姉さんと間違われて役得だと思うのは間違っているだろうか   作:苺ノ恵

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テストも兼ねて三人称書き。

書きづらくて大変でした。

読みづらさ満載ですが、暇つぶし程度にどうぞ


手を伸ばすの

 

(………これって…)

 

【憧憬一途(リアリス・フレーゼ)】

 

 真っ赤な顔をしてホームに走り込んできたベル君を落ち着かせ尋問すると、やれ言いつけを破ってミノタウロスに襲われるわ、やれヴァレン何某君に助けられて恋しちゃってるわでボクの寿命は一気に減った気分だ!神だから寿命はないけど!!

何だかんだでステータスの更新をすることになり、ベル君の背中にダイブして眼福眼福と思いながら小言を吐きつつ、いつも通り作業を進めていると、今までにないステータスの伸び幅と見たことのないスキルの発現を目の当りにした。

 

(思いの丈で効果上昇に持続?しかも早熟するって…)

 

 恐らくオラリオが始まって以来の、成長に影響を及ぼすレアスキル。

 

 冒険者としての大成を願うベル君にとってこのスキルは、ダンジョンを攻略し冒険していく上での大きな力となるだろう。

 

(でも…最後の欄……これは…)

 

 

・『偽物』への思いの丈に反比例する

 

 

(偽物?何のことを指してるんだ?)

 

「__神様?」

 

 ボクの手が止まっていることを訝しんだベル君が、言外にどうかしましたか?と訊ねるような声音を浮かべる。

 

「なんでもないよ」

 

 スキルを伏せてベル君のステータス値を写し取った紙を本人に渡すと、心底驚いている様子だった。当然だ。今までの何倍もの速さで強くなっているんだから。

 

 だからどうしても気になった。

 

「ベル君、君は__」

 

「はい!何でしょうか!」

 

「____新作の抹茶味のじゃが丸君をどう思う?」

 

「え?えっと、そうですね…結構独特な味なので、僕は普通に塩でいただきたいですね。…まあ、僕の稼ぎではそんな贅沢も言えませんけど…ハハ…」

 

「了解だぜベル君、君には元祖じゃが丸君をたらふく食べさせることを誓うよ!今日早速…と言いたいところだけど、ボクはこれから用事があって一緒に食べられないから、今晩の夕食は外で済ませてくれないかな?あ、因みに僕が戻るまでダンジョンに潜るのは禁止だよ?分かったね?」

 

「………分かりました」

 

「…妙な間があったけど嘘ではないね。___それじゃあ、行ってくるよ」

 

「はい。行ってらっしゃい、神様」

 

 階段を昇り、古びた教会の屋根から差し込む光に網膜を焼かれながら外に出る。

 

 何となく後ろ髪を引かれた気分になったボクは、後ろを振り返る。

 

 崩れた瓦礫の上にある花が、風に揺られてゆらゆらと船を漕ぐ。

 

 ベル君は本当にいい子だ。

 

 ボクみたいな貧乏な神に嫌な顔一つしないで傍にいてくれる。

 

 お人好しで、涙もろくて、優しくて。

 

 でも、守りたいもの・理想の為に戦える、強い心を持った素敵な男の子だ。

 

 だからこそ僕は思う。

 

「ベル君、君は__」

 

 

 

 

 

 

 

 君のいう『本物』って何?

 

 

 

 

 

 ふと、足元を見る。

 

 そこには一凛の花があった。

 

 雑草に隠れ、誰かに踏みつぶされて尚、瓦礫の上に立つ花に近づこうと必死に上を向く健気な花が。

 

 普段なら気にもしないような風景にボクは視線を落とす。

 

 そんな花を見て可哀そうだと思うボクの心が、ひどく惨めに思えた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

「極彩色のモンスターに武器を溶かす酸…おまけに強化種か…。また、厄介な案件が顔を出して来よったな」

 

