと同じ土俵で戦ってきた。

 

 でも、それって決められた・守らなければならない規則なのかな?

 

 安全且つ確実にモンスターを屠れる方法があるのなら、その道を探求することが知性を有した私たち人類にとっての正しい選択ではないのだろうか?

 

 冒険することと命を天秤にかけて、私の中で傾いたのは断然命だ。

 

 命と比べれば、汚い言い方をすると【冒険なんてクソくらえ】だ。

 

 口にしたらきっと非難轟轟だろうから言えないけど。

 

 だから私は冒険したいとは思わない。

 

 きっとその想いの差が、私と姉さんの力の差に直結しているのだと思う。

 

 それでも私は冒険者になった。

 

 私は姉さんみたいに強くない。

 

 姉さんみたいに、強さを求められない。

 

 それでも私は強くならなければならなかった。

 

 強くならないと、姉さんまで、私を置いて行ってしまいそうだったから。

 

 だから私は弱いまま、姉さんを守るための、姉さんの隣に立てるだけの強さが欲しい。

 

 そうして私の辿り着いた答えが___

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

「…よいしょ~」

 

「__あれ?アリスさん、お出かけですか?」

 

 あ…団員の子に、立ち上がる時に無意識に出た、おばさんみたいな掛け声聞かれた。どうしよう恥ずかしい。

 

 でも、あからさまに否定するのはもっと恥ずかしいから今のは無かったことにしよう。うん。

 

「うん、ちょっと試し打ちにね」

 

 私はバッグの他に、肩に下げたモノを指し示す。

 

「…変わった形の杖ですね?しかも、金属製で…。あの、良かったら俺も一緒についてって___」

 

 突然ゴンッと、鈍い音が鳴る。

 

 音の発生源は団員の頭頂部からだ。

 

 悶絶しながら涙目で蹲る男の子の団員に、世話役である女の子の団員が強い口調で窘める。

 

「こら!!今日は私とホームで訓練っていったでしょうが!!なにサボろうとしてんのよ」

 

「こ、これは後学のためにと…」

 

「アンタみたいな勉強嫌いな馬鹿が何言ってるのよ。どうせ見ても分かんないんだから、そんな暇があるなら一回でも多く剣を振りなさい。ほら、今日の号令はアンタでしょ?」

 

「あ…マズッ!?すいませんアリスさん!自分はこれで失礼します!!」

 

 全速力で去っていくヒューマンの男の子。

 

 彼の姿が完全に見えなくなってから、女性の団員が私に向かって頭を下げる。

 

「申し訳ありませんアリスさん…私の管理が行き届いてないばかりに…」

 

「ううん、大丈夫だから。それよりも、助けてくれてありがとね」

 

 彼女のレベルは3で、私の事情についてもある程度は理解してくれている。

 

 正直、あの子の申し出をどう断ろうかと頭を悩ませていたところだ。

 

「いえ、このくらいなんでもありません。私がお力添えできることは何もありませんけど…どうかお気を付けて」

 

「うん、ありがと。じゃ、行ってきます。ロキをよろしくね」

 

「承りました。行ってらっしゃいませ」

 

 踵を合わせ恭しくお辞儀をする。

 

(やっぱり慣れないなあ…こういうの…)

 

 彼女は私よりも年上なのだからもっと肩の力を抜いて接して欲しいんだけど、ロキファミリアの幹部としてある程度の権力のある私を、彼女たちは若干神聖視してる節がある。

 

 それでも無理やり接し方を変えろというのも可哀そうだし、私自身そんなに強く言えない。

 

 どうしたものかと悩んでいる内にも時間は過ぎる…。

 

(…ちょっと寄り道していこ)

 

 私の悩みは、明日の私が何とかしてくれる。

 

 そんな意味のない無責任な責任転嫁をした私は、ダンジョンに向かう前に友人の勤めているギルドへと足を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 

 

 

「な~に、ベル君?もしかして~…ヴァレンシュタイン氏のこと好きになっちゃったの?」

 