 行儀悪く机に腰掛け、今しがた共有された情報の整理を行うロキの行動を諫めるものはいない。礼節を重んじるリヴェリアもその例外ではなかった。それよりも次に主神の吐く言葉に、ロキファミリア幹部の皆が耳を傾けていた。

 

「被害はどんなもんや?」

 

 誰に対する問いとは言わなかったが、この場において状況報告を最も正確・簡潔に述べられるのはロキファミリア団長、フィン・ディムナを置いて他にはいないだろう。その証拠に口を開いたのは、小人族の勇者その人であった。

 

「団員の被害についての報告は今言った通りだよ。物資の話をすると、武器は僕の槍やアイズのデスペレートを除いてほぼ全損状態さ。盾も例外じゃない。テントも保存食も…遠征に必要な物資の殆どをやられた。…それでも、補給拠点を襲撃されて

 

 あれだけの被害で済んだのは、不幸中の幸いとしか言いようがないかな」

 

 フィンの報告に幹部の皆が同調するように首肯する。報告書を読み終えたロキは、小さく深呼吸をすると右手で両目を覆う。そして、情報の統括としてフィンが口を開く。

 

「この際、諸々の問題は一旦保留にするとして…目下の案件は___」

 

「__金やろ?」

 

 ロキの一言に何とも言えない苦い笑みを浮かべるフィンは、ロキの隣に立つ者に、非常に言い辛そうに問いを投げる。

 

「戻って早々、こんなことを君に頼むのは大変恐縮なんだけど…どうにかなりそうかい?___アリス」

 

「どうにかってなにを?」

 

 視線を報告書と被害総額の見積書に固定し次々と書類の山を積み上げていくアリス。その声音は酷く冷え切っているように思えた。

 

 後に、その書類全てに目を通しサインと印を施さなければならないフィンは、疼きを訴える親指を人差し指で擦りながら濁していた言葉を少しずつ洗っていく。

 

「…まずは今晩の宴についてなんだけど___」

 

「お酒禁止」

 

「………辛辣だね」

 

「…私だって遠征を頑張ってきた皆にこんなこと言うのは心苦しいよ。でも、それはそれ。これはこれよ。ファミリアの資金管理を任されてる身としては、不必要な経費は省かざるを得ないの」

 

 そこで酒豪筆頭のガレスが物申す。

 

「じゃがなアリス。戦士に休息は必要なものじゃ。つまり酒は外せん」

 

「私は酒がなくとも構わないが…他の団員のことを思うとな」

 

 正直、ガレスの理論は理解できなかったが、リヴェリアに言われたことは理解できる。

 

 そこで私はとある折衷案を出す。

 

「…ねえロキ、一つ提案があるんだけど?」

 

「なんや?」

 

「前提条件として今晩の宴にお酒が出ればみんなは満足なのよね?」

 

「そうなるな」

 

「でも、ファミリアの資金繰りは今フィンが話してくれた通りに苦しい。それなら、ファミリアの資金に手を付けないで豪華な宴ができたら…いいと思わない?」

 

「……なるほどそういうことか…」

 

 親指の疼きが限界を迎えたのか、指の腹をペロリと舐めるフィン。

 

 流石は団長。頭が切れる。

 

 その後の展開を予測して、フィンがアリスの言葉を代弁する。

 

「要するに、僕たちが払えば解決する__ということかな?」

 

 フィンの言葉に笑みを深めたアリスは、まるで__言質はとったよ?__と言わんばかりに、白々しくお道化たふりをする。

 

「私は強要はしてないよ?提案してるだけ」

 

「くっ…!」

 

 容姿は姉妹なだけあってアイズと瓜二つ。しかし、アリスは姉と異なり用意周到で狡猾だ。普段は温厚で義理堅い性格なのだが、事責任のある立場になるとどこまでも非情に薄情に冷血になれるのがアリスだ。だからこそ、私情に流されることがないため重要な役割を与えられているのだが…このような時ばかりは、彼女にそんな権限を与えた自分たちを殴りたくなってしまう。

 

 そしてアリスは、更に悪魔のような一言を口にする。

 

「ついでにもう一つ提案するなら___『僕たち』じゃなくて、『誰か』でもいいんだよ?」

 

 そんな提案をするアリスの顔は、与えられた玩具を笑顔で破壊する赤ん坊のような、無邪気な狂気を孕んだ笑みだった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「うわーーーーーん!!なんれよおおおおお!!!?」

 

「ア、アリスさん落ち着いて!はい、お水です!」

 

「もうちょっとれ…もうちょっとれ………私の研究室が手に入るろこらったろにーーー!!……ゴクゴクゴクゴクッ……ケプッ………れふぃーや、もう一杯!!今度はおしゃけ!!記憶が飛んりゃうくらいちゅよいの!!!」

 

「ああ…アリスさんが壊れた…」

 

【豊穣の女主人】は、ロキファミリアの団員の喧騒と笑い声で大いに盛り上がっていた。

 

 一人は泣いているが…。

 

 あの後、とあるゲームをしてアリスが今晩の宴に掛かる費用を全額負担することになった。

 

 ゲーム前にロキが提案した、約束を破らないための誓約として『盟約に誓って(アッシェンテ)』と、謎の神聖語を唱えさせられたが、今は懐が軽くなってしまったことによるショックで俗に言う自棄酒の渦に飲み込まれ、現実を忘れようとしているのだった。

 

 隣の席に座っていたロキが、上体を逸らしながら若干高揚した頬を持ち上げて、物凄く綺麗な笑顔で宣う。

 

「アリスたん、ごめんな?これも勝負やから__『僕たち』じゃなくて、『誰か』でもいいんだよ?__……ぶふぉ!!ダメや!!腹が壊れる!!!」

 

「まさか、部下からお酒を奢ってもらえる日が来るなんて思わなかったよ。ありがとう、アリス」

 

「うむ。娘に飲ませてもらう酒というのは存外によいものだな」

 

「ゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクゴクッ…ゲフウッ…よーし、次は火酒を頼もう。ああ、ワシは樽で構わんぞ?」

 

「……………地獄に堕ちろ、老いぼりぇども…!!」

 

 アリスの恨み言もどこ吹く風。

 

 お酒が身体に回り切ったのか、舌足らずの口調になってしまった今のアリスには愛らしさ以外の感想を抱けない。それに、こういった雰囲気の中で飲む酒は、普段の何倍も美味しく感じるものなのだ。

 

「…うっ………………………………きもちわりゅい…」

 

「わーー!待ってアリスさん!ここじゃダメです!!というかアリスさんはそんなことしちゃダメーーー!!!」

 

 急に顔が青白くなり、真顔で一点を見つめ始めたアリスの背中を一生懸命さするレフィーヤ。周りがそんなアリス達のやりとりを見て爆笑する中、アリスが席を立ちフラフラと出入り口へと足を運ぶ。

 

「ちょっと……かぜに…あたってくりゅ」

 

「アリスさん危ないですよ!私も付いて行きます!」

 

 アリスに肩を貸し、酒場の外に出て少し道に沿って歩くレフィーヤ。

 

 すると___

 

「___レフィーヤ、ちょっとごめんね?」

 

「え?アリスさん?__って、ええ!!」

 

 突然、アリスがレフィーヤの身体を抱える。

 

 お姫様抱っこというものだった。

 

 そのままレフィーヤの視界に移る風景が高速で移り変わると、気付けば建物の上に移動していた。

 

「はい、到着」

 

 レフィーヤは屋根に降ろされてからも若干呆けていたが、アリスが屋根の縁に腰掛けるのを見て、今更驚いたような声を上げる。

 

「……あれ!アリスさん、大丈夫なんですか?」

 

「ん?大丈夫って何が…あっ、そっか。レフィーヤと一緒に飲むのは初めてだっけ?私ってお酒強いからアレくらいなら大丈夫よ?姉さんには絶対に飲ませちゃダメだけど…」

 

「…えっと…分かりました、気を付けます」

 