「…は、はい~~…!!」

 

 真っ赤になって頭を抱えながらか細い声で首肯する、兎のような少年をみて淡い姉心の芽生えた私、エイナは前途多難な少年の夢を壊さないよう細心の注意を払って__現実というものを叩きつける。

 

 ファミリア内での婚約は珍しい話ではない。しかし、他のファミリアとなると話は別だ。

 

 過去には痴情のもつれで一つのファミリアが解散状態になったという事例もある。

 

 そうでなくても相手はロキファミリアの、それも幹部の一級の上級冒険者だ。

 

「__と、言いたいことは他にも色々あるけど…聞いてないよねベル君」

 

 既に魂の抜けかけている初心者冒険者に、ギルド職員として・年上のお姉さんとしての言葉を投げかけようとした。

 

 その時、いきなりギルド内の雰囲気が変わる。

 

 冒険者の喧騒が嘘のように止む。

 

 よっぽどの人物が来たのだろうか?

 

 異変に気付いたのかベル君も、不安を覚えながらも警戒した面持ちで辺りを見渡す。

 

 そして__

 

 

 

 

 

 

 

「__あ、エイナいたー。久しぶりー、クッキー焼いてきたんだけd…」

 

「あ、ヴァレンシュタイン氏、お久しぶりです。……あの?ヴァレンシュタイン氏?」

 

 自称、私のお茶友達であるアリス・ヴァレンシュタイン氏が(お茶友達と主張しているのはアリス)私とベル君の使用していたブースに顔を覗かせると、恐らくクッキーの入っているであろうバスケットを持ったまま、ある一点を見て動かなくなった。

 

 視線の先にいたのはベル・クラネル。

 

 そのベル君も、まるで夢を見ているかのような顔をしてヴァレンシュタイン氏のことを見つめている。

 

 お互いが互いの瞳を捉えて離さない。

 

 一体二人の間で何が起こっているのだろうか?

 

 得体のしれないなんとも言えないふわふわした不思議な空間に動揺を隠し切れない私は、その光景をただ傍観し続けるしかなかった。

 

 永遠にも感じられた数瞬に終わりを告げたのは___

 

「……………きゃあああああぁぁぁぁぁぁぁ______!!!!!」

 

 遠ざかっていくベル君の叫び声だった…。きゃああって…。

 

 ベル君がギルドから去っても尚、ヴァレンシュタイン氏は棒立ちのままだった。

 

「えーと…ヴァレンシュタイン氏?大丈夫ですか?」

 

 私が彼女の肩に手を置くと、何を思い立ったのか私の両肩に手を置き、もう少しで唇がくっつきそうになる距離で捲し立てられる。

 

「ねえエレナ!あの子誰!?エイナとどういう関係!!?」

 

 正直、同性である私でさえ恐怖を感じるレベルで危ない顔をしている友人に私は落ち着かせるように返答する。

 

「ちょっと!落ち着いてください!ヴァレンシュタイン氏!!…あーもう、分かりましたからそれ以上顔を近づけないで下さい!!彼はベル・クラネル。先日冒険者登録を終えたばかりの初心者で、今は私が彼の担当アドバイザーを務めてます」

 

「ベル…クラネル……ベル………べるきゅん…!」

 

 ベル君の名前を呟いてはどんどん目が危なくなっていくヴァレンシュタイン氏。

 

 いつもの清楚でお淑やかで聡明で、でもちょっぴりお茶目な彼女はどこへいったのだろうか?

 

 そして彼女は私にとんでもないことを宣う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お母さん!私にベルきゅんをください!!幸せにします!!!」

 

「誰がお母さんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




えー、アリスって剣姫の妹だったのかーびっくりー(棒)

ごめんなさいアリス…シリアスを駆逐するにはこうするしかなかったの…

花火に金属製の杖のような物とくれば…もうあれしかない!

近々、戦闘シーンの執筆を予定しておりますので気長にお待ちくださいませ

それではまたの機会に
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