 アリスの表情から事の重大さを伺ったレフィーヤは、アイズにお酒を飲ませないことを心に誓った。アリスの隣に腰掛けたレフィーヤはアリスに問う。

 

「でも、ならなんで酔ったふりなんてしてたんですか?」

 

「んー、レフィーヤは誰かに食事を奢ってもらうことになって、その人は少しでも出費を抑えようと食事やお酒を控えようとしてるとする。そんな人の前でレフィーヤは思いっきり食べたり飲んだりできる?ちゃんと楽しめる?」

 

「いえ…その…」

 

「別に気を使わなくてもいいよ。確かに、そこのドワーフちょっと飲みすぎ!とか、今回の書類整理は手伝ってあげないわよ、そこのチビ!とか、思うことも色々あるけど…やっぱり私は皆が笑顔でいてくれる方が好き。そんなみんなといられることが、どうしようもないくらい楽しい。そのためなら、ちょっとくらいお道化てみてもいいかなって思って」

 

「アリスさん…!」

 

「だからこれは私の演技に優しく付き合ってくれたレフィーヤへのささやかなお礼」

 

 そうして、アリスは懐から小さな籠を取り出す。

 

「姉さんの大好物よ。あげたらきっと喜ぶから」

 

「……………」

 

「私はもう少し風に当たっていくから。レフィーヤは先に行ってて。私の奢りなんだから楽しくありませんでしたなんて言ったら、後でお仕置きね?」

 

「…はい、わかりました!お仕置きされないように思いっきり楽しみますね!!」

 

 そう言い残し、レフィーヤの姿がアリスの視界から消える。

 

 何となく見上げた空に、満天の星空が迎える。

 

 眼窩から聞こえて来る仲間たちの笑い声に、そっと胸の内を満たしていく。

 

 騒がしくも好ましい、嫌いになれない喧騒もあるものだ。

 

 そんな感想を抱いたアリスだった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

『雑魚じゃあ、アイズ・ヴァレンシュタインには釣り合わねえ!』

 

 お前は弱者だと。

 

 強者である彼女にはふさわしくないと。

 

 現実を突きつけられた。

 

 分かっている。

 

 自分が弱いことくらい。

 

 分不相応な想いを抱いていることも。

 

 なら、なんで僕はこんなにも怒っているんだ?泣いているんだ?

 

 決まってる。

 

 悔しいんだ。

 

 自分の弱さを認めてしまっていたことが。

 

 憧れただけで行動を起こさなかったことが。

 

 冒険を、困難を、自分を超えようとしてこなかったことが。

 

 どうしよもうないくらいに僕の心を抉り込む。

 

 いやだ。イヤだ。嫌だ!!

 

 弱いままなんて嫌だ!

 

 強くなるんだ!!

 

 あの人の背中を追いかけられるくらい!

 

 あの人の隣に立てるくらい!

 

 あの人を守れるくらいに!!

 

 好きな人を笑わせられるくらいに!!!

 

 __強くなりたい__

 

 __そこで、僕の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 魔石がそこかしこに散らばるダンジョンの一角。

 

 その中心に一人の冒険者が横たわる。

 

 白髪で線の細い体躯はまだまだ少年の域を出ておらず、身なりも先ほどまで戦闘を行っていたのだろう。引き裂かれた衣服とその隙間から流れる血が、少年が命をかけて冒険していたことを如実に表していた。

 

 そんな少年を抱えた少女は囁くような声で独り言ちる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホントに…ズルいなぁ…___姉さんは」

 

 カラン…と、鈴の音を鳴らしたのには鈍すぎる音色がダンジョンに響き渡る。

 

 その音を聞いた者は誰もいなかった___

 

 

 

 

 

 

 




疑問:いつの間にロキファミリア遠征から帰ってきた?べるきゅんはどうした?未だに剣姫セリフゼロよ?あれ、戦闘は?…etc


ちょっと時系列が前後します。

次回は今回の話の補足・回想みたいな話になると思います。

それではまたの機会に
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